住宅営業の新卒研修|放棄リスト訪問で得る3つの効果と体験談

新卒の住宅営業社員は住宅展示場に配属されても、来場が少ないため新規の接客がなかなか回ってきません。日中は着ぐるみや駐車場の誘導といった雑務で過ぎていきますが、それでも新卒社員は毎日夜8時ごろまで会社に残っています。
この空いた時間を使う研修として、私は先輩社員が半年、1年と接触していない顧客リストを新卒社員に担当させ、訪問させることを勧めています。私自身も積水ハウス時代に、先輩から譲られた名簿を訪問して、15年前に展示場に来たきりのお客さんと契約しました。
本記事では、住宅営業の新卒研修に顧客リストの訪問を取り入れる理由と、話す訓練・度胸・潜在客の掘り起こしという3つの効果を解説します。
住宅営業の新卒研修で見落とされる新入社員の空き時間
住宅営業の新卒研修を考えるときは、まず新卒社員の1日がどう過ぎているかを経営者の方に知っておいてほしいと思います。新卒社員は時間を持て余しています。
「そんなことはないだろう。うちの新卒は毎年のようにすごく大変だよ」と反論する住宅会社もあるでしょう。
教育プログラムを決めて研修している住宅会社や、マイスター制度を取り入れて新卒社員を先輩にべた付きさせている住宅会社であれば、新卒社員は忙しいと思います。
私が「暇を持て余している」と指摘しているのは、住宅展示場を持ち、営業社員がだいたい10人以上いる住宅会社です。
九州の工務店Zホームでは新卒2名の教育が所長任せだった
九州にある地元の工務店Zホームは、住宅展示場を複数持っています。
Zホームでは各展示場に営業所長がいて、営業所長の下に部下が付く組織になっています。
Zホームは2020年度に新卒の営業社員を2名採用し、A君とB君は4月1日に入社して別々の展示場に配属されました。
Zホームは、新卒社員の教育を各営業所長に任せていました。
ところが、現場の営業所長が新卒営業の体系的な育成プログラムを持って実行するケースは、ほぼありません。
Zホームの営業所長たちも、それぞれの判断でなんとなく指導しているのが実態でした。
なんとなくの指導なので、営業所長がA君やB君に与える仕事は、雑務やイベントでの着ぐるみ、駐車場の誘導といったものになります。どの住宅会社でも新卒社員に雑務は回ってきますが、住宅展示場への来場者が減っている中では、新卒社員に新規客の接客機会はなかなか回ってきません。
コロナ禍で訪問もできず事務所にいるしかない
新卒社員は接客が少なければ追客の件数もほとんどなく、追客が少なければプラン提案や見積もりを出す商談も激減します。新卒社員は朝9時に出社して毎日夜8時ごろまで会社にいますが、その勤務時間の中で実際に行う仕事がそれほどあるとは私には思えません。
コロナ前であれば、住宅会社が新卒社員に朝9時から夕方5時まで外で訪問活動をさせるやり方もありました。しかしコロナ禍では訪問活動も著しく制限され、外に出る機会が減った新卒社員は事務所にいるしかありません。
個人面談で新卒社員は「暇です」と答えた
私は毎年、さまざまな住宅会社の新卒研修を請け負っています。
2022年度に新卒教育を引き受けた住宅会社では、Zoomでの研修に加えて、営業社員との個人面談も頻繁に行いました。
個人面談は私と営業社員の差しの話し合いで、上司が見ていないため、新卒社員の本音を聞き出す絶好の機会になります。
新卒研修で行うマナー研修の効果と注意点、合宿研修の狙いは、新卒研修のマナー研修と合宿研修で解説しています。
森「先月と今月の接客数はいくつ?」
新卒「1件だけです」
森「毎日何時ぐらいに帰ってるの?」
新卒「なんだかんだと言って8時ぐらいになりますね」
森「ぶっちゃけ暇でしょ?」
新卒「……はい、暇です(笑)」
住宅会社に具体的な研修プログラムがあるか、新卒社員がよほど意識が高く自分で仕事を見つけて勉強しているなら別ですが、新卒社員にはそれほどやることがないのが実態だと思います。
私が面談でこの質問をすると、多くの新卒社員が同じように返事をします。
新卒社員を迎える前の研修計画の立て方は、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
住宅営業の研修に先輩が放棄した顧客リストの訪問を入れる
空いている時間を使う新卒研修の一つとして、私が勧めているのは、先輩社員が放棄した顧客リストを新卒社員に担当させて訪問させる方法です。放棄したとまでは言えなくても、先輩社員が半年、1年と接触していないお客さんのリストを、住宅会社が思い切って新卒社員に任せます。
先輩社員は、どうしても目の前のランクの高いお客さんに目が行きます。
先輩社員が住宅展示場で接客して「この人はすぐには建てないだろう」と判断すると、その後はアプローチもせず、案件は社内のパソコンの中に埋もれていきます。
どのみち日の目を見ない案件であれば、新鮮な気持ちを持った新卒社員にコンタクトを取らせたほうが、住宅会社にも新卒社員にもメリットがあります。
かなりコテコテのやり方ですが、訪問は住宅営業の基本であり、実際に成果も上がる手法だと私は断言します。
私は根性営業が大嫌いで、現在実施している研修でも根性論にはまったく触れませんし、駅前で大声を張り上げて自分の名前を叫べという類の話でもありません。
そんな私でも、顧客リストの訪問くらいのことは新卒社員にさせたほうがいいと考えています。
訪問経験の少ない新卒社員が一歩前に出る方法は、新卒住宅営業がアポを取れない理由で解説しています。
住宅会社が新卒社員にリストを訪問させると、話をする訓練になる、度胸がつく、取りこぼした潜在客を掬い上げられる、という主に3つの効果が上がります。
新卒研修のムードメーカーが家の話になると固まった理由
仲間内の雑談と家の話は別の能力
新卒や若手の研修を長く続けてきた私は、若い営業社員は不慣れなこともあって、お客さんとの会話をなかなかスムーズにできない傾向があると体験的に確信しています。
5年ほど前、私はある住宅会社で7人の新卒社員を対象に研修を行いました。7人のうち1人の男性営業社員はいわゆるムードメーカーで、休憩時間には仲間を笑わせ、私にも気兼ねなく話しかけてくる、声が大きくニコニコとした好青年でした。
学生時代の仲間内では話が達者で人気者だった彼ですが、営業の現場では話がまったく違いました。
家と関係のない雑談はできても、話が家のことになると、彼は急に四角四面のつまらない話し方になってしまったのです。
仲間同士の雑談が得意でも、その力がビジネスでそのまま通用するとは限らない典型的な事例です。
住宅営業は、あくまでもお客さんと家の話をしなくてはいけません。
住宅営業には、家の話で盛り上がり、話が脱線しても、気がついたら家の話に戻っているという話術が必要です。
この話術を鍛えるには、とにかく現場でお客さんと家の話をする機会を1回でも多く持つことで、先輩が放棄したお客さんのカードを訪問させると、新卒社員にその機会を作れます。
若手営業の雑談の練習方法は、時事の話題で雑談を鍛える住宅営業ロープレで解説しています。
初対面のお宅を訪ねると度胸がつく
度胸がつくという効果は、少し精神論的な話になります。
仲間内でリーダーシップをとるような人物でも、名簿を基にお客さんのお宅へ出かけ、まったく面識のない人と話すのとでは勝手が違います。
クラスの人気者タイプでも、休憩時間に一人でひっそり本を読んでいるタイプでも、新卒社員が訪問で度胸をつけられる点は同じです。
15年前の来場客と契約した積水ハウス時代の体験談
3つの効果のうち、一番の肝が、取りこぼした潜在客の掘り起こしです。
古い話になりますが、私は積水ハウスに入社した後、先輩が放棄した名簿を300枚程度もらいました。
私は名簿をもとに来る日も来る日も訪問活動を続けました。
担当替えや自動追客メールを含めた名簿の掘り起こしの進め方は、過去名簿から始める住宅営業の源泉営業で解説しています。
名簿の中には、15年前に展示場で接触したきりの自営業のお客さんがいました。上司の指示どおりに動いていた私は、何の疑問も持たずにノーアポで訪問し、訪問活動3日目に、たまたま在宅していたご主人と話すことができました。
森「積水ハウスと申します。今から15年ほど前に展示場にお越しになったと思いますが、その後のご予定はいかがでしょうか?」
ご主人「いいところに来るね~(笑)」
いきなりこの会話になり、なんとご主人とは契約に至りました。
これは実話です。
15年も前の来場客を訪ねられたのは、新卒社員の私だったからできたことだと思っています。
まとめ
住宅展示場を持つ住宅会社では、来場者の減少とコロナ禍の訪問制限によって、新卒社員が時間を持て余しています。その時間を使う住宅営業の研修として、先輩社員が半年、1年と接触していない顧客リストを新卒社員に担当させると、話す訓練、度胸、取りこぼした潜在客の掘り起こしという3つの効果が上がります。
私が積水ハウス時代に15年前の来場客と契約できたのも、先輩から譲られた名簿を訪問し続けたからです。住宅会社が新卒社員を雑務だけで終わらせず、社内のパソコンに埋もれた案件を任せれば、新卒社員の育成と受注の両方につながります。
ぜひ本記事の3つの効果を参考に、自社に眠っている顧客リストを新卒社員の研修に活用してください。


