工務店の営業が辞める理由は休日?配置転換から半年で退職した事例

入社1か月で営業社員に辞められるのも痛手ですが、そこそこ動き始めてから突然辞められるほうが、工務店にとってはきつい事態です。
私の周りでつい最近起きた実例では、新築部門に配置転換された20代の営業社員G君が、半年で退職しました。G君が辞めた理由は、休日が土日祝日から火曜・水曜に変わったことで、共働きの奥さんや小さな子どもと休みが合わなくなったことでした。
本記事では、A社の採用から退職までの経緯と、住宅営業の中途採用の当たり外れ、土日出勤をめぐる工務店の休日問題を解説します。
営業が育つ前に辞めた工務店A社の事例(新築部門の立ち上げ)
A社は本州にある住宅関連会社で、社名は伏せさせていただきます。
A社はもともと新築住宅を手がけていませんでしたが、いろいろ検討した結果、新たにこの分野に乗り出すことにしました。
新築を手がけるには設計と現場監督が要りますし、A社は中高級を狙っているため、デザインに詳しいインテリアコーディネーターもいないと格好がつきません。
さらにA社は事業を急激に拡大する戦略を描いていたので、営業職の社員も必要になりました。
設計とインテリアコーディネーターはすぐに決まった
設計については、A社は大ベテランを他社から引き抜きました。
20代から30代の若手でもよかったのですが、中高級を意識すると経験豊富な50代くらいの人のほうがお客さんの信頼を得られると考え、社長は採用の対象をそこに絞りました。
タイミングもよかったのか、A社はドンピシャの人材を採用できました。
社長も大喜びで、この設計士は新規のお客さんを接客するときに毎回立ち会っています。設計士がお客さんの信頼を得ていることは、部外者の私にもすぐ分かるほどです。
インテリアコーディネーターは、社長が知り合いに声をかけたらあっさり入社しました。
私はこの人と顔を合わせる機会がほぼなく、インテリアの知見もあまりないので何とも言えません。
ただ、社長とはかなり昔から面識がある人物とのことなので、今のところはこの採用も正解だったと言えるでしょう。
営業だけは人材紹介会社を使っても決まらなかった
営業職の採用が一番の難題でした。
こうしたケースでは即戦力を引き抜いてくるのが一般的ですが、A社の社長には営業のつてがまったくありませんでした。
そこで社長は人材紹介会社に登録して30代の営業経験者2人と面接しましたが、結果的に採用には至らず、営業だけが空席のままになりました。
私「どうして採用しなかったのですか?」
社長「うーんと……なんとなくしっくりこなかったんだよね」
この手の採用はフィーリングが極めて重要なので、社長がピンと来なかったのであれば見送りでいいと私は思います。
社内の別部門から20代のG君を配置転換した
最終的にA社は外部から人材を引っ張ってくるのをやめ、社内のほかの部門で営業をしていた社員を、急きょ新築部門に配置転換しました。新築部門に移ったのは20代の営業マンG君で、新卒時代からずっとA社で働いてきた社員です。
もちろんA社は、本人の意思を十分に確認したうえで配置転換をしています。
A社の社長はそのあたりに大変気を配る人で、強引に進めてもうまくいかないという仕事観を持っています。
G君もやる気満々で、自宅を新築して少しでも稼ぎをよくしたいと意欲を見せていました。
新築営業なので歩合給も提示され、G君は私と会ったときにこう楽しそうに話していました。
「売ったら結構稼げますよね!」
工務店の営業が辞めた理由は火曜・水曜休みへの変更
配置転換から半年で届いた退職の申し出
やる気満々だったG君は、配置転換から半年たったところで突然、社長にこう切り出しました。
「すみません……退職したいんですが」
社長は驚いたと思います。
G君の半年間の新築受注は0件でしたが、これは会社もG君も想定内で、その間歩合給がつかないこともG君は理解していたので、受注の数字には何の問題もありませんでした。
G君の退職には別の理由がありました。
共働きの奥さんと小さな子どもと休みが合わなくなった
A社の新築部門は、発足当初は本社に合わせて土日祝日を休日にしていました。ところが住宅事業が始まった直後に、A社は一般的な住宅会社に合わせて休日を火曜日と水曜日に変更し、その代わり土日祝日を出勤日にしました。
G君も休みの変更には納得しており、変更そのものに大きな問題はありませんでした。
しかし、G君の奥さんは平日に出勤する共働きで、家には小さな子どもがいます。
G君が火曜・水曜に休んで土日に出勤するようになると家族と休みが合わなくなり、これが決定打になりました。
A社もG君も、当初は休日のずれを深刻に考えていませんでした。
いざ休みがずれてみると、家族とのすれ違いは相当な負担だったようで、G君は退職を決断しました。
G君は勤務態度にも問題がなく、会社に対する不満もまったくない社員でしたが、休日の問題ひとつで育つ前に辞めてしまったのです。
休日以外の理由として、売れていた営業が契約後の対応の遅れと伝達ミスでトラブルを重ねて辞めた例は、住宅営業を辞めたい理由と体験談で解説しています。
住宅営業の中途採用は当たり外れが大きい
営業社員がいない小規模工務店には関係のない話ですが、1人でも営業職を抱える工務店にとって、営業の増員は悩ましい問題です。営業が1人いるところで「もう一人欲しいな……」と思ったとき、工務店の社長の考え方として最もポピュラーなのは、手っ取り早く経験者を中途採用するか、まったくの素人でいいから若い人を採用するかの2つだと思います。
素人を採用すると色がついていないので育てがいはありますが、当初はまったく戦力にならないため、会社にとっては負担になります。
そのため工務店の社長が中途の経験者を採用しようとするのは、当然といえば当然です。
素人から育てる場合の考え方は、住宅営業の新人育成の事例で解説しています。
しかし、中途社員は当たり外れが大きいというのが、住宅業界の常識と言ってもいいでしょう。
当たりを引けば会社に大きな利益をもたらしますが、その確率は50%以下と思ったほうがいいです。
これは私の経験則であり、実際に中途社員を雇った社長たちの意見からもほぼ間違いありません。
もちろん、中途の営業社員を採用して成功している住宅会社もあり、その代表格はアイ工務店です。ただしアイ工務店は、大手ハウスメーカーの幹部が集まってできた会社で、上層部がそのルートを通じて確かな人材を引き抜けたという背景があります。
誤解しないでいただきたいのですが、私は住宅営業経験者を採用すること自体がダメだとは一言も言っていません。
中途採用は当たり外れが大きいというだけのことです。
経験者を面接で見極める方法は、ハウスメーカー営業の面接で聞く質問で解説しています。
土日出勤にするか迷う工務店の休日問題
私のように最初からハウスメーカーに勤めていた人間にとって、休日は大きな問題になりません。
入社したときから休みは火曜日と水曜日と決まっているので、生活に変化が起きないからです。
ところがA社のように、最初は土日休みだったのに、住宅展示場を建てるなどの業容拡大に合わせて休みを変える工務店にとっては、休日の変更が大きな問題になりえます。
「休みを火水にして土日出勤にしたいのだけど、森先生はどう思う?」
工務店の社長からたまにこう聞かれますが、私としては何とも答えようがありません。
営業的なことを考えれば、土日は出勤日にするべきです。
しかし、働いている社員のことを考えると、土日出勤を強く進言するのははばかられるというのが私の正直な気持ちです。
私は住宅会社に営業についてさまざまな助言をしていますが、この問題については答えを見いだせていないのが現状です。
休日の問題はどの工務店にも存在し、人が育たなかったり辞めたりする原因になります。工務店の経営者には、この点を肝に銘じていただきたいと私は考えています。
休日とは別に、社長の行動が原因で社員が辞めていく例は、社長に呆れて社員が辞める工務店の実話で解説しています。
まとめ
A社では、設計とインテリアコーディネーターは順調に決まり、営業も社内からの配置転換で確保できました。
しかし、休日を火曜・水曜に変えたことで、共働きの家庭を持つG君は家族と休みが合わなくなり、配置転換から半年で退職しました。
中途採用の当たり外れに加えて、休日の変更も営業社員が育つ前に辞める原因になります。
最後にくどいようですが、私から一言申し上げます。土日出勤の弊害は家庭によっては非常に大きなものになりますが、営業的なメリットから見れば、これまた非常に大きなものになります。
ぜひ本記事のA社の事例を参考に、休日を変える前に、社員一人ひとりの家庭の事情を面談で確かめてください。



