工務店が建売で失敗した事例|葬祭場と産廃施設に囲まれた土地

工務店が建売で失敗した事例|葬祭場と産廃施設に囲まれた土地

本記事で取り上げるのは、自社の建築技術には自信を持っていたものの、建売業者ではないために土地の選定方法に関するノウハウの蓄積が無かった工務店の失敗事例です。

中部地方のF工務店は、最初の建売を3カ月で3区画売りました。

ところが2回目の土地は水害が起こる場所にあり、周りを産廃処理施設、建築資材置き場、葬祭場、倒産した建築会社の廃屋に囲まれていました。

F工務店は2回目の4棟を売り切るまでに1年以上かかり、そのうち2棟はかなりの値引きをしています。

本記事では、F工務店の建売が1回目に成功し2回目に苦戦した理由と、建売用地を仕入れる前に確かめる項目を解説します。

中部地方のF工務店が建売で4区画を売り切るまで

中部地方にある小規模のF工務店は、建売を始めるまで新築の請負工事だけを手がけ、安定した業績をあげていました。F工務店の社長は、受注が安定している時期にビジネスの幅を広げようと考え、建売業務にも乗り出しました。

F工務店は最初に土地を購入して4区画に割り、建売を建てて、そのうち1棟を期間限定の街角モデルハウスにしました。販売開始から3カ月で3区画が完売し、街角モデルハウスも10カ月間稼働させた後に販売にかけたところ、すぐに売れました。

この現場は私も自分の目で見ており、たまたま周辺の地理にも明るかったので、周りの状況もよく分かっていました。F工務店の初めての建売が売れたのには、立地の理由がありました。

工務店の最初の建売が売れた3つの立地条件

近隣の業者が出した建売も売れていた

F工務店の現場の近くでは、いろいろな業者がちょこちょこと建売を販売しており、その売れ行きは傍から見ていても好調でした。造成工事が始まり、建物がすべてできて販売告知をした時点で、4区画のうち2区画はもう売れているという物件が多かったです。

ある地元の業者が手がけた4棟の建売は横並びで、真ん中の2棟は両隣に挟まれているため、日照、採光、通風に難があることが一般のお客さんでもすぐに分かる物件でした。

それでも真ん中の2棟は、ほどなくして完売しました。

地元の業者がある程度値引きをしたのかもしれませんが、その事情は私には推測するしかありません。

ただ、この場所は住みやすい地域と認識されていたので、多少の難があってもお客さんは立地を評価するだろうと、私は容易に推測できました。

窃盗や侵入の犯罪が少ない地域だった

県警のホームページには載っていませんが、この建売地域は、ほかの地域に比べて窃盗犯や侵入犯などの犯罪が少ないというデータがありました。

意外かもしれませんが、公になっていない地域の治安情報も、入手しようと思えば手に入ります。

情報公開されていなかったにもかかわらず、「〇〇あたりは治安が良いんだよね」と、もっぱらの評判の地区でした。

大都市の住所が取れた

私は学生時代、東京都の練馬区に住んでいました。

私は大学に新聞奨学生として奨学金をもらいながら通っており、朝日新聞の販売店が練馬区にあったため、配達区域は練馬区と埼玉県新座市にまたがっていました。

その配達区域では、道一本を隔てて、南側は東京都練馬区、お向かいは埼玉県新座市になります。

人によって価値観は違いますが、何が何でも東京都の住所を取りたい人であれば、多少値段が高くても東京都側の土地を買うはずです。

F工務店が建売を成功させた場所も、ある大都市とその隣の小さな町との境にありました。土地は大都市の端にあるため価格はほかより安めでしたが、住所は大都市になります。

「ここなら住所は〇〇市ですよ」

F工務店の社長も、この売り文句がお客さんに強く響いたと話しており、住所も成功要因の一つだったことは容易に想像がつきます。

2回目の建売用地にあった5つの問題点

初めての建売に成功したF工務店の社長は、大急ぎで次の土地の仕入れにかかりました。

土地そのものは一見すると大きな問題がなさそうでしたが、周辺環境には5つの問題がありました。

建売でここまで売りにくい土地を仕入れてしまうのは、かなりのレアケースです。

私は現地の写真を手元に持っており、いま見ても「無茶な場所に建てようとしたよな」とつくづく思います。

過去に何度も浸水した水害の履歴

F工務店の2回目の建売用地は、建売を販売する5年前にも付近一帯が水に浸かったことがあり、50年さかのぼると同じ規模の水害が4回あった場所でした。若い方やほかの都市から来た方は知りませんが、地元の人や年配の方の間では、誰もが知っている事情でした。

敷地から見える産廃処理施設と建築資材置き場

敷地から直線距離で600mほどのところには、かなり大きな産廃処理施設がありました。

敷地からも工場の建屋がはっきり見えるため、お客さんから「あれは何ですか?」と聞かれれば、F工務店の営業社員は正直に答えざるを得ません。

気にならないお客さんは気になりませんが、お客さんが少しでも気にしてしまえば、この場所はダメだと私は思います。

分譲地で周辺環境を聞かれたときの答え方は、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。

敷地の東側は、建築資材置き場でした。恒久的なものか臨時のものかは分かりませんが、私が現場に行ったときには、工事現場で使う鉄板が山と積まれ、会社名の入ったバックホーやユンボが3台置いてありました。

はす向かいの葬祭場と裏の倒産した建築会社の廃屋

笑ってはいけないのですが、F工務店がこの現場で土日に現場見学会を開いたとき、テントの周りに紅白幕を巻いてイベントをしていました。

ところが、はす向かいの葬祭場では葬儀を執り行っていたため、白黒の幕が外からも見えていました。

火葬場ではないので気持ちの問題といえばそうですが、やはり「なんだかなあ……」という光景ではないでしょうか。

敷地の裏側には、倒産から2年たった建築会社の事務所が残っていました。

その廃屋はいつ解体されるのか全く見通しがついておらず、加えて倒産した建築会社の当時の経営者が社屋で自殺を図っていました。

自殺の件はお客さんへの告知義務がないため、現場の接客でその話は一切出ませんでしたが、事実です。

営業上は自殺の件は関係ありませんでしたが、潰れた会社の廃屋が建物の裏にあるのは、お客さんにとって気持ちの良いものではありません。

2回目の建売は1年以上かけて値引きで売り切った

「どうしてこんな所を仕入れたのですか?」

私はこの素朴な疑問をF工務店の社長に聞きましたが、社長からはっきりした返事はありませんでした。社長は気が急いていたこともあり、何となく直感で「ここなら安くていいんじゃないか」と仕入れたのが実情のようです。

F工務店は最終的に1年以上をかけて、この4棟の建売も何とか販売しました。

ただ、4棟のうち2棟はかなりの値引きをしたようです。

私は具体的な金額を聞いていませんが、社長は塩漬けになるくらいなら売り切ったほうがいいと判断し、相当な金額を値引いて処分しました。

売りにくい土地で建売を売るために販売前に準備することは、建売住宅の売り方と販売前の準備で解説しています。

建売用地を仕入れる前に工務店が確かめること

F工務店の1回目と2回目の土地の違いを、仕入れ前に確かめる項目として整理すると次のとおりです。

確認すること確かめ方
近隣の建売の売れ行き近くで販売中の建売が、販売告知の時点で何区画売れているかを見る
地域の治安の評判地元の住民の間で、治安の良い地区として名前が挙がるかを聞く
住所の市区町村市境の土地は、どちらの市町村の住所になるかを確かめる
水害の履歴地元の年配の方に、付近が浸水したことがあるかを聞く
敷地から見える施設敷地に立ち、見える建物が何の施設かを一つずつ確かめる
隣地と裏手の使われ方資材置き場や空き建物が、いつまで今の状態なのかを確かめる
週末の周辺の様子見学会を開く土日に現地へ行き、周りで何が行われているかを見る

地元の情報を集めるやり方は、住宅営業の探客方法で解説しています。

まとめ

F工務店の1回目の建売は、近隣の建売の売れ行き、治安の評判、大都市の住所という立地の条件がそろって売れました。2回目は社長が直感で安い土地を仕入れ、水害の履歴や周りの施設が重なった結果、1年以上かけて値引きで売り切ることになりました。

ぜひ本記事のF工務店の事例と確認項目を参考に、次の建売用地を仕入れる前に現地と周辺の様子を確かめてください。

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