実邸案内で競合に勝つ工務店の営業術|平屋で商談が終わった体験談

実邸案内で競合に勝つ工務店の営業術|平屋で商談が終わった体験談

商談中のお客さんに、自社で建てた家を見てもらう場所がありません。住宅展示場もショールームも持たない工務店の住宅営業は、この状態のまま大手ハウスメーカーと競合しています。

引き渡したお客さんの家を見せる実邸案内は、工務店が経費をほぼかけずに受注に近づける営業戦略です。

ただし、私は積水ハウス時代に平屋の実邸を案内しました。

そのとき、見学したお客さんから「積水ハウスの平屋って格好悪いね」と言われ、商談を終わらせてしまいました。

本記事では、実邸案内が受注につながる理由と、私の失敗から分かる案内する家の選び方を解説します。

工務店の実邸案内が受注に近づける理由

新築住宅の商談で重要な位置を占めるのが、施主が実際に住んでいる家を案内する実邸案内です。実邸案内をすると、自社の工務店で家を建てて住んでいる施主の話を、見学するお客さんに直接聞いてもらえます。

家を見せてくれる施主は満足している

見ず知らずの他人に家の中を見せてくれる施主は、工務店との関係が良好です。

施主の満足も一定のラインを越えています。

こうした家を見学したお客さんは、工務店の対応さえ間違わなければ、好印象を持つ可能性が極めて高いです。

見学したお客さんには、自分の家づくりのために、わざわざ人が住んでいる家まで見せてくれたという気持ちも働きます。

そのため、お客さんは工務店に親近感を持ちます。

それと同時に、ここまでしてもらって断るのは悪いという気持ちにもなるものです。

住宅展示場のない小規模工務店ほど実邸案内が役立つ

大手ハウスメーカーには、住宅展示場、ショールーム、現場見学会など、商談中のお客さんを連れていく場所が無数にあります。

一方、年間5~6棟の建築実績の工務店は、展示場はもちろん、ショールームも普通は持っていません。

現場の数も少ないので、工務店が建築途中の現場見学会や新築現場見学会を頻繁に開くわけにもいきません。

展示場を持たない工務店が大手ハウスメーカーと競合したときの戦い方は、工務店が大手ハウスメーカーに勝つ武器で解説しています。

そう考えると、これまで引き渡してきたお客さんの家を案内できれば、小規模な工務店にとって極めて高い効果を発揮する営業戦略になると私は思います。

ヘーベルハウスと工務店で違う実邸案内への姿勢

築20年の家でも案内するヘーベルハウス

ヘーベルハウスは住宅展示場をたくさん持っています。

それでも、ヘーベルハウスの現場の住宅営業は築年数に関わらず、お客さんを施主の家へ積極的に連れていっています。

私は、ヘーベルハウスの目的を2つだと考えています。

1つは、築20年であっても家が堅牢な状態を保っていることを見せることです。

もう1つは、施主が喜んでいる姿を見せることです。

ヘーベルハウスの構造が強固なことはお墨付きなので、住宅営業も自信を持って古い住宅を案内できます。

それと並んで重要なのが施主の喜ぶ姿で、施主が喜んで家を案内していることは、ヘーベルハウスに住んで満足している何よりの証拠です。

住宅営業が「あーだ、こーだ」と説明するよりも、施主の姿のほうが100倍の営業力を持っています。

最近では、ほかのハウスメーカーも積極的に古い家を案内するようになりました。ただ、実邸案内を最初に前面に打ち出したのはヘーベルハウスだと私は思います。

工務店が実邸案内に消極的な2つの理由

大手ハウスメーカーに比べて、地域の工務店は実邸案内に消極的な気がしてなりません。

理由は明快です。

工務店が実邸案内を営業戦略だと気づいていないか、施主にとって迷惑だと考えているかのどちらか、または両方です。

特に施主への迷惑については、人を招いて家を見せるのが大好きな施主も、結構いるのです。

平屋の実邸案内で商談が終わった体験談(積水ハウス時代)

ここまで実邸案内を勧めてきましたが、住宅営業が案内する家をよく吟味しないと大失敗することもあります。良かれと思って案内した家が、かえってお客さんの建築意欲をそぐケースがままあるからです。

オールキャッシュで平屋を希望した熟年夫婦

ここ数年で平屋の需要が急増しました。

しかし、私の営業時代は、住宅展示場に来たお客さんが平屋を希望することはほとんどありませんでした。

それに伴って、積水ハウスの平屋の現場も少ない状況でした。

急増した平屋の需要に工務店がどう備えるかは、平屋ブームへの工務店の営業対策で解説しています。

そんな中、私は土曜日の展示場当番で事務所に詰めていました。

来場を知らせるチャイムが鳴り、モニターに熟年のご夫婦が映りました。

「よっしゃ!」と意気込んだ私は、いそいそと接客に出て、着座も含めて小一時間ほど話し込みました。

ご夫婦はオールキャッシュで、資金計画に問題はありませんでした。

積水ハウスにも極めて好印象を持ってくれていました。

建物の構造も木造住宅以外でやりたいという明快な要望をお持ちでした。

そのため当時の私は、積水ハウスで取れる確率は7割から8割あると算段しました。

ご夫婦は当時では珍しく平屋を希望していました。

そして「積水ハウスで実際に建てた平屋の現場を見たい」という要望を、ご夫婦の方から出されました。

当時、私が直接担当したお客さんの中に、市外の分譲地に建つ平屋の家が一軒だけありました。

私は迷うことなく、その家を紹介しました。

ご夫婦は外観だけ見たいという希望だったので、私は住所と案内地図を渡し、ご夫婦自身で足を運んでもらうことにしました。

「積水ハウスの平屋って格好悪いね」と言われた電話

見学のあと、ご夫婦から電話がありました。

私は、平屋を見た報告を明るい声でしてくれるのだろうと思って電話に出ました。

しかし、お客さんはいぶかしげな声でこう言いました。

「積水ハウスの平屋って格好悪いね」

私はそのとき、何も言い返せませんでした。商談はもちろんこれで終わってしまいましたが、電話を切ってものの1分で、私は自分の失態に気づきました。

実邸案内で見せてはいけない家の見分け方

案内した平屋は仕事場兼物置として建てた家だった

私が案内した平屋は、当時積水ハウスが出していた平屋プラン集の中で、最も安いパターンでした。

オプションを何もつけない、長方形の25坪の家です。

当時は、基礎にも吹きつけをして見栄えを良くする仕様が標準でした。

しかし、少しでも安くしたいという施主の要望で、基礎の吹きつけをマイナスオプションにしていました。

そのため、外観にも飾り気がなく、企画プラン集そのままの平屋でした。

この施主は資金に余裕のある方でしたが、平屋は仕事場兼物置として建てていました。

施主は外観にお金をかけるつもりが微塵もありませんでした。

ただ堅牢な家を信頼のある住宅メーカーに任せたいという理由で、積水ハウスを選んでいました。

一方、見学したご夫婦は、夫婦二人で老後をゆっくり過ごすマイホームとして、おしゃれな平屋を希望していました。

私はご夫婦の希望を汲み取れず、次のように短絡的に考えてしまいました。

「平屋か……あっ、〇〇さんの家でいいじゃん!ちょうどよかった、グッドタイミングだ!」

形が合っていても目的が違う家は見せない

競合に勝つには、住宅営業が実邸を案内することに加えて、お客さんの意欲を下げてしまう家を見せないことが欠かせません。

分かりやすい例でいえば、3階建てを希望しているお客さんに平屋の現場を見せてはだめです。

私の失敗は、平屋という形は合っていたのに、建てた目的と外観へのこだわりがずれていた典型例です。

実邸案内とは別の角度から競合に勝つ方法は、競合他社の資料を上回る競合対策で解説しています。

つまり住宅営業は、お客さんが何を見たいか、どんな建物を見れば「この工務店にしよう!」と前向きな気持ちになれるかを考えてから案内してください。

経費ほぼ0で始める実邸案内の進め方

実邸案内は、商談の途中に組み込めば、経費もほぼ0で済む営業戦略です。

工務店にかかる経費は、家の中を見学させてもらった施主に、商品券かちょっとしたお菓子を持っていく程度です。

費用対効果の面では、抜群の営業手法だと私は思います。

可能であれば、住宅営業はお客さんに外観だけでなく家の中も見学してもらってください。

実邸案内を頼めるのは、引き渡し後も工務店との関係が続いているOB施主です。OB施主との付き合い方は、工務店がOB施主からリフォームを受注する方法で解説しています。

まとめ

実邸案内は、施主の満足した姿と話をそのまま見てもらえる営業戦略で、住宅展示場を持たない工務店ほど役に立ちます。

一方で、私は仕事場兼物置として建てた飾り気のない平屋を、おしゃれな老後の家を望むご夫婦に見せてしまいました。

そのため、7割から8割取れると見ていた商談を失いました。

住宅営業は、お客さんが何を見たいか、どんな家を見れば前向きになれるかを考えてから、案内する家を選んでください。そうすれば、工務店は経費をほぼかけずに競合と戦えます。

ぜひ本記事の平屋の失敗談を参考に、自社のOB施主の家の中から、商談中のお客さんの希望に合う家を選んで案内してください。

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