建売の集客方法|火葬場が見える分譲地も売れた理由と接客術

8区画の建売現場は残りが1区画になり、営業マンが新規のお客さんを案内しましたが、決まりませんでした。
キッチンの前に立った奥さんが「高すぎるよこれ!」と叫んでも、営業マンは「そうですね……」と返すだけで、話はそこで終わりました。
建売住宅を売るには、マイナス点を認めたうえで、それを大きく上回るプラス点を探して打ち出すしかありません。火葬場の煙突が見える関東地方の分譲地も、「3台止められる駐車場」を徹底的に宣伝して売れています。
本記事では、私が見てきた4つの現場の実例をもとに、建売の集客方法と来場客を成約につなげる接客を解説します。
建売住宅の集客方法は地域ニーズに合う強みの宣伝から
関東地方のある分譲地の話です。少し古い話ですが、私の手元には売れる前の現地を撮影したビデオがいまも保存してあります。
火葬場の煙突と建設中の高速道路を抱えた分譲地
この分譲地は、火葬場の煙突が見えることと、家のすぐ裏で高速道路を建設中であることの2つの問題を抱えていました。火葬場だけでもインパクトは大きいのに、2階の子供部屋から見下ろすと、ちょうど高速道路を作っている最中でした。
場所自体はいいところにありましたが、火葬場の煙突を見ると、ほとんどのお客さんが「ちょっとな……」と購入を断念しました。私もお客さんのその気持ちは理解できます。
「3台止められる駐車場」を徹底的に宣伝した
それでもこの分譲地は売れました。売れた理由は、3台止められる駐車場です。
分譲した住宅会社は開発前に地域のニーズを調べてあり、この地域には車を3台持っている家庭が多いことをつかんでいました。
条件に合う土地は当然人気になりますが、当時は3台止められる分譲地がなかなかありませんでした。
住宅会社はこの状況を踏まえ、「駐車場が3台分」という点を徹底的に宣伝してアピールしました。
お客さんは全員が火葬場と高速道路を気にしましたが、3台の車を止められるという強みがそのマイナス点を上回ったのです。地域の顧客の調べ方は住宅営業の探客方法で解説しています。
マイナス点のある分譲地の建売集客はプラス点で上回る
別の分譲地では、道路に問題がありました。分譲地の前は4m道路ですが、そこから南に伸びる道は3mに狭くなります。
4m道路が3mに狭くなる場所の大きな黄色い矢印
市は急に狭くなる道幅に注意を促すため、縦横30㎝×60㎝もある大きな黄色い矢印を立てています。この矢印が邪魔なのです。
矢印は敷地にかかっていませんが、敷地の端に車を止めようとバックで入ると、車体をこすりそうなくらいぎりぎりになります。
私も実際にレンタカーを借りて現地に行き、ミラーをぶつけました。
さらに、幅員が減るせいで右から走ってくる車がかなり見えにくい構造なのに、どういうわけか道路のミラーもありません。
こうした分譲地には、住宅営業としても頭を抱えてしまいます。少なくとも矢印と幅員減少の問題は、住む人にとってかなりのストレスになります。
マイナス50点にプラス80点を加算すればトータルではプラス
このような建売を売るときは、マイナス点をマイナス点として認めたうえで、それを大きく上回るプラス点を探して提案します。
マイナス点を抱える分譲地でお客さんの不安を証拠で消す進め方は、建売住宅の販売方法の事例で解説しています。
この分譲地の問題は道路ですが、小学校区は地域でも評判の学校で、治安面も極めて良好な場所として知られています。
徒歩圏に大型スーパーがあり、コンビニはもちろん、地元で有名な由緒ある神社まであります。
神社では夏と秋に大きなお祭りがあり、分譲地からは3分程度で行けます。
営業マンはこのようにプラス面をどんどん挙げていき、それに価値を見いだす人に営業を掛ければよいと私は考えています。分譲地の立地を初回接客でどう伝えるかは住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
来場客を成約につなげる建売現場の接客
建売現場での接客は、新築の住宅会社だけでなく不動産会社の営業も経験するものです。
「キッチンの高さが私には合わない!」と叫んだ奥さん
2021年6月6日、某県の建売現場で、奥さんが私の目の前でこう叫びました。
この建売現場は全部で8区画あり、残るは1区画でした。
営業はもちろん経営陣も早く売りたい案件で、売れてくれないと住宅会社は次の開発にも取り掛かりにくくなります。
私が午後2時に現場に着き、当番の若手女性営業と雑談をしていたところへ、30歳の中堅男性営業マンが新規のお客さんを連れてきました。リビングに入り、奥さんがキッチンの前に立った瞬間のことです。
「キッチンの高さが私には合わない!高すぎるよこれ!」
“叫んだ”は大げさな表現ではなく、奥さんは本当に叫んだのです(笑)。
奥さんの身長はざっと見たところ150cmを少し切れるかどうかで、小柄で華奢な体型でした。
一般的なキッチンの高さは85cmなので、150cm程度の身長の奥さんには高いのが当然で、私も傍から見て「これでは疲れちゃうよな……」とすぐに分かりました。
この場面から、住宅営業が準備すべきことが1つあります。
注文住宅でも同じですが、建売住宅を案内するときは、奥さんの身長が低めなら応酬話法を準備しておく必要があります。
低身長の奥さんが建売物件をたくさん見ているなら、どのキッチンの前でも「圧迫感がある。もっと低いキッチンってないのかな?」と感じていると想像できるからです。
案内の前に家族構成や趣味を聞き出し、物件の合う点を用意しておく方法は、建売の集客を契約につなげる接客で解説しています。
厚めのキッチンカーペットと厚めのスリッパで高さを稼ぐ
営業マンが厚めのキッチンカーペットと厚めのスリッパを用意しておけば、2つを組み合わせて3~4cmを稼げます。わずかな差ですが、奥さんが「随分違いますね」と言ってくれる可能性が出てきます。
「踏み台を設置したら契約してくれますか?」と切り返す
横に長い踏み台を付けるには社長の決裁が必要なので、営業マンはその場で断言できません。
それでも建売の場合は、できるかどうかは別にした仮定の話として、このトークを覚えておくと便利です。
いわゆるテストクロージングという話法です。
キッチンの高さに限らず、リビングに中途半端な壁や仕切りがあって、お客さんが「この壁がなければいいんだけどな」と言ったら、営業マンはすかさず「この壁を取ったら契約してくれますか?」と切り返します。
ところが、このときの中堅男性営業マンは、奥さんの「キッチンが高い」に「そうですね……」と返して終了しました(笑)。これではだめです。
臭いなど防げないトラブルが出た建売現場
同じ某県の建売現場では、私も困惑する出来事がありました。
「なんか臭いね?」と言われた建売現場
私はこの建売現場に4~5回足を運んでいますが、それまで一度も臭いを感じたことはありませんでした。ところがその日は、豚舎というとオーバーですが、それに近いような臭気がしました。
このときも別のお客さんが来ていて、ご主人が目の前で「なんか臭いね?」と口にしました。
私は外部の人間なので知らん顔をして明後日の方向を向いていましたが、困ったのは営業マンです。
「あ……たしかに臭いますね。でも、私もこのようなこと初めてなのですが」
私が営業でも、こう対応するしかありません。
このお客さんも決まりませんでしたが、後で営業マンたちに聞いても、全員が「そんな臭いを感じたことはありません」と口をそろえました。
これは完全な事故で、防ぎようがありませんでした。
夏の南風で養豚舎の臭いが届いた県の分譲地
私の現役時代にも、同じようなことがありました。県の分譲地で、開発したのは冬でしたが、分譲販売が佳境に入ったのは夏の入り口でした。
冬には全く気付かなかったのに、夏になると遠くにある養豚舎の影響か、微妙に臭うようになりました。
原因は風向きです。
分譲地の南に養豚舎があったので、北風が吹く冬は問題がなく、夏に南風が吹くようになって影響が出ました。
ただ、臭いは微妙といえば微妙な程度で、南風でも臭わない日もあったため、この分譲地は無事完売しました。
臭いのような周辺環境のほかに、土地探しのお客さんが気にする道路族などの近隣トラブルは、土地探しの近隣トラブル事例で解説しています。
建売の集客と成約を上げる現場の見直し方
私は23年間にわたって新築営業のコンサルティングを行っていますが、接客指導の基本は接客現場を見ることです。
以前は現場に張り付いてつかず離れずで観察していましたが、いまはビデオやカメラを通じてチェックする方法もあります。
見方は変わっても、やっていることは同じで、受注アップにはとにかく接客を見るのが一番の手法だと私は確信しています。
まとめ
建売住宅の集客では、マイナス点を隠さず認めたうえで、地域のニーズに合うプラス点を徹底的に打ち出します。火葬場の煙突が見える分譲地は3台止められる駐車場で、道路に問題のある分譲地は小学校区や治安、生活の便利さで、マイナス点を上回る価値を示せました。
集客でお客さんを呼べても、キッチンの高さへの不満に「そうですね……」で終わる接客では成約しません。営業マンの接客を現場で見て、物件ごとの切り返しを用意しておけば、残りの区画を売るための手が打てます。
ぜひ本記事の4つの現場の実例を参考に、売れ残っている区画のマイナス点と、それを上回るプラス点を書き出してください。



