土地なし客の決定率を上げるには?住宅営業のヒアリングと土地提案

住宅展示場で接客していると、来場するお客さんの7割程度は土地を探している人です。それなのに多くの住宅営業は「最近、土地を持っているお客さんになかなか当たらないな……」と心の中でつぶやき、土地なし客を外れだと受け止めています。
私は積水ハウス時代、先輩からも後輩からも「どうして土地なし客の決定率が高いの?」とよく聞かれました。
土地なし客の決定率は、初回のヒアリングで希望エリアの根拠と要望の優先順位を聞き出し、住んでからの暮らしまで説明できるかで決まります。
本記事では、私が現役時代から使い、コンサル先や研修先でも伝えている土地なし客へのヒアリングと土地提案の方法を解説します。
土地なし客を外れと受け止める住宅営業の心理
住宅会社は不動産業ではありません。
そのため、土地を探しているお客さんは、決まるときは早く決まりますが、土地が決まらなければいつまでも引っ張られる可能性があります。
住宅営業が土地なし客を外れだと受け止めてしまう心理は、私にも理解できます。
しかし、土地を探して住宅展示場に来るお客さんが多い傾向は、昔も今も大きく変わりません。住宅営業として成功できるかどうかは土地なし客の対応に左右される部分が大きいので、避けるのではなく決めきる手段を考えるべきだと私は考えています。
住宅営業が土地なし客のヒアリングで聞き漏らす希望エリアの根拠
私は現役時代、上司として部下の住宅営業の接客をよく見ていました。
今でも覚えているのは、土地を探しているお客さんに対する若手営業のヒアリングが非常に甘かったことで、この傾向は今でも全く変わりません。
若手営業は要望を聞くときに肝心なところを聞かず、上辺だけさらっと流してしまいます。
名古屋市東部を希望したお客さんとの会話
若手営業のヒアリングは、たとえば次のような会話です。
営業「ご希望の土地の条件は?」
客「名古屋市の東部がいいなと思っているのですが、できれば昭和区か名東区あたりですね。値段は安ければ安いほどいいのは当たり前ですけども、あとは可能な限り近くに買い物に便利な施設があることは、かなり強い要望かもしれません」
営業「なるほど分かりました」
さすがに簡略化しすぎました(笑)。実際の現場では若手営業もここからある程度は突っ込みますが、その突っ込み方が中途半端で問題があるのです。
昭和区・名東区を選んだ根拠を聞く
お客さん自身の主張が曖昧なケースは多く、私はそこをいちばん問題視しています。
このお客さんは昭和区か名東区を希望しましたが、その要望が確固たる意思から出たものかは怪しく、昭和区と隣接する天白区でもいいのかもしれません。
そのため、お客さんが場所の希望を話したときは、その根拠を必ず聞く癖を住宅営業につけてほしいと私は考えています。
昭和区や名東区は名古屋市内でも比較的人気が高いエリアで、その分だけ土地代も高くなります。
地下鉄は東山線や鶴舞線が東西に伸び、桜通線も縦に走っているので交通の便が良く、名古屋大学や名古屋市内有数の進学高校も点在しています。
さらに、トヨタ自動車の上層部などが住む山手地区もこの近辺に点在しています。
こうした事情から、確固たる理由があってこの2つのエリアを希望するお客さんもいますが、何となくのイメージで希望しているお客さんも相当数含まれるはずです。初対面であってもこの辺りを細かくヒアリングしておかないと、住宅営業は散々振り回された挙句、やっと見つけた昭和区の土地を持っていったところで、次のようにあっさり前の主張をひっくり返されます。
「やっぱり高いよね」「この前は昭和区って言ったけども、北区でもいいし東区でも便利なところであればいいかなって本当は思ってるんだよ」
こうした場面は頻繁に起こるので、住宅営業はかなり細かくヒアリングして、お客さんの要望を聞き取ってください。
初回面談で土地や時期とご予算、ご家族の状況を漏れなく聞き取るための書式は、住宅ヒアリングシートのテンプレートで解説しています。
土地の要望に優先順位をつけてもらう(積水ハウス時代の手法)
私は土地を探しているお客さんが大の得意で、その手法を今もコンサル先や研修先で住宅営業に伝えています。この考え方は、当時も今も問題なく通用します。
南向きとスーパーの近さのどちらを取るか聞く
私はお客さんが土地の条件を2つ挙げたときは、必ずその優先順位を確認していました。この順位付けが、土地を探すうえで大きな助けになりました。
要望に優先順位をつけてもらったあと、希望エリアの土地情報を地図で見せて「もっといい土地がある」を止める方法は、住宅営業の土地提案の進め方で解説しています。
たとえば、お客さんが南側に面した土地を希望しつつ、スーパーが近いことも極めて魅力的だと話したとします。
この場合、真逆の北側に面した土地でも、自転車で3分の場所に大型スーパーがあれば、お客さんは大いに悩みます。
ただし、お客さんに北側の土地を検討してもらうには住宅営業のフォローが要ります。
「北側に面した土地は劣ると誤解されていませんか?」という資料
南側がいいというのは多くのお客さんが口にする定番の希望で、その背景には北側の土地は暗くて寒いという先入観があります。
確かに北側は一般的に暗いかもしれませんが、明るさは間取りの取り方や庭の広さで大きく変わり、南側に家が建っているかどうかにも大きく左右されます。
私はこの辺りをお客さんにしっかり話していました。
そのために私が当時持っていたのが、「北側に面した土地は南側に面した土地よりも劣ると誤解されていませんか?」というようなタイトルの資料です。
細かい文言は忘れました。
10人に説明すると3〜4人が納得した
実際にお客さんへ説明すると、納得してくれる人が実に多いことが分かります。深く検討した結果として「南側に面した土地がいい」と言っているなら話は別ですが、ほとんどのお客さんは一般論としてそう思っているに過ぎません。
私の経験では、10人のお客さんに説明すると3〜4人に理解してもらえました。
半分まではなかなか届きませんでしたが、それでもかなり高い確率だと私は考えています。
お客さんから理解されるだけでなく、感心されたり感謝されたりしたことも随分ありました。
お客さんからすれば、根拠もなく南側の土地がいいと思って探していたところに私の話を聞き、対象となる土地が増えたわけです。
当初の希望どおり南側に面した土地があればその方がいいのでしょうが、その他の条件が満たされていれば、南向きという条件が外れてもおかしくはありません。
土地なし客に土地を紹介するまでの段取りは住宅営業の土地提案の進め方で解説しています。
住んでからの暮らしを想定して土地の利便性を説明する
私が現役時代に心がけていたのは、「自分がその土地を買うとしたら何が心配だろうか」を考えることです。とても簡単な発想ですが、住宅営業がこれを身につけるだけで土地なし客の決定率は上がります。
住宅営業がよくやる説明は、学校やスーパーまでの距離を一覧にまとめて見せることです。しかし、お客さんが実際に生活すれば、距離以外にも次のようなことが気にかかります。
- 夜の静けさ
- 周辺の治安
- 女の子がいる家庭なら、夜道に街灯があるか
- 家の隣に公園がある場合、夏場の夜に若者が集まって騒がないか(私であれば気にかけます)
この考え方を膨らませていけば、住宅営業はその土地をお客さんにどうアピールすればいいかも分かってきます。立地の説明の仕方は住宅営業の初回接客のコツでも解説しています。
通学路や通勤経路、治安といった暮らしの不安に地図や動画で答える方法は、土地なし客への土地提案の事例で解説しています。
住宅営業と不動産営業で土地の見方が違う理由
住宅営業の土地の紹介の仕方は、不動産会社の営業とはかなり違います。不動産営業は純粋に土地を売りに行きますが、住宅営業は建物を建ててどうなるかがまず気にかかるからです。
建売分譲地で不動産営業の案内を受けた体験談をもとにした両者の比較は、注文住宅の営業と不動産営業の違いで解説しています。
土地だけをシビアに見て判断するなら、不動産会社の営業に軍配が上がると私は思います。しかし、上物を建ててそこに住むことを想定した土地の見方では、住宅営業の方が上だと私は考えています。
このコラムは主に工務店の方が読んでいると思いますが、もし不動産会社の方が読んでいるなら、住宅営業的な発想を身につけてもらうと土地の販売力は間違いなく上がると、私は断言させていただきます。
まとめ
土地なし客の決定率は、希望エリアの根拠を聞くこと、要望に優先順位をつけてもらうこと、住んでからの暮らしまで想定して土地を説明することで上がります。北側の土地の資料で10人中3〜4人が納得したように、「南側に面した土地がいい」という希望の多くは一般論から出ています。
ぜひ本記事のヒアリングと土地の説明の方法を参考に、次に接客する土地なし客には希望エリアの根拠と要望の優先順位から聞いてください。



