あるフランチャイズの話を取り上げましょう。
フランチャイズは全国各地に加盟店があり、そこに在籍する営業社員の数は相当数に上ります。
これだけ多くの営業社員がいれば、全く成績の上がらない人もいれば飛び抜けた営業的才能を発揮する人もいます。
今回は飛び抜けたある男性営業マン(Fさん)をご紹介したいのですが、彼は住宅展示場での初回面談時に次回のアポイントを取る能力が極めて高いのです。
当然ですが、次回のアポイントを取る能力が高いということは、それに比例して受注成績も上がるということ。
特別な高等テクニックを使っているというわけではありませんが、アポイントを取るのが上手い営業は、お客さんの心理などを巧みに突いているという好事例です。
次アポが得意な住宅営業を取材300人中のNO1である男性営業の話は興味深いものがあった
「加盟店でアポイント取得のうまい営業マンはいませんか?」と本部で聞いたことがきっかけ
コンサルティング歴23年の中で、私は10社近いフランチャイズと関わりを持ってきました。
規模の大小はありますが、小規模ランチャイズでも15から20の加盟店が全国にありますし、大型フランチャイズになると全国47都道府県に全てあるような会社もあります。
比較的大きなフランチャイズでの話です
加盟店の営業研修を依頼され、その打ち合わせで本部に出向いた時の話です。
手持ちの情報やネタでいくらでも研修が組み立てられますが、可能な限り現場に即した研修内容にするため、私は展示場を事前に取材したり、興味深い営業社員がいれば事前に取材をすることを基本としています。
そんな流れで打ち合わせをしていたのですが、ふとした弾みに展示場接客において次回のアポイントを取るのが突出してうまい営業社員が地方のある県にいるとの情報を掴みました。
私は躊躇することなく取材希望を出し、話をつないでもらったところ、先方のFさんも快諾。
風光明媚な場所にある加盟店でしたが、そこにお邪魔して1時間ほど話を聞いてきました。
話を寸止めする(笑)
言葉にするとなかなか難しいのですが、Fさんは私の質問に対してまずはこう答えました。
あなたは展示場において話が弾むあまり、ついつい話したいことを全て話切ってしまうことが多くありませんか。
ところが、話を全て出し尽くしてしまうと、次のアポイントを取る口実がなくなってしまうのです。
Fさんはこの話をしてくれたのですが、実は全く同じ事を現役時代に私は行っていたのです。
私のトーク事例をご紹介しましょう。
森 「・・・こんな感じなんですよね。 このご説明をさせていただきますとほとんどの方が積水ハウスに強い興味を抱いてくれるんですよ」
お客様「確かに今のお話を伺うと興味が湧きますよね」
森 「ありがとうございます。それとこれに加えてさらに興味深い資料といいますか実験データの話がありまして、これをお聞きいただけると今の気持ちが確信に変わると思いますよ」
お客様「それはどんなデータですか?」
森 「申し訳ないんですがその資料が今すぐに出せないといことと、今1時間ぐらいお話をさせていただいたんですが私がすぐに出なくてはいけないんですよ。そこでいかがでしょうか、来週に弊社の現場見学会があるのですが・・・」
簡単にまとめ過ぎたのでわかりにくいかと思いますが、 商談の進め方としてはこのような感じです。
- 次回のアポイントを取ることを前提に話を進める
- お客さんの関心を引くような話をする
- お客さんの心を掴んだと確信したら話を最後までしないと決める
- 8割方話をしたところで「この続きはここでは話せない」と伝える
- 場所を変えるか日にちを改めるとこの続きを話すことができると伝える
大体こんな感じです。
「そんなやり方でよく成功したね」
いろんな人からこう言われました。
確かにその通りですよね。お客さんの心を掴んだのであればそのまま話を続ければいいかもしれません。
しかし私は、話の腰をわざわざおって商談を中断させることをよくやっていました。
リスクが高い話と言われれば「おっしゃる通り」と私は答えざるを得ませんが。
リスクは確かに高い
皆さんにこれを「真似しよう!」とは私からは言えません。
数ある成功手段の中の一つにすぎませんので。
しかし、Fさんも私も同じような発想で住宅展示場接客をしていたことは事実です。
もちろん、このやり方によって逃げるお客さんもいます。
しかし、それまでの自身の経験から、この手法をとったほうが成功確率が高いという結論に至ったわけです。
イベントが近々ある場合は完全に決め打ちで
展示場での接客日から2週間後にリアルの現場見学会があると仮定しましょう。
この状況で展示場接客をする場合、現場見学会へ誘うトークを接客の最後に必ず持ってくると決めるのです。
もちろん話が横道にそれて違う形でアポイントが取れるかもしれませんが、それは言うまでもなく OK です。
ヒノキの風呂を入れた現場見学会への誘導
再びFさんの話をしましょう。
ある時現場見学会を企画したらしいのですが、その現場のお風呂は実に豪華で檜風呂がはいっていたそうです。
その他は比較的普通のお宅だったらしいのですが、一点豪華主義でお風呂だけは徹底的にこだわったそうです。
このお宅で接客するにあたってFさんはこう考えました。
「檜のお風呂を入れるなんていうのはそうそうありませんよね。だから展示場で接客する時の最後の落としどころは“この檜風呂を絶対に見るべきです”を目標に寄せていったのです」
これも私と全く同じ考え方です。
現場見学会を近々設定していると、接客の最終段階で慌ててこの現場見学会に来ませんか?という振りをするのが一般的だと思います。
しかしFさんは違ったのです。
接客をしながら、一戸建ては心からリラックスできるような場所でなくてはならない、とお客さんに話を振っていったとのこと。
寝室、リビング、風呂などリラックスできる場所は人それぞれだと思いますが、人生においてお風呂がいかに大事かということを接客の途中で散りばめていったのです。
展示場のお風呂を接客する時は「これはTOTO製のお風呂なのですが、サイズも一坪タイプでごく一般的なものです。もちろんこれでも十分なんですけども、見学されるお客さんの多くはもう少し広くしたりとか、さらに豪華なものが欲しいなって皆さんおっしゃいますよね」
こんな前振りをしたらしいのですが、タイミングを見計らって檜風呂を設置した現場見学会の話へとつなげるわけです。
チラ見せが大事
「チラ見せっていうんですかね(笑)」
Fさんはこう表現していましたが、前述したように私も似たような発想を持って接客をしていました。
お客さんとの会話が弾むと、営業というのはついついテンションが上がって言わなくてもいいようなことまですべて洗いざらい吐いてしまうわけです。
お客さんは大満足でお腹いっぱいでしょう。
でも営業的な側面から考えると、営業としてもお客さんとしてもそこで一区切りついてしまうわけです。
営業は次アポの口実がなくなるので「プランを描いてみませんか?」とワンパターンの次回アポイント奪取トークになりがちです。
接客した日からしばらくした後にイベントがある場合は、次回アポイントのネタとして、そのイベントに誘致を図るということを接客前から決めて臨んでみたらいかがでしょうか。
もちろん、「次回イベントがあるので来ませんか」だけでは芸がありません。
前振りをしっかりした上で、 お客さんにとってそのイベントに足を運ぶことにメリットがあるという論理立てが必要なのです。