住宅ローンが通らない客の資金計画ヒアリング|住宅営業の実話2つ

お客さんが建物を気に入り、営業担当者のことも評価してくれているのに、住宅ローンの審査で跳ねられた時点で商談は終わります。住宅営業がどれほどやる気を出していても、ローンアウトになれば手も足も出ません。
今回紹介する2つの実話では、住宅営業が携帯電話の滞納や消費者金融の借入先、離婚歴まで具体的にお客さんから聞き出しています。そのうち名古屋の住宅営業は、細かい金融商品や税金のことで、現役の銀行員から質問の電話を受けるほどです。
本記事では、私が営業の真横で聞いた分譲地での接客と、名古屋の住宅営業Aさんへの取材をもとに、住宅ローンを通すための資金計画ヒアリングを解説します。
住宅営業がいちばん落ち込む住宅ローンのローンアウト
工務店であってもハウスメーカーであっても、住宅営業にとっていちばんがっかりするのは、お客さんのローンアウトです。
そのため住宅会社は、合法的な範囲である程度のアシストをすることになります。
ところが住宅会社によっては、グレーゾーンというよりほぼブラックのような手法を使って、強引にローンを通してしまう猛者もいるようです。
ローンアウトを防ぐために工務店が取れる基本戦略は、ローンアウトを防ぐ工務店の戦略で解説しています。
私は仕事柄いろいろな情報が耳に入るので、会社名が具体的に分からない範囲で、本当にあった2つの話を紹介します。
来場1分で住宅ローンの話から入る分譲地の住宅営業
車のローンで事前審査に落ちた客との会話
「車のローンですか?お任せください!」と聞くと車屋さんの話のようですが、これはある不動産会社の住宅営業が、常日頃からお客さんに使っているセールストークです。
金額や内容はぼかしますが、私が営業の真横で聞いたお客さんとの会話を再現します。
営業「資金計画はもうしましたか?」
客「資金計画というか、一度事前審査を出したんですが、アウトになっちゃったんですよね……」
営業「その原因ははっきりしてますか?」
客「おそらくなんですが、今抱えてる車のローンが原因じゃないかな……と感じています」
この会話は、ある分譲地でお客さんが建物を見学し始めて1分もしないうちに交わされたものです。
一般的な接客であれば、住宅営業は「いろいろご覧になっているのですか」「弊社のことは何でお知りになりましたか」「15畳のリビングがあるんですよ」といった話から入ります。
ところがこの不動産会社の営業は、それらを一切飛ばして、単刀直入にお金の話から切り込みました。
分譲地で建物から説明していく一般的な初回接客の流れは、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
この不動産会社は、名前を聞けば誰もが知っている全国区の住宅会社の販売代理店で、多数ある販売代理店の中でもトップの成績を取っています。しかし私は、このやり方は褒められたものではなく、やってはいけない営業手法だと考えています。
予算が厳しいお客さんが来ると最初から分かっている理由
住宅営業がお客さんの資金をヒアリングすること自体は、当然の行為です。とはいえ、お客さんはあくまで家を見に来ているので、一通り見学してもらってからお金の話をするのが普通で、来場してすぐに聞かれればお客さんも気分は良くないでしょう。
それでもこの不動産会社が大きな成果をあげているのには、はっきりした理由があります。
この不動産会社は元々かなり安い建売を販売しているので、予算的に厳しいお客さんが来ることは最初から分かっています。
加えてお客さんの側も、口コミ掲示板などの情報で「他の会社では無理でも、この会社なら何とかしてくれるかもしれない」と知ったうえで来場します。
そのため接客担当者は、建物の説明より先に「資金的に厳しい人だと思うから、そこから突いていこう」と考えるのです。
資金が厳しいお客さんには資金計画から進めるローコスト住宅の接客は、ローコスト住宅の売り方で解説しています。
営業にこう切り込まれたお客さんからは、ほぼ狙いどおりの答えが返ってきます。
「事前審査で跳ねられたんですよ」
「他社に行ったのですが無理だと言われ諦めました」
「ちょっといろいろと引っ掛かる可能性があって……」
自分の資金が厳しいと分かっているお客さんは思いのほか多く、この不動産会社はそれまでの経験から、そうしたお客さんの比率が高いことを知っています。なので営業は通常の接客をせず、いきなり資金計画の話から入っていきます。
携帯電話の滞納から聞き込むヒアリング
資金計画の話に入ると、営業はお客さんがあれこれ言う前に、携帯電話の滞納の有無からビシバシと聞き込みます。
「携帯電話の滞納とかありませんでしたか」
「携帯電話の滞納も住宅ローンに引っかかるので」
傍から見ていた私は、お客さんが怒るのではないかと思うほどの勢いだと感じましたが、お客さんの反応はまったく問題ありませんでした。
お客さん自身が事情を分かっているので、怒るどころか、目の前の営業に「なんとかしてもらえないだろうか?」という雰囲気になっていくのです。
銀行員が教えを請う名古屋の住宅営業Aさんの資金計画ヒアリング
次は別の住宅営業の話で、場所は名古屋市内とだけ書いておきます。この方は私が出版した単行本に載っていただいたのでお名前を出しても問題ないのですが、本に掲載できなかったきわどい話もあるので、ここではAさんとします。
Aさんは名古屋市内の小規模な設計事務所に勤める営業マンです。
私の友人から「むちゃくちゃ資金計画に詳しくて、どんな案件でも通してしまうって人がいるけど取材してみる?」と言われたのがきっかけで、私は市内の喫茶店でAさんにお会いしました。
Aさんは「銀行員が僕んところに電話かけてくるからね」と言い、細かい金融商品や税金のことまで、銀行員がAさんに教えを請う電話をかけてくるそうです。現役の銀行員が金融のことを聞いてくるほどの住宅営業に会ったのは、私にとってAさんが最初で最後でしょう。
「とにかく正直に話してちょうだいね」と最初に宣言する
「とにかく正直に話してちょうだいね」
Aさんは、お客さんにこう宣言するそうです。
私の推測では結構きつめに聞いているはずですが、Aさんは「お客さんのためにも厳しく聞くんだ」ときっぱり言いました。
私はある意味何も間違っていないと思いますし、Aさんに感謝しているお客さんがものすごく多いという話も、設計事務所の社長から聞いています。
消費者金融の社名から離婚歴まで聞く
住宅営業が「正直に話して」と言えば、お客さんからはこれまでの滞納や現在の借金の額といった話が出るのが普通でしょう。
しかしAさんは、消費者金融に借金がある場合はその会社名まで具体的にヒアリングし、過去5年間にそうした借り入れがあった場合も詳しく聞きます。
さらにAさんは、お客さんの離婚歴まで突っ込んで聞いていきます。
来場したお客さんから年収や自己資金を聞き出す方法は、来場客の年収と自己資金の聞き出し方で解説しています。
「離婚歴があるということは慰謝料を払ってるかもしれないし、その逆に養育費をもらってる可能性もあるからね」
私が見た接客では、たまたまお客さんご夫婦が共に初婚で離婚歴はありませんでした。それにしても、ここまでずけずけと聞いていくAさんの姿に、私は衝撃を覚えました。
金融機関ごとの住宅ローン審査基準の差を足と耳で集める
住宅ローンの審査基準は、銀行によって当然違います。
アパートローンの不正貸付が日本全体を揺るがす大問題になったことがあり、私はあの一件から抜け道的な住宅ローンの貸付は一切なくなったと思っていますが、それでも銀行間や金融機関の差は存在します。
住宅営業は、日頃から足と耳で金融機関の情報を集めておいてください。
集めた情報をもとにお客さんの借入額や返済比率を試算する書式は、資金計画書テンプレートで解説しています。
まとめ
住宅ローンが通らなければ、どんなに建物を気に入ってもらっても、どんなに営業担当者を評価してもらっても、住宅営業の努力は報われません。分譲地の不動産会社は来場1分で資金の話に切り込み、名古屋のAさんは消費者金融の社名から離婚歴まで聞き出して、ローンを通していました。
2つの実話には極端で、まっとうな路線から外れたやり方も含まれます。住宅営業は、正攻法で最大限お客さんのローンを通す手法を身につけて、マイホームというお客さんの夢をかなえるお手伝いをしてほしいと私は思います。
ぜひ本記事の資金計画ヒアリングの項目を参考に、次の商談からお客さんの住宅ローンを通す準備を始めてください。



