住宅営業の契約後に解約が多い原因3つと指導法|工務店の事例

私が営業指導に入っている地域の有力工務店に、毎月のように契約予定を上げてくるのに、契約がボロボロと落ちていく2年目の営業O君がいます。
O君の場合、原因は3つありました。商談に遅れても自分から連絡しないルーズさ、お客さんが話し終える前に答える応酬話法、断りやすい雰囲気です。
本記事では、契約後の解約が多い住宅営業の3つの特徴と、経営者や幹部社員ができる指導方法を解説します。
契約後の解約が続く住宅営業O君(地域の有力工務店の2年目)
私は住宅会社の営業指導を23年間続けていて、これだけやっていると実に様々な営業マンに出会います。コラムで紹介する人選でも「20年前のY君はユニークだったな」「7年前のHさんも強烈なキャラだったよな」と迷いましたが、今回は現在進行形の案件を選びました。
地域の有力工務店に入社して2年目のO君は、細身ですらっとした体型の、いつもニコニコしている好青年です。O君は毎月のように契約予定を上げてくるのですが、なぜか契約がボロボロと落ちていきます。
私もO君の接客を観察していますが、ベテランの先輩営業マンと比べても遜色はありません。
そのため、幹部社員たちも「あいつは何が悪いのかな?」とうなるばかりでした。
同じ2年目でも受注0件のまま契約に至らなかった営業の事例は、住宅営業で契約が取れない原因で解説しています。
住宅営業の契約後に解約が多い3つの原因
O君の受注が飛ぶ原因を、先に書きます。
商談に遅れても自分から連絡しないルーズさ
鷹揚(おうよう)とは、小さなことにはこだわらない様子だと広辞苑は解説しています。私はコンサルティングの過程では全く気付きませんでしたが、O君はよく言えば鷹揚で、少し意地悪に書けばルーズな性格です。
O君のルーズさがはっきり出たのは、住宅展示場で設計が同席する2回目の商談を行う予定の日でした。私はたまたまモニター越しに商談の様子を見ようと待っていましたが、約束の3時になってもO君は現れません。
私「O君から電話は入っていないの?」
設計「連絡ありません」
私がすぐに設計からO君の携帯に電話をさせると、O君からは驚くような返事がありました。
「10分くらい遅れますね」
営業マンが商談に多少遅れることは、不可抗力もあるので仕方がありません。
しかし問題は、O君が自分から遅れる旨の電話を入れなかったことに尽きます。にわかには信じがたい話ですが、つい最近実際にあった出来事です(笑)。
O君が鷹揚な性格なのかルーズな性格なのかは分かりませんが、細かいことを気にしない性格が失注原因の一つになっているのは間違いないと私は判断しています。電話が苦手な営業でもお客さんへの連絡を欠かさない方法は、住宅営業のお礼状の書き方で解説しています。
契約後に返信を早めるなど、お客さんとの接点を保つ対応は、紹介営業のコツと契約後の対応で解説しています。
お客さんの質問を論破しにいく応酬話法
お客さんの質問や疑問に当意即妙に即答する力は、営業マンにとって大きな武器で、私もそれを否定する気はさらさらありません。
ところが、受け答えや切り返しが速すぎる営業マンは、お客さんにとって嘘くさく見えてしまうこともあります。
声のトーンや話し方の癖も影響するので文章では伝えにくいのですが、O君からはなんとなくこの匂いがします。
お客さん「断熱材は……」
O君「アクアフォームといって、素人でも簡単に吹き付けが可能なくらいよくできたものです」
お客さん「素人というのは……」
O君「職人によって差が出ないという代物でして、とにかくよくできたものです。こちらをご覧ください。アクアフォームを説明したビデオがございますので」
O君には、まずお客さんが話し終える前に返答を始める癖があります。私もちょくちょく注意していますが、O君の癖はなかなか直りません。
O君の知識量は2年目とは思えないほどで、私でも知らないことをガンガン話し、特に水回りの設備機器の商品知識は舌を巻くレベルです。
豊富な知識も影響しているのでしょうが、O君の受け答えには、質問に答えるのではなく、ディベートのように相手の疑問を理論でつぶしにいく空気がにじみ出ています。
極端に言えば「どうだ。俺の答えに反論できないだろう。参ったか!」という感じです(笑)。
お客さんが断りやすい雰囲気
言うは易く行うは難し、という格言が、O君の3つ目の原因にはぴったり当てはまります。O君からは簡単に断れる雰囲気がにじみ出ていて、幹部社員も共通して指摘していますが、簡単に直せるものではありません。
私は、O君の応酬話法の能力の高さが災いし、O君自身の性格ともかみ合って、うまくいかなくなっていると考えています。契約したお客さんが営業のどんな接客を見て決めたのかは、契約客への取材から分かるハウスメーカー営業のトークで解説しています。
契約後の解約が多い営業マンへの幹部の指導
落ち着いた店長の折衝とビデオで見比べさせた
O君が勤める工務店の店長は安定した受注を誇っていて、ニコニコしながらも実にクールな折衝をします。店長はお客さんの話を最後までじっくり聞き、話し終わった後に一呼吸おいてから話すタイプでもあります。
私は店長の折衝シーンをビデオで撮影し、O君への研修資料として使いました。さらにO君の折衝シーンも撮影して本人に見せ、2本のビデオを使って話す速度や顔つきなどを検証しています。
もちろんビデオだけで解決するわけではありませんが、私はできる限りのことをやっています。
その甲斐もあってか、O君が以前よりよくなってきたのは間違いありません。
それでも、人を変えるのは本当に難しいことだと私はつくづく実感しています。
折衝を撮影して本人に見せる指導(積水ハウス時代の研修)
O君に限らず、不振営業マンへの対応策として有効なのは、その営業マンが折衝しているシーンを撮影して本人に見せることです。私はこの手法を20年前から続けていますが、源泉は積水ハウス時代の研修にあります。
ロープレを撮影して直後に見返す積水ハウスの研修
新卒のとき、私が営業マン役、先輩がお客さん役になってロープレを行いました。
ロープレそのものに変わった点はありませんでしたが、当時の私が驚いたのは、先輩たちがロープレのシーンをビデオで撮影していたことです。
他の営業マンも同じように撮影され、ロープレの直後に先輩たちが撮影したビデオを見ながら指導するのです。
先輩「自分の話している姿を見てみろ。お前の一番の欠点は何だと思うか?」
私はいろいろと答えた記憶がありますが、先輩がまず指摘したのは私の話すスピードでした。
先輩「お前は早口すぎる。もう少しゆっくり話せ。お前はわかっているかもしれんが、お客さんは初めて聞く話ばかりだから理解のスピードが違うんだよ」
「お前は早口すぎる」は今も講演で役立っている
先輩のこの指摘を、私は今でも強烈に覚えています。営業マンが自分の商談しているシーンを映像で客観的に見る機会など、普通はありません。
先輩の指摘は実に的を射たもので、私自身も、早口のせいで何を言っているのか分かりにくくなっているのだと心底納得しました。
私は今でも講演やセミナーで登壇しながら「あっ、ちょっと早口になっているな。少しペースを落とすかな」と自分を戒めて話す癖がついています。
まとめ
契約後の解約が多い住宅営業O君の原因は、商談に遅れても自分から連絡しないルーズさ、お客さんが話し終える前に答えて疑問をつぶしにいく応酬話法、断りやすい雰囲気の3つでした。O君のように接客がうまく商品知識が豊富でも、こうした癖があれば受注は落ちていきます。
私がO君の指導で行ったのは、店長の折衝と本人の折衝を撮影して見比べさせることです。私自身も、積水ハウス時代に撮影されたロープレで早口を指摘され、今もその癖に気をつけて話しています。
ぜひ本記事のO君の事例と撮影による指導法を参考に、契約が落ちていく営業マンの折衝を一度撮影して、本人と一緒に見てください。



