住宅営業は顧客宅訪問で何を見る?4社競合を制した庭の事例

4社の住宅営業が同じお客さんの自宅に招かれ、同じリビングから同じ50㎡のルーフバルコニーを眺めていました。そのバルコニーではキュウリやナス、ゴーヤが育ち、ほとんど畑のような状態でした。
4社のうち契約を取ったのは、その畑に着目し、庭の計画までプレゼンテーションに入れたハウスメーカーの営業マン、H君だけでした。H君は二世帯の大型案件を受注し、庭の工事も一緒に任されています。
本記事では、この事例をもとに、住宅営業が顧客宅訪問で何を見て、どう提案につなげるかを解説します。
顧客宅訪問で4社競合を制した住宅営業H君
お客さん取材が3度の飯よりも好きな私が、つい最近取材したのがこの案件です。H君が強豪に勝って受注できた要因は複数ありますが、私が紹介したいのは、お客さんの自宅にあった広いルーフバルコニーにまつわる要因です。
数字に異様な執念を持つ入社5年目の営業マン
H君はハウスメーカーに入社して5年目の住宅営業です。私は入社時からH君を知っていますが、会うたびに気になるのが彼の風貌で、線が細いというか本当に痩せているので、つい声をかけてしまいます。
「もう少し太った方がいいよ」
私はH君の健康が心配で仕方がないのですが、新卒の頃には気づかなかったH君の一面があります。H君は、数字に対して異常とも思える執念を持っているのです。
H君の執念の根底には、歩合給をたくさん欲しいという、住宅営業ならごく当たり前の考えがあります。
ただ、H君の場合はそれ以上に、競合では決して負けたくないという性格が大きく影響しているようです。
入社当初のH君はブルドーザー式の営業でガンガン押していましたが、地頭がいいのでしょう、すぐに提案型営業に切り替えました。
歩合給を付けない住宅会社の社長の話は、住宅営業コンサルが出会った社長の体験談で解説しています。
提案型営業に必要なヒアリングと観察の力
提案型営業とよく言われますが、レベルの高い提案をするには、お客さんの生活スタイルや要望を細心の注意で把握し、見抜く力が求められます。
私の分析では、H君は比較的早い時期にこの力を身につけました。
H君には、お客さんを観察するというか凝視するというか、何かを見抜く力があります。
もちろん、H君がお客さんを頭のてっぺんからつま先までじろじろ見るわけではありません。H君本人の話では、出で立ちもそれなりにチェックしつつ、乗っている車や鞄などの持ち物もさりげなく見ていて、お客さんの自宅を訪問したときはかなり細かくチェックするそうです。
住宅営業が顧客宅訪問で見た50㎡のルーフバルコニー
15階建て賃貸マンション最上階の住まい
このお客さんが住んでいたのは、古い15階建て賃貸マンションの最上階です。
そのお宅には50㎡の広さのルーフバルコニーがあり、同じ条件の物件はなかなかないであろうという代物でした。
お客さんも実に住み心地がいいと話していたそうで、その快適さが賃貸暮らしを長引かせていたようです。
ほとんど畑になっていたバルコニーでの会話
初回面談は住宅展示場で行い、2回目の折衝ではH君からお客さんに「次回はぜひお客さんのお宅に伺いたいのですが」と申し出て訪問しました。
H君はまずリビングに通され、そのリビングからは50㎡のルーフバルコニーがよく見えたそうです。
H君がリビングの椅子に腰掛けてすぐ、こんな会話がありました。
H君「バルコニーすごいですね!家庭菜園だと思いますけどほとんど畑じゃないですか(笑)」
奥様「このマンションのルーフバルコニーが凄く広くて気に入って借りたのですけども、気が付いたらキュウリやナスやゴーヤやらでもう畑になっちゃってますよ」
H君「一戸建てを建てたらお庭でガンガンできますね」
奥様「もちろんですよ。直植えと鉢植えでは野菜の育ち方も全然違いますからね。今からそれはワクワクしてますよ」
この会話で、H君は競合3社より1歩も2歩もリードしました。
家を建てるとなると、お客さんは普通、どんなキッチンにしようか、クロスをどうしようか、外壁はかっこいいのがいいな、とワクワクします。
しかし、このお客さんは建物の中と同じくらい庭を楽しみにしていて、そこにH君が触れたことが大きな加点材料になりました。
ガーデニングの知識がないから聞き役に徹する
訪問からしばらくは家庭菜園の話で持ちきりだったそうですが、やがてH君は奥さんと旦那さんに手招きされてバルコニーへ呼ばれ、そのまま野菜の育て方のレクチャーを受けることになりました。これでいいのです。
住宅展示場でバルコニーを案内するときの話題の選び方は、展示場のバルコニー接客のトーク例で解説しています。
H君にはガーデニングの知識も家庭菜園の知識も全くなく、ナスの育て方のコツや大きなゴーヤの育て方など知るよしもありません。
それでも、H君は知らないからこそ聞き役に徹することができました。
相手は家庭菜園のプロで、H君は何も知らない素人の青年なので、40代の奥さんにとっては、息子に近い年齢の若者に自分の大好きな話を滔々(とうとう)とできる、またとない機会になりました。
あなた自身に置き換えて、高校時代に甲子園に出場したと仮定してください。
野球が大好きなあなたの自宅に20代の住宅営業マンがやって来て、「野球がお好きなんですね」と話を振ってきたら、あなたは野球の話を嬉々として話すのではないでしょうか。
しかも住宅営業マンが興味を持って前のめりに聞いてくれれば、話に力が入りますし、何より楽しい時間になります。
展示場の接客と顧客宅訪問で手に入る情報の違い
H君の行動は、私がコンサルティングで住宅営業に伝えていることと全く同じで、私は安心しました。コロナという特殊な事情は考慮せざるを得ませんが、初回面談は仕方ないとしても、2回目以降のなるべく早い段階で顧客宅に出向いて折衝するのは、住宅営業にとって重要なノウハウです。
住宅展示場の接客でもお客さんの話を聞くことはできますが、お客さんの生活は全く見えず、営業マンはお客さんの自己申告を延々と聞くしかありません。一方で、営業マンが顧客宅に出向いて話をすれば、2次情報である自己申告に加えて、自分の目で直接見た1次情報が手に入り、この2つには天と地ほどの差があります。
住宅展示場での接客の実例は、住宅展示場の集客方法で解説しています。
庭の計画まで入れたプレゼンテーション
住宅営業がお客さんに図面を提案するとき、庭の提案まで行っている営業の方はどのくらいいるでしょうか。
ある程度はいると私は思いますが、差がつくのはその中身とレベルです。
建物だけでは寂しいので、なんとなく庭の絵も描いて出す住宅営業はいますが、その絵は飾りで、庭まで本気で受注しようとは考えていないでしょう。
お客さんの反応に合わせた庭の提案の進め方は、住宅営業の庭の提案の反応別トークで解説しています。
これに対してH君は、今回のお客さんが庭も真剣に考えていたので、親身になって庭の希望をヒアリングし、現実味のあるプランと見積もりを提案しました。その結果、H君は庭の工事も400万円程度の内容で受注できました。
H君は建物にプラスアルファの売り上げを得たわけですが、庭の受注はあくまで結果としての副産物です。お客さんにとって庭への関心がきわめて大きく、重要であることを見抜いたH君の力量が光った案件だと、私は評価しています。
まとめ
H君が4社競合を制した要因の一つは、2回目の折衝で顧客宅訪問を申し出て、畑のようになったルーフバルコニーという1次情報をつかんだことです。H君はガーデニングの知識がないまま聞き役に徹し、お客さんが庭を室内と同じくらい楽しみにしていることを見抜きました。
そのうえでH君は、飾りの庭の絵ではなく、希望をヒアリングした現実味のある庭のプランと見積もりを出し、二世帯の大型案件と庭の工事をまとめて受注しています。
ぜひ本記事のH君の事例を参考に、2回目以降の早い段階で顧客宅訪問を取り入れ、お客さんが暮らしの中で何を楽しんでいるかを見てください。



