新人住宅営業はなぜお金の質問に答えられない?ロープレ事例

新人住宅営業はなぜお金の質問に答えられない?ロープレ事例

住宅展示場を使ったロールプレイングで、私がお客さん役になって「年収500万円で毎月8万円の返済ってどう思います?」と聞きました。

新卒営業の答えは「そんなに問題ないと思いますよ」です。

不動産取得税の金額を聞いたときも、新卒営業は黙り込んでしまいました。

新人住宅営業がお金と家づくりの流れの質問に答えられない原因の1つは、上司や住宅会社が教える機会を作っていないことだと私は考えます。

本記事では、住宅会社のロープレで新人が詰まった質問と、新人研修で教えるべきお金と家づくりの流れの項目を解説します。

新人住宅営業がロープレで答えられなかった住宅ローンの質問

このコラムは、新人の住宅営業を指導していて気が付いたことの第2弾です。

前回は、新入社員が和室の知識やエレベーターのメンテナンスなどの基礎知識を知らなかった話でした。

エレベーターには年1回の保守点検があり、費用はだいたい5〜6万円というラインで問題ないと私は考えています。

しかし、この点についても新入社員13人の誰も答えられませんでした。

今回は、前回とは別の住宅会社で行ったロープレの事例を紹介します。

テーマはお金と家づくりの流れの2つです。

雑談を含めたロープレの進め方は、住宅営業ロープレの進め方で解説しています。

年収500万円で毎月8万円の返済をどう見るか

私 「年収500万円で毎月8万円、ボーナス30万円の返済ってどう思います?」

営業「なんとも言えませんが、そんなに問題ないと思いますよ」

返済負担比率を計算すると、(8万円×12か月+30万円×2回)÷500万円で31.2%になります。

私は、これはどう考えても生活が厳しくなる借入金だと判断します。

この程度の計算は暗算でもだいたいできるはずです。

それなのに、この新卒営業は根拠を持たないまま私に答えました。

ロープレだったのでよかったものの、実際のお客さんが相手なら不誠実きわまりない答えです。

同じ新卒営業に「100万円を30年借りたらいくら返すのか」と聞くと、すぐに答えが返ってきました。

この新卒営業は、返済額を出す仕組みは頭に入っています。

ところが、お客さんの年収と返済額から暮らしを考える会話になると、急に訳が分からなくなってしまうのです。

マンションを売って戸建てに住み替えたいという相談

私は別の新卒営業にも、次のような話を振ってみました。この新卒営業も、話が途中で詰まってしまいました。

私「6年前に分譲マンションを買って今住んでいるんですけど、それを売却して戸建てに住み替えたいんですよね。おたくではマンションの売買とかもしてもらえるんですか?」

営業「えっと……おそらくできると思います」

実に弱々しい答えです。

この新卒営業は、入社してから10か月の間に、住み替えの相談を受けたことがなかったのでしょう。

しかし私は、この件の責任も上司にあると考えます。

自社でマンションの売買を扱えるかどうかは、上司が新人に教えておくべき内容です。

上司が新人に資金計画を教えない背景と新人の育て方は、新人営業マンの育成と資金計画の課題で解説しています。

新人住宅営業が詰まった税金と諸費用の質問

住宅営業に必要なお金の知識は、住宅ローンだけではありません。

住宅営業の仕事に就いている以上、固定資産税や不動産取得税などの税金に加えて、司法書士などに支払う登記の費用も一通り頭に入っている必要があります。

この住宅会社のロープレでは、税金や諸費用の知識にも問題が浮き彫りになりました。

不動産取得税と水道の引き込み費用

私 「家を建てると不動産取得税がくるんでしたっけ?」

営業「そうですね、どうしてもそれは必要になります」

私 「私が欲しい家は35坪ぐらいのごくごく普通の家なのですけど、それだといくらぐらいになるんですか?」

営業「……」

私 「今の予定では年内ギリギリに引っ越したいんですが、いつを基準にして不動産取得税はかかるんですか?」

営業「……」

不動産取得税は基本中の基本の話です。

それにもかかわらず、この住宅会社の新卒営業はほぼ答えられませんでした。

資金計画の諸費用についても、次のようなやり取りになりました。

私 「資金計画にある諸費用ってなんですか?」

営業「建物本体価格だけでなく、上下水道を引いたりとか、その他もろもろの諸雑費だとお考えください」

私 「私が持っているこの土地ですけども、水道の本管は前の道路まで来ているんですが、そこから30mぐらい引っ張らなくちゃいけないんですよね。これは結構かかります?」

営業「そうですね……かなりかかるとは思いますが……」

もちろん、営業社員が曖昧なまま金額を言うのは避けなくてはなりません。ただ、水道の本管からの取り出しであれば、住宅営業はある程度の目安となる金額を算出できるはずです。

住宅ローン金利の見通しを聞かれたとき

私 「これから住宅ローンの金利は下がるのかな、それとも上がる傾向にあるのかな……どうなんだろう?」

営業「それはなんとも言えませんが、私は下がると思います」

私 「その理由をぜひ聞かせてほしいんだけど」

営業「非常に円高になっていることに加えて、世界の金利を見てもどんどん下がっている状況なので、今後の住宅ローン金利も下がると私は思います」

このやり取りに至っては、支離滅裂な答えと言っていいでしょう。ところが、この新卒営業は至って真剣な顔をして、私にこの答えを言ったのです。

不動産取得税や諸費用に答えられない新卒営業を育てる研修の組み方は、新卒住宅営業が資金計画を話せない理由で解説しています。

契約後の家づくりの流れが新人に分からない理由

家づくりの流れを学ぶ新人の住宅営業

ロープレで契約後の流れを聞いたらほぼ全滅だった

住宅営業は、ある程度業務を経験していけば家づくりの流れが分かるようになります。

しかし、住宅営業としてスタートした当初は、家づくりの流れがよく分かりません。

契約まではいいのですが、契約後の社内的な打ち合わせの流れや、建築確認申請のタイミング、銀行からどのタイミングでお金が入ってくるかなどがややこしいのです。

契約から引き渡しまでの手順と、時期ごとに必要なお金を1枚に書ける書式は、家づくりの流れ図テンプレートで解説しています。

私はロープレで、家づくりの流れについてもいろいろ聞きましたが、新卒営業の答えはほぼ全滅でした。

後で分かったことですが、この住宅会社は、家づくりの流れを新入社員に教える機会をまったく設けていませんでした。

この住宅会社は、それまでも仕事の中で自然に覚えさせる方針をとっていたので、今年の新卒も同じ状態になったのです。

私は、この手のことは座学で教えるべきだと考えます。

新卒研修全体の組み立ては、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。

私も「習うより慣れろ」で育った

私自身は「習うより慣れろ」で育ちました。ただ、私は当時から「こんな非効率なことをするのではなく、カリキュラムを作って座学で教えたら簡単に身につくのに」といつも思っていました。

これには、もちろん時代背景もあります。

当時は「24時間頑張れますか?」のテレビCMが大流行りした時代でした。

働き方改革など想像すらできない勤務形態だったので、営業ノウハウを教えてもらうことは甘えだと考えられていました。

ジョブローテーションで新人営業が工務を経験する意味

ロープレを行った住宅会社では、来年度からジョブローテーションを新卒に適用すると社長が決断しました。

住宅会社の新入社員は、通常、入社すると営業、設計、工務などそれぞれの部門に分かれて配属されます。

ジョブローテーションは、入社当初の3か月間に限って、どの職種の新入社員でもさまざまな仕事の現場を体験できるように回していく仕組みです。

住宅会社にとって、この3か月間は無駄になってしまいます。

それでも私は、その後の社員の成長を考えると大賛成です。

営業社員がほんの少しでも工務を経験すれば、部材がどのように流れるかがなんとなくつかめますし、現場の職人さんと顔つなぎができることもその後の仕事に大きく影響します。

ジョブローテーションは、住宅営業が家づくりの流れを早くつかむための手段の1つになります。

工務の経験に加えて、1年目の新人営業が取り組む研修の中身は、住宅営業の新人研修でやるべき5つで解説しています。

まとめ

住宅営業の仕事で、お金の話は本当に難しいと私は思います。

住宅営業を日々やっていると、2,000万円、3,000万円というお金の単位に慣れてしまい、大金の重みを忘れて妙な錯覚を起こしがちです。

しかし、お客さんにとっては一生に一度の家で、2,000万円や3,000万円は途方もないお金です。

それを30年ローンを組んで買うのですから、お客さんが真剣になるのも当然です。

そのお客さんが住宅展示場でたまたま話した住宅営業にお金の話を聞いて、「えっと……」と返されたら、とても信頼できません。

新入社員はそろそろ2年生になり、次の新卒が入ってくる時期を迎えます。

それまでまだ3か月あるので、新入社員にはこの間にがっつり勉強してほしいと思います。

ぜひ本記事のロープレの質問を参考に、自社の新人営業がお金と家づくりの流れをお客さんに説明できるか確かめてください。

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