住宅営業の育て方は現場経験から|日本一の営業も元現場監督

住宅営業の育て方は現場経験から|日本一の営業も元現場監督

ある大手ハウスメーカーは、新卒の営業社員を展示場に出す前に、現場監督補助として工事現場を経験させています。別の大手ハウスメーカーで売り上げ日本一になった営業マンも、もとは現場監督でした。

本記事では、現場を知る住宅営業が強い理由と、元現場監督・元大工が営業で成功した事例、小規模工務店でも取り入れられる現場経験のさせ方を解説します。

大手ハウスメーカーが新卒の住宅営業に現場経験をさせる仕組み

大手ハウスメーカーは、基本的に4年制大学を卒業した人を営業社員として採用します。大手ハウスメーカーは前年に内定を出し、4月には新卒社員が全員そろって入社式を迎えますが、ある大手ハウスメーカーでは、ここからの育て方が面白い仕組みになっています。

営業社員として採用したのですから、一定の営業研修を終えると各住宅展示場に配属され、そのまま営業活動に入るのが普通です。しかし、この大手ハウスメーカーは、新卒の営業社員を営業の現場に出す前に、工事現場を経験させます。

新卒社員がいきなり現場監督を務めることはできませんし、職人としてものづくりに加わることもできません。

そのため、新卒社員の立場はあくまで現場監督補助ですが、新卒社員にとっては現場の動きを直に見て、空気感をつかむ最高の機会になります。

工務店で新卒社員をどう受け入れて育てるかは、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。

現場を知る住宅営業が商談と工事で強い理由

職人と仲良くなると工事中のトラブルが減る

現場経験には、もう1つ大きなメリットがあります。営業社員が現場の職人さんと仲良くなっておくと、契約したお客さんの工事が始まってからも現場との意思疎通が取れるので、トラブルが起きにくくなります。

営業と現場の連携が欠けたときに現場で何が起きるかは、急成長する住宅会社の現場の混乱事例で解説しています。

営業社員は気になることがあればすぐ現場の大工さんに連絡できますし、大工さんの側も気になることがあれば、営業社員に電話一本で知らせてくれます。

「お客さんがちょっと怒っているけど大丈夫かい?」

大工さんからお客さんの紹介が出やすくなる

職人さんと仲が良い営業社員には、大工さんから紹介が出る確率もぐっと高まります。

兵庫県に本社がある住宅会社に、40歳でキャリア15年の店長がいます。

私とこの店長は10年の付き合いですが、店長はけたたましく明るい性格で、初対面でも5分あればお友達になれるという、実に羨ましい人です。

そんな人柄なので、店長にとって現場の大工さんは全員が飲み友達です。店長が現場に行ってこう頼むと、大工さんの返事はたちまちこうなります。

店長「契約予定客がちょっと無いんだよね~誰かいない?ちょっと助けてよ」

大工さん「そうかい、じゃ、ちょっと当たってみるよ」

工事現場の話ができると商談の幅が広がる

住宅営業はお客さんとの商談で図面を広げ、プランの説明や見積もりの提示をしますが、その流れの中で工事現場の話ができると、商談の幅がさらに広がります。現場を経験した営業社員は、雨の予報が出たときに資材をどう養生するかを話せますし、職人がどんな作業をしているかも真横で見ているので、リアリティを持ってお客さんに伝えられます。

お客さんの目には、営業社員はセールスマンと映ります。そこで営業社員が現場の話をリアルにすると、お客さんは「この人は現場のことをよく分かっているのだな」と感じ、営業社員が現場も知らずに売っているわけではないと伝わって、安心感につながります。

某大手ハウスメーカーで日本一になった営業は現場監督出身

もう引退していますが、ある大手ハウスメーカーで日本一の売り上げを誇った営業マンは、現場監督の出身でした。この営業マンは元々が現場監督ですから、現場についてはパーフェクトな知識と豊富な経験を持っていました。

現場の笑い話や困った話を商談に織り交ぜた

この営業マンはもちろんプランの話もできましたが、一般の営業がする折衝に加えて現場の話を豊富に絡められたので、話の質も幅も広がりました。

営業マンは現場で起きた笑い話や困った話も、商談の中にふんだんに織り交ぜていたそうです。

私は直接の面識がないので又聞きになりますが、この営業マンを知る同じ会社の同僚がそう話していました。

日本一の営業マンを相手にした競合で勝率を上げた資料の出し方は、住宅営業で競合に勝つ方法で解説しています。

素質を見抜いて「営業をやれ」と命じた販売会社の社長

ところが、この日本一の営業マンは、自分から希望して営業に転身したわけではありません。営業マンはある地方の販売会社に所属していて、その販売会社の社長が営業マンの素質を見抜いたのです。

営業マンは弁が立つうえに頭の回転が速いと聞いていますし、現場監督としての長いキャリアもありました。

販売会社の社長は営業マンを呼び出し、「営業をやれ」と業務命令を出しました。

唐突な辞令でしたが、営業マンは転身するとほぼロケットスタートで受注を取り始め、あっという間に日本一の座に上り詰めました。

この話で偉かったのは、素質を見抜いた社長だと私は思っています。

元大工が営業に転身して役員になった事例(本格木造のハウスメーカー)

今から20年ほど前、全国区のハウスメーカーから突然、私の事務所に電話が入りました。このハウスメーカーは、10年ほど前に社名を変えています。

「〇〇〇ハウスで社長をしております〇〇と申しますが、本社に来ていただくことは可能でしょうか。あなたのお話をぜひ伺いたいと思います」

私はさすがにびっくりしました。

私はハウスメーカーのことはもちろん知っていましたが、最初は同名の別会社ではないかと思ったからです。

一部上場の住宅会社の社長が直接電話を掛けてくるとは、私には想像できませんでした。

私はこのハウスメーカーで2年ほど営業研修などを担当しましたが、驚いたことに、ハウスメーカーの上層部に元大工さんがいました。元大工さんは大工から営業に転身して売りまくり、その勢いで役員にまでなった人です。

職人や異業種から住宅営業に移った人の育て方は、異業種からの中途社員の育て方で解説しています。

木の特性を語れる営業に木造好きのお客さんが集まる

役員の方も、当時、現場を知る営業の強さについて同じことを話していました。

「大工なので木材のこともわかるし見立てもできます。木の特性は知り尽くしているし、我々のような本格木造ハウスメーカーの場合は、こんな話をとことん聞いてくれるお客さんが多いのですよ」

このハウスメーカーに商談に来るお客さんは木造住宅が大好きな人が多いので、木造住宅が好きなお客さんに元大工の営業が対応すれば、お客さんの満足度が爆上がりするのは当然です。

「あなたにもう任せました」という空気になる

役員の方は、何度も私にこう話していました。

「現場の深い知識があると、お客さんの信頼度が全く違うんですよ。話をしていくうちに“あなたにもう任せました”という空気になるのが分かるのです。ですから、大工でも現場監督でも基礎職人でもいいのですが、営業に転身したら成功する人材は多数いると私は思っていますよ」

役員の方が熱く語っていた姿を、私は今でもはっきり覚えています。私が直接聞いたこの話も、営業が現場を知っているといかに有利かを物語っています。

小規模工務店でもできる住宅営業の現場経験

新卒の営業社員を営業に出す前に現場へ回す仕組みは、体力のある大企業なら実行できますが、少数精鋭の工務店では実現が難しいことも私は承知しています。それでも、経営者が「営業社員に現場の空気を吸わせる」という考え方を持っていれば、工務店は大企業のようにシステマチックにできなくても、営業社員の能力を上げられます。

私が新卒で3か月現場を経験したかった理由

私は今でも、新卒で入社してすぐ営業のフィールドに出るのではなく、3か月ほど現場を経験していれば、販売実績をもっと伸ばせたと確信しています。私は人と比べると弁の立つほうで、今から5分間のスピーチをしなさいと突然言われても、何かしら話題を引っ張ってきて話す自信があります。

私は営業をしていた当時も、商談ではいろいろな話を引っ張ってきて場を盛り上げていましたが、そこに現場の体験と知識があればどれだけ良かっただろうと思います。

営業と並行して現場の空気を吸わせる

小規模工務店でも、営業社員に営業をさせながら、並行して現場の空気を吸わせることはできると私は考えています。現場経験と合わせて新人に身に付けさせたい日々の行動は、住宅営業の新人育成の事例で解説しています。

まとめ

現場を知る住宅営業は、職人さんとの意思疎通で工事中のトラブルを減らし、大工さんから紹介を受け、商談では現場の話でお客さんに安心感を与えられます。現場監督出身で日本一になった営業マンも、大工から役員になった方も、現場の知識を商談の武器にしていました。

大企業のように営業に出す前の現場研修ができなくても、小規模工務店は営業と並行して、営業社員に現場の空気を吸わせることができます。

ぜひ本記事の事例を参考に、自社の営業社員を現場に通わせる段取りを考えてみてください。

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