ハウスメーカー女性営業の育て方|受注の半分を担う成功事例と失敗

年間2,000棟を超える大手住宅会社では、新卒の女性営業を2人ずつ同じ住宅展示場に配属した年に、半数近くが半年で退社しました。一方、従業員9人の東海地方の工務店では、社長から担当する客層を任された女性営業が、会社の受注の半分を担うまでに育っています。
本記事では、大手の失敗事例と小規模工務店の成功事例をもとに、ハウスメーカーや工務店が女性営業を育てるときの配属と任せ方を解説します。
ハウスメーカーの住宅営業を目指す女性から届いたDM(2021年10月)
育て方の話をする前に、ある女子大生の話をします。2021年10月、関西地方のある大学の女子大生から、ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)で私に連絡がありました。
△△ホームの勤務実態を知りたいという直球の質問
女子大生から届いたメッセージは、次のような内容でした。
「〇〇大学4年の〇〇と申します。住宅営業を強く希望しているのですが、△△ホームについての勤務実態や様々なことについて知りたいと考えております。つきましてはZOOMでお話を伺うことは可能でしょうか?」
私もさすがに驚きましたが、断る理由もないのでDMで返信し、さっそく話を聞きました。女子大生は関西で知名度の高い大学の建築学科に在籍する4年生で、体育会系クラブのキャプテンも務めているとのことでした。
「△△ホームの営業にどうしてもなりたいので、面接を受ける前に社風やその他の情報を是非知りたいと思い、お忙しいところ恐縮ですが、森さんにお願いした次第です」
女子大生はこんな調子で、熱く私に語りかけてきました。大げさな表現ではなく、本当に熱い女性でした。
設計ではなく住宅営業を選んだ建築学科の4年生
私と女子大生は、夜の10時から11時頃まで1時間ほど話しました。女子大生は住宅営業の世界が厳しいことをよく分かっていると話しており、帰宅時間が遅くなることも十分に理解していました。
「建築学科出身だから設計で入社するという気持ちはないわけ?」
私は話の途中で何度かこう確認しましたが、女子大生には設計に進む気がまったくなく、住宅営業一本に絞っていました。
その後の報告はないので、女子大生が△△ホームに入社したかどうかは分かりません。
ただ、私は第二志望以下の住宅メーカーも聞いていたので、女子大生がどこかのハウスメーカーか住宅会社に入ったことは確実です。
建築学科で学んだ女性が住宅営業を選ぶ理由は、建築学科出身の新卒女性営業の志望動機で解説しています。
女性営業を同じ住宅展示場に2人ずつ配属したハウスメーカーの失敗
年間2,000棟を超える大手住宅会社の話です。この住宅会社はある年、女性営業を積極的に採用する方針を打ち出し、面接の結果、数多くの女性営業が入社しました。
半年で新卒女性営業の半数近くが退社した配属
この住宅会社は住宅展示場の数が多いので、新卒社員は通常、ばらけるように配置します。
ところが当時の営業部長の判断で、女性営業は一人にせず最低二人を同じ場所に勤務させたほうがいいのではないか、という話になりました。
そこで住宅会社は、A展示場に新卒の女性を二人、B展示場にも新卒の女性を二人、という配属を行ったのです。
この配属は失敗に終わり、その年に入社した女性営業の半数近くが、半年で退社してしまいました。
本当の原因は最後まで分かりませんでしたが、社長を含めた幹部は、同期どうしがライバルでありながら良き仲間として支え合うと見込んでいました。
しかし現場では、まったく違う事態が起きていたのです。
現場から上がってきた分析では、同期の女性営業どうしが良きライバルではなく、互いに相手を蹴落とそうとする状態になっていました。
さらに、退社する女性営業が「私よりも〇〇さんを評価する理由がわからない」と、同期への評価を退社理由として店長に告げていました。
この住宅会社の女性の店長も、この二つをうまくいかなかった大きな原因として挙げていました。
翌年から変えた女性の採用基準と配属
この住宅会社は翌年から女性の採用基準を変え、配属でも同期の女性営業が同じ住宅展示場にならないようにしました。
しかし、見直した後もうまくいっていません。新卒女性営業の採用数はだんだん減り、住宅会社は毎年一定数の女性営業を採用しているものの、成績はぱっとせず、すべてが暗中模索の状態になっています。
受注の半分を女性営業が担う東海の小規模工務店

今度は成功例です。東海地方にある、従業員9人の小規模工務店の話です。
設計志望の女性を営業兼設計で採用した面接
この工務店の女性営業は大学の建築学科を卒業した後、設計を希望して就職活動をしていました。
女性は古民家住宅に強い関心を持っており、古民家に携われる住宅会社を探していましたが、大手には該当する会社がありませんでした。
そこで女性は、たまたまネットで見つけた小さな工務店の採用面接を受けたのです。
工務店は設計が足りていなかったのも事実ですが、社長一人で営業活動をしていたので、営業兼設計の人材を探していました。
「面接ではかなり気を使って話をしたよ」
社長はこう振り返っていました。
設計志望で来た女性に「住宅営業もやらないか?」と勧めるわけですから、社長が慎重になる気持ちはよく分かります。
面接でのやり取りはいろいろあったようですが、最終的に工務店は、設計をメイン業務としながら営業も同時に行う、という条件で女性を採用しました。
「娘が一人でもいれば彼女が担当する」役割分担
女性営業は入社から5年がたち、会社全体の受注の半分は女性営業の力によるものだと社長も認めるほどに成長しました。社長の育成方法がうまくいったのは事実ですが、育成方針はほぼ社長の思いつきだったそうです(笑)。
私「会社に対しての彼女の貢献度は多大じゃないですか?」
社長「今ではあの子がいなかったら会社やばいよね。今思えば入社当時に私が彼女に言ったことが功を奏したんだと思うよ。要は役割分担ってやつかな」
ここから社長は、役割分担について長々と私に話してくれました。お客さんを探す探客活動はあくまで社長の役目ですが、社長は家族構成によって、社長が営業を担当するか女性営業が担当するかをはっきり分けたそうです。
「お客さんに娘が一人でもいれば彼女が担当する」
私もこれを聞いたときは驚きましたが、社長には思いつきなりの考えがありました。
社長は、お客さんの心をつかむには、新しく建てる住宅が子どもの健やかな成長に役立つことを伝えなければならないと考えました。
そして、女の子の気持ちは同じ女性である女性営業のほうが理解できるはずで、両親もそれで納得するだろうと推論したのです。
女の子の話になると女性営業の説得力が上がる
社長の推論は理にかなっていると私は考えています。私は住宅展示場での接客や商談を数多く観察してきましたが、女性営業や女性設計士は、女のお子さんの話をするときに力を発揮します。
「大きくなると女の子はあっという間に服が増えるので、クローゼットは広めに設計した方が絶対いいですよ」
「私もそうでしたから」
女性営業がクローゼットの話をした後に添える「私もそうでしたから」の一言が、決めゼリフになります。男性営業でも通用する理屈ではありますが、女性営業が自分の体験談として話すと、説得力が十倍違います。
女性営業の強みと、出産・育児や体力などの問題点については、住宅営業で女性が売れないと言われる問題点と強みで解説しています。
「任せたぞ」で女性営業のやる気を引き出した社長の伝え方
東海の工務店で女性営業のやる気を引き出したのは、社長の「任せたぞ」という姿勢だったのでしょう。
「君に社運を託す」と伝えた工務店の社長
社長は実際、かなりあおり気味に女性営業へ話したそうです。
「君に社運を託す!」くらいの勢いで言ったと社長は笑っていましたが、女性営業はそれを意気に感じ、ものすごく真剣に受け止めたのでしょう。
新人に役割を任せて伸ばす育て方は、住宅営業の新人研修と役割の持たせ方で解説しています。
男性も女性も条件は同じではないか、と言われるかもしれません。それでも私の経験から判断すると、仕事を任せる言葉は女性のほうがより響くと感じています。
ユニクロ渋谷店の店長に女性を抜擢した柳井社長
私は、ファーストリテイリングの柳井社長がBS放送でインタビューに答えている場面を見たことがあります。当時、ユニクロの日本最大の店舗は渋谷店で、柳井社長は渋谷店の店長に女性を抜擢したと述べていました。
「プレッシャーを課すと女性は最大限の力を持って臨もうとします。私は確信があったので会社として最も重要な位置づけである渋谷店を彼女に任せたのです」
柳井社長がこう話していたのを、私ははっきり覚えています。業界は違いますが、住宅営業でも同じ理屈が通用すると私は考えています。
まとめ
年間2,000棟を超える大手住宅会社は、新卒の女性営業を2人ずつ同じ住宅展示場に配属し、半数近くが半年で辞める結果になりました。従業員9人の東海の工務店は、娘のいる家族を女性営業に任せ、「社運を託す」と伝えたことで、受注の半分を担う女性営業を育てました。
女性営業の育て方には、男性営業とは違うものがあると私は考えています。柳井社長が女性と男性の特性を考えて仕事を任せているように、住宅業界もその視点を忘れてはなりません。
ぜひ本記事の大手の失敗事例と工務店の成功事例を参考に、自社の女性営業の配属と担当の決め方を見直してください。


