新卒住宅営業の教育|上司に聞けない新入社員の事例と上司教育

新卒の住宅営業社員に「何かあったら全部上司に言いなさい」と指示しても、新入社員から質問や報告はなかなか上がってきません。
T工務店の新卒営業とのZoom面談でも、「店長が忙しそうにしているので聞きづらい」という声が上がりました。新卒教育で住宅会社が最初に手を打つべき相手は、質問を受ける側の上司です。
本記事では、新卒の住宅営業が上司に質問や同行依頼をできない理由と、新卒を迎える前に住宅会社が整えておく体系的な研修と上司教育を解説します。
新卒の住宅営業社員が上司に質問できない理由
住宅会社の経営者や上司は、「何かあったらすぐに言えよ」という指示を気楽に出します。しかし、この指示を出しただけで新入社員から報告が上がってくるとは考えないでください。
22歳の新入社員から50歳の社長には話しかけにくい
たとえば、あなたが50歳の工務店経営者だとします。
あなたは性格が明るく、自ら起業した経営者なのでガッツも行動力もあります。
人間は誰しも、自分が平気なことに対しては「このぐらい誰だってできるだろう」と考えてしまうものです。
そのため、社長が「何かあったらすぐに言えよ」と指示を出しても、新入社員が実際に話しに来るかどうかは本人の性格によりますし、そもそも社長と新入社員では年齢がまったく違います。22歳の若者が50歳の社長に思ったことを話すのは、想像以上に難しいことです。
私が住宅会社の新卒や若手の営業社員と話していると、次の2つの話が代表格としてよく出てきます。
「社長にはさすがに言いづらいですよね」
「所長が忙しそうにしているので聞きづらいです」
比較的小規模な工務店であれば相手は社長になり、住宅展示場を何店舗も構える規模の住宅会社であれば、相手は直属の上司である店長や所長になります。
T工務店のZoom面談で聞いた新卒営業の本音
T工務店は規模の大きな住宅会社で、私は2年前、4月に入社した新卒社員を1年間教育指導しました。梅雨に入った直後の6月に、私は営業社員全員とZoomで面談を行い、ある新卒営業とは次のような会話になりました。
森「まだわからないことが多いと思うけど、勉強は自分でちゃんとしている?」
新卒君「そうですね……勉強はしていますけど、実際に展示場で接客するとお客さんの質問に答えられなくて慌てることが多いです」
森「わからなかったことは、すぐ店長に聞いているよね?」
新卒君「聞きたいのですが、店長も忙しくてお店にいませんし、たまに帰ってきても忙しそうにしているので、なんとなく聞きづらいんですよね」
この新卒営業だけでなく、ほかの営業社員からも似たような声が複数上がりました。
しばらくしてから私が営業本部長に報告すると、営業本部長は大いに驚いた様子でした。
営業本部長は、新入社員が分からないことをすぐ店長に質問して、その場で解決しているものと当然のように考えていたからです。
受注が好調な住宅会社は特に注意が必要
私が工務店の経営者の立場でこの話を聞いたら、愕然とします。
先輩に質問しろと指示しているのに新卒営業が質問をサボっている、というケースなら経営者も想像がつきます。
ところが現場では、先輩に聞きづらいために質問できないというケースが頻発しています。
経営者や幹部社員は、この実態を頭に入れたうえで新入社員を細かく見てあげてください。特に注意してほしいのは、受注が絶好調で、猫の手も借りたいほど営業社員が走り回っている住宅会社です。
新卒住宅営業が先輩への同行依頼をためらう10月・11月
新卒の住宅営業がつまずくのは、質問だけでなく先輩社員への同行依頼も同じです。新入社員は経験も知識も乏しいので、展示場接客でアポイントを取るところまではできても、次回の折衝は先輩社員に立ち会ってもらわないと話になりません。
入社間もない時期の新入社員は、お客さんと具体的な商談をすることなど不可能なので、先輩がどんなに忙しくしていても声をかけて同行をお願いします。
ところが、入社して半年たった10月や11月ごろになると、新入社員もそれなりに折衝経験を積み、一通りのことはお客さんの前で話せるようになります。
そうなると新入社員は、本来なら先輩に同行を頼むべき案件でも、次のように判断してしまいます。
「先輩も忙しそうにしているし、なんだか声もかけづらいから、今回は自分一人でやってみよう」
私も新人のころ、こういう行動をよくとりました。上司からは「必ず同行依頼を俺にしろよ」と言われていましたが、頼みづらさに加えて「自分一人で行ってみたいな」という欲も出てきたのです。
先輩をつけずに新卒一人でやらせる方針の住宅会社であれば、それはそれでいいと私は思います。私が指摘しているのは、失注しないために力のある先輩の同行を会社が指示しているのに、新卒営業がその指示をないがしろにしてしまうケースです。
力のある先輩や上司がどの折衝から同席すべきかは、2回目の折衝からの営業同行で解説しています。
「先輩を見て盗め」が新卒の住宅営業教育で通用しない理由
新卒を迎える住宅会社が取り組むべきことは2つあり、1つは教えるべきことを体系的に教えること、もう1つは新入社員が気軽に質問できるように上司を教育することです。この節では前者について、私自身の新人時代とホリエモンの発言をもとに説明します。
「24時間戦えますか?」の時代に受けた缶詰研修
50歳以上の方であれば、昭和から平成に変わるころに「24時間戦えますか?」というキャッチコピーで一世を風靡した栄養ドリンクのコマーシャルを覚えているかと思います。
働き方改革が叫ばれる今の時代に、こんなコマーシャルを流すのは不可能でしょう(笑)。
私はまさにこの時代に住宅営業をしていて、当時の会社の指導方針は、基本的に先輩を見て盗んで覚えるというものでした。入社して1か月は曲がりなりにも缶詰研修がありましたが、研修内容はかなりずさんだった記憶しかありません。
1か月の缶詰研修のうち、私が「これは結構良かったな」と感じたコマは、鞄に何を入れるかという研修と、家相の基本の2つだけです。
講師役には各地の営業課長クラスの社員が来ていて、鞄の研修では、何を入れるかだけでなく、なぜそれが必要なのかまで丁寧に説明してくれました。
まだ営業の現場に出ていない私には三角スケールと言われても何のことか分かりませんでしたが、講師が使い方や使う場面を説明してくれる話がものすごく面白かったのです。
家相や風水の研修も、私は時間を忘れるぐらい集中して聴いていました。裏鬼門・表鬼門といった言葉やその歴史的な由来はすべて初めて聞く話でしたし、講師が「自分が担当したお客さんで、家相や風水に凝りまくった人がいてな」と実体験を面白おかしく話してくれたことも、私の心をつかんだのだと思います。
ホリエモンの寿司職人発言に9割賛同する理由
ホリエモン(堀江貴文さん)がTwitterで次のようにつぶやき、炎上したことがありました。
「寿司屋で10年も修行するのはナンセンスだ。ちゃんと技術を教えてあげればもっと早く習得できるはず」
この発言には「職人をなめるな」「何にも知らないくせに」「なんて失礼な男だ」「偉そうに言うんだったらお前がやってみろ」といった批判が集まり、大炎上しました。しかし、私はホリエモンの意見に9割賛同します。
寿司屋に限らず、教えるべきことを体系的に教えたほうが、新人が技術を習得するスピードは圧倒的に早く、新人本人も嫌気がさしません。
そして何より、体系的に教えれば、新人がお客さんに迷惑をかけずに済みます。
住宅営業を「習うより慣れろ」方式で育てると、勘のいい新人はどんどん伸びますが、勘の鈍い新人は取り残されます。
カタログとホームページを毎月テストし、ロープレで口に出させる体系的な教え方は、新卒住宅営業の基本知識の教育で解説しています。
「それが営業ってもんだろ」という声も聞こえてきそうですが、お客さんは担当の営業を選べません。
たまたま接客に出た営業社員が担当者になるわけですから、お客さんから見れば、住宅会社にきちんと教育してもらい、どの営業社員に当たっても過不足ない体制にしてほしいと考えるのが普通です。
新卒研修全体の組み立て方は住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
住宅会社が新卒入社前に行う上司教育(管理職研修)
新入社員が気軽に上司に質問できるようにするための上司教育は、いわゆる管理職研修にあたります。外部の研修会社を使っても、社長が陣頭指揮をとる社内研修でもかまいませんが、私は新卒が入社する前にこの体制を整えておくことを勧めます。
新卒の入社前に経営者が守るべき面接での約束や研修日程の注意点は、住宅営業の残業と働き方改革後の注意点で解説しています。
新入社員に自主性を持たせ、様々な企画を任せる教育はイベント企画で進める新人営業の育成で解説しています。
まとめ
新卒の住宅営業社員は、上司が忙しそうにしているだけで質問ができなくなり、入社半年を過ぎると先輩への同行依頼もためらうようになります。経営者や幹部社員が「何かあったら言え」と指示したつもりでも、22歳の新入社員にとってその一言はハードルが高いものです。
新卒を迎える住宅会社は、「先輩を見て盗め」ではなく教えるべきことを体系的に教え、そのうえで新入社員が気軽に質問できるよう上司を教育しておく必要があります。
ぜひ本記事のT工務店の事例を参考に、新卒を迎える前に自社の上司教育の体制を見直してください。



