ハウスメーカー営業の歩合給はいつ払う?悪徳住宅会社の事例

商談が怪しくなった住宅営業が、お客さんから「3月に入居しないと困るんですが」と迫られます。
住宅営業は間に合わないと分かっていながら、「何としてでも間に合わせます!」と答えてしまいます。
その裏には、「来月の歩合給がなくなる」という焦りがあります。
ハウスメーカーの住宅営業の歩合給は、支給のタイミングによってトラブルの起きやすさが変わります。
私が在籍した積水ハウスでは、歩合給が契約時・上棟時・引き渡し時の3回に分けて支給されました。
一方、トラブルを起こしがちな住宅会社は契約時に一括で払うケースが多く、私が内部の話を聞いたRホームもこの形でした。
本記事では、住宅営業の歩合給がトラブルを生む理由と支給の仕組み、Rホームの事例を解説します。
ハウスメーカーの住宅営業で歩合給がトラブルを生む理由
住宅業界特有の現象ですが、住宅営業の契約歩合給が高い住宅会社ほど、お客さんとのトラブルも増える傾向にあります。ただ、住宅営業の高い歩合給を問題にすると、決まって不動産営業を引き合いに出す意見が出てきます。
「それを言うなら不動産営業マンの歩合給もとんでもなく高いんだが」
確かにそのとおりで、億単位の土地売買を成立させれば、不動産営業にはかなりの額が入るでしょう。それでも、土地の売買を行う不動産営業と新築の住宅営業を比べると、トラブルになりやすい要因は圧倒的に住宅営業のほうに多くあります。

完成品が目の前にない新築住宅は営業とお客さんの理解がずれる
新築住宅の商談では、目の前に完成品がありません。お客さんにとっては初めて買うものでもあるので、お客さん自身も何が正解か分からないまま商談を進めることになります。
住宅会社の営業社員は仕事として商品を理解していますが、営業社員の理解度とお客さんの理解度が違うことを認識していません。このずれが、トラブルの出発点になります。
「来月の歩合給がなくなる」という焦りが無理な約束を生む
新築住宅の建築請負契約が成立すれば、住宅営業に歩合給が発生します。
そのため、お客さんとの商談が怪しくなると、住宅営業には「何とかして商談を成立させないと来月の歩合給がなくなる!」という焦りが生じ、この焦りが無理な約束につながります。
契約の成立と同時に歩合給が出る仕組みがどんな問題を招くかは、住宅営業の歩合給を契約時に払う危険で解説しています。
客 「引き渡しは年度末の3月には何とかなりますか?」
営業「そうですね・・・3月にはなんとか大丈夫だと思います・・・」
客 「曖昧では困ります。3月に入居しないと困るんですが」
営業「はい!何としてでも間に合わせます!」
この住宅営業の答え方は、正常化バイアスと呼ばれる心理の典型です。
人間は誰しも悪いことを直視したくないもので、住宅営業は3月の引き渡しが95%不可能だと把握しているのに、残りの5%にかけてしまいます。
こんなことをしていては、トラブルが起きるのも当然です。
住宅営業の歩合給は支給のタイミングで変わる(積水ハウス時代の3回払い)
住宅営業の歩合給がトラブルを生むもう一つの理由は、住宅会社が歩合給をいつ支給するかにあります。この点も、不動産業界とは違うところかもしれません。
私が在籍していた当時の積水ハウスでは、営業の歩合給が契約時、上棟時、引き渡し時の3回に分けて支給されました。歩合給が3つに分かれていると、営業社員は引き渡しまでお客さんの面倒を見ないと、歩合給を全額受け取れません。
積水ハウスの営業がほかの住宅会社とどこで違うのかは、積水ハウスの営業研修と商談の強さで解説しています。
ところが、トラブルを起こしがちな住宅会社では、歩合給が契約時に一括で支払われるケースが多々あります。
契約時に全額が支給されれば、引き渡しが遅れても営業社員の収入は変わらないので、営業社員には途中で起きそうなトラブルが目に入らなくなります。
営業社員にしてみれば、とりあえず適当なことを言ってお客さんに契約書へ印鑑を押させれば、自分の収入は確保されるわけです。
この契約時一括の支給形態が、トラブルを作る大きな原因の一つです。実際に、Rホームの営業社員もこの支給形態でした。
歩合給を契約時に一括で払う悪徳住宅会社Rホームの手口
都道府県名も地域も書けないため、ここではこの住宅会社をRホームと呼んでおきます。
悪徳住宅会社といっても、警察に捕まるような詐欺の住宅会社ではありません。
正確には、普通の感覚からしたら悪徳住宅会社と言われても仕方がない住宅会社です。
私はRホームのひどさを以前から知っていました。
たまたまRホームと契約したお客さんなどとの接点があり、内部の情報を詳しく聞くことができたのですが、聞けば聞くほどひどい会社です。
住宅業界と不動産業界には、Rホームのように強引な会社が存在します。
私が直接知っているだけでも十指では収まりきらない社数があり、中にはその地域でかなりの知名度を持つ住宅会社すらあります。
お客さんの見極めは接客内容の点数で決める
Rホームの特徴は、お客さんの取捨選択のスピードにあり、営業的に言えば上手いの一言です。
Rホームのベテランの営業社員は、追客を続けるかどうかを自分の判断で決めます。
若手の営業社員にはきっちりしたマニュアルがあり、接客内容を点数化して、一定の点数に満たないお客さんの追客を直ちにやめ、次のお客さんを追います。
Rホームの営業社員は、お客さんに家をすぐに建てる気があるかどうかをストレートに聞きます。
まだ先とか検討中と答えたお客さんは、その場で切ります。
一般の住宅会社では営業社員が追客を続けますが、Rホームのような住宅会社はその追客を経費倒れと考えます。
やるかやらないか分からないお客さんを追うより、すぐにやるお客さんを探したほうが効率がよいという判断です。
この手法自体は悪徳でも何でもありません。
ローコスト住宅で有名な住宅フランチャイズのある加盟店は、この手法を徹底することで効率的な営業を確立しています。
初回接客でお客さんの状況をどう聞き出すかは、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
仮契約の後は恫喝まがいのやり方で図面を確定する
Rホームの営業方針は、とにかくお客さんに仮契約を急がせることです。とはいえ、某有名大手ハウスメーカーもこの手法を採用しているので、仮契約を急ぐことだけで悪徳と決めつけるわけにはいきません。
Rホームのひどさは、仮契約が終わった後の対応にあります。
Rホームの営業社員は、契約を迫るときには「ひとまずここで決めていただいて、ここからより深い打ち合わせを進めていきましょう」といったニュアンスで話を進めるそうです。
ところが、お客さんが仮契約をしてしまうと、Rホームはその後、半分恫喝まがいのやり方で図面を確定していくといいます。
私は「恫喝まがい」の場面を実際に見たわけではありませんが、話を聞く限り、Rホームの担当者とお客さんの間ではこんな会話が交わされるようです。
業者「クロスの選定やコンセントの位置の件ですが、私たちプロから見ると、〇〇のパターンでやるのが一番いいと思うんですよ」
客 「確かにこれはこれでいいかもしれませんが、一つ一つサンプルなどを見せていただいて決めていくという話を営業さんから聞いてるんですが・・・」
業者「確かにそうですけども、プロの言うことを聞いたほうが結果的に良い物ができますよ。これでいきましょうよ」
言葉のトーンや雰囲気で印象は随分と変わりますが、Rホームの担当者が言っているのは「素人がぐちゃぐちゃ言うよりもプロに任せとけ!」ということです。
業者の本音は、いったん契約を取れば1分でも早く仕様の打ち合わせを済ませたいというものです。
業者にとっては、内容を固めて事務処理を進め、一刻も早く着工して引き渡すのが一番都合のいい流れになります。
アフターサービスの点検予定を契約書に書かない
Rホームのアフターサービスも、悪徳住宅会社そのものだそうです。
私が一番驚いたのは、引き渡し後の定期訪問の予定がぐちゃぐちゃだという点です。
Rホームも一般的な住宅会社のように、一ヶ月点検、三ヶ月点検といったルールは決めているらしいのですが、契約書などには一切書いていません。
Rホームの営業社員があくまで「一般論として」お客さんに説明するだけだといい、その説明はこんな言い方だそうです。
「アフターサービスですけども、一ヶ月ぐらい・・・三か月ぐらい・・・といった形で間を切らさずにしっかりとフォローさせていただきますのでご安心ください」
私は弁護士ではないので法的な問題は分かりませんが、この説明のニュアンスはかなり微妙だと思います。
営業社員は「一ヶ月点検と三ヶ月点検を行います」とは言っていません。
一ヶ月や三ヶ月と限定せず、「一ヶ月ぐらい」「三か月ぐらい」「間を切らさずに」とぼかしているのは、何ともインチキくさい表現です。
この言い方なら、たとえ一年にわたってアフターサービスに行かなくても、Rホームの営業社員は文書にして約束したわけではないとごまかせます。よくこんなやり方で大問題にならないものだと私は不思議に感じますが、現実にはこのやり方がまかり通っていることに驚きました。
引き渡し後の定期点検を外部に任せる場合の注意点は、住宅アフターサービス外注化の注意点で解説しています。
まとめ
ハウスメーカーの住宅営業の契約歩合給が高い住宅会社ほど、トラブルも増える傾向にあります。
契約時に一括で払う仕組みでは、引き渡しまでに起きるトラブルが営業社員の目に入らなくなります。
私が在籍した積水ハウスは3回払いでしたが、契約時一括払いのRホームでは、仮契約後の恫喝まがいの打ち合わせや、点検の約束を文書にしないアフターサービスがまかり通っていました。
まともな住宅会社だけの世の中にするよう、住宅業界のみんなで力を合わせる必要があります。
ぜひ本記事のRホームの事例と積水ハウス時代の3回払いを参考に、自社の歩合給の制度や転職先の支給条件を見直してください。



