大手ハウスメーカーとの競合に勝つ方法|工務店営業の逆転事例

工務店の住宅営業が5社競合を勝ち抜いて最終2社に残っても、もう1社が全国大手のハウスメーカーなら、知名度も信頼度もアフターサービスの仕組みも相手のほうが上です。
東京の工務店で住宅営業をしているC子さんは、大手ハウスメーカーB社との競合で、B社が優る点を地域の数字に置き換えて逆転受注しました。C子さんは施主アンケートで地域での認知度64%を示し、B社と内容に大差がないと伝えたうえで、価格が250万円安いことを際立たせました。
本記事では、C子さんへの取材をもとに、大手ハウスメーカーとの競合に勝つための資料づくりと訴求の進め方を解説します。
工務店が大手ハウスメーカーとの競合に勝てる理由
住宅業界は特殊な業界で、従業員が1万人を超える大手ハウスメーカーに対して、社員数5名の小規模工務店が対等に渡り合える土壌があります。工務店の住宅営業でも、工夫をすれば大手を食えます。
C子さんは喜怒哀楽をあまり表に出さない人で、本人に聞くと次のように笑っていました。
「昔からよくそれを言われるのですよね(笑) でも気づいたら工務店に就職して住宅営業をやっていました」
分析型のC子さんが、競合相手の大手ハウスメーカーを徹底的に研究し、土俵際で見事にうっちゃりを決めたのが今回の事例です。
競合の営業トークを客役で調べ、仕様の違いごとに反論を準備するやり方は、分譲地の競合物件への対策で解説しています。
C子さんが大手ハウスメーカーB社と競合した案件の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 競合先 | 全国大手ハウスメーカーB社 |
| 自社 | 小規模な有限会社の工務店 |
| 競合の経過 | 当初は5社競合、最終的に2社に絞り込まれた |
| 価格 | 自社のほうが250万円ほど安い |
| 相手の営業 | 40代の女性 |
| C子さん | 20代半ばの女性 |
条件を絞り込むと、案件の要点は、有限会社の工務店と全国大手という規模の差と、250万円の価格差の2つです。相手の営業も年代は違うものの同じ女性なので、性別の点は考慮しなくてよいと私は考えます。
「競合ってある意味簡単だと思いませんか?」というC子さんの営業理論
C子さんは私の取材で、こう言い切りました。
「競合ってある意味簡単だと思いませんか?」
C子さんの営業理論は明快で、相手が自社より優っている点を埋める手段を考え抜き、自社が優っている点は徹底的に訴求するというものです。言われてみれば当然の理屈ですが、実際にこの発想で動いている住宅営業の社員は少ないと言わざるを得ません。
工務店営業がハウスメーカーとの競合で最初に洗い出した相手の強み
C子さんが競合対策で最初に行ったのは、B社が自社より優っている点を考えることでした。
B社と有限会社の工務店では知名度に圧倒的な差があり、知名度に伴う信頼度も圧倒的にB社が上です。
アフターサービスについても、ハウスメーカーであるB社にはきっちりとした仕組みが決まっています。
C子さんはこの状況で、次のように考えました。
「一般的な知名度はB社に勝てるわけがありません。この差はひっくり返しようがないのですが、高い知名度に対してこちらが勝てるのは何かと考えたところ、それは地域で親しまれているとか、その地域で〇〇年仕事をしているとか、もしくは顧客満足度の高さなどに置き換えればよいのです」
私はC子さんにじっくり話を聞いてこの考え方を理解できたので、私の言葉で補足します。
B社の知名度に対して、有限会社の工務店はどう頑張っても勝てませんが、この大差は全国規模で比べているからつく差です。
極端な話をすると、工務店の本社を中心に半径500m以内での知名度で比べれば、全国大手ハウスメーカーと比べてもそれほど遜色はありません。
C子さんは知名度のほかにも、デザイン力の差や、ハウスメーカーならではのシステム化されたアフターサービス体制にどう勝つかを考えました。地域での認知の広げ方は住宅営業の探客方法で解説しています。
大手との知名度の差は地域の認知度64%で埋める
創業45年・累計450棟の施主に聞いた認知度アンケート
C子さんは取材の場で、ある資料を見せてくれました。
C子さんの工務店は創業45年で、年間10棟ペースで新築を地域に根付きながら建ててきました。
単純計算で累計450棟の実績になり、工務店はそのほぼすべての施主にアンケートをとったそうです。
【新築をご検討した時点で弊社のことをご存知でしたか?】
工務店はこの質問で、施主が社名を知っていたかどうかの認知度を調べました。
その結果、有効回答数250件のうち160件の施主が、検討を始める前から社名だけは知っていたと答えています。
地域は限られるものの、工務店の知名度は64%に及んだことになります。
もちろん競合相手のハウスメーカーはこの知名度を上回るはずですが、超大企業と有限会社の比較で考えれば、差はさほどないと言えます。
C子さんはこのアンケート結果を資料として自分のタブレットに収め、相手がハウスメーカーのときは特にこの資料を使いました。
C子さんは地元で45年続いていることと、地域での認知度が64%あることを示し、「弊社は地域ではよく知られた会社です」とお客さんにアピールしたそうです。
OB施主との付き合い方は工務店がOB施主からリフォームを受注する方法で解説しています。
工務店を知らなかった夫婦が資料を見て納得した反応
C子さんが今回契約したお客さんは、本社から3キロほど離れた地域の賃貸マンションに住んでいた夫婦でした。夫婦は工務店の存在はもちろん、社名すらまったく聞いたことがなかったそうです。
ところが、C子さんがこの資料を見せると、ご主人も奥さんも納得した顔でこう答えたといいます。
「私たちは知らなかったですが、地元でしっかりとやられている会社なのですね」
顧客満足度を項目別の円グラフで見せる
工務店のアンケートの数はB社にかなわないはずですが、お客さんが満足した割合は、分母が違ってもある程度は比較できると私は考えます。C子さんは知名度に続き、顧客満足度も数値で出していました。
お客様の声を2〜3組載せるだけの工務店との違い
小規模工務店のホームページには、お客様の声を載せている例が多くあります。よくあるのは2〜3組のお施主さんの声を拾ったもので、その内容は「よく話を聞いてくれて満足しました」という当たり障りのないものばかりです。
C子さんが持っていたデータは違いました。
社歴が45年あることが有利に働いているのは事実ですが、工務店は質問項目を細かく分け、お施主さん全員に聞いています。
C子さんはその結果を円グラフにして、お客さんに提示していました。
「建築後の対応」に不満12%という数字の受け止められ方
調査項目の1つに、次の質問がありました。
【建築後の対応はどうでしたか?】
この質問に対して、「不満がある」「やや不満」と答えた施主が全体の12%いました。
私はこの数字を実に絶妙だと感じています。
もし50%程度がこの範囲に入るなら、お客さんはこの工務店に仕事を頼もうとはまず思わないでしょうし、1%なら「この調査は怪しい」と思われても仕方がありません。
12%という数字は微妙ながら、お客さんがこの会社を信頼してよい許容範囲だと私は感じました。お客さんにとって気にはなる数字であるものの、ちょっとした行き違いや、施主と工務店の意見の相違があったのかもしれないと考えてくれるラインです。
実際に、C子さんが受注した夫婦も同じような感想を持ち、C子さんにこう聞いてきたそうです。
「この12%はどんな内容だったのですか?」
お客さんは、C子さんが狙ったとおりの質問をしたわけです。
C子さんはこの質問への答えを用意していて、私が中身を具体的に聞くと、それぞれの施主ごとの個別の問題に過ぎず、会社としての致命的な欠点や問題点ではありませんでした。
具体的な内容は控えさせていただきますが、ニュアンスは伝わったでしょうか。
自社の強みを数字で示し、不利な点を資料で先回りして説明する考え方は、大手の側から見た地場工務店との競合対策で解説しています。
競合で価格差250万円を際立たせる自社の強みの訴求
B社が優る点とは逆に、250万円安いという価格は、C子さんの工務店にとって圧倒的に有利な点でした。B社の営業からすれば、250万円の差は信用、デザイン性、虚栄心、アフターサービスなどすべてを含めた価値だと説明するはずです。
しかし、C子さんはさまざまな資料やアンケートを駆使して、B社が盛んにアピールする点を1つずつ潰していきました。
論点が潰れるほど、お客さんの目には250万円の差が大きく映るようになります。
お客さんは「安かろう悪かろう」ではなく、「内容に大きな差はないのに価格差は250万円もある」と受け止めるわけです。
競合他社がお客さんに出した資料を回収し、相手が手を抜いた項目で上回る資料を出す方法は、住宅営業で競合に勝つ資料づくりで解説しています。
C子さんは同じ発想で、自社が優れているほかの点についても、お客さんに徹底的に訴求していきました。
まとめ
C子さんのテクニックは、大手ハウスメーカーより劣っているところを埋める手段を考え抜いて探し出す点にあります。全国規模の知名度は地域での認知度64%に置き換え、信頼度は項目別の顧客満足度で示し、相手の論点を潰したうえで250万円の価格差を際立たせました。
一般的には、アフターサービスなどについては「そんなもの大手に勝てるわけがない」と工務店の営業が諦めてしまうことが多いのではないでしょうか。それでも考えていけば溝を埋める手段はあることを、C子さんの事例が示しています。
ぜひ本記事のC子さんの競合対策を参考に、次の大手ハウスメーカーとの競合に向けて、自社の施主アンケートと商談資料を見直してください。



