前回と前々回に引き続き、初回面談シーンのポイントについて書き進めます。
3回目の今回で一旦シリーズ終了をしますが、最後は女性営業の事例をご紹介しましょう。
彼女は若手ではありますが、営業が向いているのでしょうね。
本人も営業職を強く希望して入社したようですから、実に勉強熱心ですし、資格もいくつか取得して頭の中は仕事一色という女性です。
全営業社員の中での成績は中の上ぐらいですけども、会社としては損益分岐点をクリアし実績をあげていますし、受注棟数はそこそこであっても、なぜか利益率が猛烈に高いという特徴を持った女性です。
経営者であれば思わず耳をそばだててしまうようなポイントですが、初回面談にもその片鱗が伺えて大変興味深いものがありました。
大学で勉強したことをフルに生かすKさん
大学の知識を営業現場に反映させる珍しいパターン
女性営業のKさんですが、彼女の出身学部は住生活なんたらかたら( 詳しいことは覚えていません)という特殊な学部です。
少なくとも工学部ではないので、出身としては完全な文系になるわけですが、この大学を卒業して住宅会社のみに分野を絞って就活をしたそうです。
入社5年目の27歳ですが、彼女ほど大学で勉強した知識をそのまま仕事に活かしている営業は見たことがありません。
その一方で、設計職はもちろん違います。
建築学科を出てくれば、その知識がそのまま仕事に生かされるわけです。
しかし、営業の場合は建築とは何も関係ない文化系を卒業して知識0の状態で入ってくるのが大半でしょう。
収納についてやたら詳しい
彼女の折衝を初めて見たのですが、収納の説明やら解説の部分は耳を疑うほど高度なレベルの内容でした。
そもそもヒアリングの仕方が全く違うのです。
その一つをご紹介しましょう。
Kさん「可愛らしい男の子ですね~今何歳ですか」
奥さん「もうすぐ2歳です」
Kさん「まだおむつが取れないと思いますけども、おむつはどこの会社を使っていますか?」
奥さん「うちはパンパースです」
Kさん「パンパースの方多いですよね。パンパースは通常のもので高さ〇〇CMくらいあったと思いますけども、まとめて収納するとなかなかに場所が厄介なんですよね」
この会話はなかなかでしょ?
お客さんが連れていた男の子の話をきっかけにして、おむつの種類を最初に聞いたわけです。
それがパンパースだとわかったら、頭の引き出しから、その縦横高さの寸法を瞬時に引き出し、そのまま収納の話にもっていったのです。
この辺りのノウハウは、大学時代に習ったとKさんは言っていました。
私は法政大学経営学部の出身ですが、営業当時にこんな技術はもちろんありませんし、その発想すらなかったです。
結婚すらしてない彼女が子育てを語る
普通はこんなこと言えない
もう一つ、彼女の折衝で非常に印象的なシーンがありました。
彼女は独身ですので、もちろん子供はいません。
このような状況で、子育て中のお客さんがやってくれば、普通の営業なら「私は子供がいないのでよくわからないんですが」という言い回しになるでしょう。
ところが、こんな会話があったのです。
Kさん「お子さんの夜泣きとかはひどくないですか?」
奥さん「夜泣きもそうですけども、一旦ぐずりだすともう止まらなくてどうしようもないんですよ・・・ところで、あなたまだ若いと思いますけどお子さんはいるんですか?」
Kさん「いえいえ、私まだ独身ですので子供はもちろんいません」
奥さん「将来子供を持つようになると夜泣きは本当に大変ですよ(笑)どんなに温厚な人でも頭に血が上りますからね」
Kさん「きっとそうなるんでしょうね。ところで、お子さんがぐずるという話なんですけども、これは居住環境にも大きく影響されまして、ある程度家の作りや内装などによって抑えることができるかもしれないんですよね。その理屈なのですが・・・」
こう話し始めたのです。
ここからは長くなるので割愛しますが、あとで彼女に聞いたところによると、やはり大学でこのようなことを習ったらしいのです。
結論から言うと、奥さんはかなり納得して「へ~それは知りませんでした」と感心している様子がありありとわかったのです。
つまり、彼女は独身で子供がいないのにも関わらず、子供がいるお客さんの悩みを解決する提案をしたのです。
自信を持って言い切ることが大事
正直なところ、話を聞いて「よくこれだけ堂々と言えるもんだな(笑)」と私は感心していたのですが、どんなことでも自信を持って言い切るとことが重要であるということを、改めて認識したシーンでした。
美容の話で大盛り上がり
奥様とKさんの使っている化粧品が同じだった
これは女性だからこその話になってしまいますが、Kさんは服装も化粧もバッチリするタイプで、そのあたりについては、相当気を使っている女性です。
また、今回の奥さんなのですが、同じようにバチッと決めた感じの女性だったとのこと。
商談の中でKさんが美容について持ち出したときのことです。
戸建ての窓の面積が大きいのはいいことですが、女性にとってはその分、紫外線が中に入ってくるので、これを嫌う人が多いのも事実でしょう。
Kさんはかつての折衝で、このことをすごく心配するお客さんにあたったことがあるらしく、直感的に「この奥さんは美容にうるさいな」と感じたら、紫外線をカットする窓の説明を必ずするそうです。
この時もいつもの調子でUVカットの話をしだしたら、奥さんが俄然身を取り出して饒舌になりました。
その流れで使っている化粧品が同じメーカーだったことがわかり、そこからしばらくは家の話はまったく関係ない化粧品の良し悪しについて雑談が交わされることになりました。
旦那さんは完全に蚊帳の外状態ですが、傍から聞いた私としては、この会話はものすごくお客さんとの距離を詰めるのに成功した雑談だったと感じたのです。
一見すると住宅とは全く関係ないどうでもいい話にも思えますが、 家の中にいて紫外線をカットするなど美容の話になってるわけですから、当然サッシの話にもなりますので、結果的には家の話をしていることになるのです。
美容と健康は住宅営業のネタのひとつ
たまたま化粧品の話になったので、私からアドバイスをさせてもらいます。
奥様をよく観察してからという条件は付きますが、一般論としては女性である奥様と化粧品を含めた美容や健康の話をすることは、共通の話題として盛り上がるといえるでしょう。
男性営業がリードするのはなかなか難しいのですが、女性営業であればこの話はぜひ振ってみてください。
化粧をする場所の提案も必ずしよう
私は男ですので良く分からない部分もありますが、自身が2年生の時に属したチームの店長がこんなことを話しました。
店長「今度、俺の家に遊びに来いよ。なかなかユニークな間取りになってるんだけどさ、うちの女房がたっての希望で作ったのが寝室にある洗面台なんだよね。そこでどうしても化粧したいっていうから作ったんだけど、お前のお客さんにも提案してみよ」
この後ほどなくして、営業全員で店長のうちに遊びに来ましたが、件の寝室も見せてくれました。
すると、明らかに一般的ではないのですが、寝室の片隅に袖壁を作ってはあるものの、洗面所のようなコーナーがあったのです。
奥さんも横にいたので説明してもらったのですが、この説明を聞いてものすごく納得しました。
奥さん「森君には分からないと思うけど、女の人が化粧する時には水があるとめちゃくちゃ便利なんだよね。でも、普通の家というのは寝室に鏡台を設けたとしても水が出ないでしょ。だから脱衣洗面所で立ちながら化粧をやってしまうんだよね。こうして寝室に化粧する鏡をつけてちょっと水が出ると、とにかく便利だから私はこういう風にしたの。あなたもお客さんに勧めてごらんなさい」
このときは「そういうもんなんですね」と受け答えをしたのですけども、実際このあとの営業活動では使わせてもらったトークになりました。
しかも、店長がここの部屋の写真を撮らせてくれたので、それをそのまま営業資料としてよく奥さんに見せたものです。
まとめ
3回シリーズの最終回になります。
今回は大学で得た知識をそのまま住宅営業に生かしている女性営業をご紹介しました。
一般的に住宅営業は文系出身の人間がやるので、学生時代の勉強内容はほぼ関係ありません。
建築学科を卒業した設計士が営業を兼務するというケースならば、 学生時代の知識をそのまま営業に持ちこめるでしょう。
しかし、彼女のように建築とは全く関係ない住生活、住環境を大学で勉強して、それを住宅営業に生かすというケースはほとんど聞いたことがありません。
しかし、これらの知識があることが、住宅営業にとって大きな武器になることが今回の接客検証でよくわかったのです。