工務店が大手ハウスメーカーに勝つ武器|元積水ハウス営業の体験談

積水ハウスでさえ住宅業界全体のシェアは3%に届いておらず、従業員5人の工務店が大手に勝つことも十分可能です。工務店の武器になるのは、庭やアプローチまで見せる住宅展示場、大手の営業担当に起きる転勤、地元ならではの土地情報などです。
本記事では、積水ハウス時代の経験と私が関わっている工務店の事例をもとに、工務店が大手ハウスメーカーに勝つための武器と営業トークを解説します。
工務店でも大手ハウスメーカーに勝てる住宅業界の構造
大手ハウスメーカーは圧倒的な知名度と資金力を持っています。
それでも小さな住宅会社が五分に渡り合えるところに、住宅業界の魅力があります。
自動車業界ではそうはいきません。
仮に資金を集めて今から自動車会社を作っても、トヨタ自動車に対抗するのはほぼ不可能です。
実際に、国内の10社にも満たない自動車メーカーが市場のほぼすべてを独占しています。
ところが住宅業界では、積水ハウスでさえ業界全体の3%のシェアも取れていません。
つまり、従業員5人の工務店が積水ハウスに勝つことも十分に可能です。
工務店が勝てるところは、普通にやっていては気づきませんが、少し頭を働かせれば見つかります。
地元企業の工場長や総務部長に社員への情報提供を申し出る源泉営業と、そこでの大手と地元工務店それぞれの障害は、住宅営業の法人開拓で解説しています。
住宅展示場の庭とアプローチで大手ハウスメーカーと差をつける
総合住宅展示場では庭もアプローチも見学できない
総合住宅展示場に行ったことがあれば気づく話です。
私は所用で兵庫県の大蔵海岸住宅総合展示場を訪れ、写真を撮りました。
そのときも、玄関までのアプローチや庭はまったく整備されていませんでした。
大蔵海岸に限らず、どの総合住宅展示場でも、各ハウスメーカーは建物を目いっぱい建てることを優先しています。
そのため、ハウスメーカーには工夫したアプローチを考える余裕がなく、庭のスペースも取りたくても取れません。
来場者は建物を見に来るので、これで構わないとも言えます。
しかし、家を建てるお客さんは、本来ならアプローチや庭、門扉などのエクステリアも見学したいものです。
大手ハウスメーカーが所狭しと並ぶ総合住宅展示場では、お客さんはこうしたエクステリアを見学できません。
私が総合住宅展示場で各社の営業担当の接客を見ていても、庭やアプローチのことはまず話題になりません。
私が今から工務店を興して単独の住宅展示場を作るなら、できる限り庭やアプローチまで整備した計画を立てます。
庭やアプローチを整備した住宅展示場では、来場したお客さんがほぼ例外なく営業担当と庭やアプローチの話をします。
この事実が何よりの証拠です。
1月21日オープンの工務店の単独住宅展示場
私は大手ハウスメーカーと関わることもありますが、仕事で関わるのは小規模・中規模の住宅会社が圧倒的に多いです。私が関わる某工務店は、1月21日に単独の住宅展示場をグランドオープンします。
この住宅展示場では、工務店が駐車場から玄関までのアプローチをしっかり取り、庭の整備もきちんと行っています。敷地の南側に小川が流れているので、工務店はリビングを出たところにかなり広いウッドデッキを作り、小川や庭を眺められるようにしました。
私もオープン時には泊まり込みで立ち会います。
お客さんとは建物だけでなく庭やエクステリアの話にもなるはずなので、私は営業担当者にもそうした話をするようアドバイスしています。
お客さんにとっては庭やエクステリアの話が新鮮に映るはずです。
それと同時に、お客さんはトータルで家づくりを考えている工務店の姿勢にも賛同してくれると私は考えています。
私はオープン後の経過を、落ち着いたらこのコラムで報告する予定です。
庭やエクステリアの話をお客さんの反応に合わせてどう進めるかは、反応別の庭の提案トークで解説しています。
ハウスメーカーの広告宣伝費トークと積水ハウス時代の反論
地場工務店の営業が使う「広告宣伝費が高い」トーク
「ハウスメーカーが高いのは広告宣伝費が高いからです」
ハウスメーカーと競合した中小住宅会社の営業が、お客さんによく話すカウンタートークの一つがこれです。私は積水ハウスにいたので、地元の住宅会社と競合したときに、お客さんから次のように言われるのは日常茶飯事でした。
「“積水ハウスさんは多額な広告費を払っているからその分高い”と〇〇ホームの営業さんが話していましたよ」
地場工務店の営業がもう一つよく持ち出したのは、営業マンの歩合給の話です。
積水ハウスは他社と比べて営業の給料が高かったのは事実です。
そのことを知っている地場工務店の営業の中には、「積水ハウスさんは一棟売ると相当のお金が営業担当につくんですよ」と直接的に攻撃する人もいました。
積水ハウス時代に私が返していた反論トーク
もちろん、私はこうした場面を予期していたので、反論トークを用意していました。広告宣伝費の話には、お客さんに次のように返していました。
「そのようによく言われるのですが、確かに積水ハウスは相当な広告宣伝費を使っているのは事実です。しかし、年間に契約する棟数は膨大ですので、一棟あたりの広告宣伝費で考えると実はそんなに大きくないのですよ」
ただし、私は具体的に計算したことは一度もありません(笑)。
厳密に計算したら実は莫大な金額かもしれませんが、お客さんは一瞬聞いただけだと案外納得してしまうものです。
歩合給の話をされたときは、私は「うーん、充分な給料はいただいてますが、そんなに高いとも思いませんけどもね(笑)」と笑いながらごまかしていました。
そのことを今でも思い出します。
競合の言い分に返すトークや資料を事前に用意する方法は、住宅営業のカウンタートークの準備で解説しています。
営業担当の転勤は大手ハウスメーカーの盲点
積水ハウスは違いますが、ほかの大手ハウスメーカーでは、営業社員が転勤したり別の部門に異動したりすることがときどきあります。
高い買い物をするお客さんにとって、営業担当者は唯一の味方とも言える存在です。
その担当者がいなくなることは、お客さんにとって大きな不安になります。
転勤の話はお客さんの気持ちをそれなりに動かすので、私は営業時代に注意していました。
積水ハウスには転勤がなかったので、私はお客さんに突っ込まれても即座に否定できました。
一方で、大和ハウスで営業をしていた知り合いは「うちは結構転勤があるんだよね」と困っていました。
本記事は中小工務店に向けて書いているので、大手ハウスメーカーを競合相手と位置づけています。工務店の営業が大手と競合したときは、営業担当の転勤の話をすると一定の効果があるでしょう。
大手が優る点を洗い出して差を埋める進め方は、大手ハウスメーカーとの競合に勝つ方法で解説しています。
地元の土地情報は工務店が大手に勝てる武器
土地なし客を突き放すと契約が落ち込む
地元の工務店にぜひ使ってほしい武器が、土地情報です。
住宅展示場などに来るお客さんの属性をデータ化すると、7割程度が土地と建物を一緒に取得する層です。
土地と建物を一緒に取得するお客さんは、建物を決める前に土地を探して決済しなければなりません。
ところが小規模工務店では、営業が土地なしのお客さんに「土地が見つかったらまたご連絡ください」と言って突き放すケースが見られます。
突き放すという言い方は正しくないかもしれませんし、少人数では土地の紹介まで手が回らない気持ちもよく分かります。
しかし、こんなことを続けていては工務店の契約は落ち込むばかりで、将来は真っ暗です。
土地なし客への土地紹介の進め方は、住宅営業の土地提案で解説しています。
地元で50年続く工務店の土地情報トーク
私が理想とする、営業とお客さんの会話を再現します。
営 業「土地探しはもうかなりやられているのですか」
お客様「この一年間徹底的に探しているのですが、希望する要件にあった土地はなかなか出ないですね」
営 業「弊社はこの地で50年にわたって工務店を営んでいるので、地元の不動産会社とはものすごく強いパイプがあります。場合によっては表に出ないような土地情報も耳に入りますし、中には地主さんが直接不動産会社を指名して預けるような土地もあります。そうした情報は、大手ハウスメーカーさんと比べて我々地元が強い点だと言えます」
もちろん、営業が嘘をついてはいけません。
50年続けていても大したパイプがない工務店は、このように断言できません。
なので、このトークはすべての地場工務店に通用するやり方ではありません。
工務店の経営者や営業は自社を再チェックしてください。
地元の不動産会社との強いパイプが実際にあるなら、土地を探しているお客さんに強くアピールしてください。
このトークがお客さんの心をがっちりつかむことは、私が保証します。
まとめ
住宅業界では積水ハウスでさえシェアが3%に届かず、工務店が大手ハウスメーカーに勝つ余地は十分にあります。庭やアプローチまで見せる住宅展示場、営業担当の転勤、地元の土地情報は、大手ハウスメーカーとの競合で工務店が使える武器です。
私の仕事は一人親方から大手ハウスメーカーまでがすべて対象なので、どちらかに偏ったコラムを書くときは気を使います。
今回はあえて小規模工務店の側に立ちました。
私は現役時代も含め、大きな会社の営業が折衝で小規模工務店に負けるケースをたくさん見てきたので、その勝因や敗因はよく分かっています。
「小が大を食う」事例は、今後もこのコラムで機会があるごとに紹介します。
ぜひ本記事の3つの武器を参考に、次に大手ハウスメーカーと競合する商談で、自社が使えるものから試してください。



