住宅メーカーのAI活用はどこまで進む?アフター対応と現場安全管理

住宅メーカーのAI活用はどこまで進む?アフター対応と現場安全管理

「AIって今後どうなると思いますか?」私はさまざまな席で、住宅メーカーの方から直接こう聞かれることがあります。

住宅とは全く関係のない業種の方からも、新規事業として提案したいという思惑から、AIに関するご質問をいただく機会が増えました。

住宅メーカーのAI活用は営業より先に現場から進み、アフターサービスの不具合判定と施工現場の労災防止が入り口になると私は考えています。

本記事では、住宅メーカーが現場にAIを取り入れたときに変わることと、AIの判定をめぐってお客さんと揉める原因を解説します。

住宅メーカーのAI活用はアフターサービスへの売り込みから始まっている

会合で業者から聞かれた「アフターサービスにAIを投入したら」

ある会合で、私は複数の業者の方から直接こう聞かれました。

業者「アフターサービスにAIを投入したら住宅会社は採用してくれますかね?」

私「積極的に話を聞いてくれると思いますよ」

AIを使えそうな分野に参入しようとする企業はたくさんあります。

そうした企業は、ハウスメーカーをはじめとする大きな住宅会社に企画を売り込めないかと考えています。

ハウスメーカーの担当者であっても、AIの提案には同じように聞く耳を持つはずです。

ハウスメーカーにAIを持ち込む人たちの動き

住宅会社の上層部の方々は常に先を見据えた戦略を打っており、水面下ではすでにいろいろな動きがあるようです。私の周りを見ても、ハウスメーカーにAIシステムを持ち込もうとする人たちがものすごく多いことを肌で感じています。

住宅業界に入り込むAI技術のイメージ

このコラムを読んでいる大手ハウスメーカーの方も、まごまごしていると、競合のハウスメーカーが画期的なAIシステムを導入して一気に業界の先頭を走ることになるかもしれません。

住宅業界でAI化が進む場面と住宅会社の構えについては、住宅営業のAI活用の6つの使い道で解説しています。

ハウスメーカーのアフターサービスでAIが担う不具合判定

引き渡し3年後のクロスのはがれで分かれる判断

引き渡しから3年経ったお客さんが、リビングのクロスのはがれに気づいたとします。

この判断は実に微妙です。

3年経てばクロスがはがれることは十分に考えられ、問題ははがれの程度です。

業者とお客さんの認識の違いは大きく、あるお客さんは施工が悪かったとクレームをつけるかもしれません。一方で私たち業者から見れば、業者責任ではなく、ごく自然なはがれと判断できる場合もあります。

現地確認から写真の事前送信、そしてAI解析へ

アフターサービスの不具合確認は、時代とともに次のように変わってきました。

時期アフターサービスの流れ担当者が判断するタイミング
15年前お客さんがメールか電話で連絡し、担当者が現場に足を運ぶ現場で初めてクレーム箇所を見て、自分の目で判断
7年前お客さんが手持ちのスマホで問題箇所を撮影し、事前に送信訪問前に方針をある程度決めておける
これからお客さんが撮影して送った画像をAIが解析AIの判定結果を担当者がお客さんに伝える

7年前からの写真の事前送信は、担当者が訪問前に方針を立てられるため、業務の効率化に大きく貢献しました。場合によっては、住宅会社にデータが届くと同時に、お客さんのスマホ画面にAIの診断結果が即時に出るシステムも出てくるかもしれません。

担当者による対応のぶれがなくなる

AIの解析結果を担当者からお客さんに伝えるようになれば、微妙な判断のときに担当者の性格や技量で生じていたぶれがなくなります。同じクロスのはがれでも、担当者Aさんと、毅然とした対応をする担当者Bさんでは、次のように対応が分かれます。

Aさん「これは弊社の責任かもしれませんので誠意を持って対応します」

Bさん「申し訳ありませんが、これは許容範囲ですので弊社で無償修補はできません」

AIが判定を担当すれば、住宅会社はお客さんに対して「AIが判定したので、この基準でいかせていただきます」とはっきり言えるようになります。

アフターサービスで築いたOB施主との関係を次の受注につなげる方法は、OB施主からリフォームを受注する工務店の取り組みで解説しています。

AIの判定でもアフターサービスのクレームは残る

「もう一回判定してほしい」と再判定を求められる

AIの判定がいくら安定したとしても、納得できないお客さんにとっては納得できないでしょう。

「撮影する角度が悪いんじゃないか」

「もう一回判定してほしい」

こうした意見は間違いなく出てくるので、住宅会社は何回も判定をやり直すことになるかもしれません。そのうえ、最初の判定と2回目の判定が違うことも十分に考えられます。

Google Bardに値引きの質問を繰り返した結果

チャットGPTは日本でもかなり知名度がありますが、つい先日、同じようなサービスとして、GoogleがGoogle Bardを日本で始めました。私はGoogle Bardでどのような答えが返ってくるかを試しましたが、はがれたクロスを判定してもらうシステムはないため、住宅営業の値引きについて質問しました。

【質問】担当の住宅営業さんに値引きを断られました。今後どうすればいいですか。

同じ質問を繰り返すと、Google Bardの答えは毎回違いました。

住宅営業の現場でGoogle Bardがどこまで使えるかは、Google Bardで応酬話法を検証した結果で解説しています。

【回答例1】値引きの条件を緩める。

値引き額を下げたり、値引きの代わりに他の特典を求めたりするなど、値引きの条件を緩めてみるとよいでしょう。

そうすることで、営業担当者が値引きに応じてくれるかもしれません。

【回答例2】最終的には、住宅営業担当者と交渉して、納得できる金額に達するかどうかが重要です。値引きに応じてくれない場合は、無理に契約する必要はありません。

Google Bardの答えはテキストですから、写真の判定とは違います。

しかし、AIで現場写真を判定した場合も、1回目と2回目で結果が違う可能性は十分に想定できます。

アフターサービスの現場でこれが起これば、住宅会社がお客さんと揉めるのは必至です。

私はAIの専門家ではないので、技術的なことを分かっているわけではなく、専門家からは「そんなことはまず起こらない」と怒られるかもしれません。それでも、AIは質問を重ねるたびに経験値を積んでいくため、導入したときと1年後では判定が変わる可能性は十分にあると私は考えます。

施工現場の安全管理に入り込むAI

業界の中では誰もが知る規模の、非常に大きなハウスメーカーがあります。

そのハウスメーカーが抱える問題の一つが、現場の安全管理です。

急成長する住宅メーカーはどこでも抱える問題ですが、営業力が強すぎて現場の施工がバタバタになり、労災事故の発生率が他社より高くなるケースがあります。

カメラで職人の様子をチェックする労災防止の仕組み

施工現場にカメラを取り付け、職人の様子を常にチェックするシステムを取り入れているハウスメーカーは既に存在します。

導入の目的は、あくまでも労災防止です。

屋根の上で危ない作業をしていないか、気が緩んだ行動をしていないかをチェックし、悪い点があれば翌日に現場監督を通じて職人に注意します。

AIなら見落としなく労災につながる行動を察知できる

カメラ映像のチェックをAIが代わりに担えば、人間と違って見落としもなく、疲れることもありません。

AIに情報を蓄積していけば、どんな行動が労災につながるのかを事前に察知して、職人に注意を与えることもできます。

職人にとっても、人間に監視されるより機械に監視されるほうが、ある意味気楽かもしれません。

基本はあくまでも人間の目がいいのでしょうが、人手不足を考えると、この種のチェックがAIに移っていくのは必然的な流れだと私は思います。

よくある質問

住宅業界の現場にAIが入ってくるのはいつごろですか?

私は、現場の改善については今後数年の間にどんどんAIが入ってくるのは間違いないと見ています。住宅会社が好き嫌いで選べる話ではなく、どう頑張っても抗えない流れです。

住宅営業の分野でもAIは使えますか?

私は、住宅営業の分野にもAIを取り入れる余地は多分にあると考えています。ただし、AI化はアフターサービスや安全管理といった現場のほうが先に進むと見ています。

まとめ

住宅メーカーのAI活用は、アフターサービスの不具合判定と施工現場の安全管理から進みます。AIが判定すれば担当者による対応のぶれがなくなり、現場カメラの映像をAIが見れば、見落としなく労災につながる行動を察知できます。

一方で、AIの判定が1回目と2回目で違えば、住宅会社はお客さんと揉めることになります。

ぜひ本記事のアフターサービスと安全管理の事例を参考に、自社の現場のどこからAIを取り入れるかを検討してください。

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