中途半端な知識でお客さんに接してはダメですし、うまくごまかそうと思っても大半の場合簡単に見破られてしまいます。
舐められたくないという思いもあるでしょうから、営業という仕事だけではなく、プライベートでも気を抜かずに完璧な対応を取ろうとする人がいます。
住宅の営業職であるからには、お客さんから不審な目で見られてはいけないという思いから、すべてをパーフェクトにこなそうと言う営業担当者が意外なほど多いのをご存じでしたか。
一見すると問題なさそうに見えますが、お客さんから見ると実は不評であったり、もしくは話をしていて面白くない人物だと思われることがあるので注意をしてください。
「私は完璧主義者です」 困りましたね・・・(笑)
有力地場工務店のT君
入社四年目20代で、見るからに清潔感を漂わせる涼しげな顔をした営業社員のT君。
「格好よくありたいのです!」
こう自分で言うほどですから、身なりはきちんとしていますし、なかなかのイケメン君です。
これ自体はもちろん問題ないのですが、この前彼とこんな会話をかわしました。
私「昨年の成績がいまいちだったけどもT君として問題だった点を自己分析するとどんなことになるんだろうね?」
T君「私結構完璧主義者なんですよ。ですからお客さんに対しては抜かりなく対応していますし、何か言われそうなことがあれば、先回りして資料を徹底的に揃えちゃうんですよね。でも、そこがお客さんにとってちょっと息苦しさを感じているような気がしないでもないんです」
なかなか面白い自己分析でしょ?
でも、このパターンの営業マンはたまに見かけるので、このT君の話を聞いて私は「それってたまにある話なんだよね」 と答えてアドバイスを続けたのです。
人間の魅力はギャップにあり
こんな言葉を聞いたことありませんか。
高額商品である住宅を扱う営業マンなので、抜かりなく完璧に仕事をやるのが百点満点であることは間違いありません。
しかし、この仕事はお客さんと商談している時間が長いのに加え、契約以降も長いお付き合いをするという、特異な業界です。
そう考えると、あまりの完璧主義者では、お客さんも息が詰まるとは思いませんか。
もちろんお客さんの性格にもよりますが、冗談をひとつ言えないような営業で問題がありますし、普段から完璧に仕事をしている営業マンが、たまにポカをやれば人間味があって いい潤滑油になる可能性もあるのです。
別にミスを推奨しているわけではありませんが、普段から完璧主義者の人が、意外なほどに抜けている部分があるとなんだか気分がほっこりしますよね。
そんなギャップが人間の魅力になったりするのです。
ただT君に関しては20数年間で培った自分の性格なのでこれを治すのは至難の業でしょう。
20年前に行った取材の話です
T君との面談で20年前のケースを思い出しました。
場所は千葉県だったのですが、やはり物事を完璧にこなす当時20代の営業マンがいました。
ルックスも爽やかな好青年です。
そして彼の性格なのでしょうが、細かいことも手を抜かずにしっかりやるのと同時に、住宅の勉強は徹底的にしていたので、お客さんから何を聞かれても瞬時に言い返すことができたのです。
そんな彼ととりあえず建築請負契約を交わしたお客さんが、キャンセルをするという事例が発生しました。
お客さんがキャンセルした理由に驚いた
そもそも契約を破棄したお客さんと、私の取材アポがよく取れたものだと感心したのですが、その当時私はカメラを片手にお客さんの自宅まで取材に伺いました。
営業に対しては「基本的にはよくやってくれるし、頼もしい営業なので高評価だった」とのことですが、彼に対する不満や問題が色々積み重なって最終的には契約破棄に至ったのです。
複数の理由があったのですが、最大のキャンセル理由に私は驚きました。
「彼があまりにも完璧すぎるので不信感を抱いたのよね」
奥さんがこうおっしゃるのです。
この意味を皆さん理解できますか?
会話にするとこんな感じです。
奥様「このキッチンの天板の素材は・・・」
営業「それは〇〇でできていまして、メーカーもイチオシの推奨商品です。そしてさらにもう一つ情報をご提供しますと・・・」
こんな感じで質問をし終わる前に内容を察知して、かぶせ気味に答えを浴びせかけられる、と奥さんが話していました。
しかも、こちらが聞いたことに、プラスアルファの様々な情報を、早口でガンガンと浴びせかけられた、とも話していました。
営業としては奥さんが言いたいことをすぐに察知して、スピーディーに答えることによって信頼を得ていると思ったのでしょうが、実はそれが逆に不信感を生んでいたのです。
直接的には言いませんでしたが「なんだか騙されているのではないか」と感じたようです。
このときは取材をしていて私も驚きましたね。
こういうケースもあるんだな・・・ということです。
不真面目な営業の方が圧倒的に多い
完璧主義者の話をしましたが、現実の営業現場を見ると、真逆であるふざけた営業の方が圧倒的に多いですね。
一つ実話をご紹介しましょう。
これもお客さんへの取材で奥様が呆れ顔で私に話した本当の話です。
「客の前で使用の電話を5分もするんです」
友人から紹介を受けた営業マンらしいのですが、最初の顔合わせ段階から妙に軽くて、軽口を叩くことが夫婦共に気になっていたとのこと。
取材は奥様だけにしたのですが、初対面にもかかわらず軽い口調で「今度飲みに行きましょうよ!」とご主人を誘ってきたらしいのです。
これに対してこちらのご主人は全くの下戸。
そのうえ性格的には全く合わなかったらしく、次回の商談はもちろんありません。
さらには商談の途中で、関係者である設計士に何らかの問い合わせの電話をしたらしいのですが、要件もそこそこにプライベートな飲み会の場の話を、5分間にもわたって延々と続けたらしいのです。
にわかには信じられないと思いますが、事の顛末を奥様がすべて語ってくれたシーンは、私の手元に映像としてしっかりと残っています。
真面目にやっている方にとっては、ありえない話だと思いますが、こうしたふざけた営業は結構いるから驚きです。
友人の懐状況をペラペラ喋る営業
これも別のお客さんから聞いた話です。
ある営業マンの話ですが、自分が契約したお客さんから職場の友人を紹介してもらい折衝に入りました。
紹介してもらったぐらいですからそのお客さんとは、うまくいったのは間違いないでしょう。
ところが資金計画の話になったときこの営業マンは、紹介してくれたお客さんの資金計画をべらべらとその人に話しだしたのです。
「〇〇さんは自己資金600万ぐらい何とか出したんですよね。そして銀行ローンは3,000万近く組んだのですがそんなに問題ないと思うんです。ですから心配しなくて大丈夫ですよ」
これも信じられない話だと思いますが、やはり私の手元に映像として残っている貴重なお客さんの証言です。
もちろんこの方は、この営業とはこの瞬間に縁を切ったのですが、当の営業本人は何故急に商談を打ち切られたのか、いまだに分かってないでしょうね。
まとめ
第一線で活躍している営業マンの方で、今回の話に該当する のであれば「ちょっとは雰囲気を崩した方がいいかな」と考えてみてはどうでしょうか。
また、真面目な営業マンを社員として採用している工務店の社長さんがいれば、うまくアドバイスしてみてください。
真面目に一生懸命やるのはいいのですが、お客さんが息苦しく感じてしまっては元も子もありません。