工務店が新しい工法を採用しても売れない理由|VCトップ店の事例

工務店が新しい工法を採用しても売れない理由|VCトップ店の事例

「〇〇工法も始めました」とホームページにバナーを貼っても、それだけでお客さんがバンバン集まることはありません。

商談でお客さんに「普通の在来工法でも問題ないんですよね?」と聞かれると、工務店の担当者は「2万円出さなくても十分だと思います」と答えてしまいます。

新しい工法が売れない原因は、工法そのものではなく、在来軸組工法と並べて「〇〇工法もやっています」と扱う売り方にあります。全国500社以上が加盟する住宅ボランタリーチェーンで断トツの売り上げを誇る工務店は、その工法を全棟の標準にして、ほかの工法では建築を請け負わないと言い切っています。

本記事では、新しい工法を採用した工務店が売れない理由と、売れる工務店の商談での返し方、私が取材した事例を解説します。

工務店が新しい工法を採用しても売れない理由

世の中には〇〇工法と名の付くものが無数にあり、お客さんにとっては何が何だかさっぱり分からないのが現実です。ただ、売り手である住宅会社の側にも原因があります。

在来軸組工法一本で勝負してきた工務店の社長が、新築住宅の受注が減ってきたことを受けて、「何かプラスアルファしたほうがアピール力が出るかな」と考えて新しい工法を採用するケースがあります。

たまたま目に留まった工法に社長が惚れ込み、これは素晴らしいと取り入れるケースもあります。

しかし、どちらの場合でも、売れないときはさっぱり売れない事態に陥ります。

失敗の典型は「とりあえず採用してみよう」という判断で、このケースが実に多いです。在来軸組工法だけでは目新しさがないと感じていた社長が、ネットで〇〇工法の記事を目にして、これを採用すれば一人ぐらいお客さんを引っ張れるかもしれないと安易に判断してしまいます。

ホームページのバナーで待つだけでは問い合わせは増えない

「問い合わせが1件ぐらい増えないかな」と、間口を広げれば集客が増えると考える工務店は、待ちの営業のまま動きません。採用した工法のバナーをホームページに貼っておけば、そこをクリックして問い合わせまで進むお客さんも中にはいます。

しかし、工務店が自分から積極的にアピールしていかなければ、新しい工法を採用しただけでお客さんがバンバン集まることはあり得ません。待たずに地域のお客さんを探しにいく方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。

在来軸組工法と並べると価格差を突かれて折れる

工務店が在来軸組工法と新しい工法を並列で扱うこと自体は、悪いことではありません。しかし、失敗する工務店の商談の現場では、次のような会話が頻発しています。

客「おたくは在来軸組工法ですか」

工務店「〇〇工法もやっています」

客「少しお高くなるのですか」

工務店「坪で2万円ほど高くなりますね」

客「そんなに上がるんだ……普通の在来工法でも問題ないんですよね?」

工務店「はい、もちろん変わりません。2万円出さなくても十分だと思います」

新しい工法をせっかく取り入れているのに、工務店の担当者はお客さんから少し突っ込まれただけで簡単に折れてしまいます。

そうなると、建てる家は結果的に一般的な在来軸組工法になるので、競合が入る余地を与えてしまいます。

競合に対して優位に立つために取り入れた工法なのに、その意味がまったくなくなっています。

坪2万円高い工法を押し切る工務店の商談の返し方

〇〇工法を取り入れて売上をがんがん伸ばしている工務店では、同じ質問に対して次のように返しています。

客「おたくは在来軸組工法ですか」

工務店「〇〇工法もやっています」

客「少しお高くなるのですか」

工務店「坪で2万円ほど高くなりますね」

客「そんなに上がるんだ……普通の在来工法でも問題ないんですよね?」

工務店「普通の在来工法でももちろん一定の性能は出るので問題ありません。しかし私たちは〇〇工法を強くお勧めしています。その理由ですが……」

2つの会話は、最後の工務店の返答だけが違います。売れない工務店は突っ込まれると引き下がり、売れる工務店は強気に出ます。

たとえば、ある工法を導入すると在来軸組工法より坪で2万円高くなると仮定すると、工務店は30坪の家なら60万円高い見積もりをお客さんに出すことになります。

そこを押し切れるかどうかが勝負です。

お客さんが「高いから今回はいいです」と断ってきても、それなら仕方がないと工務店側が腹をくくれるかどうかです。

高くなる設備をオプションのままにせず標準仕様にして売る工務店の商談トークは、高性能住宅が売れない理由で解説しています。

500社以上の住宅VCで売上トップの工務店が工法を全棟標準にした理由

住宅フランチャイズほど強い縛りはない組織として、ボランタリーチェーン(VC)があります。私は、全国に500社以上の会員を抱える住宅VCで、断トツの売り上げを誇る工務店の社長を取材したことがあります。

工務店が建てた新築住宅のイメージ写真

「〇〇工法“も”やっていると言ったら終わり」と退路を断った

社長が教えてくれた秘訣を一言で表すと、「退路を断っている」です。

この工務店はもともと在来軸組工法で家を建てていましたが、社長がある工法に惚れ込み、それ以来すべての物件でその工法を標準にしました。

社長は、お客さんに対してここまで言い切るそうです。

「うちは〇〇工法“も”やっているんだと言ったら終わりなんですよ。建物の構造は〇〇工法を採用しております。この工法が日本で最強だと確信を持っておりまして、標準採用しております。ですから、これ以外でご希望の場合は弊社では建築を請け負うことはできません」

言い切ってもお客さんはほとんど引かない

ここまで言い切ると、さすがにお客さんが引いてしまわないかと思う方もいるでしょう。

ところが、この工務店では引いてしまうお客さんはほぼ皆無だそうです。

社長が自信を持って押せば、お客さんはよほどのことがない限り納得します。

途中で競合が現れても、特殊な建築工法をアピールすることで勝率が圧倒的に上がると、社長は話していました。

年間1棟の住宅営業が工法に心酔して10棟を受注した事例

10年以上前のことですが、静岡県で大きな住宅会社が倒産しました。

その住宅会社の本社ビルの屋上には社名を掲げた大きな看板があり、走行中の新幹線からもはっきり読み取れたと記憶しています。

それほど大きな会社でしたが、悪い噂は以前から耳にしていたので、私はやはりという感じで倒産の話を聞きました。

倒産した住宅会社の営業社員を不憫に思って採用した

住宅会社が倒産すると、そこにいた社員の転職問題が起きます。

たくさんいた営業社員の一人が田舎に帰り、先ほどのVCトップの工務店に営業マンとして面接に来たそうです。

その営業社員の、倒産した住宅会社での前年度の販売実績は年間たったの1棟でした。

私が社長であれば到底採用できません。しかし、社長は、いろいろと大変な思いをして田舎に帰ってきた30歳前後の青年を不憫に思い、採用したそうです。

工法に心酔して説得力が変わった

ところが、この青年はたった1年で大爆発しました。

倒産した住宅会社は純然たる在来軸組工法でしたが、転職先で新たな工法に出会った青年は、腹の底からこの工法に心酔したらしいです。

工法に心酔したことで、青年のお客さんへの説得力や商談の進め方の迫力はまったく変わりました。

前年度は1棟しか取れなかった青年が、転職した次の年には年間10棟を受注したそうです。

「そんなことがありえるのですか?」と私はすぐに聞きましたが、社長の返事は「みんな同じことを言うんですよね(笑)」でした。

特殊な工法を用いる工務店は、その工法と心中するくらいの気持ちで売る必要があります。その前提として、経営者をはじめ、販売の最前線に立つ営業社員が「この工法は素晴らしい」と腹に落とし込んでいることが欠かせません。

工法ボランタリーチェーンの半数以上が幽霊会員になる理由

安易と言うと語弊があるかもしれませんが、在来軸組工法以外の工法をラインナップに揃えれば受注の可能性が高まると、簡単に考えている工務店も一部にはあります。取材に応じてくれた社長の話を聞けば一目瞭然で、なんとなく間口を広げただけの工務店では受注は増えません。

私は、相当数の会員を抱える工法ボランタリーチェーンを知っていますが、全会員数の半数以上はいわゆる幽霊会員と言っても過言ではない状態です。

入会金が安いのでとりあえず加盟したものの、工法をラインナップの一つとして揃えただけなので、加盟した工務店はお客さんへの説得力に乏しく、新築受注にはまったく寄与しません。

年会費は数万円とわずかなので、加盟した工務店は脱退もせず、幽霊のように権利だけを保有し続けることになります。

同じ工法の加盟店でも、デザインや施工力の差で売れる工務店と売れない工務店に分かれる点は、WB工法の加盟店が売れない理由で解説しています。

新しい工法を採用する前に工務店の社長が決めておくこと

新しい工法を採用するのであれば、社長が本当に腹の底から惚れ込んでから採用してください。

工法を全棟の標準にすると決めた工務店は、待たずにその強みを自社から発信していく必要があります。発信の手段はハウスメーカー・工務店のSNS集客で解説しています。

まとめ

新しい工法を採用しても売れない工務店は、ホームページに載せて待つだけで、商談では在来軸組工法と並べて「〇〇工法もやっています」と扱い、価格差を突かれると引き下がっています。500社以上の住宅VCでトップの工務店は、工法を全棟の標準にして退路を断ち、年間1棟だった営業社員が工法に心酔して10棟を受注するまでになりました。

ぜひ本記事のVCトップ工務店の事例を参考に、自社の工法を商談でどこまで言い切れるか、営業社員と一緒に見直してください。

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