今年度は住宅会社の新卒教育を拭くウ社から依頼されていますが、その中の1社であるHハウスの話をします。
Hハウスは新卒社員が10人強いますが、毎月1回個人面談をリモートで行っています。
そのうちの一人とつい今しがた面談を終えたのですが、こうして数多くの営業社員と面談をしていると、問題点などが良くわかり大変興味深いです。
今日あったのはお金の話。
つまり、資金計画です。
ある男性営業ですが「入社して半年以上経ちますけども資金計画の知識が未だにあやふやです」と話すのです。
ほかの営業にも資金計画のことを突っ込んだのですが、ほぼすべてが「細かいことまではよくわかりません」との回答。
この会社だけではありませんが、ことお金になると曖昧になる営業が極めて多いのが現状です。
あなたの会社は大丈夫でしょうか。
何も教えてくれない上司
私の現役時代と何も変わっていない
30年前になりますが、わたくしは積水ハウスの新入社員でした。
当時の時代背景も影響していますが「先輩の背中を見て覚えろ!」 が職場の空気を支配していました。
ただその当時は、疑問には持ちながらも世の中そんなもんだろうという気持ちがあったので、先輩が営業に関して何も教えてくれなくても 仕方がないなと思っていたのです。
ところが、今回面談した新卒営業マンが私に話したことは、まるで30年前にトリップしたようで驚愕しました。
私「展示場でお客さんを接客する機会も増えたと思うけども、 資金計画の話なんかしっかりできているの?」
B君「簡単なものは話せますが、細かいお金の話になると正直緊張しますね」
私「例えばだけど分譲マンションを所有していて、残債が2,000万あってどうのこうのなんて話に対応できる?」
B君「不可能です(笑)」
私「でもそれは接客していて困るでしょ?」
B君「仕方ないので先輩を呼びに走るしかありません。ただ誰もいない時は、自分が新人であることを言って正直にわからないというしかないんですよね」
これはB君との会話ですが、この程度の対応しかできない新入社員が非常に多いという認識が私にあります。
ある会社の新入社員にこう言われました。
「お金のことについてちゃんと教えてもらってないんですよ。森先生から上層部の人に社内でお金に関するセミナーをやった方が良いと言ってもらえるとありがたいのですが」
これを受けて私は社長にこのまま伝えました。
この新入社員の意見に同感だったからです。
既述しましたが、私が積水ハウスで経験したことと全く同じだったのです。
時代背景は全く違いますが、その当時の私も「営業のことをもっと理論だって教えてほしいし、特に資金計画はしっかり教えるべき項目だ」と考えていたからです。
ところが、今の時代になってもこの辺りが曖昧なケースが散見されるのが現状です。
Hハウスの新人女性営業Cさん
Hハウスには新卒女性営業もいるのですが、4月に入社してから彼女は既に三棟も新築受注をとっています。
ただ、正直なところを彼女の力というよりは、かなり運が良かったという要素は否めません。
Cさんの初契約は完全に棚からぼたもち
Hハウスは建売分譲も扱っているのですが、彼女が入社してすぐの5月にも、八区画の建売を会社が販売しました。
土日でもさほどお客さんがくるわけではないのですが、月曜日の朝10時 から12時までの午前中2時間だけ、Cさんが現地で待機したのです。
ほかの営業の手が空かないという理由もありましたが、月曜の午前中にお客さんが来る事などまずありえませんので、新入社員に放り投げたわけです。
ところが、朝10時現場についてみる、1組の若い夫婦が現場にいて、Cさんを社員と認識してから声をかけてきたそうです。
「これ欲しいんですけどいくらですか?」
笑ってしまいます本当の話です。
通常は新卒の5月に契約が取れたとしても、実質的に先輩が手伝うので、成績が新卒につくことがないか、もしくは0.5棟などという計算をします。
しかしこのケースでは、パーフェクトに彼女の受注となり、翌月には歩合も支給されました。
この話を聞いて、私も大昔を思い出したのですが、同期の名古屋支店勤務の人間が、やはり入社して5月のある建売現場ので受付をしているとお客さんがやってきて「この建物いいですね」の一言でほぼ即決で契約をもらいました。
金額はよく覚えていませんが、1億近かったと本人が興奮して言っていたことだけは今でもはっきり記憶にあります。
男性営業R君
この会社は本当に良い人材を取ったと私は思うのですが、同じく新卒男性営業のR君はやる気あふれる昭和チックな営業社員です。
「あの男は帰れと言っても事務所に残ってなんかやってるんだよね」
こう社長が話すように、会社に居ることが大好きで何度注意しても家になかなか帰らないそうです(笑)
一人暮らしということもあり、ワンルームのマンションに帰ってもやることがないという理由らしいですが、彼曰く仕事が楽しくて楽しくて仕方がないとのこと。
営業センスがあるかどうかは未知数ですが、9月末時点で契約を二棟をあげていますので、そこそこに頑張っていると評価してもいいでしょう。
今の若者はZ世代とも言われますが、R君はZ世代と言われるのを極端に嫌います。
好きな歌手は天童よしみというぐらいのド演歌好き。
大学時代は体育会系のバスケットボール部に所属していたので、長身かつ筋肉隆々です。
「私はコテコテ営業を目指しています!」
なんてアドバイスしたらいいのか私も頭を抱えているのですが、いかにもやってくれそうな雰囲気満々の新卒社員です。
建築学科卒業営業志望のD君
変わった営業はたまにいます。
D君は父親が設計事務所をしており、本人も工学部建築学科の卒業生です。
ところが、会社に面接に来たとき「どうしても住宅営業がやりたい」 と冒頭から主張したらしく、採用担当社員は経歴を見ながら「設計がいないから設計をやってほしい」とお願いしたそうです。
ところが本人の意思は固く、設計出身であれば文系出身の営業よりも知識もあるので、その分住宅が売れて歩合給が稼げるだろうというのが彼の志望動機でした。
つい先日彼と面談をしたのですが、受注は残念ながらこれまで一棟なので、想定した稼ぎには遠く及ばない状態です。
しかし、私から見ると彼は力がありそうなので、二年目からはぼつぼつ売り出して、会社として充分な戦力になると考えています。
ただ、彼の接客風景を見たことがあるのですが、いかにも設計出身にありがちな接客だったので私は注意をしました。
お客さんは展示場に来たとき夢を見に来ているわけです。
もちろん、資金計画が最重要項目の人もいれば、断熱性に高い関心を示し、その話を聞きたがる人もいます。
こういうケースでは、設計出身のD君の本領が発揮されるのですが、その見立てを誤るとお客さんがさほど関心のない構造の話を延々とまくしたてたりするのです。
これは設計出身で建築の知識があるからできることなのですが、実はこのことがマイナスに作用することが往々にしてあります。
D君はまさにこのパターンでしたので、私からこんこんと彼には注意しました。
まとめ
今回は4人の新卒営業を紹介しましたが、入社して半年も経つと受注成績もばらつきが出ますし、それぞれ営業の特性も細分化されて興味深いです。
特に文中で紹介した体育会系出身のR君は、どうやらお客さんに好かれる傾向にあるらしく、契約した農家であるお客さんからは頻繁に野菜の差し入れがあり、自宅にお呼ばれしてご飯をご馳走になっているようです。
最近の若い人はこういう人間臭い付き合いを嫌う傾向にあるのですが、彼はこうしたコテコテの人間づきあいが大好きなようで、住宅営業には極めて親和性の高い男だと私も思っています。