新人営業マンの育成|新卒4人の面談で分かった資金計画の課題

入社して半年以上たつ新卒営業が「資金計画の知識がいまだにあやふやです」と打ち明け、ほかの新人も「細かいことまではよく分かりません」と答えます。住宅展示場で残債のある住み替えの相談を受けると、新人営業は先輩を呼びに走るしかありません。
今年度に私が新卒教育を任されたHハウスでは、新人と毎月面談しても、資金計画を細かく説明できる新人営業はほぼいませんでした。私が積水ハウスの新入社員だった頃と同じ「先輩の背中を見て覚えろ」という育て方が、今も残っている住宅会社があるからです。
本記事では、新卒営業との個人面談で分かった資金計画の課題と、特性の違う新人営業マンの育て方を解説します。
新人営業マンの育成で抜けやすい資金計画の知識(住宅会社の新卒面談から)
今年度、私は複数の住宅会社から新卒教育の依頼を受けています。
そのうちの1社であるHハウスには新卒社員が10人強いて、私は1人ずつ毎月1回、リモートで個人面談をしています。
多くの新人営業と面談を重ねると、問題点がよく分かり、大変興味深いです。
入社半年でも「資金計画があやふや」な新卒営業
つい今しがた面談を終えたある男性営業は、次のように話しました。
「入社して半年以上経ちますけども、資金計画の知識が未だにあやふやです」
私がほかの新人営業にも資金計画のことを突っ込んで聞くと、ほぼ全員が「細かいことまではよくわかりません」と答えました。
残債のある住み替え相談に答えられないB君
新卒営業のB君とは、住宅展示場での接客について次のようなやり取りをしました。
私「展示場でお客さんを接客する機会も増えたと思うけども、資金計画の話なんかしっかりできているの?」
B君「簡単なものは話せますが、細かいお金の話になると正直緊張しますね」
私「例えばだけど分譲マンションを所有していて、残債が2,000万あってどうのこうのなんて話に対応できる?」
B君「不可能です(笑)」
私「でもそれは接客していて困るでしょ?」
B君「仕方ないので先輩を呼びに走るしかありません。ただ誰もいない時は、自分が新人であることを言って正直にわからないというしかないんですよね」
B君のような対応しかできない新入社員は、Hハウスに限らず非常に多いと私は認識しています。あなたの住宅会社の新人営業は、お金の話にどこまで答えられるでしょうか。
新卒営業が資金計画を話せない理由と、教える体制の作り方は、新卒営業の資金計画の教え方で解説しています。
「先輩の背中を見て覚えろ」が残る住宅会社の新人営業育成
積水ハウスの新入社員だった30年前と同じ職場の空気
私は30年前、積水ハウスの新入社員でした。
当時の時代背景も影響していますが、職場の空気は「先輩の背中を見て覚えろ!」一色でした。
私は疑問を持ちながらも、世の中そんなものだろうと思っていたので、先輩が営業について何も教えてくれなくても仕方がないと考えていました。
ところが、B君の話を聞いた私は、まるで30年前に戻ったようで驚きました。当時の私も「営業のことをもっと理論立てて教えてほしいし、特に資金計画はしっかり教えるべき項目だ」と考えていたからです。
新人に入社直後から理論立てて教えるべき項目は、住宅営業の基礎知識5項目で解説しています。
「お金のセミナーをやってほしい」という新入社員の声を社長に伝えた
ある住宅会社の新入社員からは、面談で次のように頼まれました。
「お金のことについてちゃんと教えてもらってないんですよ。森先生から上層部の人に社内でお金に関するセミナーをやった方が良いと言ってもらえるとありがたいのですが」
私はこの言葉を、そのまま社長に伝えました。
私自身もこの新入社員の意見に同感で、積水ハウスで経験したことと全く同じだったからです。
時代背景は違っても、資金計画の教え方が曖昧なままの住宅会社は今も散見されます。
新卒研修全体の組み立ては住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
新人に教える仕組みを社長や管理職が整えて会社の目標につなげる力は、工務店の目標実現に必要なマネジメントスキルで解説しています。
受注成績も特性もばらつく新卒営業3人の育て方(Hハウスの事例)
Hハウスの新卒営業は、入社して半年で受注成績にばらつきが出ていて、営業としての特性も一人ひとり違います。
月曜午前の建売現場で初契約を取った新人女性営業Cさん
Hハウスは建売分譲も扱っていて、Cさんが入社してすぐの5月には8区画の建売を販売しました。
土日でもお客さんはさほど来ない現場で、月曜日の朝10時から12時までの2時間だけ、Cさんが現地で待機することになりました。
ほかの営業の手が空かないという理由もありましたが、月曜の午前中にお客さんが来ることはまずないので、Hハウスは新入社員に放り投げたわけです。
ところが、Cさんが朝10時に現場に着くと、1組の若い夫婦がいて、Cさんを社員だと分かると声をかけてきたそうです。
「これ欲しいんですけどいくらですか?」
笑ってしまいますが本当の話です。
新卒が5月に契約を取れても、通常は先輩が実質的に手伝うので、住宅会社は成績を新卒につけないか、0.5棟などと計算します。
しかしこのケースは完全にCさんの受注となり、翌月には歩合も支給されました。
この話を聞いた私は、積水ハウス時代の同期を思い出しました。
名古屋支店勤務だった同期は、入社した年の5月に建売現場で受付をしていたところ、来場したお客さんから「この建物いいですね」の一言でほぼ即決の契約をもらいました。
金額はよく覚えていませんが、1億近かったと同期が興奮して話していたことは、今でもはっきり記憶にあります。
4月の入社後に3棟の新築受注を取ったCさんも、正直なところCさん自身の力というよりは、かなり運が良かったという要素は否めません。
「コテコテ営業」を目指す体育会系のR君
Hハウスは本当に良い人材を取ったと私は思っていて、新卒男性営業のR君は、やる気あふれる昭和チックな営業社員です。
「あの男は帰れと言っても事務所に残ってなんかやってるんだよね」
社長がこう話すように、R君は会社にいることが大好きで、何度注意しても家になかなか帰らないそうです。
一人暮らしでワンルームマンションに帰ってもやることがないという理由らしいですが、R君いわく仕事が楽しくて仕方がないとのことです。
営業センスがあるかどうかは未知数ですが、9月末時点で2棟の契約を上げているので、そこそこ頑張っていると評価してよいでしょう。
若い世代はZ世代とも呼ばれますが、R君はZ世代と言われるのを極端に嫌います。好きな歌手は天童よしみというほどのド演歌好きで、大学時代は体育会系のバスケットボール部に所属していたので、長身で筋肉隆々です。
「私はコテコテ営業を目指しています!」
R君に何とアドバイスすればいいのか私も頭を抱えていますが、いかにもやってくれそうな雰囲気の新卒社員です。
実際にR君はお客さんに好かれる傾向があるらしく、契約した農家のお客さんからは頻繁に野菜の差し入れがあり、自宅に呼ばれてご飯をごちそうになっているそうです。
最近の若い人はこうした人間くさい付き合いを嫌う傾向にありますが、R君はコテコテの人間づきあいが大好きなようで、住宅営業との親和性が極めて高い男だと私も思っています。
新卒営業が伸びるかどうかを分ける日々の行動は住宅営業の新人育成の事例で解説しています。
構造の話をまくしたててしまう建築学科卒のD君
D君は父親が設計事務所を営んでいて、D君自身も工学部建築学科の卒業生です。
D君は面接の冒頭から「どうしても住宅営業がやりたい」と主張したらしく、採用担当社員は経歴を見ながら「設計がいないから設計をやってほしい」とお願いしたそうです。
しかしD君の意思は固く、設計出身なら文系出身の営業より知識がある分、住宅が売れて歩合給が稼げるだろうというのが志望動機でした。
つい先日私が面談した時点で、D君の受注は残念ながら1棟で、想定した稼ぎには遠く及ばない状態です。それでも私から見るとD君には力がありそうなので、2年目からはぼつぼつ売れ始め、Hハウスとして十分な戦力になると考えています。
ただ、私がD君の接客風景を見たところ、いかにも設計出身にありがちな接客だったので注意をしました。
お客さんは住宅展示場に夢を見に来ているわけです。
もちろん、資金計画が最重要のお客さんもいれば、断熱性に高い関心を示してその話を聞きたがるお客さんもいて、そうした場面ではD君の本領が発揮されます。
しかしD君はお客さんの関心の見立てを誤り、お客さんがさほど関心のない構造の話を延々とまくしたてていました。
建築の知識があるからこそできる接客ですが、その知識がマイナスに作用することは往々にしてあるので、私はD君にこんこんと注意しました。
まとめ
新人営業マンの育成では、資金計画を理論立てて教える仕組みが抜けやすく、入社半年たっても残債のある相談で先輩を呼びに走る新人が多くいます。「先輩の背中を見て覚えろ」のままでは、私が積水ハウスで抱いた不満を、今の新人もそのまま抱えることになります。
一方で、運で3棟を取ったCさん、人間づきあいでお客さんに好かれるR君、知識が接客で裏目に出たD君と、入社半年の新卒営業は成績も特性もばらばらです。資金計画は全員に同じ内容を教え、接客の指導は一人ひとりの特性に合わせる必要があります。
ぜひ本記事の新卒営業4人の事例を参考に、自社の新人営業が資金計画をどこまで説明できるかを面談で確かめてください。



