4月19日20日と富山県に足を運びました。
19日は魚津市に事務所を構える、ある建材会社の営業所に顔を出して営業社員と意見交換をしたのです。
翌日は富山市内に戻り、住宅展示場を使って撮影会を行ったのですが、今日はこの内容について皆さんに重大なことをお伝えできればと思います。
ZEHの話になりますが、既に会社として全力で取り組んでいるところは今回の話は特に聞いてもらう必要はありません。
しかし、小規模工務店の皆さんの中には、未だにZEHに対し真剣に取り組んでいないのではないかと思うフシが多々あります。
「2025年までにはまだ1年以上あるし2030年に至っては7年も先の話だろう」
こう考えていませんか。
実は今回の撮影はそうした工務店への啓蒙ビデオの作成が目的だったのです。
ZEH対策を甘く見ていませんか?
ある建材会社の社長から〇〇との相談があった
工務店を営んでいると建材会社と取引をすることになるでしょう。
全国各地にこのような会社は存在して、皆さんの仕事にとってなくてはならない流通形態の一部となっています。
富山県にももちろんこれに該当する会社があるのですが、 某社の社長からこのような連絡がありました。
「お取引工務店の皆さんの中にはZEHに対してまだまだのんびりしている感じの会社がかなりあるんだよね。そうした皆さんを啓蒙するビデオを作れないかなと思ってるんだけど・・・」
これが話の発端ですが、色々打ち合わせをした結果、富山県内にある住宅展示場に出向いて撮影をすることになったのです。
写真にもあるように、役者さんは4人来てもらいました。
ハウスメーカーの営業マン、主人、妻、そして工務店の社長役の方々です。
工務店の社長だけはこの建材会社の社員さんにお願いして緊急出演してもらったのですが、カメラマンはもちろんのこと、音声さんもしっかり現場に来ていただいた本格的な撮影となりました。
ZEHをあえて避けている工務店がまだまだ多い
現場で耳にする危機的な話
再度念押しをしたいのですが、今回のコラムをお読みいただきたいのは、迫りくるZEH問題に対して動きが鈍い工務店の皆さんとなります。
ある住設機器会社の営業社員から聞いた話をしましょう。
40代の営業社員ですが、市内の小規模工務店20社ほど担当しています。
小規模といっても、その半分はいわゆる家族経営で年間棟数は2等~3棟が大半です。
最近は新築もめっきり減ったので、リフォームで食い扶持を繋いでいるのが実態ですが、とにかくZEHに対する認識が甘いと感じるケースが非常に多いとのこと。
地元の小規模工務店をお客さんにしている住宅設備機器会社としては、ハウスメーカーやビルダーはもちろんですが、家族経営を含めた小規模工務店に生き残ってもらわないと困る立場なのです。
いわゆる運命共同体と言えばよいでしょうか。
ですから、ZEHに関して国がロードマップをきれいに敷いている現状で、それに乗ってこない工務店の存在は、自らの存亡にも関わるので気が気ではないのでしょう。
営業「2030年までになんとかしないとまずいですよ社長。その前段階として25年にも一定の区切りが来ますので、それも強く意識してください」
社長「ZEHのことはもちろんわかっているけど、そのうち真剣に考えるから・・・もう少し待ってくれ」
こんな会話が繰り返されているそうです。
役者にこんなシーンを演じてもらった
筆者が現場で目の当たりにしたシーンを再現
今回のビデオは、ZEHを甘く見ている工務店の皆さんに目を覚ましてもらおうという内容なので、実際のコンサルティング現場で私が見たZEHにまつわるシーンをそのまま演技してもらいました。
- 工務店社長とお客さんとのやり取り
- ハウスメーカー営業マンとお客さんとのやり取り
- 筆者である私が解説
このような順番で8シーンを撮りました。
その中のワンシーンをご紹介しましょう。
工務店社長とお客さんとのやり取りです。
主人「うちの妻は極端な寒がりなんですよ」
社長「私はしっかりと断熱材も入れますし、床暖房をリビングやキッチンに入れれば奥さんの悩みも解決しますよ」
主人「それとは別にこれからZEHという仕様が義務になるんですよね。こちらもZEH仕様にはできるんですか」
社長「ZEHですよね・・・確かに義務にはなりますけどもまだ先の話ですし、ZEH仕様にしなくても、実質的には暖かいですから大きな問題はありません」
主人「でも、先日行ったハウスメーカーの営業マンは、これからZEHは必須だという話をしていましたよ」
社長「ハウスメーカーはそういうこと言うでしょうね・・・ まぁ、とにかくZEHにそこまでこだわらなくてもいいでしょう」
奥様「ZEHそのもの をよく知らないんですけども、とりあえずZEHの説明を聞きたいです。教えてもらえませんか、詳しく」
社長「ZEHですよね・・・ えっと・・・ZEHはですね、えっと・・・」
これは実話ですよ。
私は横で聞いていた
これも本当の話です。
小さな事務所でしたが、社長とお客さんとの商談を私が待つ形で、パーテーションを挟んで反対側に私がいました。
お客さんも私が横にいたことは気づいていたと思いますが、当然のことながら社長とお客さんとのやり取りを私はじっと耳をそばだてて聞いていたのです。
30分ぐらい話していた記憶がありますが、ZEHに関しては上のような会話が交わされたのです。
社長とお客さんの表情までは見ていませんが、ZEHのことについて探りを入れるお客さんから社長が逃げているのは、あからさまに分かったのです。
また、上の会話にもありますが、奥さんがやたらと社長にZEHの説明を求めていたのが印象的でした。
しかし、話の展開を考えると、ハウスメーカーでZEHの話を営業から徹底的にされているので「ZEHのことがよくわかりません。だから社長教えてくれますか」と聞くのは妙なことであることに気付きました。
奥さんは社長を試していたとしか考えられません。
ZEHから逃げていることをはすぐに気づくはずなので、そこを捉えて詰めに来たのでしょう。
このお客さんのその後ですが、アポイントは取れずじまいでそれっきりになりました。
ハウスメーカーは徹底的にZEH押し出す
これに対してハウスメーカーや地域のビルダーは、ZEHの話を全面的に押し出しています。
なんといっても国がロードマップを書いているわけですから、住宅会社がそれに乗るのが当然でしょう。
一条工務店などはスーパーZEHと称して、他社と差別化を図っているぐらいです。
社長のこんな言い訳
ある家族経営の社長の話です。
ZEHに関することは頭で分かっているものの、面倒臭がって避けていたのですが、口癖のように言うのが「うちの仕様はZEH基準だから実質的には同じだよ」というもの。
これが結構曲者で、ややこしいことをしなくても内容がZEH基準になっているのだから、お客さんには迷惑をかけない、という主張するのです。
でも、これは完全に間違っていますね。
① 補助金の対象にならない
国が推していることに対して補助金が付くのが常識です。
ZEHについても、いろいろな補助金がつくのと同時に、フラット35などでも金利の優遇などがあります。
補助金の申請もなかなかややこしいものがあるので、工務店の社長がついつい逃げてしまう理由の一つでしょう。
しかし、補助金についてはお客さんが最も聞きたがっていることの一つだということを認識してください。
② 資産価値が下がる
2030年には建築する全ての住宅がZEH仕様になると推測されるわけですから、日を追うごとに世の中に建っている家はどんどんZEH化されています。
そのような状況でマイホームを売ることになったらどうでしょう。
ZEHに対応していなければ、その価格が暴落することは火を見るより明らかでしょう。
ハウスメーカーはこのような話もしっかりお客さんにしてくるのです。
まとめ
今回のビデオは5月中にはリリースされますが、残念ながらオープンなものではありません。
しかし、1,000社を超える工務店が加盟する団体が配布する予定ですので、このコラムをご覧の工務店の中にも必ず目にする方がいるはずです。
そのような機会があれば「これがあのコラムのビデオか」とを思っていただき真剣に見てください。
全編でせいぜい20分程度に収める予定ですので、一気に目を通すことが可能です。