住宅営業の追客|「予定なし」の客も1年後30%が契約していた

住宅展示場で初回接客したお客さんが、アンケートの建築予定に「今のところ具体的な予定はなし」と丸を付けて帰っていきます。住宅営業がメールを2〜3回送り、電話も1回かけましたが、お客さんからの返事はありません。
このようなお客さんが、5か月後に同じ住宅会社の別の住宅展示場へ来場し、新卒社員の接客で商談に進みそうになっていました。私が調査に携わったハウスメーカーでも、初回面談で「ほぼ予定なし」などに丸を付けたお客さんの30パーセントが、1年後には契約済みでした。
本記事では、新卒営業から聞いた実例をもとに、「予定なし」と言うお客さんの追客を続ける理由と、住宅展示場の外観で誤解されないための確認の一言を解説します。
「予定なし」の客が5か月後に別の住宅展示場へ来た新卒営業の実例
私は新築営業のコンサルタントで、コロナの時代になってからはリモートをフルに使って活動しています。
ある日の午前中、私はある住宅会社の新卒社員のA君とリモートで30分ほど話をしました。
A君は1年生なので接客の機会はまだ少ないのですが、その少ない接客の中にも興味深い話がいくつもありました。
A君の話は、少数精鋭の工務店にも、住宅展示場をたくさん持つ住宅会社にも参考になります。経営者の方や、組織化された住宅会社の幹部社員の方にとっては「そういうことが結構あるんだね」となる話です。
私「今現在抱えるお客さんで一番いい人ってどんなケースかな?」
A君「昨日の話なのですが“ふらっ”と展示場にみえた方が商談の土俵に乗りそうです」
5か月前は「いつかやりたい」と話していたご夫婦
私がどんどん話を聞き込んでいくと、A君がたまたま接客したご夫婦は、5か月前に同じ住宅会社のほかの住宅展示場へ足を運んでいたことが分かりました。
住宅展示場に来るお客さんが、全員やる気満々ですぐに建てるわけではありません。
このご夫婦も5か月前のアンケートには「今のところ具体的な予定はなし」と書き、「いつかやりたい」というニュアンスの話をしていたそうです。
ご夫婦の話は嘘でも何でもなく、5か月前の時点では本当にそう思っていたとのことです。
ところが、人の気持ちは瞬時に変わりますし、取り巻く環境も急変します。
ご夫婦はさまざまな事情で急遽家を建てることになり、あらためて住宅展示場を回ろうということになったそうです。
先輩営業の連絡をそのままにしていた理由
ここまで聞くと、5か月前に接客した先輩営業はアプローチをしていなかったのか、という疑問が湧きます。
A君に聞いたところ、先輩営業はお客さんにきちんと連絡をとっていました。
お客さんが先輩営業の連絡を無視していたのが、事の真相です。
A君は、お客さんから直接こう聞いています。
「〇〇さんからはメールが2~3回きましたし、携帯電話に着信が一回知らない番号からあったから、恐らく彼だと思うんですよね。ただ、特に予定もなかったんで、申し訳ないけどそのままにしてしまいました」
これはよくあるケースです。今回はたまたま経緯が明らかになりました。
住宅営業が「予定なし」の自己申告を鵜呑みにしてはいけない理由
A君の一件から得られる教訓は、住宅展示場などでお客さんを初回接客したときに「今のところ予定が無いんですよ」と言われても、住宅営業はその言葉を鵜呑みにしないということです。
「ほぼ予定なし」の客の30パーセントが1年後に契約済みだった調査
この教訓を裏付けるデータも実際にあります。大手ハウスメーカーやそれに準ずる住宅会社では、初回面談で入手したアンケートの内容と、その後に建築計画がどう推移したかをデータ化して調べることがあります。
私もあるハウスメーカーの調査に携わりました。初回面談で建築予定を「3年以降」や「ほぼ予定なし」に丸を付けたお客さんが1年後にどうなっているかを調べたところ、なんと30パーセントが契約済みだったのです。
「まだ先」と答えた展示場来場者が契約に至った体験談と追客の考え方は、展示場来場者の追客の考え方で解説しています。
「それは自己申告」と思えという上司の教え
私はこの情報を現役の営業マン時代から知っていましたし、当時の上司からもこうしたデータをもとに次のように言われていました。
「お客さんがまだまだ先で具体的な予定はありません、こう言われた時には、表面上は受け流しても、心の中ではそれは自己申告ということでとりあえず伺っていきます、と思え」
住宅会社がこの原理原則を社内で徹底させるだけで、受注量は上がります。
住宅展示場のテイストを会社のデザインだと思い込むお客さん
ご夫婦が5か月前と同じ住宅展示場に行かなかった理由は、展示場の外観にありました。住宅展示場を持っている住宅会社の方には、よく聞いていただきたい話です。
多くの住宅会社は、外観も内観もお客さんの要望に応じてさまざまなテイストに対応できます。
クラシック調の落ち着いた家もつくれますし、近現代的なキュービックスタイルの家も建てられるかもしれません。
しかし、住宅展示場はその中の一つのパターンしかつくれないので、お客さんは展示場のテイストをその会社のデザインだと思い込みます。
ご夫婦が最初に見た住宅展示場は、重厚長大な外観でした。ご夫婦はそうした外観がまったく好みではなかったらしく、展示場の印象が何も残らなかったうえに、先輩営業からの連絡もスルーしました。
その後、建築計画が早まったご夫婦が住宅展示場をちらちらと見始めたところ、同じ住宅会社の違う展示場をたまたま見つけました。
その展示場はライトな感じで、ご夫婦の好みにドンピシャだったそうです。
ご夫婦は迷うことなく展示場に入り、そこでA君と出会いました。
「こんな外観もできるんですね。以前見た展示場は重々しい感じで私たちの趣味に全く合わなかったんですよ」
このパターンは大手住宅メーカーでも頻発しますが、ほとんどの住宅会社がこの重大性に気づいていません。
外観の好みで会社を選ぶデザイン重視のお客さんに、外壁の配色の根拠を説明して差別化する方法は、工務店のデザインによる差別化事例で解説しています。
住宅展示場の趣味が合うかを確かめる一言
住宅展示場のイメージがお客さんに刷り込まれる問題は、簡単に解決できます。
私が積水ハウス時代から部下によく言っていたのは「この展示場はお客さんの趣味に合いますか?」と確認することで、この確認だけで問題を回避できます。
接客中に聞く確認の一言
住宅営業は、住宅展示場でお客さんを接客している最中に確認します。タイミングは、歩きながらでも着座してからでもかまいません。
展示場接客の途中でお客さんの意思を確かめて話しすぎを防ぐ方法は、住宅営業の話しすぎを防ぐ一言で解説しています。
「こちらの展示場は、室内のクロスやフローリングをかなり落ち着いた感じでコーディネートしているのですが、お客様の趣味にあいますか?」
お客さんがイエスと答えれば、営業はそのまま話を弾ませればよいです。分譲地での初回接客の進め方は住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
趣味に合わないと言われたときに見せる施工事例
お客さんから芳しくない返事が返ってきたら、営業は次のように伝えます。
「こちらはあまりご趣味ではないとのことなんですけども、私たちはお客さんのテイストに合わせる力がありますので、全く違った外観の建物もたくさん建てています。こちらのパネルをご覧ください……」
営業が見せるのはパネルでも構いませんし、iPadなどに入れておいた、自社で建てたまったく違うテイストの外観写真でもかまいません。これだけで、お客さんの誤解は解け、折衝を円滑に進められるでしょう。
「予定なし」の客の追客を途中でやめない
今回のケースでは、最初に接客した先輩営業が結果としてミスをしたことになります。先輩営業がいちばんよくなかったのは、途中で追客を放棄したことです。
初回面談の印象で決めるなという上司の教え
私が現役時代にたくさん契約を取れたのは、当時の上司のごく単純な指導のおかげでした。
「初回面談の印象では絶対に決めるな。人間というのは簡単に心変わりするし、家を建てる条件や環境も一日経ったら全く変わってしまうんだよ。先入観なしに追客しろ。そして一番大事なのは、展示場に足を運んだということは、やる気があるから来たということだ。これだけ覚えとけ」
上司に「覚えておけ」と言われたので、私はしっかり覚えました。
上司の教えは今でも脳裏に焼きついていて、私は現在の営業マン指導でも頻繁に口にしています。
私自身の経験に加えて、コンサル先の営業社員に実地でやってもらうと、効果が必ず出るからです。
まとめ
新卒社員のA君が接客したご夫婦は、5か月前に「予定なし」と答え、先輩営業の連絡をスルーしていました。
ご夫婦が前と同じ住宅展示場に戻らなかったのは、最初に見た展示場の重厚長大な外観が好みに合わず、その外観を会社のデザインだと思い込んでいたからです。
住宅営業がすべきなのは、「予定なし」を自己申告として受け流して追客を続けることと、「この展示場はお客さんの趣味に合いますか?」と確かめることです。
私はコンサルタント歴24年になりますが、今も現場に足を運び、お客さんの取材も100件以上おこなってきました。
A君のように営業社員から接客や折衝の様子を直接聞くことも欠かしません。
現場で起きている話に、全ての答えがあるからです。
ぜひ本記事の新卒営業A君の実例を参考に、「予定なし」と言われて追客をやめてしまったお客さんのリストを見直してください。



