住宅営業の話しすぎを防ぐ一言|展示場で上司に指摘された体験談

私は住宅展示場の接客で自社の断熱構造を熱心に説明し、お客さんも私の目を見ながら何度も頷いていました。それでも、そのお客さんは私の話の半分以上を聞いていなかったのです。
私は積水ハウス時代に上司からそう指摘されて以来、説明の途中で「もっと詳しくお聞きになりますか?」とお客さんの意思を確かめ、興味のない話はしない接客に変えました。
私がライバルより多くの新築受注を取れた理由の一つは、お客さんに話す内容をかなり選んでいたことにあると自己分析しています。
本記事では、住宅営業が話しすぎを防ぐための確認トークと、お客さんの顔色の見方を、私の体験談をもとに解説します。
住宅展示場の接客で話しすぎた断熱材の説明(積水ハウス時代)
営業職である以上やむを得ないのですが、ぺらぺらと自社のアピールをする営業社員は多いと私は思います。
私も営業でしたので、その気持ちはよく分かります。
営業社員は、少しでも多くのことをお客さんに伝えよう、自信がある点は声高に主張しよう、ついでにプライベートの自分もアピールして気に入ってもらおうと考えます。
しかし、そうした話の多くが空振りに終わることを考えると、話す内容を取捨選択することがいかに重要かが分かります。
私も経験の浅い時代にはいろいろな失敗をしましたが、直属の上司の指導力が極めて高かったことは幸運でした。
接客を見ていた上司のひと言
いつものように住宅展示場で30分ほど接客をして事務室に戻ると、その上司が私を捉まえてこう言いました。
上司「今のお客さんの接客後ろでしばらく見てたんだけどさ」
私 「後ろにいたんですか?全然気づかなかったです」
上司「今のお前の顔色を見ると、なんとか充実感に溢れてんな」
私 「そんな風に見えますか(笑)まぁ、なかなか今の接客は力も入りましたし、お客さんも私の話をしっかり聞いてくれたと思います」
上司「違うな。お前の話の半分以上をあの人は聞いてなかったぞ。気づかなかったか?」
私はとても意外に感じました。
お客さんは私の話を熱心に聞いてくれましたし、私の目を見ながら何回も頷いていたことをはっきり覚えていたからです。
ところが上司の評価はまったく違い、今で言えば私の話は完全に滑っていたと指摘したのです。
頷いていても壁の構造の話は聞いていなかった
上司がこのとき最も強く私に指導したのは、「壁の構造説明は聞いていなかった」という点でした。私は断熱性を力説し、お客さんも明らかに話を聞いているように見えたので、私はこの意見に納得できませんでした。
しかし上司の見立てでは、お客さんは断熱材の話にさほど興味がなかったのに、私が熱弁するので聞いているふりをしていたというのです。
断熱材の話が住宅営業のトークとして通じるのがどのような場面かは、断熱材を営業トークにできる条件で解説しています。
住宅展示場のお客さんは話しすぎても嫌な顔をしない
住宅展示場に来たお客さんは、展示場を見させてもらっている立場です。
そのため、営業社員が関心のない説明をしても、お客さんが露骨に嫌な顔をすることはほぼありません。
これが営業のキモです。
自宅に突然やってきた訪問販売員なら話は別です。
訪問販売員は住人の意思に反して押しかけてきたわけですから、住人は興味がなければうるさそうな顔をして追い返せば済みます。
ところが住宅展示場は枠組みが違い、お客さんは営業社員の説明に付き合わざるを得ません。
上司に指摘された断熱材の説明も、お客さんから「断熱材の話を聞かせてくれ」と頼まれたわけではありませんでした。
私が積水ハウスの断熱構造をアピールしたくて仕方がなく、話の流れを無視していきなりトップスピードで説明し始めたのです。
上司はその流れを後ろから見ていたので、「お前の話は滑っている」と気づいたのでしょう。
初回接客で何をどの順で話すかは、分譲地での住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
話しすぎを防ぐ「お聞きになりますか?」の確認トーク
上司の指摘を受けてから、私は住宅展示場での接客を大きく変えました。この話は、私が今でも研修やコンサルティングで伝えている内容です。

説明を途中で区切ってお客さんの意思を確かめる
私が考えた接客では、断熱材の説明を途中で区切り、続きを聞くかどうかをお客さんに尋ねます。
私「壁の中は見えませんがこの中が本当に大事なんですよね。石膏ボードの中には断熱材があり、そして空気層があって、さらに外壁があるのですが・・・」
客「ふむふむ・・・」
私「もっと詳しい話を外壁の模型を使ってお話をできるのですが、お聞きになりますか?いかがでしょう」
客「あっ、とりあえず壁の話は分かりましたので、先にキッチンを見たいのですが」
私「承知しました。では、キッチンに行きましょう」
私は自社の壁の中の構造が自慢なので、お客さんにアピールしたくて仕方がありません。
しかし、お客さんはその話にあまり関心がないか、優先順位が低いかもしれません。
そこで私は、「もっと話を聞きたいですか?」とお客さんの意思を確認するようにしたのです。
この確認は効果覿面(てきめん)でした。
露骨に表情を変えるお客さんはほとんどいませんでしたが、私には顔つきや返事のニュアンスから「壁の話はもういいよ」という心の叫びが聞こえるようになり、これは私にとって大きな収穫でした。
展示場で奥さんがどこを見たがるかは、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
身を乗り出したお客さんには詳しく説明する
逆に、お客さんが身を乗り出して興味を示してきたら、営業社員はさらに詳しく説明すればよいのです。お客さんが聞きたがっている話であれば、営業社員はそれに応えていけば済みます。
顔色はトークを挟んでちらりと見る
「顔色をうかがう」と言うと小手先の話に聞こえて私は嫌なのですが、端的に言えばこの表現が妥当です。
ただ、営業社員がいかにも顔色をうかがっている表情をするのはいかがなものかと私は思います。
私は先ほどの確認トークを少しだけ挟み、お客さんの顔をちらりと見るようにしていました。
興味のないことを話さないとは、このように話す前にお客さんの関心を確かめることです。
商談や打ち合わせが長引くのも話しすぎが原因
先日、私は支店網を多く持つ大きな住宅会社のA社長と話をしました。A社長の悩みは「無駄な話で商談や打ち合わせが伸びて困るんだよ」というもので、その住宅会社では契約前・契約後に関わらず、お客さんとの商談時間が以前より大幅に長くなって問題になっていました。
A社長によると、5分で終わる話を営業や設計がだらだらと引き延ばし、10分、20分と長く話していることが原因らしいのです。
場合によっては話を盛り上げて多少長くするのはかまいません。
しかしA社長の分析では、5分で終えてもまったく問題ない雰囲気なのに営業や設計があえて突っ込みすぎる傾向があり、さらにお客さんも心の中で「その話は止めて〇〇の話に進んでくれないかな」と感じているふしがあるとのことでした。
私はその商談を見たわけではないので断定はできませんが、大変鋭いA社長の目からそう見えるのですから、的を射た指摘なのでしょう。
話の脱線は、商談の潤滑油として必要です。
しかし、営業社員が相手の望んでいない話を潤滑油だと錯覚して話し続けるのは、まったくの逆効果です。
設計担当とお客さんの打ち合わせが長引く原因と短くする手立ては、設計打ち合わせが長引く3つの原因で解説しています。
まとめ
住宅展示場のお客さんは、関心のない説明にも嫌な顔をせず付き合ってくれるため、住宅営業は話しすぎに気づきにくくなります。
私は上司の指摘をきっかけに、説明の途中で「お聞きになりますか?」と意思を確かめ、関心があれば詳しく話し、なければ次へ進む接客に変えました。
私は23年間にわたってさまざまな講演活動をしてきましたし、住宅営業としての話術も自分なりに会得しています。
それでも私は、ついつい自分の話をしたり、自慢話に聞こえることを滔々(とうとう)と話してしまったりすることがあります。
本記事をご覧の方々に同じことが当てはまっても不思議ではありません。
ぜひ本記事の確認トークを参考に、次の展示場接客では自社の強みを話す前に、お客さんがその話を聞きたいかどうかを確かめてください。


