積水ハウスの営業研修と商談の強さ|元社員が語る他社との5つの違い

積水ハウスの営業研修と商談の強さ|元社員が語る他社との5つの違い

私は積水ハウスの出身で、在籍していた頃から今に至るまで、「積水ハウスはなぜ競合に強いのですか?」と繰り返し聞かれてきました。

積水ハウスと他社との違いのうち、競合での強さを生んでいるのは住宅営業の体質です。具体的には、「勝って当然」と教え込む新人研修、客前での手書きプラン、よく練られた企画プラン、人物本位の採用、高い歩合給の5つで、このうち給与面を除く4つは、規模の大小を問わずどの住宅会社でも真似できます。

本記事では、積水ハウス出身の私が社内で経験した5つの違いと、工務店がそれを取り入れる方法を解説します。

積水ハウスと他社との違いは住宅営業の体質にある

在籍当時の私にとっては答えようのない質問でしたが、会社を離れて他メーカーの実情を知るにつれて、ある程度は答えられるようになりました。積水ハウスの中身は昔と比べて若干変わりましたが、競合に強い体質そのものはまったく変わっていません。

元社員の立場から見た積水ハウスの受注姿勢は、積水ハウスの国立マンション解体の背景で解説しています。

証券業界にも似た例があります。

山一證券がまだあった時代は、野村證券、日興證券、大和証券と合わせて4大証券と呼ばれていましたが、野村證券はその中でも異彩を放ち、競合に強い会社と言われていました。

同じ大手でも、強い会社にはなんらかの秘密があります。

積水ハウスの住宅営業が受けた「勝って当然」の新人研修

洗脳という言葉を使うと誤解されそうですが、冷静に分析すると、洗脳としか言いようのない事実がありました。現在はダイワハウスや一条工務店がぐんぐん勢力を伸ばしていますが、ある時期までは、住宅業界のトップメーカーといえばダントツで積水ハウスでした。

積水ハウスが累積100万棟を達成した年に、私は新卒で入社しました。最初の集団研修では、毎日のようにこんな指導がありました。

「私たちは日本でトップのメーカーだ。お客様に支持されてきたからこそ達成した数字なので、競合に負けるなどもってのほかということを忘れないように。ちゃんと提案をすれば負けること自体がおかしいわけだよ。本来なら積水ハウスで素晴らしい住宅に住めるお客さんを他社の住宅に住ませてしまうことがあってはならないぞ」

かなりものすごい理屈です(笑)。

それでも1か月に及ぶ缶詰研修の間、私たち新入社員は、毎日のように同じ趣旨のことを言われ続けました。

新卒の頭の中は空っぽで、余分な情報もありません。

実際に自分で売るようになってからも、私は競合案件になると「俺たちには競合で勝つ社会的使命があるのだ!」くらいのことは思っていました。

この研修は、積水ハウスが競合に強い理由に大きく貢献していたと私は考えています。

工務店で新人営業に1年目から取り組ませる研修の中身は、住宅営業の新人研修でやるべきことで解説しています。

お客さんの前でプランを書く積水ハウスの商談

退社してからだんだん分かってきた他社との大きな違いに、商談の進め方があります。

積水ハウスの営業社員は、お客さんとの商談中にシャープペンシルを出し、方眼紙の上に間取りを書いていきます。

私もかなり訓練をしたので、そこそこの綺麗さでスラスラと間取りを書けるようになりました。

支店による差はあったかもしれませんが、積水ハウスは他メーカーと比べて、かなり積極的にこれを推進していました。日本ハウスホールディングス(旧東日本ハウス)も同じことをしていたので独自の手法とは言えませんが、積水ハウスは少なくとも他社より徹底して訓練していたので、私はこれが競合に強かった原因の一つと考えています。

他社より練られた積水ハウスの企画プラン

ハウスメーカーは基本的にフリープランで対応しますが、決まった間取りの中から選ぶ企画プランも大量に持っています。口頭で説明するのは難しいのですが、積水ハウスが競合に強い理由として、企画プランがよくできていることを挙げざるを得ません。

在籍当時もそうでしたが、現在使われている各社のプラン集を見比べても、積水ハウスは頭一つリードしている感があります。以前と比べると差は相当縮まったと私は感じていますが、それでも積水ハウスの企画プラン集には、よく練られたものが多くあります。

企画プランのレベルの高さは、2つの場面で受注に好影響を与えます。ひとつは企画プラン同士の競合で、自社も競合会社も企画プランで提案する場合、魅力的なプランを準備している住宅会社が勝つ確率は当然高くなります。

もうひとつは注文住宅で勝負する場面で、こちらは少し説明が要ります。

注文住宅を建てるお客さんにとって、プラン作成は海のものとも山のものともつかない作業なので、営業社員から「どんなプランをお考えですか」と聞かれても、お客さんは適切に答えられません。

そこで頼りになるのが企画プラン集で、営業社員がヒアリングで要望をある程度つかんだ段階で企画プランを見せ、「ご希望のプランはこれに近いのではないですか?」と話を向けると、商談が進展しやすくなります。

プラン集から希望に近い間取りを示して商談を進めるやり方は、プラン集を使った企画プランの勧め方で解説しています。

企画プランの間取りの質が低ければ、この進め方はうまくいきません。

人物本位の採用と歩合給に見る積水ハウスの社風

学歴がばらばらな営業社員

積水ハウスの幹部クラスの社員が、「積水ハウスは今も昔も人的資源は豊富ですよね」と話していました。私は現役社員ではないので、現在の積水ハウスと他社を直接見比べることはできませんが、入社した当時に先輩社員たちのレベルの高さに驚いたことは、今でもはっきり覚えています。

優秀な人材というと高学歴の人が集まっているように思われがちですが、住宅営業ではこの法則はあまり当てはまりません。学歴は分かりやすい指標の一つですが、積水ハウスの社員の学歴にはまったく一貫性がなく、私の同期も、配属された支店の先輩たちも千差万別でした。

積水ハウスは人物本位で見る採用方針をとっており、その結果として競合に強い人材を集めることに成功しています。

銀行であれば、大学名だけで出世コースに乗るかどうかを最初から選別されるでしょう。

積水ハウスにはそのような理不尽な仕組みも空気も一切なく、それが営業力の強い野武士集団を形づくっていたと私は分析しています。

売るほど見返りが大きい歩合給

大手ハウスメーカーの千葉支店に勤めていた高校の同級生は、勤め先の社風について「普通の会社だし1棟受注しても一律3万円だよ」と話していました。

こうした給与体系と比べると、積水ハウスは同じ業界でも給料が高いことで知られる会社でした。

業界の悪い部分と裏表の関係ではありますが、歩合給が高く、売れば見返りが大きかったことが、営業社員の競合への闘争心を燃やした理由のひとつであることは否めません。

私も2年目の給料は800万円を大きく超えたので、現在の水準で見ても相当な高給です。

歩合給を支払う時期とトラブルの原因は、ハウスメーカー営業の歩合給の仕組みで解説しています。

月末などに競合物件の折衝をしていると、私は頭の中で「この物件を受注できれば来月の歩合が〇〇万円増えるぞ!」と計算し、気合を入れて臨んでいました。

工務店が積水ハウスとの違いを埋める方法

商談中に部屋の一部だけを手書きする

私は今でもコンサル先で、お客さんの前でプランを書くことをしつこく指導しています。

効果が高いので、住宅会社の規模を問わず実施すべきです。

全部を書いていたら時間がいくらあっても足りないので、部屋の一部だけで十分です。

たとえば子供部屋の話をしているなら、営業社員は子供部屋の間取りをその場で書きながら説明してください。

大したことではないと思われるかもしれませんが、競合した場合にはこの行為が他社との違いを際立たせます。

私が住宅会社の経営者であれば、営業社員のプランニング能力を上げる研修を徹底的に行います。

初回の商談での話の進め方は、分譲地での住宅営業の初回接客のコツで、商談の早い段階で競合と差をつける方法は、住宅営業のアポ取りのコツで解説しています。

まとめ

積水ハウスと他社との違いは、「勝って当然」と教え込む新人研修、客前での手書きプラン、よく練られた企画プラン、人物本位の採用、高い歩合給の5つにあります。どの業界でも、競合に強いと呼ばれる会社には、ささいなことも含めて他社とは違う空気があります。

給与面を除けば、規模の大きな住宅会社でも小さな工務店でも、どれも真似できる内容です。

ぜひ本記事の5つの違いを参考に、自社の営業研修や商談の進め方を見直してください。

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