ヒートショック対策の営業トーク|交通事故死者の4倍をどう伝えるか

冬が近づくと、ハウスメーカーのホームページや住宅展示場前のブラックボード、携帯に届くダイレクトメールに「弊社の住宅はとにかく暖かい」「湿度を40%から60%に保ちます」「ヒートショックに備えよう」といった文言が並び始めます。
首都圏で全館空調を打ち出すある住宅会社の営業マンは、ヒートショックの怖さを説明してから全館空調の話をすると、多くのお客さんが真剣に聞き、契約の動機にもなると私に話してくれました。工務店も、ヒートショックの資料を先に見せ、その後で自社の暖かさを説明する順番で営業トークを組み立てられます。
本記事では、ヒートショックの基本と、住宅会社が冬に打ち出すアピールの事例、工務店がヒートショック対策を営業トークに使う方法を解説します。
ヒートショックとは|住宅営業がお客さんに説明する入浴時の温度差
ヒートショックを一言でまとめると、急激な温度変化によって体がダメージを受けることです。日本各地が寒くなり、冬を迎えるころになると、ヒートショックの問題が一気に表面化してきます。
暖かい部屋からお風呂までの動線で起きる温度変化
冬場にお風呂に入るまでの動線を考えてみてください。
住んでいる人は暖かい部屋から寒い廊下に出て、脱衣洗面所で服を脱ぎ、今度は熱いお風呂に一気に身を沈めます。
この過程での体温の急激な変化が、心筋梗塞や脳内出血などの致命的な症状に発展することがあります。
頭が少しクラクラするくらいならまだましですが、ヒートショックによって年間万単位の人が命を落としています。
お風呂で亡くなる人は交通事故の死者の約4倍
多くの人が驚くのですが、交通事故の年間死者が約5000人であるのに対し、ヒートショックによってお風呂で亡くなる人はその約4倍にあたる19,000人にも達します。
街中を歩くときに車に気をつけることは誰でも考えますが、実際にはお風呂に入るときのほうが、その4倍も気をつけなくてはいけません。
リンナイのホームページに掲載されている表を見ると、この差がすぐに分かります。
※リンナイホームページより
ハウスメーカーのヒートショック対策アピールと住宅展示場での評判
大手ハウスメーカーを中心とした住宅会社は、冬場になるとヒートショックの問題に言及し始めます。「魔法瓶住宅」という表現もありますが、これらの住宅会社は、家の中のどこにいても一定の温度で暖かいことを打ち出しています。
数値と全館空調で暖かさを打ち出す住宅会社
「家は性能」でおなじみの一条工務店はその典型で、C値、Q値、UA値などさまざまな数値を使い、自社の住宅がいかに暖かいかをアピールしています。
一条工務店を比べているお客さんへの接客は、住宅展示場の集客方法で解説しています。
また、首都圏を中心に地道な営業活動をするある住宅会社は、自社独自の全館空調の仕様を前面に出し、同じように徹底的にアピールしています。
全館空調を知らなかったお客さんが住宅展示場でファンになる
現場の声を聞いている限り、こうしたアピールはお客さんから大変評判が良いのが実情です。
全館空調は欧米で発達したシステムで、日本人にはなじみがありません。
そのため、住宅展示場に来るまで全館空調という概念を持っているお客さんはほとんどいませんが、営業マンが熱心に説明すると、お客さんも納得してその住宅会社のファンになるケースが多くあります。
私が首都圏の住宅会社の営業マンに詳しく聞いてみると、次のように話してくれました。
「ヒートショックの怖さをしっかり説明した上で全館空調のことをお話すると、多くのお客さんは真剣に聞いてくれ、契約の動機ともなります」
欧米の室内温度の法律に見るヒートショック対策の考え方
欧米の先進国には、室内の最低温度を18°から23°にしなくてはならないという法律があります。日本の古い家では、部屋は暖かいのに廊下に出るといきなり温度が下がり、そのままトイレに行くとさらに寒くなることがよくありますが、欧米の住宅ではそうしたことは起きません。
※アセットフォーホームページより
上の表はイギリス保健省の指針で、室温16°未満は非常に危険であるとはっきり示しています。
日本人の感覚では「そこまで法律で決めることはないだろう」と思ってしまいますが、日本より緯度が高く冬の気温が低いヨーロッパでは当たり前のことです。
ヨーロッパでは、ヒートショックから身を守ることが家族の健康を守り、ひいては命を守ることだという認識が一般的になっています。
日本ではなかなかここまでの考えにはなりませんが、ヒートショックによる死者が交通事故の死者の4倍に達することを考えれば、住宅会社はこの事実をお客さんに徹底的にアピールするべきだと私は考えます。
工務店がヒートショックを営業トークの軸にする方法
工務店がヒートショックを打ち出すには、自社の住宅が魔法瓶住宅のように温度が均一で暖かいことが絶対条件です。そのうえで、次の順番で営業トークを組み立てます。
ヒートショックの怖さを示す資料を集めて見せる
私が営業であれば、ヒートショックがいかに怖いかという資料を徹底的に集めてお客さんに提示します。営業マンがしっかりと説明をすれば、ヒートショックの怖さはお客さんにも伝わるはずです。
ヒートショックの怖さを伝える資料や商談での会話例は、ヒートショックを伝える商談資料と会話例で解説しています。
資料を見せた後で自社の暖かさを説明する
次のように自信を持っている工務店さんであれば、ヒートショックという言葉をもっと前面に押し出してください。
「うちの構造はとても暖かいよ」
お客さんがヒートショックの怖さを理解した後であれば、「弊社はヒートショック対策を十二分に考えた家づくりをしています」という営業トークが生きてきます。
ヒートショック対策は湿度40%から60%まで説明する
九州のある住宅会社は、独自のシステムを家の中に取り入れ、温度を一定の幅に保つのはもちろん、湿度も40%から60%に保てるようにしています。
冬場に温度を一定にする考えで設計された住宅はたくさんあります。しかし、実際に住んだお客さんに意見を聞くと、「こんなに乾燥するとは思わなかった」「朝起きると喉が痛い」「各部屋に加湿器を置かないといられない」といった話が出てきますし、ツイッターなどを調べても、同じような意見をあちこちで見かけます。
工務店が湿度の調整に対応していなければ話になりませんが、実際には温度だけでなく湿度も極めて重要なキーワードになります。これから住宅展示場を建てる工務店や、住宅の仕様を見直そうとしている工務店には、単価が多少高くなっても、冬場の湿度を40%から60%に保つシステムを導入することを私は勧めます。
高性能な設備をオプションにせず標準仕様にして売る考え方は、高性能住宅が売れない理由で解説しています。
私は九州の住宅会社で、営業マンが冬場にお客さんを接客している場面を何度も見てきましたが、湿度調整システムの話になると真剣に説明を聞くお客さんの姿を何人も見ています。また、九州の住宅会社と契約したお客さんにも私が数件取材したところ、営業マンから聞いた湿度の話が強く頭に残っていると全員が話していました。
まとめ
ヒートショックでお風呂で亡くなる人は交通事故の死者の約4倍に達し、欧米では室内の最低温度が法律で決められています。冬になると大手ハウスメーカーを中心とした住宅会社がこの問題に言及し、一条工務店は数値で、首都圏のある住宅会社は全館空調で暖かさを打ち出しており、お客さんからの評判も良好です。
工務店がヒートショックを営業トークの軸にするなら、温度が均一な住宅であることを前提に、怖さを示す資料を先に見せ、その後で自社の暖かさと湿度40%から60%を保つ仕組みを説明する順番が、九州や首都圏の住宅会社の接客から分かります。
ぜひ本記事の住宅会社の事例と資料を参考に、冬の商談で使うヒートショック対策の営業トークを準備してください。



