工務店の見積書の書き方|表紙の5項目と条件書、値引きの注意点

工務店が誠実に適正価格で見積書を作っても、お客さんに「なんだか嘘くさいし、いい加減な感じがするよな」と思われては受注が取れません。
お客さんが見積書に不信感を持つ原因は、金額そのものよりも、大きすぎる値引きや抜けている表紙の項目、含まない費用の書き忘れ、そして中身の説明不足にあります。私が見た例では、3,800万円から700万円を引いた大手ハウスメーカーの見積書が、お客さんの不信感を招いて契約に至りませんでした。
本記事では、工務店の見積書の表紙に書く項目、条件書の書き方、値引きの見せ方、見積もり内容の説明の仕方を解説します。
工務店の見積書の表紙に書く5つの項目
わざわざ取り上げなくても良さそうですが、工務店の見積書で案外項目が抜け落ちているのが表紙です。
表紙でいちばん重要なのはお見積り金額となる合計金額で、さすがに合計金額を書かない人はいません。
そのほかに会社名と住所・連絡先、見積もりをした日付を書きますが、工務店の担当者が忘れがちなのが見積もりの有効期限と支払い条件です。
金額・小計・消費税・合計を自動で計算できる見積書の書式は、工事見積書のExcelテンプレートで解説しています。
| 表紙の項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 合計金額 | お見積り金額の総額 |
| 会社名・住所・連絡先 | 見積もりを出した工務店の情報 |
| 見積もりの日付 | 見積もりを作成した日 |
| 有効期限 | 見積もり金額が有効な期限(忘れがち) |
| 支払い条件 | 契約金・着工時・上棟時・引き渡し時の入金時期と金額(忘れがち) |
支払い条件は慣例と今の実態の両方を踏まえて書く
日本の古い慣例にしたがえば、支払い条件は着工時1/3、上棟時1/3、引き渡し時1/3です。
しかし現在では、このルールはかなり有名無実化していると言ってもいいでしょう。
頭金なしのケースも結構あるので、工務店は契約金として100万円もらえれば充分だとも言えます。
ただ、工務店の資金繰りが苦しい場合は、契約金100万円だけでは承服しがたいこともあるでしょう。少しでも入金額を多くしたい工務店は、昔からの慣例では着工までに1/3を入金してもらうものだと、お客さんにしっかり説明すれば良いと思います。
私は積水ハウス出身ですが、当時の積水ハウスでは契約金100万円が最低限の水準でした。
今だからこそ言えますが、新入社員の頃の私には、この100万円を堂々と求めることにためらいがありました。
会社員になるまでは学生だったわけですから、住宅という高い買い物であっても「とりあえず100万円ください」と言うことに抵抗があったのでしょうね。
見積書に含まない費用は条件書に書く
条件書は、呼び方は他にもあると思いますが、その見積もりに関する特別な条件や、お客さんに注意してほしいポイントを明記する書類です。
条件書はトラブル回避のために欠かせない書類で、目立つ形でわかりやすく書くことが最低条件です。
そのうえで工務店の担当者は、条件書の中身をお客さんにしっかり説明してください。
積水ハウス時代の樫の木の移植トラブル
私は積水ハウス時代に、条件書のことでトラブルになった経験があります。
建て替えのお客さんで、庭の隅に樫(かし)の木がありました。
実際の工事では樫の木を移植することになっていましたが、見積もりの段階では移植の価格がよく分からなかったので、私たちは別途工事と考えていました。
ところがお客さんは、本見積もりにすべて含まれていると考えていたため、結果としてかなり大きなトラブルになってしまいました。このトラブルを避けるには、私たちが「樫の木の移植は見積もりに含んでいません」と見積書にはっきり書くべきでした。
「この見積もりに〇〇は入っていません」と明記する
工務店は条件書に、「この見積もりに〇〇は入っていません」という項目を入れてください。〇〇に当てはまるものはその時々で変わりますが、この項目には十分注意するよう、私からご進言いたします。
敷地調査のアポの取り方と他社との差別化は、住宅営業のアポ取りのコツで解説しています。
大きすぎる値引きは見積書の信用を落とす
工務店は見積書の金額を、予期せぬトラブルを心配して高く出しすぎるわけにもいかず、安く出しすぎると途中の目論見違いで損益分岐点さえ割り込みかねません。
そのうえ住宅業界では「調整値引き」や「出精値引き」という言葉を使いますが、値引きはお客さんにとって関心の高い項目です。
私がたまに見かけて問題だと感じるのが、値引き額が非常に大きい見積書です。
通販番組の「2万円引き」を住宅会社が真似てはいけない
先日、私はBSテレビを見ていて感じたことがあります。通販番組で掃除機を売っていたのですが、通常32,000円のところを、30分以内に電話をくれれば2万円値引いて12,000円にするというのです。
さすがに笑うしかありませんが、この値引きに釣られるお客さんが多いので成り立つ商売なのでしょう。
しかし、私たち住宅会社がこれを真似てはいけません。
3,000万円の見積もりに対して「400万円引きます」などという馬鹿げた見積書は、出すべきではありません。
3,800万円から700万円を引いた大手ハウスメーカーの見積書
ところが、こんな馬鹿げたことをつい最近まで大手のハウスメーカーでさえやっていました。
私が実際に見た見積書で最大だったのは、3,800万円から700万円引いて3,100万円にしたケースです。
誰もが知る大手ハウスメーカーの見積書でしたが、お客さんが不信感を持ち、結果的には契約しなかったそうです。
住宅会社が値引き額を大きく見せたい気持ちは分かりますが、極端に吹かした金額から大きく値引く見積書は出してはいけないと私は思います。
説明を求められなくても見積書の中身を説明する
ダメな例と良い例の違いは最初の一言
工務店の商談で見積書を出す場面を、ダメな例と良い例で比べます。
あなた「こちらが今回のお見積りです。総額で2,345万円です。いかがでしょうか?」
お客様「そうね……こんなもんなのかな」
あなた「どうですか? 問題なければこのままお話を進めていきたいのですが」
お客様「そうね……」
あなた「こちらが今回のお見積りです。総額で2,345万円です。いかがでしょうか?」
お客様「そうね……こんなもんなのかな」
あなた「お見積りの内容は一般の方にはわかりにくいと思いますので一通り説明させていただきます。そのうえで、問題なければこのままお話を進めていきたいのですが」
お客様「そうね……」
二つの会話の違いは、良い例で太字にした説明の申し出だけです。
商談でたまに見かけるのですが、工務店の担当者はお客さんがとくに聞いてこなければ、「まぁ、いいか、スルーしよう」としてしまいます。
お客さんが疑問を抱いていないのだからいいだろうと考えがちですが、私はこれを禁じ手だと考えています。
帰りの車で夫婦が話していること
説明を省いた商談の帰り道、お客さんの夫婦は車の中でこんな会話をしています。
主人「さっきの見積もりどう思う?」
妻「金額はよくわからないけども、中身の説明を社長はしっかりしてくれなかったわよね?」
主人「俺もそう思ったんだよ。先週行ったS工務店はこと細かに説明してくれたよな」
妻「そのあたりにちょっと不信感を抱くよね」
工務店の側からすれば「その場で言ってくれればいいのに」と思うところですが、実際にはそうはいきません。
私は、目の前で思ったことをはきはきとすぐに言う人は、日本人の場合は少数だと思います。
お客さんに、見積もりの詳細を説明されてもよく分からないかもしれないという気持ちがあればなおさらです。
気の弱いお客さんになると、「詳細を説明してくれと頼んでも、話したところでどうせ分からないだろう」と工務店の社長に思われるのではないか、と考えるケースもあります。
工務店が説明をしたところで、お客さんは内容がよく分からないかもしれず、むしろ分からない人の割合の方が高いと私は思います。
しかし、工務店が細かく説明をしてくれたこと自体が、見積書の信頼性を担保します。
お客さんから求められなかったからといって説明をしないのは、自分の首を絞める行為だと肝に銘じてください。
見積書の中でも説明を省きがちな諸経費を、一式でまとめず内訳で示す方法は、工務店の見積もりの諸経費の説明で解説しています。
まとめ
工務店の見積書は、表紙に合計金額・会社情報・日付に加えて有効期限と支払い条件を書きます。含まない費用は条件書に「この見積もりに〇〇は入っていません」とはっきり書き、極端に吹かした金額からの大幅な値引きで見せ場を作らないことも欠かせません。
そして工務店の担当者は、見積書を出したら、お客さんから求められなくても中身を説明してください。
ぜひ本記事の表紙の5項目と条件書の書き方を参考に、次に出す見積書と商談での説明の仕方を見直してください。



