信頼される工務店の条件とは?住職に10年工事を任された取材事例

三重県四日市市の小規模工務店の社長は、市の耐震補強相談会でアポを取らずにご住職と別れました。それにもかかわらず、社長は1週間ほどでご住職から「もう一度会いたい」という電話を受けています。
社長はそれからの10年間で、ご住職の自宅、本堂の耐震工事と床暖房、離れ、庫裡(くり)の工事まで一切を任されました。
ご住職の奥さんが社長を信頼した理由は3つあります。
どんな質問にも誠実に答えたこと、営業の匂いがしなかったこと、1回3〜4時間の打ち合わせにも付き合ったことです。
本記事では、私がカメラを抱えて同行したお寺での取材をもとに、小規模工務店がお客さんの信頼を得て工事を任され続けた理由を解説します。
住職から信頼された工務店が10年で任された工事
取材したのは、三重県四日市市にある小規模工務店です。
私はこの工務店のYouTube動画の作成を手伝っています。
社長と動画のネタを話し合っていたとき、ご住職の話が出ました。
そこで私が「ぜひ取材しましょう」と提案しました。
社長と歴史あるお寺のご住職が面識を持ったのは今から10年前で、ひょんなご縁がきっかけでした。社長の工務店は、それから10年間で次の工事をご住職から任されています。
- ご住職の自宅
- 本堂の耐震工事
- 本堂の床暖房
- ご夫婦の離れ
- お寺の古い部分のリフォーム
- 庫裡の新築工事
私が社長と一緒にお寺に伺ったのは、2月の半ばです。
「YouTubeに出てくれませんか?」という問いかけに、ご住職は二つ返事でOKを出してくれました。
この写真は、動画撮影の後に撮ったものです。真ん中がご住職、右側が工務店の社長、左端が私です。
実際にお会いすると、ご年齢もあるのでしょうが、ご住職はやはり住職というお仕事柄の話しぶりでした。
私はご住職のちょっとした話のすべてに「なるほど」「おっしゃるとおりでございます」と、つい聞き入ってしまいました(笑)。
雑談も交えましたが、取材の本題は社長との初対面の様子と、10年もお付き合いが続いた経緯です。
私は取材に徹していました。
そのおかげで、ご住職と社長の関係性や、ご住職が社長のどこを見て信頼を寄せたのかを、すぐそばで目の当たりにしました。
信頼のきっかけは工務店社長の耐震補強相談会での対応
アポを取らずに「ご連絡下さい」とだけ伝えた
四日市市が主催する建物の耐震補強相談会があり、ご住職はそこへたまたま出かけました。
そのときの当番が社長でした。
社長はその場でご住職といろいろ話をしましたが、特に追客はしていません。
「お話がまとまったらご連絡下さい」とだけ伝えて、ご住職と別れています。
「次回の約束を取ろうとかそういう考え自体がなかったですよね。その気になったら連絡下さいね、という別れ方です」
私のような純粋な営業出身の人間は、この場面なら無意識のうちに次のアポを何とか取ろうと動いてしまいます。
私は営業の基本として、それでよいと思っています。
ただ、工務店から何もアクションを起こさずにお客さんから声がかかるのであれば、そちらのほうがスマートです。
アポを取りにいく側の進め方は、住宅営業の敷地調査のアポ取りと差別化で解説しています。
1週間後にご住職から「もう一度会いたい」と電話
相談会では具体的な相談をして、そのまま終わりました。ところが1週間ほどして、ご住職から社長宛てに電話がありました。
ご住職「この前色々お話を伺いましたが、具体的に動きたいのでもう一度会うことはできませんか」
社長「はいもちろん構いませんよ」
ご住職「私の妻が社長に是非お会いして家の相談をしたいと話すものですから」
ご住職の奥さんが社長を信頼した2つの理由
どんな質問にも誠実に答えた
ご住職への取材で出てきた答えは、次の一言でした。
「どんなことを聞いてもしっかりと誠実に返事をくれた」
当たり前といえば当たり前ですが、奥さんの印象に強く残っていたのは、耐震補強のありとあらゆる質問に社長が詳しく答えたことでした。
誠実さも高く評価されたようですが、誠実さは個人の資質もあるので、私からどうこうは言いようがありません(笑)。
社長を知っている私から見ても、社長は早口でまくしたてることはありません。
ゆっくりとかみ砕くように、落ち着いて話す人です。
追客せずお客さんのペースに合わせた
社長は、自分の営業の考え方を次のように話しています。
「ビジネスですからこちらから追客することは大事だと思いますが、可能な限りお客さんのペースでやりたいですからね」
この方針は、私の営業方針とは若干方向性が違います。
それでも、私は住宅営業として理想の形だと思います。
工務店がお客さんを追いかけずに受注を得られるなら、それが最高の営業手法です。
ご住職はほかにもいろいろな話をされていましたが、それ以上具体的にはお伝えしようがありません。
「なんとなく全体的に良かった」という表現になってしまうからです。
ベタな結論になりますが、奥さんの信頼につながった理由は2つだと私は考えています。
社長が誠実に話をしたことと、社長から営業の匂いがまったくしなかったことです。
10年間工事を任され続けた工務店の打ち合わせ
ご住職と奥さんが初回面談の対応を気に入り、最初に家を建てたところまでは理解できます。
しかし、ご夫婦は10年にわたって次々と新しい工事を社長に依頼しました。
そうなると、その過程にもご夫婦を惹きつける何かがあったはずです。
奥さんが納得するまで3〜4時間話を聞いた
「私の妻はこの社長はとにかく話を徹底的に聞いてくれたと言うんですよね。一回の打ち合わせで3時間も4時間も延々と打ち合わせをするということも頻繁にありました」
私の結論も、ご住職のこの言葉にあります。
住宅会社が新築の建築請負契約をした後に、トラブルを起こすことはよくあります。
契約までは何とか取り繕っても、その後にボロが出て信頼を失うからです。
しかし、社長は違いました。
奥さんは最初、社長の人間性に惹かれて契約しました。
打ち合わせを重ねると、社長は奥さんが納得するまで徹底的に話に付き合ったそうです。
何か頼まれれば、社長は徹底的に調べ、分厚い資料を持って打ち合わせに臨みました。
その態度にますます信頼を寄せた奥さんが、家の後の工事も次々と社長に任せていったのです。
新築を建てたOB施主から次の工事を受注する進め方は、工務店がOB施主からリフォームを受注する方法で解説しています。
最新の工事は本堂の床暖房
この写真はビデオ取材のときのもので、取材場所はお寺の本堂です。
社長の工務店が手がけた最新の工事が、この本堂の床暖房でした。
私がお邪魔したのは2月の厳冬期でしたが、床暖房のおかげで足元はポカポカでした。
お寺に来る方の年齢層を考えると、寒さは体にかなりこたえます。
そのため、檀家の方々は床暖房を大絶賛しているそうです。
取材で印象的だった「本当にいい人に出会えた」の言葉
私は40分ほどご住職からお話を伺い、その後に離れや庫裡などを見せていただきました。取材で印象的だったのは、ご住職が何度も「本当にいい人に出会えた」と繰り返したことです。
工務店が受注を取るには、SNS戦略やDX戦略といった最先端のものを取り入れることも重要です。しかし、この社長のように「いい人に出会った」とお客さんから言われる行動を忘れては、受注は成り立たないと私は考えています。
お客さんから選ばれるために工務店が備えたい条件は、選ばれる工務店になるための6つの条件で解説しています。
よくある質問
庫裡(くり)とはどんな建物ですか?
庫裡は、住職などお寺の関係者が住んだり休んだりする場所で、食事を作るところでもあります。「裡」の字には「裏」を当てることもあり、中や内という意味を持っています。
まとめ
四日市市の小規模工務店の社長は、耐震補強相談会でアポを取らずに別れたご住職から、10年間にわたって自宅、本堂、離れ、庫裡の工事を任されました。ご住職の奥さんが社長を信頼したのは、社長が質問に誠実に答え、営業の匂いをさせず、納得するまで話を聞いたからです。
ぜひ本記事の取材事例を参考に、相談会やイベントで出会ったお客さんとの接し方を見直してください。



