工務店の倒産原因は?2社の実例と増える倒産件数【2026年】

住宅会社のコンサルをしていると、取引先の建材会社から「あそこの工務店、やめたらしいですよ」と聞かされることが毎月のようにあります。
工務店が倒産する原因は、資材価格の高騰による赤字と受注の減少が直接の引き金になるケースがほとんどです。
東京商工リサーチによると、2026年1〜6月のハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産は118件で、前年同期から約9割増えました。
ただ、同じ環境でも生き残る会社はあります。
私が見てきた倒産事例では、受注が落ちる前から「発信が止まる」「デザインに特徴がない」という共通点がありました。
本記事では、三重県鈴鹿市の住宅会社の破産と、私が昔から知っていた従業員8人の工務店の倒産という2つの実例から、工務店が倒産する原因と避けるための手立てを解説します。
工務店の倒産は2026年に急増している
住宅会社の倒産はいつの時代にも起きますが、ここ数年は件数が目に見えて増えています。
東京商工リサーチの集計では、2026年上半期(1〜6月)のハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産は118件にのぼり、前年同期の約1.9倍になりました。
背景として挙げられているのは、コスト高と人手不足です(出典:東京商工リサーチ「ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃」)。
倒産が増えている理由と工務店がとれる対策は、工務店の倒産が急増する理由と対策で解説しています。
過去を振り返れば、小規模工務店だけでなく大きな会社の倒産も何度もありました。
それでも今の勢いは別物で、この流れがすぐに落ち着くとは私は考えていません。
だからこそ、実際に倒産した会社がなぜそうなったのかを分析しておくことが、経営者にとって極めて重要だと考えます。
三重県鈴鹿市の工務店が破産した事例
帝国データバンクが発表した破産の概要
2025年5月10日の伊勢新聞に、三重県鈴鹿市の住宅建築会社「プロヴァンス・ハウシーズ」が津地方裁判所から破産手続き開始決定を受けたという記事が載りました。帝国データバンク四日市支店の発表によると、負債は約1億6100万円の見込みです。
同社は2005年に設立され、欧風デザインをコンセプトに新築やリフォームを手がけ、2009年7月期には約2億9500万円の売上高を計上していました。
しかし資材価格の高騰で赤字決算が続き、同業者との競争激化で受注も減少します。
直近の売上高は約1億1500万円まで落ち込み、2025年2月に事業を停止しました(出典:伊勢新聞「鈴鹿の建築会社、破産手続き開始決定 負債1億6100万円」)。
新築とあわせてリフォームを手がける会社の倒産の動向と、生き残った会社の事例は、リフォーム業者の倒産が増えた理由で解説しています。
従業員5名ほどの会社ですから、1棟の受注が取れるかどうかで業績が大きく左右される状態だったはずです。
ホームページのコラムが2019年で止まっていた
同社のホームページはまだ残っていたので、全部確認しました。
YouTubeには自社のチャンネルがなく、15年ほど前に放映していたテレビCMの動画が1本あるだけです。
CMには社長も登場し、イタリア人の従業員も顔を出して挨拶していました。
一点気にかかったのは、ホームページのコラムの更新が2019年を最後に途絶えていたことです。
倒産直前に何らかの理由で最近の記事を削除した可能性もありますが、そうでなければかなりまずい状態です。
InstagramやYouTubeの更新に忙しかったのかもしれませんが、不特定多数のお客さんを相手にする仕事で、発信が5年も止まるのは問題ではないでしょうか。
従業員8人の2代目工務店が倒産した原因
もう1社は、私が昔から知っている工務店です。
お父さんの代から引き継いだ2代目の社長が経営していましたが、2025年に入って倒産しました。
この事実は、取引先の建材会社から聞きました。
SNSの発信が止まり新規客を逃した
身もふたもない話ですが、直接の原因は営業力の不足です。業界全体が冷え込んでいるので受注が下がるのはやむをえないとしても、大きな問題はSNSへの認識不足だったと私は考えています。
展示場を持たない工務店にとって、SNSで情報を発信するのは今の時代、必ずやらなければいけないことです。
この会社もInstagramだけはやっていましたが、内容はマンネリ化し、自社で建てた家の内装や外観を説明もなく、ただだらだらと載せている状態でした。
私も以前から気づいていて、「工夫もないし面白くないな」と思っていたところです。
コロナ禍に入ってから、社長には「せっかくだからYouTubeで動画を発信したほうがいいですよ」と話したことがあります。
しかしYouTubeには取り組む気がなく、Xもアカウントは作ったものの開店休業でした。
展示場もショールームも持たず、新規客が減っている中でSNSをやらなかったのは、かなりの致命傷だったと感じています。
デザインに特徴がなく若い世帯に選ばれなかった
親子2代でやってきた工務店なので、一定の技術力と信用は間違いなくある会社でした。しかし社長自身も認めていたように、デザインやその他の特徴があまりにないのが大きな問題でした。
建てる家は、昔ながらの工務店が作ったと感じさせるテイストです。
若いご夫婦、とくに奥さんが気持ちを引かれるデザインでないことは確かでした。
社長には「デザインが大事なのは分かるが、家の本質はそこではない」という考えがありました。
腕に自信のある経営者ほど陥りやすい罠ですが、デザインが住宅の品質に負けず劣らず大事だと気づくのが遅れたのだと思います。
経営者の考え方だけでなく、社長の行動が原因で社員が去り会社がなくなるまでの流れは、社長の暴走で倒産した工務店の実話で解説しています。
倒産する工務店に共通する3つの原因
2つの事例と東京商工リサーチの分析を重ねると、倒産する工務店には次の共通点が見えてきます。
資材価格の高騰を価格に転嫁できず赤字が続く
鈴鹿市の会社は、資材価格の高騰で赤字決算が続いたことが倒産の引き金になりました。受注を取るために価格を据え置くと、1棟ごとの利益が削られ、従業員5〜10人規模の会社では数棟の赤字でも資金繰りが一気に苦しくなります。
資材価格の高騰に工務店がどう手を打てるかは、建築資材の高騰に対する工務店の対策で解説しています。
競争の激化で受注が減っても集客の手を打たない
売上高が約2億9500万円から約1億1500万円まで落ちるには、長い時間がかかります。
その間に集客の手を打っていれば、結果は違ったかもしれません。
2社とも、受注が落ちている最中にホームページやSNSの発信が止まっていました。
デザインや強みが伝わらず比較で選ばれない
技術力があっても、それが若い世帯に伝わらなければ比較の段階で外されます。
お客さんはハウスメーカーと工務店を並べて見ています。
「うちは腕がいい」だけでは、選ばれる理由になりません。
工務店が倒産を避けるために今日からできること
大がかりな投資をしなくても、明日から始められることはあります。
- ホームページのコラムやInstagramの投稿を、月に数本でも止めずに続ける
- 投稿には、施工事例の写真だけでなく「なぜこの間取りにしたのか」の説明を添える
- 若い世帯に響くデザインの施工事例を1棟でも作り、発信の柱にする
- 資材価格の上昇分を見積もりに反映する基準を社内で決めておく
流行に流されるのは私も反対ですが、ある程度は潮流をつかみ、それを頭に置いて動くべきです。
よくある質問
工務店の倒産件数は増えていますか?
増えています。
東京商工リサーチの集計では、2026年1〜6月のハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産は118件で、前年同期から約9割増えました。
コスト高と人手不足が背景にあるとされています。
小さな工務店が倒産する主な原因は何ですか?
資材価格の高騰による赤字と、受注の減少が直接の原因になるケースが多くあります。本記事の2社では、その手前でホームページやSNSの発信が止まり、新規のお客さんを集められなくなっていました。
倒産しそうな工務店に前兆はありますか?
経営者の側から見ると、受注が落ちているのに集客の発信が止まっている状態は危険な兆候です。ホームページのコラムやSNSの更新が何年も止まっている会社は、外から見ても分かります。
工務店の倒産を防ぐには何から始めればいいですか?
お金をかけずに始められるのは、発信を止めないことです。施工事例の投稿に設計の意図を添えるだけでも、ほかの会社との違いが伝わりやすくなります。
まとめ
工務店が倒産する直接の原因は、資材価格の高騰による赤字と受注の減少です。
ただ、三重県鈴鹿市の住宅会社も、従業員8人の2代目工務店も、受注が落ちる前から発信が止まり、デザインの強みを伝えられていませんでした。
2026年上半期のハウスメーカーの倒産は118件と前年同期の約9割増で、どの工務店にとっても他人事ではありません。
ぜひ本記事の2つの事例を参考に、自社のホームページとSNSの更新が止まっていないかを今日のうちに確かめてください。



