工務店が取引業者の展示場を使う方法|会費月1万円の富山の事例

小規模な工務店には住宅展示場もショールームも無いため、営業担当者は初回面談を自社の事務所で終えた後に「次はここを見に行きましょう」と誘える場所がありません。工務店の経営者は「展示場があったらいいよなぁ……」と口にしますが、総合住宅展示場に出展するには毎月100万円程度の出店料がかかります。
富山県の地場建材会社であるヤマイチは、取引のある工務店に月1万円の会費で自社の住宅展示場を自由に使わせています。私は先月その施設を取材しましたが、取引業者の施設に気付いて使い倒す工務店と、気付かない工務店とでは、商談の進め方に大きな差が出ます。
本記事では、取材した写真と取引先の工務店社長の話をもとに、工務店が取引業者の住宅展示場を商談に活用する方法を解説します。
工務店が取引業者の住宅展示場を使うべき理由
総合住宅展示場の出展にかかる費用
総合住宅展示場への出展は、出店料だけで年間1,200万円の維持費になり、そのうえ展示場の建物の建設コストも数千万円かかります。さらに、出展した住宅会社が集まるイベントがあれば協賛金が必要になり、建物が古くなれば建て替えも考えなくてはなりません。
出展する住宅会社がこれほどの経費をかけるのは、それに見合う見返りがあるからです。
しかし、小規模な工務店がこれだけの経費をかけるのはリスクが大きく、資金的にも無理があります。
よほどの収益が無い限り、工務店が自前の住宅展示場を持つのは絵空事です。
初回面談の後に案内する場所が無い
私はハウスメーカー出身で、住宅展示場でお客さんを接客し、そこから次のステップに進める流れに慣れています。工務店が初回面談を自社の事務所で行っても、一回で契約は決まらないので、営業担当者は次の約束を取るための口実が欲しくなりますし、お客さんもいろいろなものを見たがります。
ハウスメーカーなら住宅展示場、現場見学会、ショールームと目先を変えてお客さんを連れて行けますが、小規模な工務店ではそれができません。
そこで小規模な工務店が使えるのが、取引業者の持っている施設です。
全国を見渡すと、工務店のためにこうした施設をわざわざ作っている企業がぽつぽつと存在し、タダ同然で「自由に使ってください」と言う住宅関連会社もあります。
ショールームでの商談の場に加えて、最新情報や無料セミナーを取引先から得る付き合い方は、工務店が取引先業者を活用する方法で解説しています。
富山県の取引業者ヤマイチの住宅展示場を取材
私が足を運んだのは、富山県ナンバーワンの地場建材会社であるヤマイチが所有する施設です。ヤマイチの事業内容はヤマイチの公式サイトで確認できます。
私はヤマイチの廣瀬社長を以前から存じ上げており、本社にもお伺いしたことがあります。しかし、ヤマイチが工務店の利用できる立派な施設を複数作ったことは初耳で、施設を自分の目で確かめたかった私は、すぐ廣瀬社長に連絡を取って富山県に向かいました。
会費月1万円で使える等身大の住宅展示場
私が最初に向かったのは、外から見ると普通に人が住んでいるのではないかと思える外観の住宅展示場です。
私「この住宅展示場は、ヤマイチさんと取引がある工務店さん全てが使えるのですか?」
社長「基本的には会費を月に1万円払ってもらえればフリーで使ってもらって結構なんです」
私「1万円だったらポケットマネーですよね。それさえお支払いすれば、商談中のお客さんを連れて来たり見学してもらっても構わないわけですね」
社長「その通りです。ですから、活用する工務店さんは徹底的に活用しますよね(笑)成果もしっかり出ますので」
廣瀬社長の言う月1万円は、総合住宅展示場に出展する費用と比べると、まさに驚きの金額です。
自分の庭でキャンプができる設計
ヤマイチの住宅展示場は、自分の庭でキャンプができるというコンセプトで設計されており、アウトドア志向のお客さんなら大きな関心を持って見学してくれる作りになっています。
使用に関する決まりごとはいろいろとあるようですが、私が小規模な工務店の経営者なら、迷わずこの住宅展示場を活用します。毎月1万円で初回面談の次に案内する場所が手に入るわけですから、私からすれば即断即決の話です。
「関心をあまり示さない工務店さんも結構いるんですよ」
廣瀬社長が何気なく話したこの一言は、私にとってかなり意外でした。
私は希望者が殺到して住宅展示場を押さえるのに一苦労だと思い込んでいましたが、現実にはそこまでの応募は無いそうです。
展示場を使わない営業スタイルに慣れている工務店には、このメリットが感覚的に分かりにくいのかもしれません。
ヤマイチの住宅展示場を使えるのは富山県とその周辺の工務店なので、北陸地方以外の工務店には関係の無い話です。北陸で営業している工務店の方は、ぜひヤマイチに問い合わせてみてください。
プールとサウナが付いた取引業者の施設「GARDENS・GARDEN」
私が住宅展示場を見学した後に廣瀬社長に連れて行かれたのが、看板に「GARDENS・GARDEN」と書かれた施設です。写真の左に写っているのが廣瀬社長です。
ヤマイチは住宅展示場から少し離れた場所に、この規模の大きな施設をオープンさせました。施設は住宅展示場と同じくアウトドアを意識した作りで、プールとサウナが付いた住宅展示場に、アウトドアグッズの販売コーナーを併設しています。
取引先の工務店が続々と見学に来ているそうですが、「これはいいね!お客さん連れてくるよ!」と反応する社長がいる一方で、「私はアウトドアあんまり興味ないからね」と消極的な社長もいて、意見はいろいろだそうです。
社長や営業担当者がアウトドアに興味があるかは関係ない
私はこの話を聞いて疑問に思いました。
工務店の社長や営業担当者がアウトドアに興味が無くても、問題はお客さんが興味を持つかどうかだからです。
お客さんがアウトドアに興味の無い方でも、見学する分には面白い施設なので、私が営業担当者なら次のように話してアポイントを取りに行きます。
「アウトドアは私も全く興味がないんですけども、プールもありますし火をいれたサウナもありますので見る分にはなかなか面白いですよ」
私が取材した日は、GARDENS・GARDENでイメージビデオの撮影が行われていました。住宅営業が次の約束を取るときの差別化の考え方は、住宅営業のアポ取りのコツで解説しています。
取引業者の施設を使う副産物(山口県の工務店社長の話)
私が小規模な工務店の経営者なら、GARDENS・GARDENのようなプール付きの施設を活用し倒し、お客さんを案内するときは「うちの会社の展示場だ」という気持ちで案内します。
山口県にも大きな住宅設備の施設を持つ建材会社があり、私はその建材会社の取引先である、小さな有限会社の工務店の社長と面識があります。
私「社長は我が物顔でこの施設を頻繁に使っているって聞きましたよ(笑)」
社長「そうなんですよ。私がお客さんを連れて行くと、この会社の営業さんや事務の方が私に対して頭を下げて挨拶をしてくれるわけです。その姿を私のお客さんが見たらどう感じると思いますか?」
私「社長がなんだか凄そうに見えます」
社長「おっしゃる通り(笑)私がお客さんを連れていくときは偉そうに振舞っています。同行したお客さんが見ればこの社長すごいなってことになるでしょう」
私はなるほどなと思いました。山口県の工務店の社長は建材会社の施設の有効性にすぐ気付き、お客さんをどんどん案内し始めたそうで、この工務店では契約に至るまでの成功の流れの中に、施設を見学させる過程が組み込まれています。
工務店が取引業者の施設を商談に組み込む手順
取引先が持っている施設を確認する
札幌の工務店なら札幌近辺で、那覇の工務店なら那覇近辺で、同じような施設を持つ取引業者がいないかを確認します。住宅展示場に限らず、太陽光発電や蓄電池を比較検討できる施設を持つ会社や、照明に特化したショールームを無償で使わせてくれる取引先もあるかもしれません。
使用料を確かめる
1回案内するごとに高額な使用料金がかかる施設なら、工務店は使うかどうかを検討する必要があります。一方で、ヤマイチのように、ほぼ無料と言える経費で住宅展示場を自由に使えるケースもあります。
初回面談の次のアポとして使う
取引業者の施設の見学を初回面談の次に提案するアポにしておくと、営業担当者は次の約束の口実を探さずに済みます。初回面談で聞き取る内容は、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
まとめ
総合住宅展示場への出展は小規模な工務店には負担が大きすぎますが、富山県のヤマイチのように、取引のある工務店に会費だけで住宅展示場やプール付きの施設を開放している取引業者があります。山口県の工務店社長は取引先の施設を契約までの流れに組み込み、お客さんを案内するたびに頼もしく見られています。
ぜひ本記事の取材事例を参考に、自社の取引先がどんな施設を持っているかをもう一度確認してください。



