「そんなこと言われたって手が回らないんだよ」
このような声が聞こえてきそうですが、小規模工務店の皆さんのお気持ちと現場の実状は痛いほど分っています。
しかし、それに甘えていてはだめです。
お客さんが信頼を寄せる住宅会社のアフターサービスを研究し、その上で、自社でどこまで対応できるかを検討する必要があるのではないでしょうか。
私が父親から工務店を継承したとしましょう。
これまではアフターサービスはあってないような形だったのですが、 自分の代になったからは、ここには間違いなく力を入れます。
資金は潤沢ではありませんし人手も足りていません。
しかし、この状況下でも、なんとかして私は対応するでしょう。
コンサル現場で見た小規模工務店の抱える問題点⑦・・・アフターサービスに手が回らない
大手はアフターサービスに注力している
大手の話をしても仕方がない、と最初から決めつけるのではなく、まずは彼らがどんな体制、かつどのようにお客さんに対してこの部分をアピールしているかを知るべきです。
定期点検の重要性をアピール
大手や地域の有力工務店は、この部分を徹底的にお客さんにアピールします。
建物の構造や断熱性が最重要課題であるのは当然のことですが、 彼らは定期点検やアフターサービスの重要性も、これでもかとお客さんに主張するのです。
お客さんもこれが重要なことは最初から分っていますが、ハウスメーカーの営業から「重要なことですからしっかりご説明させていただきます」とやられると、その重要性を再認識させることになります。
彼らがこれだけやっているのに、小規模工務店の皆さんのアフターサービスに対するアピールの仕方が薄弱では、お客さんは逃げるばかりでしょう。
アフターサービスの重要性を充分に分かっていても、体制を整えてそれをアピールしなくては営業的には及第点に達しません。
「いつでもご連絡ください」の落とし穴
気持ちは分かるが伝わらない
伝わらないとまで言い切るのは言い過ぎかもしれません。
例えばある一人親方である大工さんがお客さんと交渉しているときに、こんな会話をしたらどうでしょう。
客 「アフターサービスというか点検などの仕組みなどは決まっているんですか?」
大工「大手さんのように日時を区切って必ず行きますよという制度を設けていませんが、何か気になることがあればすぐにお電話ください。そのあたりの機動性は大手と全然違いますよ!」
一見すると大工が優っているような感じがしますが、私はそのようには感じません。
「いつでも連絡をください」は一見威勢よく聞こえますが、ハウスメーカーのきっちりした定期点検の日にちを提示が、お客さんにとってはより信頼性を感じることになるのです。
ハウスメーカーは、1年点検、3年点検、 10年点検、と期限を区切った定期点検に加えて「何かあればいつでもご連絡ください」と思アピールします。
可能な範囲で構わないので定期点検のアピールを
直近の記事でも同じようなことを書きましたが、ここでも再度念押しをさせていただきます。
大手のように人材が潤沢であれば、1年、3年、5年としっかり定期点検の日時を決めて約束できますが、小規模だとこのようにはっきり決めきるのは、危険が伴うような気がします。
ですから、1年後に定期点検をするものの、人手が足りないことは正直に話した上で「1年ぐらい経ったらご連絡しますので、若干日程は調整させて頂きますけども、そのあたりでお伺いします」とこんな感じで幅を持たした約束をしましょう。
10年点検15年点検の約束が小規模工務店の生き残り策
「小規模工務店の定期点検は難しい」
先ほどこう言ったばかりなのに、10年点検、15年点検をやれというのは話が矛盾しているように聞こえますね。
しかし、皆さんが生き残るためには、この10年、15年先の点検約束が鍵を握っていると私は考えています。
リフォームにもっと力を入れてほしい
新築の工務店を経営していると、どうしてもリフォームよりも新築を取りたい気持ちになるでしょう。
しかし、現実を考える、10年後には新築が半減する予想が出ているのですから、会社を存続させるにはリフォームに目を向けるのは必要不可欠なポイントで す。
そこで狙うのは、自社で建てたお客さんのリフォーム。
ここを狙わないのは、大きな機会損失だと断言できます。
リフォーム専業の会社や訪販を主体とした業務関連の会社がたくさんあるのですが、彼らは全く見ず知らずのお客さんとコンタクトを取って、そこで受注を重ねていきます。
しかし、契約をとった一戸建てには必ず施工した工務店が存在します。
こう考えると、リフォームもその工務店に相談して仕事を任せるのが本来ならば自然な流れでしょう。
しかし、現実は全く違います。
彼らがどんどんと力を伸ばしていくのは、新築を担当した工務店の 力不足と言わざるを得ません。
何の面識をもないわけですから、お客さんは彼らに対して緊張感を持って当初は接しますし、警戒感を持っているでしょう。
このような状況でも受注を取るわけですから、新築を担当して気心知れ、懐具合もわかっている工務店であれば、彼らよりは簡単にリフォーム工事を取れると考えるのが自然でしょう。
だから、10年点検や15年点検など、ちょうどリフォーム需要が発生する頃に、必ずこちらからコンタクトする旨を新築時に約束するのです。
息の長い話ですよ。
10年後のアポイントを取るわけですから、考えたら最強の次アポでしょう。
このような芸当を、全く縁のないリフォーム会社訪販系の会社ができるでしょうか。
もちろんできません。
それだけあなたにアドバンテージが発生していると考えるのです。
ですから、アフターサービスや定期点検の機会をこちらから提案して指定するのは、絶好のチャンスになります。
このような発想転換をしてください。
満足度が極めて高い大阪ガスリフォームの秘密
別の記事でしっかり書き込む予定ですが、つい先日大阪ガスの本社にお伺いして、リフォーム部門の方々に取材をしました。
ダイヤモンド社の調査で顧客満足度第一位に選ばれたのですが、その理由を探るための訪問 でした。
営業担当者は普段から見慣れた顔
大阪ガスにはサービスショップ制度があり、普段からサービスショップに属する担当者が定期的に各家庭を回っています。
お客さんとすれば、大阪ガスの信頼性に加えて、定期的に回ってくる社員ですので、顔もわかって安心感を覚えるのは当然のことでしょう。
その担当者がこんな話を振ってきたら皆さんはどう思いますか。
担当者「ガス機器の点検は終わりましたよ。もうしばらくはもつかと思いますがそろそろ替えどきかもしれませんね。ところで、このお宅も築30年を超えたとお聞きしましたが、リフォームなどを考えていませんか?」
いかがですか。
まったく考えてなければ断って終わりですが、30年を超えてくれば古く感じているのは事実ですし、これが訪問販売でやってきたリフォーム営業マン相手であれば、顔色を変えずに断って終了でしょう。
でも、相手の顔を知っているわけですから「具体的には考えてないけど、あちこち不満な点はあるわよね」といった話になる可能性が高いと私は思います。
事実、今回の取材で大阪ガスの担当女性の方も話していたのですが、 このあたりの圧倒的な信頼感が満足度の向上につながり、受注アップにも大きく寄与しているとのことでした。
彼らと同じことを皆さんがすることは無理ですが、顔を既に知っておりお客さんの警戒感も無いわけですから、定期点検やアフターサービスを充実させて接点を持つことが、結果的に新しい受注につながるのです。
まとめ
最後にお話をしました大阪ガスの事例ですが、論点をまとめている最中なので、暫くしたらここにアップしていきます。
小規模工務店の皆さんが大変なのは百も承知ですが、早い段階で対応していかないと間に合わなくなります。
ZEHのお話も少し前に書きました。
ZEHに関する啓蒙ビデオを作成している最中で4月に入りましたら 役者を三人使って展示場でのシーンも撮影します。
アフターサービスの充実、ZEHの積極的推進、この2つに積極的に取り組むことが吉と出るのです。