小規模工務店のアフターサービス|10年点検の約束が最強の次アポ

「そんなこと言われたって手が回らないんだよ」という小規模工務店の実状は、私も痛いほど分かっています。
それでも小規模工務店は、1年点検を幅のある日程で約束し、10年点検と15年点検はこちらから連絡すると新築時に約束することで、お客さんの信頼とリフォームの受注につなげられます。私が取材した大阪ガスのリフォーム部門も、定期的に顔を合わせる担当者への信頼感が受注アップにつながっていました。
本記事では、小規模工務店がアフターサービスに力を入れるべき理由と、人手が足りなくてもできる定期点検の約束の仕方を解説します。
小規模工務店のアフターサービスは大手の点検アピールに負けている
私が父親から工務店を継いだとしましょう。
先代まではアフターサービスがあってないような形だったとしても、私は自分の代になったら、ここには間違いなく力を入れます。
資金は潤沢ではなく、人手も足りていない状況でも、私はなんとかして対応するでしょう。
小規模工務店は、手が回らないという現状に甘えていてはいけません。
お客さんが信頼を寄せる住宅会社のアフターサービスを研究し、そのうえで自社がどこまで対応できるかを考える必要があります。
大手の話をしても仕方がないと最初から決めつけずに、大手がどんな体制を取り、お客さんにどうアピールしているかを知るべきです。
大手は商談で定期点検の重要性を説明する
大手ハウスメーカーや地域の有力工務店は、定期点検とアフターサービスを徹底的にお客さんにアピールします。建物の構造や断熱性が最重要の課題であるのは当然ですが、大手の住宅営業は定期点検の重要性も、これでもかとお客さんに説明するのです。
お客さんも点検が重要なことは最初から分かっていますが、ハウスメーカーの営業から次のように言われると、その重要性を改めて意識します。
「重要なことですからしっかりご説明させていただきます」
大手がここまでやっているのに、小規模工務店のアピールが弱ければ、お客さんは離れていくばかりです。工務店の経営者がアフターサービスの重要性を十分に分かっていても、体制を整えてそれをお客さんに伝えなければ、営業としては及第点に届きません。
小規模工務店がお客さんに避けられる理由と、アフターサービスやホームページで誤解を解く方法は、小規模工務店が避けられる理由で解説しています。
工務店のアフターサービスで「いつでもご連絡ください」が伝わらない理由
工務店の「いつでもご連絡ください」がまったく伝わらないとまで言い切るのは、言い過ぎかもしれません。たとえば、一人親方の大工さんがお客さんと話をしているときに、次のような会話をしたらどうでしょうか。
客「アフターサービスというか、点検などの仕組みなどは決まっているんですか?」
大工「大手さんのように日時を区切って必ず行きますよという制度は設けていませんが、何か気になることがあればすぐにお電話ください。そのあたりの機動性は大手と全然違いますよ!」
一見すると大工さんのほうが優っているように聞こえますが、私はそうは感じません。「いつでも連絡をください」は威勢よく聞こえるものの、お客さんはハウスメーカーが示すきっちりした定期点検の日にちのほうに信頼性を感じます。
しかもハウスメーカーは、1年点検、3年点検、10年点検と期限を区切った定期点検に加えて、「何かあればいつでもご連絡ください」とアピールしています。
アフターサービスの説明不足が大手との競合で失注につながった施主取材の事例は、小規模工務店が高額契約を逃した理由で解説しています。
人手が足りない工務店の定期点検は日程に幅を持たせて約束する
大手のように人材が潤沢な住宅会社であれば、1年、3年、5年と定期点検の日時を決めて約束できます。一方で、小規模工務店がここまではっきり決め切るのは、危険が伴うような気がします。
そのため小規模工務店は、1年後に定期点検をすることを約束したうえで、人手が足りないことを正直にお客さんに話し、次のように幅を持たせた約束をしましょう。
人手が足りずにアフターサービスを外部に任せる場合の注意点は、住宅アフターサービスの外注化の注意点で解説しています。
「1年ぐらい経ったらご連絡しますので、若干日程は調整させて頂きますけども、そのあたりでお伺いします」
10年点検・15年点検の約束が工務店のリフォーム受注につながる
小規模工務店にとって定期点検は難しいと書いたばかりなのに、10年点検や15年点検をやれというのは矛盾して聞こえるかもしれません。しかし私は、小規模工務店が生き残るためには、この10年先、15年先の点検の約束が決め手になると考えています。
自社で建てた家のリフォームを他社に取られている
新築の工務店を経営していると、リフォームよりも新築を取りたい気持ちになるでしょう。新築のお客さんを探す方法は住宅営業の探客方法で解説していますが、10年後には新築が半減するという予想も出ており、工務店が会社を存続させるにはリフォームに目を向けることが欠かせません。
工務店が狙うべきなのは、自社で建てたお客さんのリフォームです。ここを狙わないのは、大きな機会損失だと私は断言できます。
リフォーム専業の会社や訪問販売を主体とした会社はたくさんあり、どれもまったく見ず知らずのお客さんとコンタクトを取って受注を重ねています。
それらの会社が受注した一戸建てにも、新築を施工した工務店がいます。
本来であれば、お客さんはリフォームもその工務店に相談して任せるのが自然な流れですが、現実はまったく違います。
リフォーム会社や訪販系の会社が力を伸ばしているのは、新築を担当した工務店の力不足と言わざるを得ません。
面識のないリフォーム会社や訪販系の会社の営業に対して、お客さんは最初は緊張感や警戒感を持って接します。そのような状況でもリフォーム会社や訪販系の会社は受注を取っているのですから、新築を担当して気心が知れ、懐具合も分かっている工務店であれば、もっと簡単にリフォーム工事を取れると考えるのが自然です。
10年後の点検約束は最強の次アポになる
そこで工務店は、10年点検や15年点検など、ちょうどリフォーム需要が出てくる頃にこちらから連絡することを、新築時にお客さんと約束しておくのです。息の長い話ですが、10年後のアポイントを取るわけですから、考えてみれば最強の次アポです。
まったく縁のないリフォーム会社や訪販系の会社に、このような芸当はできません。
それだけ新築を建てた工務店には有利な立場があると考えてください。
アフターサービスや定期点検の機会を工務店のほうから提案して指定するのは絶好のチャンスだと、発想を転換してほしいのです。
既存のお客さんとの接点からリフォームを受注する方法は、住宅展示場のディスプレイ活用で解説しています。
顧客満足度第一位の大阪ガスのリフォームを取材して分かったこと
私は先日、大阪ガスの本社を訪ね、リフォーム部門の方々に取材をしました。大阪ガスのリフォームはダイヤモンド社の調査で顧客満足度第一位に選ばれており、その理由を探るための訪問でした。
営業担当者は普段から見慣れた顔
大阪ガスにはサービスショップ制度があり、サービスショップに属する担当者が普段から定期的に各家庭を回っています。お客さんからすれば、大阪ガスという会社の信頼性に加えて、定期的に来る担当者の顔も分かっているので、安心感を覚えるのは当然です。
サービスショップの点検員が顔見知りとして訪問し、見積もりを頼みやすくしている仕組みは、大阪ガスのリフォームが満足度1位の理由で解説しています。
その担当者から、次のような話を振られたとします。
担当者「ガス機器の点検は終わりましたよ。もうしばらくはもつかと思いますが、そろそろ替えどきかもしれませんね。ところで、このお宅も築30年を超えたとお聞きしましたが、リフォームなどを考えていませんか?」
お客さんがリフォームをまったく考えていなければ、断って終わりです。また、訪問販売で来たリフォーム営業が相手なら、お客さんは築30年を超えて家が古く感じていても、顔色を変えずに断るでしょう。
しかし相手の顔を知っていれば、お客さんは「具体的には考えてないけど、あちこち不満な点はあるわよね」といった話をする可能性が高いと私は思います。取材で大阪ガスの担当女性も、この圧倒的な信頼感が満足度の向上につながり、受注アップにも大きく寄与していると話していました。
小規模工務店が大阪ガスと同じ体制を作るのは無理ですが、工務店はお客さんとすでに顔見知りで、警戒されることもありません。定期点検やアフターサービスを充実させてお客さんとの接点を持ち続けることが、結果的に新しい受注につながるのです。
まとめ
小規模工務店が大手に負けないアフターサービスを打ち出すには、「いつでもご連絡ください」だけで済ませず、1年点検を幅のある日程で約束し、10年点検と15年点検はこちらから連絡すると新築時に約束することです。10年後の点検の約束は最強の次アポになり、訪販系の会社に取られていた自社のお客さんのリフォームを取り戻すことにつながります。
小規模工務店が大変なのは百も承知ですが、早い段階で対応しなければ間に合わなくなります。
ZEHについても別の記事で書いており、4月に入ったらZEHの啓蒙ビデオのために、役者3人を使って住宅展示場のシーンを撮影する予定です。
アフターサービスの充実とZEHの積極的な推進、この2つに取り組むことが吉と出ると私は考えています。
ぜひ本記事の定期点検の約束の仕方を参考に、自社で建てたお客さんとの接点を10年先まで残す仕組みを作ってください。



