住宅展示場の接客はどう変わった?スーモ経由の紹介客への対応

総合住宅展示場の玄関で挨拶したお客さんが、モデルハウスの中をほとんど見ないまま席に着きます。そのお客さんは、住宅会社のホームページや住宅系YouTubeで、すでにその住宅会社のことを調べています。
住宅展示場の接客が変わった原因は、スーモ、ライフル、イエタテなどの紹介会社を経由して来場するお客さんが、来場者の半数程度にまで増えたことです。紹介会社経由のお客さんは期待値を上げて来場するため、営業社員は紹介会社が自社をどう評価したかを把握してから初回面談に臨まないと、商談をつぶしてしまいます。
本記事では、紹介会社経由で来場するお客さんの特徴と、住宅展示場の営業社員が初回面談の前にしておく準備を解説します。
総合住宅展示場の接客を変えた紹介会社経由の来場
総合住宅展示場が世の中に誕生してから50年ほどが経ちますが、外から見た総合住宅展示場の雰囲気は50年前とほとんど変わっていません。
有名ハウスメーカーの豪華なモデルハウスが立ち並び、各社の営業社員がそこでお客さんを待ち構えています。
集客のてこ入れにイベントを打ちながらお客さんを集めるやり方も、今も昔もさほど変わりません。
ただし、お客さんが住宅展示場にやってくるルートだけは大きく変わりました。
大手住宅メーカーS社の幹部と交わした研修の打ち合わせ
この時期になると、私はいろいろな住宅会社の方と来期の研修コンサルティングの打ち合わせをします。この原稿を書いている2月16日の前日には、旧知の住宅会社であるS社の幹部とこんな話をしました。
幹部「森先生もご存知のように住宅展示場の来場ルートが本当に様変わりしてるんですよね」
私 「ここ3~4年ですかね」
幹部「そうですね、ライフルやスーモといったところからのお客さん紹介がメインなんですが、そういう方というのは展示場に来ても中の見学すらしない方も相当いますよ」
スーモ・ライフル・イエタテ経由が来場者の半数程度に
主な紹介会社はスーモ、ライフル、イエタテあたりで、来場者の半数程度がこうした紹介会社からの紹介でやってくると言っても過言ではありません。S社の幹部も話していましたが、お客さんがこのルートで来場する以上、住宅会社は十年前の接客から中身を変えないと対応できなくなっています。
紹介客が住宅展示場の接客前に調べていること
紹介会社経由のお客さんは、ターゲットにした住宅会社の情報をしっかり集めてから来場します。そのため営業社員は高い緊張感を強いられ、同時に説明する内容の取捨選択も迫られるようになりました。
たとえば、収納提案が得意な住宅会社があったとします。お客さんはスーモなどの紹介会社に出向き、紹介会社の担当者に次のような要望を出します。
「とにかく収納がしっかりとした家を作りたい」
「収納提案が得意な会社がいい」
スーモの担当者は持っている情報の中から収納提案が得意な住宅会社をピックアップして、お客さんに紹介します。この段階でスーモの担当者は、紹介する住宅会社の特徴や、収納提案の何がどう得意なのかを細かくお客さんに伝えます。
紹介会社から情報を得たお客さんは、自分で紹介された住宅会社のホームページをチェックし、その住宅会社を取り上げた住宅系YouTuberの動画もじっくり研究します。お客さんがここまで下準備をしてから住宅展示場に乗り込んでくるため、営業社員はこれまでとは違った対応を求められます。
ホームページを読み込んで来場したお客さんへの初回面談の進め方は、住宅展示場の初回接客の進め方で解説しています。
スーモカウンター経由の客との商談がつぶれた事例
前述の例でいえば、お客さんは収納提案を大きな判断材料にしており、紹介された住宅会社が収納にものすごく強いと期待して住宅展示場にやってきます。
具体的な収納提案を一つも出せなかった営業社員
実際にあったケースです。
スーモカウンターで紹介されたお客さんが訪ねたのは、収納が得意なことを前面に出してアピールしている住宅会社でした。
お客さんは期待を胸に営業社員と会いましたが、営業社員の口から出た収納の話はごく一般的な内容で、お客さんは愕然としました。
客 「スーモカウンターで聞いたのですがオタクは収納のことを結構力を入れてやってるんですよね」
営業「そうですね、収納については自信がありますし、いろんな提案ができますよ」
客 「収納に関して他社と何がどう違うんですか」
営業「設計が細かい知識がありますので、そのあたりお任せいただければご期待に添えると思います」
客 「なるほどね・・・」
私の取材に対し、このお客さんは次のような趣旨の話をしています。
スーモカウンターの担当者がこの住宅会社の収納提案の素晴らしさをこれでもかと持ち上げたため、お客さんの期待値が大きくなりすぎ、営業社員の答えにがっくりしたそうです。
お客さんは営業社員から具体的な収納提案の話を一つも聞けず、「期待してください」としか言われなかったとのことです。
紹介会社が何を評価したかを聞いてから初回面談に臨む
スーモカウンターなどを通した来場では、紹介会社の担当者が何について、どの程度自社を評価したかを入念にヒアリングしてから初回面談に臨まないと、お客さんの期待とのギャップで商談がつぶれてしまいます。逆に、お客さんが収納に大きな期待を持っていると事前に分かれば、営業社員は期待に応える準備をして折衝に臨めます。
SUUMOカウンターの担当者への聞き込み方を含めた準備は、SUUMO紹介客の成約率を上げる事前準備で解説しています。
住宅系YouTubeの確認は接客前に欠かせない準備
2024年1〜2月に取材した9人中8人が住宅系YouTubeを視聴
私はお客さんへの取材を欠かさず行っており、2024年は1月と2月だけで9人のお客さんに取材しました。
そのうち8人が「住宅系のユーチューブをかなり見た」と答え、見なかったお客さんはたった1人でした。
この結果から、営業社員はお客さんと折衝する前に、自社を紹介したYouTube動画を確認しておかなくてはいけません。
住宅系YouTuberが取り上げる住宅会社は、基本的に全国規模か、それに準ずる大きな会社です。総合住宅展示場に出展するような比較的大きな住宅会社は、まさにこれに該当します。
セキスイハイムの営業社員がライフル経由の客と会う場合
たとえば、あなたがセキスイハイムの営業社員で、ライフルを通じて紹介されたお客さんと会う段取りをつけたとします。この場合、営業社員はセキスイハイムを第三者の立場から取り上げたYouTube動画を、会う前に確認しておく必要があります。
さらに営業社員は、お客さんと初めて会ったときに「どんなYouTubeをご覧になりましたか」と聞いてください。お客さんが見た動画をはっきり答えた場合は、営業社員は折衝の後にその動画をしっかり確認しておきましょう。
YouTubeを見て来場したお客さんに接客前に来場動機とこだわりの優先順位を聞く方法は、住宅展示場の接客前に聞くことで解説しています。
住宅展示場を見学しない客が増えて変わった接客研修
住宅展示場に来場しながら、モデルハウスをろくに見学しないか、まったく見向きもせずに営業社員と話すだけで帰るお客さんが激増しています。私は、いくら事前に調べているとはいえ、せっかく来たのなら展示場を見学すればいいのにと思いますが、それほど事情は大きく変わりました。
展示場の玄関で初めて会い、そのまま着座する折衝
従来の接客パターンでは、一面識もないお客さんが住宅展示場にやってきて、営業社員が展示場を案内しながらヒアリングをしたり距離を詰めたりしていました。
このパターンが今後も厳然と残るのは事実ですが、展示場の玄関で「初めまして」と挨拶し、そのまま着座して折衝が進むケースが主力になりつつあります。
従来型の接客の入り方は住宅展示場の玄関を使った接客術で解説しています。
展示場の接客訓練より比重が増した紹介客への対応
私は20数年間コンサルタントとして活動してきましたが、その主な課題の一つが展示場の接客訓練でした。
展示場を構える住宅会社にとって、モデルハウスでどう接客するかが重要なのは昔も今も変わりません。
ただ、見学しないお客さんが増えたため、展示場での接客の重要度は以前より下がってきました。
そのため私も2~3年前から研修の内容を修正し、スーモなどから紹介を受けて来場したお客さんへの対応方法をメニューに入れています。社内で接客の型を共有する方法は動画で作る住宅営業マニュアルで解説しています。
まとめ
総合住宅展示場の見た目は50年前とほとんど変わりませんが、来場ルートは紹介会社経由が中心になり、接客の中身は私が現役だった時代とはまるで異なっています。展示場に来ながらろくに見学しないお客さんも、来場の段階で住宅会社の情報をかなり把握しているお客さんも、当時は考えられない存在でした。
紹介会社の担当者が自社の何を評価したかを聞いておくこと、自社を取り上げた住宅系YouTubeを確認しておくこと、着座から始まる折衝に備えることが、紹介客との初回面談の準備になります。
ぜひ本記事の紹介客への準備を参考に、次の初回面談の前に紹介会社の評価と住宅系YouTubeの内容を確認してください。



