アッパー層の接客は見た目で決めない|展示場で客層を見抜いた体験談

住宅展示場のチャイムが鳴ると、私はモニターをちらりと見てから玄関へ向かっていました。
私が積水ハウス時代に契約したYさんご夫婦は、アウディの最高級グレードで来場したアッパー層でした。ただ、私がYさんご夫婦の生活ぶりをつかめたのは車ではなく、「休日はパーティー」「うちはエンゲル係数が高い」という雑談の答えからです。
本記事では、Yさんとの初回接客の体験談をもとに、住宅展示場で来場客を門前払いせずに見極める質問と聞き方を解説します。
住宅展示場で門前払いと感じさせる住宅営業の見た目判断
私が見極めに使っていたのは、アンケートを書いてもらう間の身なり、乗ってきた車、休日の過ごし方を聞く質問、会話の端々に出る言葉などです。
ローコスト住宅の住宅展示場にアッパー層が足を運ぶことはさすがにありませんが、中堅以上、とくに大手ハウスメーカーの住宅展示場には、Yさんのレベルのお客さんが来るはずです。
アッパー層のお客さんは明らかに普通ではなく、住宅営業がそのにおいを瞬時にかぎ取り、自尊心を満足させる接客ができるかどうかが勝負です。
私が住宅営業をしていたのは昔の話ですが、この定石は今も昔も変わらないと私は考えています。
初回接客の基本は住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
門前払いせずに迎えた住宅展示場のYさんの身なりと車(積水ハウス時代)
チャイムが鳴ってからアンケートを書いてもらうまで
Yさんご夫婦との初対面は住宅展示場でした。事務所にいたら「ぴんぽ~ん」とチャイムが鳴り、たまたま営業マンは私しかいなかったので、私はモニターをちらりと見てから、脱いでいた上着を羽織って玄関へ向かいました。
私「いらっしゃいませ。積水ハウスは初めてですか?」
主人「かなり前にお邪魔したことはありましたがね。2年くらい前か3年前かな・・・」
私「ありがとうございます。では、お手数ですがアンケートを」
ありきたりの会話の後、私はYさんご夫婦にアンケートを記入してもらいました。そのわずかな時間に私はご夫婦の雰囲気や身なりをチラ見しますが、Yさんご夫婦は確かに普通とは違っていました。
ブランドを見せびらかさない高そうな服装
私はYさんご夫婦を40歳がらみかなと推察しましたが、まず目に付いたのはご夫婦の服装のこざっぱりさです。なんと言ったらいいのか難しいのですが、Yさんご夫婦はとにかく高そうな服を着ていました。
Yさんご夫婦はChanelやArmaniの服をこれ見よがしに着ていたわけではなく、一見してパリッとした感じが伝わってきました。私はその手のブランドにみじんも興味がなく知識もありませんが、そんな私でも「なんか服装がしっかりしているな」と分かりました。
見栄では選ばない渋めのアウディ
自家用車が、ある程度アッパー層の判断基準になるのは間違いありません。もちろん車がすべてではなく、カローラに乗った堅実な方とベンツに乗った浪費家であれば、前者が優良な顧客であることは言うまでもありません。
Yさんご夫婦が乗ってきた車は、アウディの最高級グレード車でした。
私は車の知識が多少あったので、一見してそのグレードが分かりました。
見た目に落ち着きがあり、見栄を張って買う車種としては可能性が低い渋めのアウディです。
私はこの時点で、Yさんご夫婦の生活にかなり余裕があると判断しましたが、その生活ぶりは雑談を通じて漏れ伝わってきました。
身なりや車、会話からお客さんの見栄とプライドを読み取る力を新人にどう教えるかは、新人教育で教える見栄とプライドの読み方で解説しています。
「お休みの日は何をされていますか?」で分かった住宅展示場の来場客の層
私は住宅展示場の初回接客で、来場客にこの質問を毎回投げかけていました。お客さんの答えは、だいたい3つに分かれます。
初回接客の最初に来場客がホームページやSNSを読み込んでいるかを確かめる進め方は、初回接客でホームページを確認する理由で解説しています。
- とくに何もしていない
- 運動などのスポーツ
- ドライブなどの遠出
住宅営業が実際に聞いてみると分かりますが、「とくに何もしていない」がダントツで多いでしょう。
休日に何をしているかと聞かれて、具体的に話せるお客さんはそうそういないのが現実です。
スポーツやドライブもありがちな答えで、これだけでアッパー層とはさすがに断定できません。
ところが、Yさんの答えは「パーティー」の即答でした。
休日に友人が集まる家はありますが、休みのたびに集まることはあまりありません。
しかもYさんは「友人が集まる」ではなく、「パーティー」という言葉を使いました。
私「パーティーを休日のたびにやるのですか?」
主人「仕事半分のパーティーですがね」
私は「仕事半分」とは何だろうと思いながら話を進めました。
話の流れで分かったのは、Yさんがヨーロッパ駐在時代に培った人脈で、仕事とも遊びともつかない形で自宅に外国人がたくさん来るということでした。
「外国人が遊びに来る」と言えば済むところを、Yさんがあえて「パーティー」と表現したことが、私の印象に残っています。
「学友」「タキシード」など住宅展示場の会話に出たアッパー層の自尊心
奥さんの友達を「学友」と呼んだご主人
主人「妻の大学生時代の学友がたまに家に遊びに来るんだけど」
この違和感(笑)。
Yさんが使ったのは友達ではなく学友です。
私も長くこの世界に携わっていますが、自分の奥さんの友達を学友と表現したお客さんは初めてでした。
Yさんご夫婦のように夫婦で来場したお客さんへの接客は、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
「普通は15畳もあれば」に込められた本音
Yさんご夫婦は「一般の人たちと同じ扱いをしないでほしい」と口に出したわけではありません。ただ、Yさんご夫婦がそう言いたいのだなということは、言葉の端々に感じられました。
- 「普通は15畳もあればリビングは十分なのでしょうがね」
- 「何の変哲もない家では面白くないし」
- 「妻だけではなく私も服がものすごく多い」
- 「タキシードも持っているし」
- 「外国人の友人もたくさん家に来るので」
私は話を聞くうちに、Yさんご夫婦が普通のクラスではないことに何とはなしに気づきました。
「アッパー層の方ですね」と直球で聞いた
「お話を伺っていると普通のクラスではないアッパー層の方ですね」
私はYさんに直球で聞いてみました。Yさんはもちろん「はい、私たちはアッパー層でございます」とは答えませんでしたが、私が返事の内容から感じ取ったのは「やっと気づいてくれたか」というニュアンスでした(笑)。
「うちはエンゲル係数が高い」の真意をつかんだ雑談
「私の家はエンゲル係数が高いんですよ(笑)」
エンゲル係数は家計に占める食費の割合で、この数字が高いと生活が苦しい低所得層と判断される有名な係数です。ところが、明らかなアッパー層のYさんが「エンゲル係数が高い」と話した真意は、食にうるさく、素材を吟味して良い食材を選んで食べているという意味でした。
話は逸れますが、日本人特有の謙遜のトークは大事です。基準は何とも言えませんが、Yさんはワイン1本5万円、10万円という代物を普通に買って飲んでいるクラスでした。
私はYさんの謙遜を受けて、普段の買い物の店を尋ねました。
「普段のお買い物もその辺で適当には買えませんね(笑)どのあたりのお店まで行かれるのですか?」
私はこの質問をしたことを今でも鮮明に覚えていますが、Yさんからは地域の有名店や、車で2時間も走る場所にある輸入食材店などの名前がポンポン出てきました。
Yさんが饒舌(じょうぜつ)になって打ち解けてくれたのは、このエンゲル係数の話からです。
そもそも私がエンゲル係数を知らなければ、Yさんとの話は成り立ちませんでした。
まとめ
私がYさんご夫婦の生活ぶりをつかめたのは、アウディの最高級グレード車よりも、「休日はパーティー」「学友」「エンゲル係数が高い」という雑談の言葉からでした。
Yさんご夫婦は、一般の人たちと同じ扱いをしないでほしいという本音を言葉の端々に出していました。住宅営業がYさんご夫婦のような言葉を拾って聞き返し、自尊心を満足させる接客ができるかどうかが、初回接客の勝負どころです。
ぜひ本記事のYさんとの初回接客の体験談を参考に、住宅展示場の来場客を見た目で門前払いせず、休日の過ごし方を聞く質問から接客を始めてください。



