住宅営業のアポなし訪問は効果ある?月400件回った体験談

経験のない新入社員の住宅営業には、住宅展示場の接客の機会がなかなか回ってきません。新人の住宅営業は、接客ができなければ家の話をする機会も減り、営業スキルが伸び悩みます。
私がいた住宅会社は、そうした新人の住宅営業にひと月400件の訪問を課していました。新人は飛び込み訪問や過去リスト客へのアポなし訪問を重ね、家に関する会話の経験を積んでいたのです。
本記事では、私の訪問の体験談をもとに、住宅営業のアポなし訪問のやり方と、若手社員に訪問をさせるときの指導方法を解説します。
住宅営業のアポなし訪問で鍛えたのは契約より会話力
私がライバルより多くの新築受注を取れた理由を1つ挙げるなら、エンドユーザーとたくさん話をしたことです。
お客さんと話す場には住宅展示場の接客も電話もあります。
リストをもとにしたノーアポイント訪問や完全な飛び込み訪問でも、営業社員はエンドユーザーとたくさん会話ができます。
ひと月400件の訪問ノルマの目的
私は根性論を勧めるつもりは一切ありません。
「ひと月400件訪問したぜ!」と聞けば、飛び込み訪問を繰り返して数字を上げた話だと思われそうですが、私が伝えたいのはそういうことではありません。
当時私がいた住宅会社は、営業社員にひと月400軒のお客さんの家を回るよう指示を出していました。
ただし会社の狙いは建築請負契約を取ることではなく、新卒に会話力をつけさせることにありました。
住宅展示場の新規接客は新卒には荷が重すぎ、大事なお客さんを潰すことにもなりかねません。とはいえ接客をさせなければ新卒の営業力は一向に上がらないので、会社は新卒に外回りをさせ、家に関する会話の経験を積ませていました。
訪問ノルマを含めた行動量の確保と週間単位の行動予定の立て方は、行動量を重視する注文住宅の営業のコツで解説しています。
飛び込み訪問と過去リスト訪問の違い
住宅営業のアポなし訪問には飛び込み訪問と過去リスト客への訪問の2種類があり、私はどちらもこなしました。2つの訪問は、やりやすさがまるで違います。
| 項目 | 飛び込み訪問 | 過去リスト訪問 |
|---|---|---|
| 訪問先 | 自社と接点のない家 | 一度でも自社に接触があり、顧客名簿に名前が載っている客 |
| 家を建てる予定 | 行くまで全く分からない | 一度は自社に接触している |
| 難しさ | もっとも難しい | 飛び込み訪問より段違いにやりやすい |
| 営業の気持ち | 疑問を持ちながら続けた | 格段に気楽 |
飛び込みのアポなし訪問は住宅営業でもっとも厳しい
私は飛び込み訪問もそれなりの数をこなしていました。会社の方針でもありましたが、飛び込み訪問をしなければ、ひと月400件のノルマをこなせなかったからです。
飛び込み訪問がもっとも難しいのは、相手に家を建てるニーズがあるかどうか分からないまま訪ねるからです。
営業社員が的外れなお宅に行けば、インターホン越しに怪訝な声の洗礼を受けて終わりです。
それでも数多くこなすと家の話になることもあり、家と関係のない雑談でも、話をする機会が生まれたのは事実です。
築30年ほどの県営住宅で101号室の奥様に会った
私が築30年ほどの県営住宅を飛び込み訪問で回っていたときのことです。
私はいつものようにベルを鳴らし、「積水ハウスと申しますが……」と切り出しました。
その後に何と言ったかは覚えていませんが、中から明るい女性の声がして、奥様が玄関口に出てきてくれました。
私「この団地も家を建てて出てくれる方が多いと聞いているものですから、〇〇さんもご予定がないかなと思って寄らせていただきました」
奥様「うちはそんな予定は全く無いのよねえ(笑)ごめんなさいね。でも、この団地は確かに家を建てて出てくる人がちょこちょこいるからね」
奥様が最初からニコニコ顔で明るく話してくれたので、私もほっと一息つき、しばらく雑談をしていました。すると奥様は私を手招きして玄関の中に入れ、ドアを閉めて小声で耳打ちしてくれました。
奥様「ちょっと、こっちに入って……あのね、多分なんだけども、うちの前のこのお宅は家を考えていると思うわよ。行ってみなさいよ」
奥様が住んでいたのは101号室で、玄関の中から指差したのはお向かいの102号室でした。
紹介された102号室で奥様と話せた
私が指示に従って玄関を出ると、101号室の奥様はドアをそっと閉めました。
私は102号室の前に立ち、呼び鈴を鳴らす前に振り返って「ここですよね」と指差しました。
ドアスコープ越しに見ているであろう101号室の奥様に、「今から行かせていただきます!」と心の中で念じてから、私は呼び鈴を押しました。
飛び込み訪問は半分以上が不在ですが、このときは102号室から奥様が出てきてくれました。私は101号室からの強烈な視線を感じながら話し始め、102号室の奥様も家の予定についてはまんざらでもなさそうな雰囲気でした。
ただ、102号室の奥様との話はそれっきりで、建築請負契約はもちろん、その後の進展も何もありませんでした。
それでも私は、飛び込み訪問先で紹介をもらうという貴重な経験ができました。
後にも先にもこれっきりでしたが、数多く訪問すると面白いことが起こるものです。
お客さんから紹介をもらう頼み方は、紹介営業のコツで解説しています。
過去リスト客へのアポなし訪問は今の住宅会社でもやるべき
飛び込み訪問は今では非現実的なので、私の経験はあまり参考にならないかもしれません。しかし過去リスト客への訪問は、今でもさまざまな住宅会社が恒常的に行っている活動なので、ぜひやるべきだと私は思います。
接触から半年の客でも5年たった客でも構わないので、営業社員は昔の名簿を引っ張り出し、直接訪問するか電話をします。メールで連絡する手もありますが、会話力を鍛えるのであれば、直接訪問して顔を合わせて話したほうが力はつきます。
私が営業をしていた当時はメールがなく、営業社員は直接行くか電話するしかありませんでした。
私は電話が苦手だったので、とにかく直接訪問してお客さんと話をしました。
訪問先の半分ぐらいは不在だった記憶がありますが、逆に言えば半分は顔を合わせて話ができたので、若手の住宅営業が会話力を鍛えるにはもってこいの訓練です。
私は同期の営業より営業力があったと自負しています。私がその足腰を鍛えられたのは、過去名簿客の訪問を多数こなし、会話を大量に交わしたことが大きかったと今でも確信しています。
過去リスト客にはメールで予告してから訪問する
今の時代であれば、住宅営業は直接訪問にメールを組み合わせるのが正解だと私は思います。
予告メールの文面と送り方
私なら、顧客名簿をコンピューターから抽出し、まず名簿のすべてのお客さんにメールでアプローチします。文面はたとえば、次のような内容です。
「今から2年前に弊社展示場にお越しいただきましたが、その後のご予定はどうなったでしょうか・・・中略・・・近日中に〇〇町方面にいらっしゃるお客様のお宅を回る機会がございますので、その際に寄らせていただきます。よろしくお願い申し上げます」
私の手順は、メールで事前にジャブを打ってから実際に訪問するやり方です。
お客さんから拒絶反応が出るならそれはそれで話が早く、メールを読んだお客さんが「少し話を聞いてやろうか」と心の準備をしてくれるかもしれません。
どちらにしても、営業社員が訪問して顔を合わせれば、家に関する会話ができます。
お客さんに送るメールやショートメールの書き方は、口下手な住宅営業のお礼状とショートメールの活用法で解説しています。
訪問で家の話になったお客さんとの次の一手になる住宅営業のアポ取りのコツは、別の記事で解説しています。
メールではなくチラシで2〜3日前に訪問を予告するやり方は、事前訪問予告による個人宅への訪問営業で解説しています。
顧客名簿を放置している住宅会社が多い(コンサル先の実態)
ところが私がコンサル先に行くと、こうした顧客名簿が放置されている住宅会社がほぼ半分あります。
名簿の放置に、住宅会社の大小は関係ありません。
小規模な工務店ならそもそも手が回らない事情もありますが、中堅以上の住宅会社でも、名簿が完全に手つかずのケースが結構見受けられます。
本当に手が回らないのなら話は分かりますが、実際には上司がはっきりした指示を出していないケースが圧倒的に多いのが現状です。住宅会社の規模がどうであれ、上司や経営者の方は、ベテラン社員はもちろん、新卒や若手社員にもぜひ過去リスト客への訪問をさせてください。
放置された名簿を掘り起こす進め方は、過去名簿から始める住宅営業の源泉営業で解説しています。
まとめ
住宅営業のアポなし訪問は、建築請負契約を取るためより、新人や若手の住宅営業が家に関する会話を大量に経験する場として役立ちます。飛び込み訪問は今では現実的ではありませんが、過去リスト客への訪問なら、メールで予告してから訪ねる形で今の住宅会社でも始められます。
メール、LINE、Zoomなどさまざまなコミュニケーションツールがありますが、上司は若手社員に、人と顔を突き合わせて話す経験を数多く積ませるべきです。
私が社長であれば、万難を排してそうした機会を作ります。
営業社員の力がつくと、私から強く進言させていただきます。
ぜひ本記事の過去リスト訪問の手順を参考に、自社の顧客名簿を開いて若手社員の訪問先を選んでください。


