実は今回が3回目なのですが、新築住宅を考えているある方が大手ハウスメーカーとの商談を行いました。
その商談は実際に会うのではなく、リモートによる初回面談です。
私はその商談に同席し横から覗き見をしたのですが、担当の営業マンが実に小気味よく、かなり訓練を積んだベテラン営業マンに見えたので、 今日はその内容をここでご紹介したいと思います。
これまでにも2回同じような形でリモート商談を観察したのですが、今回の営業社員は、明らかにこの2回よりも力が上回っているのがよくわかりました。
コンサル先でもリモートによる営業折衝についてよくアドバイスするのですが、同じような戦略をとっている住宅会社の方はぜひ参考にしてください。
実際に会うのは勝手が違うので、リモートだとなかなかうまくいかない経験を皆さんもしているでしょう。
大手ハウスメーカー J社
担当営業は30代半ばと思われる男性営業
久々の生商談現場を覗けるとあってワクワクドキドキしていたのですが、これまで見た2回のリモート折衝の中でも間違いなく頭一つ抜けた優秀営業が担当でした。
30代半ばと思われる男性営業ですが、口調も穏やかで話すスピードも適度。
そして、これは努力して身につけられるものではありませんが、声の質やトーンも極めてリモートで聞きやすいものでした。
見た感じもこざっぱりとしていて、どこかの劇団にでも所属していそうないい男でした。
自己紹介がなかなか秀逸
パソコン越しに営業マンの顔が映ると「はじめまして」で話が始まるわけですが、最初の自己紹介というかアイスブレイクがなかなかうまかったですね。
最初の5分程度は家と全くない話をしていたのですが、この営業マンの優れた点の一つとして、このアイスブレイク技術の高さがありました。
客の情報を把握した上で雑談を展開している
リモートで話を始めるにお客さんの情報は事前に相手に伝わっているので、営業としてはその情報を元に話を進めることになります。
メインの話としては、自己資金や希望する土地の場所等家に関する事であるのは当然ですが、その他の情報をうまく使ってアイスブレイクを円滑にすすめてきたのです。
営業「〇〇さんの勤め先は〇〇海運とのことですが、ウクライナ戦争が始まってから大混乱ではないですか?」
客 「そうなんですよ。ウクライナのオデッサから出るはずの小麦がストップしたものですから、海運会社はどこもてんてこ舞いです」
営業「世界情勢に関して私はすごく興味があるんですけども、小麦を安全に港から出すのどうのこうのって協定は今でもちゃんと生きてるんですか?」
ざっとですが、こんな会話から雑談がスタートしました。
営業は客が事前に海運会社に勤めている情報を得ているわけですが、それをもとにウクライナに絡めた雑談話を振ろうと最初から決めていたのでしょう。
営業は客の話を感心したようにうなずきながら聞きこんでいましたが、私が印象的だったのは客である主人がウクライナなどについての世界情勢を事細かにかつ楽しそうに話していた姿でした。
営業はただただ話を聞いていただけでしたが、客はある意味この話題について本人は当事者になるので、したり顔かつ得意げに話すことができるわけです。
これは、客側の気持ちになると、気分がいいというかスッキリするわけです。
アイスブレイクとしては大成功でしょう。
注文住宅に対する真剣度を探ってきた
アイスブレイク終わった後、営業はこんな話を振ってきたのです。
「今回は注文住宅をお考えなわけですが、マンションとかあるいは分譲住宅建売住宅などは全く眼中にないのですか」
これは大事な質問です。
客によっては注文ができればいいものの、好条件の物件があればマンションでも構わないし建売でも構わないという人はいます。
ところが、どうしても注文住宅がいいという客の場合は、家に対するこだわりを持っている可能性が高いので、営業としては提案のポイントさえ事前に分かれば商談を進めやすくなるのです。
事実この商談ではこのような会話がありました。
営業「絶対に注文住宅というお話でしたが、これはご主人かもしくは奥様どちらの方が強いんでしょう」
客 「今日この場にはいませんけどもう圧倒的に妻なんですよ。特にキッチンに対しては強烈な思い入れがあるみたいですし、あとは寝室に付随したクローゼットですかね。何せ服をたくさん持っていることもありますし化粧を念入りにやるタイプなので、寝室に付随したクローゼットの中に水が出る設備を伴った化粧台を是が非でも欲しいみたいです」
この会話はすごいと思いませんか。
非常に大事な情報を、初めて顔を合わせた10分後かそこらに聞き出しているのです。
私はリモート折衝してる横で無言のまま会話を集中して聞いていましたが、とにかく自然な流れの中でお客さんの肝となる情報をどんどん吸い上げていくのでした。
これは簡単に真似ができるテクニックです
このヒアリングの仕方は新卒社員の方でも充分にできるでしょう。
とにかく、初回面談の際に「 注文住宅への思い入れがありますか?」「マンションや建売の可能性はあるのですか?」と聞くだけの話です。
これは結構重要なポイントですので、皆さん素直に真似してみましょう。
どんな質問にも資料が出てくる
たまたま合致しただけの可能性は否定しきれませんが、客が何らかの疑問を呈したりあることについて質問を投げかけると、この営業はそれに見合った的確な資料を画面に映してくるのです。
しかも、私が見たところ会社が用意した資料ではなく、営業個人でかき集めた資料である可能性が高いものでした。
会話の中で夫婦共々このところ目が悪くなり、今の部屋で使っている照明がまぶしく感じることが増えてきた、との話を振ったのですが、それに対して「目に優しい照明とは」をテーマにした該当資料をすぐにだしたのです。
この他の質問に対しても、同じように的確な資料がスピーディーに画面に映し出されました。
私はもちろんですが、商談が終わった後に客である男性も驚いていました。
「あの営業はすごいですね。私が何を質問しても腹の底から納得できるような資料をさっと出してくるんですから」
資料を的確に揃えているか
私は研修でもコンサルティング先でもよくチェックするのですが、営業社員が持っている資料の貧弱さには都度驚かされます。
会社が作ったきれいなカタログはいいのですが、勝負となるのは、やはり営業自身が知恵を絞ってかき集めた資料にあります。
ここをなめてかかるというか手を抜いている営業が実に多いとお考えください。
ですから、このコラムをお読みの方は、毎日コツコツとで構いませんので、新築営業の資料となるようなものをインターネット上から探し出して保管する癖をつけましょう。
誰にでもできる簡単なことですが、多くの住宅営業社員がこれをやっていないのが実情です。
だからこそ真似していただいて、しっかり資料を集めれば、競合に強くなるのは明らかだと思いませんか。
まとめ
今回の優秀営業社員は大手ハウスメーカーのJホームでしたが、この一件については引き続き皆さんにご紹介したいと思います。
複数に分けたいほど見所が多く素晴らしかったからですが、そのほとんどのテクニックは誰でもマネできるものばかりです。
少なくとも私が何かあっと驚くようなものは皆無でしたし、大手ハウスメーカーだからこそというものも、思い当たるふしはありません。
つまり、小規模な地場工務店であっても、ほぼパーフェクトに真似ができる内容ばかりということです。