設計打ち合わせが長引く原因は?15本の録画で分かった3つの理由

契約後の設計打ち合わせは昔よりどんどん長くなり、着工までの期間も延びています。
私は9月14日に、ある住宅メーカーの設計社員51人へリモート研修を行いました。
また、その住宅メーカーの設計とお客さんの打ち合わせ録画15本をすべて見ました。
録画から分かった長引く原因は3つで、設計士がプロとしての判断を避けること、建物配置でもめること、お客さんがネットの口コミ掲示板の内容を持ち込むことです。
本記事では、録画から分かった3つの原因と、設計打ち合わせを短くするために住宅会社ができることを解説します。
住宅メーカーの設計打ち合わせが長引くという相談
設計士とインテリアコーディネーター51人へのリモート研修
9月14日の午前中、私は2時間を使って、某住宅メーカー(A社)向けにリモート研修を行いました。
私は営業専門のコンサルタントなので、ふだんは住宅営業の社員を対象に研修をしています。
ただ、ごくたまに、今回のような非営業部門の社員向けの勉強会も実施します。
今回の勉強会には、A社の設計士とインテリアコーディネーター51人に集まってもらい、私が講師として登壇しました。
相手が設計の社員になると、私が話す内容も変わり、営業社員とは違う反応が返ってきます。
A社の事例には、読者の会社の非営業部門の社員にも参考になる話が多くありました。
平均の打ち合わせ期間が1日延びると全体の計画が狂う
私はA社と古くから付き合っていますが、A社もほかの住宅メーカーと同じ悩みを抱えていました。
お客さんは住宅営業を通して建築請負契約を結び、その後は設計が中心になって間取りの打ち合わせを進めます。
住宅メーカーとしては、この打ち合わせをできるだけ短く終えて、早く着工したいのが本音です。
ところが、設計打ち合わせは昔と比べてどんどん長くなっています。
打ち合わせが長くなれば着工までの期間が延び、その後のすべての工程に大きな影響が出ます。
年間5棟の会社ならなんとか調整できますが、数千棟を建てる会社では、平均の打ち合わせ期間が1日延びるだけで全体の計画が大きく狂います。
どの住宅会社も抱えているこの悩みについて、A社から私に相談がありました。
注文住宅の設計打ち合わせを録画15本で確かめた
相談を受けた私がA社に出した要望は、設計とお客さんの実際の打ち合わせを見せてもらうことでした。
打ち合わせが長くなる原因について、私もある程度の仮説は立てられます。
それでも、実際の打ち合わせの様子から問題点を探り出すのがいちばん確かな手法です。
私は営業がメインのコンサルタントなので、設計打ち合わせをチェックすることはほとんどありません。
一方で、住宅営業とお客さんの商談を映像で押さえてチェックする手法は、かなり以前から続けてきました。
今回、私はその手法を設計向けに応用しました。
商談の録画をもとに住宅営業の接客を組み立て直す方法は、住宅営業の初回接客の台本で解説しています。
A社には打ち合わせを全部で15本撮影してもらい、私はそのすべてに目を通しました。
かかった時間は膨大で、私は「さすがにこれはしんどいな(笑)」と思いながら見ていました。
それでも、最初から通して見ないと話が頭に入ってこないので、私はとにかく全部を見ました。
その結果、私には打ち合わせが延びる要因がいくつも分かりました。
プロの意見を聞かれても判断を避ける設計士
私が録画で見つけた最大の要因は、設計士の優柔不断さです。優柔不断という言葉は少しピントがずれているかもしれませんが、当たらずとも遠からずだと私は考えています。
録画の中で設計とお客さんが交わした会話を、簡略化して再現します。
主人「駐車場の配置はどんな感じがいいでしょうね」
設計「この敷地形状だと次の二パターンが考えられるでしょうか」
主人「なるほど・・・」
設計「こんな感じです」
主人「プロの設計から見るとどちらがいいと思いますか?」
設計「まぁ、一長一短がありますので、最終的にはお客さんが良かれと思う方に決めてください」
私は以前から、お客さんに意見を聞かれた設計が判断を避けるケースが結構あるとにらんでいました。
最終的な判断はお客さんがすべきですが、お客さんはその判断の材料としてプロの見解を聞いています。
そのため、設計がプロとして駐車場の配置パターンAが良いと思うなら、設計は自信を持ってそう言い切るべきです。
ある程度キャリアを積んだ設計なら一歩前に出てアドバイスするところですが、このケースの担当は入社2年目の若手の男性設計士でした。私はその設計士と直接会って話をしましたが、設計士本人は映像を客観的に見て、反省しきりでした。
「この動画を見ると確かに私は優柔不断ですよね(笑)」
人によって大きく違いますが、このパターンに当てはまる設計士はそれなりにいると私は感じています。
建物配置でもめて間取りの打ち合わせに進まない
契約後の設計打ち合わせでは、設計とお客さんが建物内部の仕様を詰めていきます。ところが、A社の録画では、建物内部の話に入る前の段階で打ち合わせが止まってしまうケースが多発していました。
隣家の窓や駐車場の位置で30分以上かかる
建物の配置も、契約後の設計打ち合わせで決めます。
すんなり決まるケースがある一方で、配置だけで30分以上を費やすケースが多発しました。
配置でもめる原因は、隣に建っている家との位置関係や窓の位置、駐車場をどこに置くかなどのようです。
お客さんがこのどれかに引っかかると、建物配置はなかなか決まりません。
設計は話を前に進めようとして、「最終的には地縄(じなわ)を張ったときに決めればいいですから」とまとめにかかります。しかし、その説明で納得しないお客さんが結構いました。
地縄張りまで持ち越す配置のように、打ち合わせで決まったことと持ち帰りの宿題を1枚に残す書式は、注文住宅の打ち合わせ記録テンプレートで解説しています。
配置を仮のまま契約する住宅営業にも半分の責任がある
建物配置でもめる現象は、住宅営業にも半分程度の責任があると私は考えています。
営業出身の私にはよく分かりますが、住宅営業はお客さんと交渉して契約するとき、建物の配置まで細かく決めません。
住宅営業はプレゼンテーション図面を持って行く際に、建物を配置図に落とした図面も作ります。
ただ、住宅営業はその配置をあくまで仮として扱い、細かいことは設計打ち合わせで決めましょうと話を持っていきます。
お客さんも契約前は建物配置をあまり重視せず、関心は家の中のプランに向いています。そのため、お客さんは契約して設計と詰める段階になって、初めて「建物配置って重要だよね」と気づきます。
なお、住宅営業の敷地調査のアポ取りについては住宅営業の敷地調査のアポ取りで解説しています。
ネットの口コミ掲示板を持ち込むお客さん
録画を見た私は、お客さんの知識量が膨大になっていると強く感じました。
「ネットで調べたんですが……」とはっきり言うお客さんもいました。
以前なら聞かれなかったようなことを、お客さんはネットで入手して設計にぶつけてきます。
ある設計士は、私に次のように話していました。
「最近はお客さんがありとあらゆる情報をネットで入手して、それを元に設計を試しにくるんですよね。やってられないですよ」
私も設計士の気持ちはよく分かりますが、ネットの出現によって、ありとあらゆる仕事の難易度が上がったと考えています。録画の中には、次のような会話もありました。
奥様「外壁は基本的にメンテナンスフリーと営業さんから聞いてるんですけども、同じような素材を使っているメーカーの掲示板を見たら・・・」
設計「たしかにそういうケースも極稀にはあるんですけども・・・ そのケースまで考えるとなると・・・ うーんそうですね・・・」
設計士が知識で対抗できる内容ならまだ対応できますが、口コミ掲示板の内容を持って来られると、設計士は対応に苦慮するのが現状でしょう。
設計打ち合わせを短くするために住宅会社ができること
打ち合わせを録画して長引く場面を探す
設計とお客さんのやり取りをつぶさに観察すると、「本来なら3分で終わる話を10分もしているな」という場面が結構出てきます。打ち合わせが長引く原因は1つではなく、ちょっとしたことの積み重ねが、本来なら2日で終わるお客さんとの打ち合わせを3日、4日と延ばしています。
お客さんの即決を促して宿題を残さずに仕様の打ち合わせを短くまとめる進め方は、仕様打ち合わせの回数を減らす進め方で解説しています。
設計士にはプロとしての案を言い切らせる
お客さんに意見を聞かれても判断を避ける設計士が自社にいるなら、住宅会社はその優柔不断さをなくすように指導してください。
住宅営業は打ち合わせの回数を安請け合いしない
住宅営業が打ち合わせの回数を安請け合いしないことは欠かせません。私がある営業マンの折衝を見ていたとき、その営業マンはお客さんにこう言い放ちました。
「設計との打ち合わせは心ゆくまで何度でもどうぞ!」
このとき私は、その営業マンに強く注意しました。営業マンは受注を取りたい一心で、ついこうしたリップサービスをしてしまいますが、住宅会社にとっては打ち合わせの長期化が利益を大きく圧迫します。
まとめ
私がA社の録画15本を見た結果、設計打ち合わせが長引く原因は3つでした。
設計士がプロとしての判断を避けること、建物配置でもめて建物内部の話に進まないこと、お客さんがネットの口コミ掲示板の内容を持ち込むことです。
どれか1つで打ち合わせが大きく延びるわけではなく、小さな時間のロスが積み重なって着工を遅らせています。
設計士にプロとしての案を言い切らせることと、住宅営業がお客さんに「何度でもどうぞ」と言わないことが、打ち合わせの短縮につながります。
ぜひ本記事の3つの原因を参考に、自社の設計打ち合わせを一度録画して見直してください。



