今日は9月14日。
午前中の2時間を使って某住宅メーカー(A社)向けにリモート研修を行ないました。
私は営業専門のコンサルタントですので、通常の研修では営業マンを対象に行っています。
しかし、ごくたまにですが、今回のように非営業部門の社員対象の勉強会なども実施します。
今回はそれに該当する勉強会だったのですが、設計士とインテリアコーディネーター51人に集まってもらい、私が講師となって登壇しました。
当然といえば当然ですが話す内容も異なれば、営業社員とは違う反応が返ってきます。
みなさんの会社にいる非営業部門社員にも参考になる話が多々ありましたのでご紹介していきましょう。
51人の設計社員対象にリモート研修をしたら〇〇がわかった
A社からの依頼内容
この会社とは古くからの付き合いがあるのですが、ほかの住宅メーカー同様の悩みを抱えています。
お客さんは営業を介して建築請負契約書を結ぶのが一般的ですが、 その後は設計がメインになって間取りの打ち合わせ行ってきます。
住宅メーカーからすれば、この打合せは極力短めに終えて早く着工したいのが本音でしょう。
ところが昔と比べると、これがどんどん長くなっているのが実情です。
打ち合わせが長くなると着工までの時間が延び、すべての工程に大きな影響が出てきます。
年間5棟の会社であればなんとか調整もできますが、数千棟やるような会社になると、平均打合せ時間が一日延びれば全体の計画が大きく狂ってくるのです。
これはどの会社でも抱えている問題ですが、A社も同じような悩みを抱えているということで私に相談があったのです。
実際の折衝が見たい
私から出した要望はこれ。
打ち合わせの長時間化原因についての仮説はある程度立ちますが、設計とお客さんの実際の打ち合わせを私が見させてもらい、その様子から問題点を探り出すのが一番の手法です。
実際の映像をチェックするのは昔からやっている手法
私は営業がメインのコンサルタントですから、設計とお客さんの打ち合わせの様子を チェックすることはほとんどやりません。
しかし、営業とお客さんとの商談の様子を映像で押さえてチェックすることは、かなり以前からやっていました。
今回はそれを設計バージョンにしたのです。
全部で15本を撮影してもらい、そのすべてに目を通しました。
膨大な時間になりました。
「さすがにこれはしんどいな(笑)」
こう思いながらチェックしていましたが、最初から全部見ないと話が頭に入ってこないので、とにかくすべてを見ました。
その結果、打ち合わせが延びる要因が色々と見えて来たのです。
最大の要因は設計の優柔不断さ
優柔不断という言葉は、ひょっとするとピントはずれかもしれませんが、当たらずとも遠からずといったところでしょう。
設計とお客さんの間で交わされた実際の会話を再現してみましょう。
主人「駐車場の配置はどんな感じがいいでしょうね」
設計「この敷地形状だと次の二パターンが考えられるでしょうか」
主人「なるほど・・・」
設計「こんな感じです」
主人「プロの設計から見るとどちらがいいと思いますか?」
設計「まぁ、一長一短がありますので、最終的にはお客さんが良かれと思う方に決めてください」
話はものすごく簡略化していますが、要はこんな会話が録画映像の中で交わされていました。
お客さんがプロである設計の意見を聞いているのに、設計はその判断を避けていたわけです。
このケースが結構あるとわたくしは以前から睨んでいました。
もちろん最終的な判断をお客さんがすべきなのですが、その判断をするにあたってプロの見解を参考にするわけです。
ですから今回のケースでも、プロとして駐車場の配置パターンAが良いと思えば、自信を持ってそう言い切るべきです。
ある程度キャリアを積んだ設計であれば一歩前に出てアドバイスするのでしょうが、このケースで対応した設計は入社二年目の若手男性設計マンでした。
彼と直接会って話をしましたが、映像を客観的に見て「この動画を見ると確かに私は優柔不断ですよね(笑)」と反省しきり。
いかがでしょうか。
人によって大きく変わりますが、このパターンに当てはまる設計はそれなりにいる気がしてならないのです。
もし、あなたの工務店でこれに該当するような設計士がいるのであれば、この優柔不断さをなくすように指導してあげてください。
建物内部の話になかなかならない
これも今回の調査で発見された事実です。
契約後の設計との打ち合わせは、建物内部の仕様を詰めることになるわけですが、建物内部に入る前の段階で話が詰まってしまうケースが多発しました。
建物配置でひと悶着
建物の配置を決めるのもこの打ち合わせになるわけですが、すんなり決まるケースがある反面、そこで30分以上の時間を費やすケースが多発しました。
建物配置でもめるパターンは、隣家に建っている家との位置関係や 窓の位置に加えて、駐車場をどこに配置するかなどが原因となっているようです。
ここで何かが引っかかると、建物配置がなかなか決まらないのです。
設計は何とか話を前に進めようとして「最終的には地縄を張った時に決めればいいですから」と話をまとめにかかるのですが、それで納得しないお客さんが結構いるのです。
このような現象が起きるのは営業に半分程度責任があります。
私は営業出身ですかよくわかりますが、お客さんと接渉し契約をする際に、建物の配置まで細かくは決めません。
プレゼンテーション図面を持って行く際に建物を配置図に落とした図面は確かに作りますが、それはあくまでも仮であって細かいことは設計打ち合わせ決めましょう、と持っていきます。
お客さんも建物配置についてはあまり重視せず、関心があるのは家の中のプランになります。
ですから、契約前まではあまり重要視していない配置ですが、いざ契約をして設計と詰める段階になって「建物配置って重要だよね」 と気づきます。
お客さんの知識量が膨大に
今回の映像を見てもうこれは 強く感じました。
「ネットで調べたんですが・・・」
このようにはっきり いうお客さんもいましたね。
以前であれば絶対に聞かないようなことをネットで入手して、設計にぶつけてくるのです。
ある設計士が言っていましたが「最近はお客さんがありとあらゆる情報ネットで入手して、それを元に設計を試しにくるんですよね(笑)やってられないですよ」とのこと。
設計の気持ちはよくわかりますが、ネットの出現によって、ありとあらゆる仕事の難易度が上がったと言えるでしょう。
今回チェックしていた動画の中でもこんな会話がありました。
奥様「外壁は基本的にメンテナンスフリーと営業さんから聞いてるんですけども、同じような素材を使っているメーカーの掲示板を見たら・・・」
設計「たしかにそういうケースも極稀にはあるんですけども・・・ そのケースまで考えるとなると・・・ うーんそうですね・・・」
ざっとこんな感じです。
ネットはネットでも、クチコミの掲示板の内容を設計にぶつけてくるわけです。
設計が知識で対抗できるような内容であればまだ大丈夫なのですが、クチコミの掲示板内容を持って来られると対応に苦慮するのが現状でしょう。
まとめ
今回のコラムでは、実際に私が見た映像の一部だけをご紹介しましたが、設計とお客さんとのやり取りをつぶさに観察すると「本来なら3分で終わる話を十分もしているな」などといったポイントが結構出てきます。
打ち合わせが長引く原因は一つではありません。
ちょっとしたことの積み重ねが、本来であれば2日で終わったお客さんとの打ち合わせを3日、4日と延ばすことになるのです。
「設計との打ち合わせは心ゆくまで何度でもどうぞ!」
ある営業マンの折衝を見ていた時、お客さんに実際に言い放った言葉ですが、このときは私から彼に強く注意をしました。
営業受注を取りたい一心ですから、ついついこのようなリップサービスをしてしまうのですが、会社としてはこれが大きく利益を圧迫することになるのです。