社長に呆れて社員が辞める工務店|詐欺と浪費で倒産した2社の実話

中小工務店の中には、採用以前の問題として、社長自身の行動に呆れて社員が辞めていく工務店もあります。関東のJ工務店では、社長が中東の人物の詐欺話にのめり込んだことで、事務や経理の社員が次々に去り、会社は半年後に消滅しました。
受注が順調だったのに、社長の浪費で倒産した工務店もあります。本記事では、社長に呆れて社員が辞めていった工務店と、社長の浪費で倒産した工務店、2つの実話を解説します。
中小工務店で社員が辞める原因は採用難だけではない
「大手は人集めが楽でいいな」「中小工務店は人材確保に一苦労なんだ」
私が小規模な工務店を経営していれば、おそらく同じことを考えますし、愚痴の一つや二つも言いたくなります。今のような売り手市場では、知名度のある大手ハウスメーカーが圧倒的に有利で、もともとある大手志向に拍車が掛かるため、中小工務店はその煽りを受けることになります。
しかし、目先の人手が足りないからと適当な人材を採用すれば、住宅会社はかえって経費倒れになりかねません。
採用の段階で人を見極める方法は、ハウスメーカー営業の面接で聞く質問で解説しています。
せっかく雇った人材に辞められないよう体制を整えるのも、社長の仕事です。
ここで紹介する2社は、体制づくり以前に、社長の常軌を逸した行動で社員が去っていった実例です。なお、社長ではなく営業社員本人の問題で人が辞めた例は、住宅営業を辞めたいと思ったときの体験談で解説しています。
詐欺話にのめり込んだ社長から社員が辞めていったJ工務店
関東地方にあったJ工務店は、社長がとんでもない詐欺にだまされて潰れてしまった工務店です。
異変を察知した社員が倒産前から次々に去り、最後は側近の役員も辞めたうえでの倒産でした。
私はJ工務店の役員と仲が良かったので、問題が起きた初期から話を耳にしていました。
中東の人物を会社に連れてきた社長
J工務店の社長は、ある日突然、サウジアラビアやカタールの国籍を持つ中東の人物を会社に連れてきたそうです。
J工務店はそれなりの規模があったので、役員氏は「中東地域にでも進出するのだろうか」と一瞬思いましたが、紹介された直後に話がおかしいことに気づきました。
中東の人物たちの話を要約すると、次のような内容です。
「中東やアフリカの貧しい子供たちを救ってほしい。そのためにはあなたの力が必要なのです」
J工務店は住宅だけでなく商業施設も手掛けていたため、中東の人物たちは、貧しい地域の子供たちのために学校などの施設を政府と一緒に作ってほしいというシナリオを持ち込んできました。
社長は妙なところで彼らと接点を持ち、この話にのめり込んでしまったそうです。
「貧しい子供を救ってほしい」という言葉に社長が漢気を出したというか、社会貢献という言葉が社長の何かに火をつけてしまったようです。
「大臣クラスに300万円」という典型的な詐欺話
真っ当な話で社会貢献をするなら問題はありませんが、J工務店に持ち込まれたのは典型的な詐欺話でした。話を進めるうちに、中東の人物たちからはどこかで聞いたようなストーリーがどんどん出てきて、やがてこう切り出してきたそうです。
「これらの国は日本とは違います。政府といっしょにやるにはまずは大臣クラスの人間にそれなりの金額を包まないと話が動きません。とりあえず300万円を都合してもらえませんか」
はたから冷静に見れば「そんなバカな」と思う話ですが、どっぷりはまっている人には、おかしな話に見えません。
役員氏もこの席に立ち会っていて、その場の空気が明らかにおかしかったと話していました。
役員氏は面談の後すぐに社長へ懸念を伝えましたが、社長は耳を貸さないどころか、次のように言って相手にしなかったそうです。
「君は視野が狭い。わが社もそろそろ社会貢献のことを考えないといかん時期だろう」
事務と経理の社員が辞め、半年で会社が消えた
一見して中東方面だと分かる外国人が入れ代わり立ち代わり出入りすれば、社内ではあっという間に噂になります。しばらくすると、社員の間で「この会社大丈夫か」「社長が妙な話に騙されているみたいだ」という声が出始めました。
J工務店の場合、社長が隠すどころか、朝礼で意気揚々とこう語っていたので、社員にとっては公然の事実になっていました。
「中東やアフリカの困っている子どもたちを我々は助けることになる。みんなも誇りを持って仕事をしてくれ」
この状況になってから事務の女性社員が2人立て続けに辞め、そこからはボロボロと退社する社員が出始めたそうです。さらに、事情を把握できる立場にいた経理担当の女性も、「もうむちゃくちゃ……」と言い残して去っていきました。
J工務店はその半年後には跡形もなく消滅しました。
役員氏は最後まで残りましたが、社長は倒産の直前になっても「何かの間違いではないか」と現実を受け入れられなかったそうです。
これは究極の事例だと私は思いますが、中小工務店は社長がすべてになるので、社長にはくれぐれも慎重に行動してほしいと考えています。
受注が順調でも浪費で倒産したS工務店(若手営業B君の前職)
次の話は、つい一週間ほど前に私が仕入れたばかりのものです。
私がある工務店の展示場に足を運ぶと、帰りはいつも若手営業マンのB君が駅まで送ってくれます。
B君はまだ若いのですが転職組で、以前勤めていた小規模工務店が倒産したため、今の会社に移ってきました。
私「B君は転職組だよね?」
B君「そうです。前の工務店が潰れてしまったんですよ」
私「受注が厳しくなったんだ」
B君「受注は順調でした(笑)ただ社長の浪費グセが……」
受注が順調で会社がそれなりに儲かると、社長が妙な買い物をし出すことがあります。B君の前職であるS工務店もまさにそうで、B君は社長が次々に買った高額な品の例をいろいろと教えてくれました。
「そんな車誰が乗るの?」という超高級車と高級時計
S工務店の社長がまず買ったのは、お決まりの高級車です。
車種は伏せますが、ベンツやBMWのようなありがちな高級車ではなく、「そんな車誰が乗るの?」と言われる部類の超高級車だったそうです。
車の次は貴金属で、キラキラギラギラした金のネックレスが好きな社長もいますが、S工務店の社長が目をつけたのは高級時計でした。時計はピンキリなので、数百万円どころか数千万円の時計でも、探せばあちらこちらにあります。
二科展入選の目利きが災いした絵画の衝動買い
極めつけは絵画です。私はゴッホなど有名な画家の絵が近くの美術館に来るとひとまず見に行きますが、絵を見る能力はほぼなく、「むむむ……」と唸りながらなんとなく眺めているだけです。
一方、S工務店の社長は絵を見る目がかなりのもので、自分でも絵を描き、二科展に入選したことがあるほどの腕前だったそうです。
かえってそれが災いしたのでしょう。
社長は30万円、40万円する高価な絵を即断即決で衝動買いし、会社の中はもちろん展示場にも飾っていたといいます。
この流れなら次は女性に……と思いきや、S工務店の社長はそちらにはまったく浪費しなかったそうです。付き合いで女性のいるクラブに行ったり、接待でお客さんを連れて行ったりすることはたまにありましたが、ほかの人と比べれば金額も回数も圧倒的に少なかったと聞きました。
それでも、高級車、時計、絵画と買い続ければ、いくら利益率の良い工務店でも資金が続くわけがありません。途中でなぜ気づかなかったのかと私も思いますが、凧の糸が切れると、人間はどこまでも行ってしまうのでしょう。
浪費のような社長個人の行動とは別に、資材高騰による赤字や受注減で工務店が倒産に至る原因と実例は、工務店の倒産原因と実例で解説しています。
まとめ
J工務店では社長が詐欺話にのめり込んで社員が去り、S工務店では社長の浪費が止まらず、どちらも会社がなくなりました。
ある意味まったく参考にならない極端な事例だと思います(笑)。
ただ、人間は何がきっかけで急におかしな方向へ曲がっていくか、誰にも分かりません。
小規模な工務店であっても、社員とその家族、取引先、大工などの職人さんまで、相当な数の人が社長の背中にぶら下がっています。笑いながら読んでもらって構いませんが、少しでも経営者としての戒めにしてもらえればと思います。
ぜひ本記事の2つの実例を参考に、社長一人で決めている大きな支出や取引が自社にないかを見直してください。



