地場工務店で家を建てた施主の本音|不満2つと満足2つの体験談

大手ハウスメーカーとの競合をひっくり返して契約できても、打ち合わせが始まってから施主が小さな不満を漏らすことがあります。私の甥っ子夫婦も、ハウスメーカーS社から地元のM工務店に直前で契約先を変えた後、打ち合わせを重ねるなかで「思っていたのと違う」と口にしていました。
甥っ子夫婦が不満を持ったのは、設計士の威圧感と、比較体験できる施設がないことの2点でした。一方で、1cm単位で対応する自由設計と、着工前に監督や職人を紹介してくれる仕組みには大満足で、契約前より満足度が上がったと夫婦そろって話しています。
本記事では、甥っ子夫婦の体験談をもとに、地場工務店が契約後の施主の満足度を上げるための対応を解説します。
地場工務店M社の設計士に感じた威圧感
甥っ子は当初、ハウスメーカーS社と契約するつもりでした。
ところが甥っ子の父親が口を挟み、父親の紹介で地元のM工務店に直前で契約先を変えています。
地場工務店を選んだ理由は別の記事「親戚が地場工務店を選んだ理由」で書きましたが、契約後の打ち合わせで甥っ子夫婦が最初に口にした不満は、M工務店の設計士についてでした。
最初にお断りしておきますが、この不満はM工務店を含めた地場工務店に共通するものではなく、たまたま担当の設計士の性格が影響したものだと私は考えています。
話を聞いてくれない設計士への違和感
「話をあまり聞いてくれない感じなんだよね」
甥っ子も奥さんも、そろって私にこう話しました。
夫婦は設計士に嫌な感情を抱いているわけでも、大きな不満を持っているわけでもなく、なんとなく気になるというよくある話です。
私が夫婦に話を聞き込んでいくと、「何とも言えない威圧感がある(笑)」とのことでした。
夫婦は笑いながら話していたので、深刻な問題ではありません。
ただ、設計士に威圧感を感じた甥っ子夫婦は、言いたいことを少し控えたそうです。
工務店は、社員にこうした傾向がある人がいれば注意しなくてはいけません。
自分の知識を延々と話す大工さんの例
私が個人的に知っている大工さんのお客さんを取材したとき、大工さんには内緒という条件で、甥っ子夫婦と同じような感想を聞いたことがあります。
この大工さんは一本気で、自分の腕や知識に強烈な自信を持っています。私と話すときも、少し専門的な話に触れると、大工さんは自分の知識を浴びせかけるように、とうとうと話し始めます。
「火をつけてしまった……」
私はいつもこう後悔しますが、大工さんは息もつかせぬ勢いで延々としゃべり続けます。M工務店の設計士はここまでひどくはなさそうです。
体感できる施設がない地場工務店の打ち合わせ
大手ハウスメーカーと比べられては地場工務店もたまらないと思いますが、大手の強みの一つは、さまざまなものを体感できるショールームや、それに似た施設を持っていることです。
新昭和の施設は契約率と満足度を上げている
千葉県の株式会社新昭和は、木更津市に巨大な施設を持っています。新昭和はショールームとは別に展示場を11棟建てており、お客さんは実物を見学しながら家づくりを進められます。
私は新昭和と20年以上の付き合いがあります。新昭和の社長からは、契約前のお客さんを施設に連れて行くと契約率が跳ね上がり、契約後のお客さんの満足度も上がると聞きました。
事務所の一室とノートパソコン1台での説明
甥っ子夫婦とM工務店の打ち合わせは、毎回事務所の一室で設計士などと根を詰めて話す形式です。M工務店は紙の資料に加えて、ノートパソコン1台を使って説明していたようです。
一般的なやり方ではありますが、甥っ子夫婦はS社で素晴らしいプレゼンテーションを経験していたので、M工務店の内容がどうしても見劣りしてしまったそうです。
「できればもっと充実するといいのにな」
甥っ子夫婦の不満はこの程度で、強い不満ではありません。しかし、M工務店は甥っ子夫婦とは無事に契約できましたが、他のお客さんとも同じようにいくとは限りません。
契約後の打ち合わせの環境や対応が施主の不満につながった事例は、契約後の住宅営業のクレームで解説しています。
1cm単位で対応する工務店の自由設計
甥っ子夫婦が2人とも高く評価していたのが、M工務店の自由度の高さです。
ハウスメーカーS社も自由設計をうたっていますが、細かい部分になると対応できないところが多くあったようです。
地場工務店のM工務店は1cm単位で対応してくれるので、S社と比べても明らかにM工務店が上だったと甥っ子夫婦は話していました。
私が積水ハウスに在籍していたときも、会社のうたい文句の一つが自由設計でした。
しかし実際には当然ながら制約がいろいろあり、私は「何かおかしいな……」と内心思ったものです。
大手ハウスメーカーの中には自由性を大きくアピールしているものの、正直なところ、かなりすれすれの営業トークだな(笑)と私が思うケースも多くあります。
地元の工務店の強みは完全自由設計だと私は思います。工務店は大手ハウスメーカーと競合したとき、完全自由設計を前面に押し出してアピールするのが得策だと私は考えます。
大手で決めかけていた甥っ子がM工務店と契約した初回面談の経緯は、地場工務店の強みの伝え方で解説しています。
着工前に監督や職人を紹介する工務店の着工式
M工務店が監督や職人さんを紹介してくれたと甥っ子夫婦から聞いたとき、私はアッと思いました。LIXIL系の住宅フランチャイズでは一部の工務店が「着工式」と名打って行っていますが、M工務店でも同じ内容を行っていたのです。
着工式は、契約してから着工までの間に、現場で関わる職人さんと施主が顔を合わせるイベントです。
M工務店もLIXILのやり方を耳にしてまねしたのかもしれませんが、甥っ子夫婦はもちろんそんなことは知りません。
それでも着工式があることは、甥っ子夫婦にとても高い満足度を与えたようです。
甥っ子夫婦はまだ打ち合わせの段階で、着工式は行われていません。私は実際に着工式が終わったら、その様子を改めて甥っ子夫婦から聞き取るつもりです。
岐阜県の工務店で立ち会った着工式の流れ
私は岐阜県のある工務店で開催された着工式に立ち会ったことがあります。ある若いご夫婦が家を契約し、その1か月後ぐらいに着工式が行われました。
工務店の岐阜市の本社には大きめのホールがあり、ホールには水道工事屋さんや大工さんなど、現場に携わる工事の方々が集まって整列して座っていました。
そこへ営業に導かれたご夫婦とお子さん4人が入ってくると、迎える側は起立して一斉に拍手をします。
ご夫婦がかなり驚いた表情で、なんとも照れくさそうにしていたのを、私は今でもはっきり覚えています。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 挨拶 | 各部門の代表者が挨拶し、続いて社長や営業部長などが挨拶する |
| 送り出し | 施主に記念品を渡し、再び拍手で送り出す |
着工式は30分程度の式典で、お客さんはもちろん大満足でした。
ただ、着工式を行う側の手間は相当かかるので、やりたいと考える工務店は多いものの、実際には簡単にできることではありません。
M工務店はその着工式を行っているので、甥っ子夫婦はM工務店の姿勢を高く評価しています。
大手を断った判断を甥っ子夫婦はどう思っているか
大手ハウスメーカーを断って地場工務店と契約した甥っ子夫婦は、今のところ、自分たちの判断に間違いはなかったと確信しているようです。もっとも人間の心理を考えれば、自分の選択が間違っていたとは思いたくないので、若干のトラブルがあっても「私たちは間違っていなかった」と考えるのは当然です。
施主が大手ハウスメーカーを断った決め手は、ハウスメーカーの失注理由で解説しています。
しかし、甥っ子夫婦の家づくりにはこれまで大きなトラブルもなく、契約してから気がついたメリットも多数あるそうです。甥っ子夫婦はそろって、契約前よりも満足度が上がったと私に話していました。
施主の満足を紹介とリフォーム受注につなげる工務店の対応
大手ハウスメーカーを敵に回して契約をひっくり返しても、契約後に問題が出てお客さんに不満を持たれては意味がありません。
地元の工務店は、契約したお客さんに高い満足を得てもらい、できれば紹介をいただき、中長期的にはリフォーム受注を取ることを目指すべきだと私は考えています。
紹介をもらう頼み方は紹介営業のコツで、OB施主からリフォームを受注する方法は工務店のリフォーム受注の進め方で解説しています。
ハウスメーカーのプレゼンテーションを研究する
地場工務店がハウスメーカーと同じやり方をするのは無理です。それでも工務店は、ハウスメーカーがどのような施設を使ってプレゼンテーションしているかを研究し、同じような内容を提案する方法を考える余地があります。
まとめ
甥っ子夫婦は、M工務店の設計士の威圧感と体感できる施設がないことに不満を持ちながらも、1cm単位の自由設計と着工式によって、契約前より満足度を上げていました。
小さな工務店でも大手ハウスメーカーを相手に立ち回れるのが住宅業界の魅力ですが、勝つには相手の戦略や出方を十分に検討する必要があります。
敵を知らなければ戦いはできません。
私は積水ハウス出身ですが、世の中が大手ハウスメーカーやパワービルダーだけになるのは、きわめていびつな形だと考えています。4~5人程度で切り盛りしている地場工務店が先細りすることだけは、あってはなりません。
ぜひ本記事の甥っ子夫婦の体験談を参考に、契約後の打ち合わせで施主が何に不満を持ち、何に満足しているかを確かめてください。



