住宅営業が信頼を失う原因|お客さん取材で9割近くが営業の不満

私が24年前から続けている施主への取材では、出てくる話の9割近くが、営業担当者への不満やちょっとした齟齬(そご)による行き違いです。お客さんは、ハウスメーカーの営業を「信用できない」と感じると、その場で住宅会社を候補から外すこともあります。
本記事では、お客さんが住宅営業を信用できないと判断する場面と、住宅会社が取れる対策を、取材事例をもとに解説します。
お客さんがハウスメーカーの営業を信用できないと感じる原因
私は、家を新築した人やリフォームした人への取材を継続して行っています。取材で聞く住宅会社選びの話は、24年前もいまも、営業担当者への不満が中心という傾向と比率がほぼ変わりません。
施主が住宅会社を断った決め手については、施主取材で聞いたハウスメーカーの失注理由で解説しています。
住宅会社が受注を増やす手段には、プレゼンテーション能力を上げる、デザイン性を上げる、アフターサービス体制を見直すなど、いくつもの方法があります。
ただ、どれがいちばん楽かと考えると、営業対応の問題点を見直す方が時間もかからず、経費も基本的に0円で済みます。
それなのに、この点に気づいていない経営者が多いことが、私は不思議でなりません。
住宅営業に会う前に「信用できない会社」と切られるパターン
一般的に、お客さんは住宅会社の営業担当者に実際に会ってから、商談を進めるかどうかを判断します。ところが取材をすると、営業に会う前の段階で、ホームページや動画を見ただけで「この会社は合わないな」と切っているお客さんがいます。
価格が法外に高い、外観のデザインがまったく好みに合わないといった理由なら、住宅会社としても致し方ありません。しかし取材で多く聞くのは、そうしたはっきりした理由ではなく、次のような声です。
- 「なんとなく合わないな」
- 「高そうな感じがする」
- 「掲示板を見るとデザインに不満を持っている人が多い」
住宅会社にとって、こんな理由で切られることほど馬鹿らしいことはありません。
YouTubeや掲示板で自社の評判を調べる
地域で一定の影響力を持つ住宅会社であれば、YouTubeや掲示板で自社の評判を調べる作業を欠かさないでください。
たとえば自社の名前をYouTubeで検索して、住宅系ユーチューバーや施主が自社に否定的な意見を述べた動画が数本出てきたとします。
経営者の目に付いた動画は、同じように住宅会社を探している人の目にも付きます。
家を建てようとしている人がそうした動画を見れば、「この会社は今一つだな」と思うはずです。
規模の小さい工務店でも、SNSなどのエゴサーチは行ってください。
エゴサーチで評判の悪い書き込みを見つけたときの対処は、悪い口コミへの住宅会社の対応で解説しています。
設計の融通が利かないという評判を初回面談で先に打ち消す
実名は伏せますが、名の通った住宅会社の事例です。
この住宅会社は知名度がある一方で、プランニングの融通が利かない会社として一般に認識されています。
そのため、YouTubeやブログには「〇〇ホームは設計の融通が利かなくて後悔しています」といった文言が散見されます。
この住宅会社は、評判を打ち消すために2つの対策を取っています。
1つは、プランニングの融通が利かないと思っていたが実際にはそうではなかった、という趣旨のブログやYouTubeチャンネルを設けることです。
もう1つは、営業社員が初回面談で「弊社は設計の融通が利かないと誤解されていますが」と、お客さんが気にしている点を即座に打ち消しにいくことです。
前者は内容的に若干微妙な気もしますが、大きな住宅会社はそれなりにいろいろな戦略を裏で打っています。商談の前に切られる件数を1件でも減らすことが、受注を増やすコツの一つです。
掲示板の悪評で営業を警戒するお客さんをOB宅に案内した事例
西日本にある住宅会社の事例です。
この住宅会社は、契約した後の対応が悪いと掲示板などに書き込まれていて、その数も2件や3件ではありません。
商談にこぎつけたお客さんも、営業社員に面と向かっては言わないものの、心の中では「アフターサービスとかちゃんとやってくれるのかな」と間違いなく思っています。
この住宅会社の優秀な営業社員は、お客さんの疑念を払拭する方法を私に次のように話してくれました。
「商談にやってくるお客さんの多くは、こうした掲示板の情報を見ていると決め打ちするんですよ。心の中では私のことを相当警戒して話をしてるはずです。ですから、私は必ず自分が契約したお客さんのお宅にお連れしてこの疑念を払拭させるんですよ」
営業社員があれこれと弁明するよりも、契約したお客さんの自宅で施主本人から話を聞いてもらうのが、一番の営業方法になります。私は、この方法が最も理にかなっていると考えています。
場合によっては、これをリモートで行うことも可能かもしれません。
お客さんに事務所へ来てもらい、営業社員が席を外してOB客と話してもらうこともできますし、お客さんの自宅とOB客をつないで話を聞いてもらうこともできます。
住宅会社は、自社を頼って家を建ててくれた施主に、どう営業の補助をしてもらうかを考えてください。
OB客への頼み方は、紹介営業のコツで解説しています。
約束を忘れても謝らない営業が信用を失った取材事例
私はお客さんを多数取材してきたので分かるのですが、ここで紹介する話を住宅会社の社長や上層部に伝えても、なかなか信じてもらえません。そのため私は、営業社員の怠慢による没商談こそが、住宅会社の大きな盲点だと確信しています。
来場予約を忘れていたBハウスの営業社員
人間誰しも凡ミスはあります。
しかし長く取材をしていると、営業社員が約束を忘れる案件がぽつぽつと発生していることに、私は驚かされます。
Ahomeに決めたお客さんに取材したときの会話です。
私「今回はAhomeさんに決めたわけですが、その他接点のあった会社でレベルの低かったところはありますか?」
お客「そういえば1社あるんですよ。Bハウスさんってあるでしょ?あの会社のホームページから来場予約をして展示場に行ったんですよ。ところが、対応に出てきた営業さんが私たちとのアポを忘れていて、別のお客さんのお宅に出向くところだったんです」
私「それはひどい話ですね」
お客「人間誰しも凡ミスはありますからそれは仕方がないと思ったんですが、その時の言い草がひどいのなんの……」
Bハウスの営業社員は、お客さんに次のように言ったそうです。
「あれ?今日でしたっけ?忘れてました、で次回どうしましょうか。日程決めましょうよ」
言い方のトーンも影響したとは思いますが、お客さんはこの対応に唖然としたそうです。
営業社員はまったく悪びれず、謝罪もせず、次のアポイントを平然と取りにきました。
お客さんはその態度に不信感を持ち、その場でBハウスを断りました。
経営者が想定していない営業の人間性への不信
Bハウスの話は一例ですが、営業社員のちょっとした言動への不信が商談の芽を摘むケースは、極めて多いと思ってください。約束の時間をすっぽかす、問題を起こしても謝罪の意思をまったく感じさせない、といった営業社員の態度を、経営者はほとんど想定していないでしょう。
プラン依頼の放置など、取材で聞いた実例は、住宅会社の営業の評判を落とす対応で解説しています。
経営者は、魅力的な商品の作り方や住宅展示場の仕上げ方といった戦略は考えても、なぜか営業社員の基本的な態度には目が向きません。
もちろん経営者も、基本が大事なことは百も承知だと思います。
それでも、営業社員の基本的な態度が経営者の想像以上に商談の途切れる原因になっていることを、ぜひ認識していただきたいと私は考えています。
営業への不信感を経営者が把握する方法
取材結果を社長に直接伝えている大規模住宅会社
社名は伏せますが、私が長年お客さん取材を続けている、非常に大きな規模の住宅会社があります。住宅業界の方であれば、ほとんどがその社名やグループ名を知っているはずです。
私はこの住宅会社の社長に、取材結果を報告書で渡すのはもちろん、直接会って口頭でも伝えています。
社長は営業対応の重要性を強く認識していて、この住宅会社の営業社員の評判は極めて高いと私は断言します。
若手社員を中心にお客さんからのクレームはいろいろ出てきますが、この住宅会社は問題が発生すると同時にしっかり対処しています。
そのため、他社と比べて営業社員の評価は明らかに高いと私は推認しています。
自社でもお客さん取材を行う
私は1人あたり40分から1時間の範囲でお客さんの話を聞いていて、中には話したくて仕方がないというお客さんも少なくありません。11月中旬に取材したご夫婦は、私が途中で口をはさむ間もないほど、奥様が話し続けていました。
このようなお客さん取材を、ぜひ御社でも実施してみてください。契約したお客さんへの取材から分かった奥さんへの接客は、契約客取材から見えるハウスメーカーの営業トークで解説しています。
まとめ
お客さんがハウスメーカーの営業を信用できないと感じるきっかけは、営業に会う前のYouTubeや掲示板の評判、商談中のアフターサービスへの疑念、アポイントを忘れても謝らない営業社員の態度などです。いずれも、エゴサーチや初回面談での先回り、OB宅への案内、経営者による取材結果の把握で、経費をかけずに手を打てます。
ぜひ本記事の取材事例を参考に、自社の営業社員がお客さんにどう見られているかを確かめてください。



