追客を嫌がられると決めつけない|反応の薄い客と工務店Y社の事例

住宅展示場で「今のところ建築予定は無いんですよ」と言われたお客さんの自宅を翌日に訪ねると、「なんで来たの?」という顔をされることがあります。
小規模工務店の中には、追客を悪とまでは言わなくても、極力控えるところが多くあります。
ところが、私が最近九州で取材した施主の奥様は、アンケートに名前を書いたからには営業マンが自宅に来るものだと待ち構えていたと話しました。嫌な客に見えるお客さんの中にも、住宅会社からの追客を待っている人がいます。
本記事では、ハウスメーカーの翌日訪問で起きる反応と、追客に消極的な工務店Y社の事例をもとに、嫌な客と決めつけない追客の考え方を解説します。
ハウスメーカーの住宅営業が「嫌な客」と感じる翌日訪問の反応
30年前の店長の「明日訪問してこい」
私がハウスメーカーで住宅営業をしていた30年前は、接客したお客さんの自宅へ翌日お礼に訪問するのが、追客の基本中の基本でした。
この手法は今でも使われています。
それでも私は、当時を思い出すと少し複雑な気分になります。
私は上司である店長と、毎日のようにこんな会話をしていました。
私 「今日接客したお客さんは一組です。3年以上先とアンケートにも書いてありますし、接客した感じでも当分予定は無さそうでした」
店長「そうか、わかった。とりあえず明日訪問してこい」
脈のあるお客さんならまだ分かりますが、脈がないことは接客した私自身が一番分かっていました。
それでも店長からは「とにかく顔を出して来い」という指示が、しかも接客した翌日に行けという形で出るのです。
業務命令ですから、私は内心アホくさいと思いながらも忠実に実行しました。
翌日訪問で起きる3つの反応
翌日に訪問すると、お客さんの反応は「なんで来たの?」という顔をされる、迷惑な顔をされる、意外なほど受け入れてくれる、の3つに分かれました。
お客さんは前日に住宅展示場で「今のところ建築予定は無いんですよ」と言って別れています。
その翌日に営業社員が自宅まで押しかけ、「昨日はご来場ありがとうございました。ところで……」と話を続けるので、唖然とされるのも当然です。
迷惑な顔をされるのも、営業社員にとっては想定どおりの反応です。
一方で、確率は低いものの、展示場の初回面談では印象が悪かったお客さんが、翌日の訪問では雰囲気が変わっているケースもたまにありました。
初回の印象がそこそこのお客さんなら、翌日の訪問で話が一気に進み、アポイントが取れることもあります。
当時の店長はこの可能性を知っていたので、どんなお客さんにも翌日に訪問しろと指示していたわけです。
令和の住宅営業で翌日訪問の指導が減った理由
平成の初期は、どの大手ハウスメーカーでも同じような指導が行われていました。
令和の今は、こうした指導が当時と比べて激減しています。
私は、営業のアプローチを嫌うお客さんが増えたことと、営業を指導する上司がこの手法を嫌うことが大きく影響していると見ています。
私自身も、住宅会社の営業部長になったとすれば、若い頃に行っていたような翌日の押しかけ訪問は基本的にはさせません。
しかし、追客という手法そのものは今も有効です。
住宅会社が追客まで控えてしまうと、そこに大きな落とし穴があります。
「嫌な客」と決めつけられない住宅展示場の来場者(九州の取材)
最近、私は九州のある県で面白いお客さんにお会いしました。ある住宅会社から依頼を受け、建築請負契約を結んだお客さんを取材したところ、奥様から意外な話が出てきました。
私 「今回はご縁があってFホームさんに決められたわけですが、はじめて展示場に行かれてからどんな展開がありましたか?」
奥様「他社もいろいろ検討して結果的にこうなったのですが、Fホームさんの営業であるRさんがあまりにも消極的だったんですよね(笑)」
私 「消極的と言うと?」
奥様「展示場に初めて行った時に30分程度話した記憶があるのですが、それから訪問はおろか電話によるアプローチすらなかったんですよ」
私 「積極的に行くとご迷惑だとRさんも思ったのでしょう」
奥様「私はそういうことを考えてなくて、アンケートに名前を書いたからには、住宅会社の営業マンは必ず自宅にやってくると待ち構えていたんですけどね(笑)」
私はこの話を意外だとは全く思いません。
営業のアプローチを迷惑だと感じるお客さんが相当数いるのは間違いありません。
しかし、この奥様のように表向きは飄々としながらも、営業社員のアプローチをある程度予期して待ち構えているお客さんも、少なからずいます。
営業社員の訪問を待っていた施主の声と、店長と自宅を訪問した翌日に見積もり依頼を受けた新卒営業の事例は、新卒住宅営業がアポを取れない理由で解説しています。
ハウスメーカーの追客を「迷惑営業」と見る小規模工務店
積水ハウスと零細工務店で違った追客の考え方
私は積水ハウスと都内の超零細工務店の両方で、営業職として働きました。
大手ハウスメーカーと工務店では、追客のやり方にも考え方にも大きな違いがあることを、私は肌で感じています。
この違いは今でもほとんど同じ構図のままで、工務店の構造の問題というより、気持ちの問題や先入観の問題だと私は考えています。
私は一人親方の大工さんから全国区の住宅会社まで顔を出しますが、小規模工務店の中には、追客を悪とまでは言わなくても極力控える方が多いことが気になっています。いわゆる待ちの営業です。
背中を押されるのを待っているお客さん
個人的な友人や知人の中にも、人から背中を押されるのを待って動くタイプの人はいます。同じように、工務店から背中を押されるのを待っているお客さんも、来場者の中にはいると考えてください。
ただし、住宅営業がそうしたお客さんを見分けるのは極めて困難です。
そのため、よほどの拒絶オーラを出しているお客さんは別として、ひとまず全員にアプローチするのが吉だと私は考えています。
微妙な問題であることは私も百も承知ですが、お客さんへのアプローチは積極的に行ったほうが、結果として良いというのが私の判断です。
拒絶の意思を示されたお客さんへのアプローチをどこで止めるかは、追客をやめる基準で解説しています。
電話を禁止しお礼メールだけで追客する工務店Y社(中国地方)
中国地方に本社を置くY社は、従業員十人程度の工務店です。
私はY社の社長を20年前から存じ上げているので、社内の雰囲気や営業の仕方もよく知っています。
そのうえで私は、Y社の追客が弱いことが以前から気になっていました。
私はY社にコンサルで入ったことはありませんが、何か機会があると社長とメールや電話でやり取りしています。
社長の口癖「ハウスメーカーのような迷惑営業したくない」
Y社の社長は、口癖のように「ハウスメーカーのような迷惑営業したくない」と言います。
以前は私も少しむきになって言い返すことがありました。
しかし、社長の気持ちも理解できますし、社長の頭には【アプローチ=迷惑営業】という固定観念があると分かってからは、私もカリカリしなくなりました。
20年前にはじめて会った時と比べても、追客に関する社長の考え方はほとんど変わっていません。
受注は取れていても「もうちょっと欲しい」
Y社は住宅展示場を持っていますが、接客した後の追客では電話を一切禁止しています。
Y社の営業社員がするのは、メールアドレスを聞いたお客さんにソフトなお礼メールを返すことだけです。
それでもY社はそれなりの受注を取っているので、社長の考えが正しいのかもしれません。
アンケートでメールアドレスを聞く方法と、メールを基本にした追客の進め方は、住宅営業のメールによる追客で解説しています。
しかし、社長は常日頃「もうちょっと受注が欲しいんだよね」と話しています。
私は、Y社がもう少しだけ追客を積極的に行えば、この悩みは簡単に解決すると信じています。
ただ、今のところ社長と私の話はどこまで行っても平行線です。
追客以外で見込み客を増やす方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。
私は、ハウスメーカーの積極営業は迷惑だという考えが、Y社の社長の心に完全にこびりついていると見ています。
ハウスメーカーのやり方に迷惑な手法が多々あるのは事実で、私もそれを否定する気はありません。
それでも、積極的に営業をかけること自体が悪いわけではありません。
まとめ
翌日訪問で迷惑な顔をするお客さんもいれば、意外なほど受け入れてくれるお客さんもいます。九州で取材した奥様のように、住宅会社からの追客を待っている施主もいます。
住宅会社の積極的な営業は、お客さんに迷惑と感じられることもあれば、いいタイミングで背中を押してくれたと受け取られることもあります。ぜひ本記事の翌日訪問と九州の施主の事例を参考に、反応が薄かったお客さんへの追客を見直してください。



