住宅営業の接客を覆面調査する方法|2001年から続けて見えた実態

住宅会社の社長や幹部の方は、住宅展示場や新築現場見学会で部下の住宅営業がどんな初回接客をしているか、見たことがあるでしょうか。指導の一環で数回は見たことがあるという方もいらっしゃるでしょうが、接客の場面を全く見たことがないという幹部の方が多いはずです。
私は2001年から、一般のお客さんを装って若手の住宅営業の接客を60分程度受ける覆面調査を続けています。撮った映像を見せると、社長や幹部のほとんどが「うちの営業ってこんな感じなんだ」と驚かれます。
本記事では、住宅営業の覆面調査の進め方と、調査で確認する4つの質問、映像の分析と研修への使い方、Zoom商談での覆面調査を解説します。
住宅営業の接客を覆面調査する理由
固定の住宅展示場でも新築現場見学会でも、新築住宅の営業は初回面談が勝負で、初見の接客能力が大きな役割を果たします。
そのため、私は初回接客を改善することが、そのまま住宅会社の利益増になると考えています。
接客を分析して悪いところを叩き、改善していけば会社が儲かるという単純な理屈です。
反対に、社長や幹部が営業の実態を分からないまま、ただお尻を叩いているだけでは数字は上がりません。
住宅展示場での覆面調査の進め方
対象は新卒から3年目程度の若手営業
10年選手や20年選手の住宅営業を対象にしても構いませんが、キャリアのある営業はへそを曲げる可能性があります。そのため、私は基本的に新卒から3年目程度の若手営業を対象に覆面調査を行います。
訪問日時と人着を上司にだけ伝えておく
私は事前に、訪問する日時と、訪問客としての人着(にんちゃく)、つまり服装や見た目の特徴を、住宅展示場にいる上司に伝えます。
覆面調査の当日、私はその時間ぴったりに住宅展示場を訪問しますが、対象者以外の営業が応対すると調査になりません。
そこで、上司に応対する営業をうまく差配してもらい、そこから60分程度の接客を受けます。
接客の間、私は事前に用意した質問に加えて、その場の流れに合わせてさまざまな問いかけをしていきます。私が最低限確認するのは、会社のコンセプト、設備仕様、構造(耐震性)、雑談への対応の4点です。
調査会社が住宅展示場の覆面調査で見た、競合の悪口や嘘を含む接客の実例は、住宅展示場の覆面調査で見た営業の実態で解説しています。
「おたくはどんな会社なの?」で会社のコンセプトを聞く
覆面調査の中で、住宅会社のコンセプトを問うこの質問は実はとても大事です。
住宅営業はお客さんに対して、「弊社は〇〇を念頭に置いて家づくりをしています」と答えられなくてはいけません。
空気環境にこだわる住宅会社なら空気環境へのこだわりを伝え、デザイン性にこだわる住宅会社なら堂々とデザイン性の高さを主張すればよいのです。
会社のコンセプトをしっかり話せる営業は、お客さんの信頼を勝ち取れます。
コンセプトが定まっていなかったコンサル先の某社
あるコンサル先の某社は立派な住宅展示場を持っていましたが、会社のコンセプトが定まっていませんでした。
私が某社に指示したのは、3分程度で紙芝居のように話せるフリップの作成です。
フリップには、会社の歴史や成り立ち、なぜその地域で強いのか、土地の情報を他社より的確に入手できる理由などを載せています。
社員の顔写真のほか、関係会社や大工さんの顔も掲載しましたが、長々と話すとお客さんに飽きられるので、内容は3分間で話し終えられる量にまとめています。
「3分だけ」でお客さんが着座するようになった
フリップを用意してから、某社の営業がお客さんに着座を勧める言い方は次の一言になりました。
「弊社のご説明をさせて頂きたいので3分だけお時間をください」
営業がこのように勧めると、ほぼ100%のお客さんが座ってくれるようになりました。
お客さんが一度座れば説明が3分で終わることはまずなく、営業はそこから長時間の折衝に持ち込めます。
自社のコンセプトを伝えられるうえに着座折衝にも持ち込めるので、フリップは一石二鳥の戦略です。
設備仕様・耐震等級・雑談で若手営業の対応力を試す
「床材は何ですか?」と展示場の素材を聞く
私は覆面調査の中で、「床材は何ですか?」のように、住宅展示場に使われている素材などをそれとなく聞いていきます。
社長にご忠告したいのですが、一線の住宅営業はこの質問に的確に答えているでしょうか。
試してみると、若手営業は意外なほど知らなかったり、適当に答えたりしています。
営業がこの程度のことに答えられなければ、お客さんの信頼は一瞬でなくなります。
耐震等級3への切り返しでうろたえるか
「耐震等級はいくつですか?」
この質問は定番で、全件で耐震等級3を取得している住宅会社なら、営業は自信を持って答えます。私はそこですかさず、間取りの制約と費用を突いて切り返し、営業の反応を見ます。
「でも耐震等級3をとると間取りにかなり制約が出るんですよね」
「余分にお金もかかるんでしょ?」
十分に想定できる質問ですが、この切り返しにたじろぐ営業が多くいます。逆に、耐震等級3を取らない住宅会社や、積極的に耐震等級を取らない住宅会社の営業は、素直にうろたえてしまいます。
耐震等級をお客さんに上手に伝える方法は、戸建ての耐震等級をPRする4つの方法で解説しています。
目先を外した雑談を振る
私は接客の途中で、話題を選ばずに雑談を適宜織り込んでいきます。
「こんな感じの内装ってあんまり好きじゃないんだよね」
「学生時代とかスポーツやってたの?」
「こんな立派な展示場なんか誰が建てるのよ」
「住宅の営業って大変でしょ」
住宅営業の仕事は雑談力を試されますが、若手営業はこうした突然の振りに愛想笑いを浮かべて終わってしまうケースが目立ちます。
そのため、私のロープレ研修では、雑談のかわし方や対応方法もみっちり訓練します。
若手営業の雑談の引き出しを増やす方法は、住宅営業ロープレの進め方で解説しています。
覆面調査の映像を文字起こしして報告書にする
20年前なら撮影は大変だったかもしれませんが、今は安価で高性能な小型カメラが簡単に手に入ります。私も小型カメラを数種類持っていて、覆面調査では接客の場面を映像で記録に残します。
会話を文字起こしして良い答えと悪い答えを並べる
覆面調査が終わったら、私は映像を事務所のパソコンですべて解析します。
どうでもいい会話は省きますが、基本的には全部の会話を文字起こしし、レベルが高くうまい切り返しから、レベルの低い答えや明らかに間違った答えまでをすべて列挙します。
私はこの列挙を報告書にまとめ、研修を行う場合は、覆面調査の対象になった住宅営業も参加させて、映像を流しながら評価していきます。
新卒営業の研修全体の組み立ては、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
「うちの営業ってこんな感じなんだ」と驚く社長や幹部
私は社長や幹部にできる限りこの映像を見てもらうようにしていますが、ほとんどの方が驚かれます。
「うちの営業ってこんな感じなんだ」
特に新卒や若手の営業には、明らかに事実と違う内容や、本人も虚偽と分かっていながら話している内容が多く見受けられます。
事実と違う説明や虚偽の説明は後々大きなトラブルの元になりますし、そもそもそうした接客をしていては契約にはなかなか結びつきません。
社長と幹部には、この事実を分かってもらいたいのです。
新卒営業が事実と違う説明をしないための基本知識の教え方は、新卒住宅営業の基本知識の教育で解説しています。
Zoom商談でも覆面調査はできる
Zoomなどのシステムを使った商談はコロナ前には無かったやり方ですが、今はごく当たり前になりました。
以前の私は住宅展示場に出向いて覆面調査をしていましたが、Webシステムを使うことで覆面調査はかなり楽になりました。
私にお支払いいただく経費も抑えられるので、依頼する住宅会社にもメリットがあります。
ただ、住宅会社も住宅営業もまだ慣れていないためか、Webシステムを使った商談はぎこちないケースが圧倒的に多いのが実態です。
入社3年目の営業がほぼ完璧だった全国ハウスメーカーの事例
ある全国ハウスメーカーから依頼を受けて、私は入社3年目の男性営業とZoomで初回面談を行いました。
男性営業は私を一般のお客さんだと思って面談しましたが、内容は素晴らしく、ほぼ完璧でした。
資料の出し方も説明の仕方もほぼパーフェクトで、私が何か質問すると、それに対応する資料が瞬時に出てくるスピーディーさでした。
後で支店長に聞くと、そのハウスメーカーではWebシステムを使った商談のロープレを徹底的にやっているそうです。
まとめ
住宅営業の覆面調査では、若手営業の60分程度の接客を受けながら、会社のコンセプト、設備仕様、耐震性、雑談への対応を確かめ、映像を文字起こしして報告書と研修に使います。コンセプトを3分のフリップにまとめた某社ではお客さんが着座するようになり、Zoom商談のロープレを徹底した全国ハウスメーカーでは入社3年目の営業がほぼ完璧な初回面談をしていました。
ぜひ本記事の4つの質問を参考に、自社の住宅営業が初回接客でどう答えているかを確かめてください。



