住宅展示場の撤退が相次ぐ理由|等身大と収納で集客する工務店の戦略

住宅展示場の撤退が相次ぐ理由|等身大と収納で集客する工務店の戦略

川崎のある総合住宅展示場では区画が歯抜けになり、出店している某メーカーの社長も撤退の時期を探っています。住宅展示場はすぐにはなくなりませんが、展示場がなくても集客・接客・契約は十分にでき、展示場を残すかどうかは維持経費に見合うかどうかで決まります。

展示場を建てるのであれば、豪華さに頼る必要はありません。

ヒノキヤや積水ハウスの事例では、等身大の仕様でも集客はほとんど落ちませんでした。

工務店であれば、収納に凝った街角モデルという手もあります。

本記事では、撤退が相次ぐ住宅展示場の実情と、等身大モデルや収納特化の展示場、街角モデルの集客事例を解説します。

住宅展示場で相次ぐ撤退という事件(川崎の総合住宅展示場の例)

川崎にある南武線沿いの某総合住宅展示場は、すでに歯抜け状態になっていて、全体に少し寂しい雰囲気です。ここに出店している某メーカーの社長に話を聞いたところ、ストレートな答えが返ってきました。

「うちの会社も撤退の時期を探っているんですよ」

大手ハウスメーカーを中心に、住宅展示場の集客力は激減しています。

加えて紹介の仲介業者からの送客が激増しているので、自分で住宅展示場にやって来るフリーのお客さんは、さらに輪をかけて減っています。

仲介業者から来るお客さんであれば、住宅会社はわざわざ住宅展示場で接客しなくても、会社の事務所に呼べば済みます。

住宅展示場がなくても工務店は集客・契約できるのか

住宅展示場が現状ですぐなくなることはありませんが、私は、展示場がなくても住宅会社の集客・接客・契約は十分に可能だと考えています。

展示場はあるに越したことはなく、展示場があれば住宅会社は様々な戦略を打てます。

それでも維持経費を考えると、展示場を持ち続けることには大きな疑問が残るので、住宅会社は費用対効果で出店を判断することになります。

豪華なモデルハウスと等身大の展示場、集客が多いのはどちらか

豪華な住宅展示場が契約後のがっかりを生む

豪華な展示場と普通の展示場が並んでいたら、集客が多いのはどちらかという話は、かなり昔からある命題です。

住宅展示場の問題点の1つが、その豪華さにあるからです。

お客さんにとっては素敵な家を見たほうが気持ちが高ぶりますし、オプションだらけの住宅だと分かっていても、見ていて楽しいのは事実です。

ところが、お客さんが実際に契約して家を建てると、住宅展示場のイメージとは程遠いごく一般的な家になり、がっくりしてしまうケースが多発します。これが豪華な展示場の弊害です。

では、住宅会社があえてごく一般的な普通の家を展示場として建てたら、集客は落ちるのでしょうか。私は膨大なデータを取ったわけではないので一概には言えませんが、見聞きしてきたことと体感からすると、さほど下がらないと思います。

ヒノキヤの等身大の住宅展示場(福岡県の総合住宅展示場)

等身大の展示場といえば、まずヒノキヤが頭に浮かびます。ヒノキヤは日本全国に住宅展示場網を広げていて、懸垂幕で等身大の一般的な住宅であることを大きくアピールしています。

福岡県にあるヒノキヤの住宅展示場は総合住宅展示場の中にあり、競合他社の展示場も10棟近く建っています。

私の手元にはこの住宅展示場の来場者数データがありますが、ヒノキヤの数字は他社と比べて落ちておらず、それどころか半分より上の来場を確保しています。

サンプリングが1つで申し訳ありませんが、少なくともこの展示場では、等身大の仕様が集客に関係ないことが証明されています。

細かい数字のデータは持っていないものの、口頭で聞いた範囲でも、一般的な建物であるせいで集客が落ちることはないケースが圧倒的だと私は考えています。

積水ハウス時代に見た一般仕様のモデルハウス(1990年代)

古い話で恐縮ですが、1990年代の積水ハウスにも同じようなデータがありました。

私が実際に勤務していた住宅展示場では、建っているモデルハウスがあまりにも豪華だったため、積水ハウスがあえてその横に一般仕様のモデルハウスを建てました。

すぐ横には豪華な積水ハウスがそびえ建っていましたが、一般仕様のモデルハウスの来場率は若干落ちる程度で、ほぼ遜色はありませんでした。

それどころか、来場したお客さんからは、一般仕様のモデルハウスを評価する声が大半を占めました。

「こんな普通の住宅展示場があってもいい」「すごく参考になった」「他社でもこのような試みをすべき」

しかし、この戦略は一過性のものとして終わり、積水ハウスは一般仕様のモデルハウスを早々に解体して、再び豪華なモデルハウスを建てました。

この経緯を私はよく知りません。

それでも、一般的な住宅が当時のお客さんに受け入れられたことは紛れもない事実です。

展示場を豪華な仕様と等身大の仕様のどちらで建てるかの判断材料は、展示場の仕様の決め方で解説しています。

収納をテーマにした住宅展示場が今ウケている

お客さんに受け入れられる住宅展示場のスタイルは、時代ごとに変わります。

豪華に作る展示場もあれば、テーマを決めて作る展示場もありますが、お客さんの受けがよく、多くのメーカーが取り入れているテーマは収納です。

収納は大昔から注目されてきたテーマで、鉄板と言いますか、お客さんにとって不変の関心項目であることは間違いありません。

大手ハウスメーカーはもちろん、小規模な工務店でも、展示場を建てるのであれば収納に特化したものを造るべきです。

収納を見せる展示と来場客への声かけの方法は、住宅展示場の収納で他社と差別化する方法で解説しています。

住宅展示場のモデルハウスの室内

アイ工務店の展示場にある7つの収納の説明パネル

現状では、どのメーカーも凝りまくった収納を作っています。

そのいい事例がアイ工務店です。

アイ工務店の展示場に行くと室内に大きなパネルがあり、展示場に仕掛けられた7つの収納や空間についての説明が書いてあります。

「アイ工務店は収納を突き詰めて考えました」

アイ工務店がパネルで伝えているのはこの一言ですが、パネルの説明には説得力があり、お客さんには好評です。

お客さんが実際に展示場の中を回ると、パネルに書かれた場所ごとに様々な仕掛けの収納や空間があり、見学したお客さんのほぼ全てが「アイ工務店の収納設計ノウハウはすごい」と思うように作られています。

住宅会社の経営者や営業社員は、一度足を運んで見学してみてください。

他社の展示場を客として回る方法は展示場巡りで行う住宅営業の競合調査で解説しています。

工務店の街角モデル戦略は収納で差をつける

小規模な工務店は、簡単に住宅展示場を建てられません。

そこで考えられるのが街角モデルです。

街角モデルを作っている工務店はかなり増えていると思いますが、街角モデルは営業手法として理にかなっていて、うまく回ればこれほど効率的な戦略はありません。

街角モデルの2つの形式

街角モデルとは、工務店が分譲地や建売現場の一角に住宅を一棟だけ建て、半年ほど住宅展示場として使った後に売却するものです。

もう一つ、工務店が完全注文住宅をお客さんと契約した後に建築し、3ヶ月、4ヶ月など一定の期間、お客さんの了解を得て展示場として使わせてもらう形式もあります。

どちらの形式も半年程度で展示場としての役目を終えるので、工務店がその期間に集客して新規のお客さんをつかめれば、極めてコスパのいい手法になります。

期間限定の街角モデルハウスの始め方と、新規客の名簿を集めた工務店の事例は、街角モデルハウスの集客で解説しています。

6区画の分譲地なら1区画を収納に凝ったモデルにする

街角モデルの新規集客が成功するかどうかは、デザイン性や間取りに大きく左右されます。

そこで私が工務店にアドバイスしたいのが、収納です。

仮にあなたの会社が6区画の分譲地を開発し、そのうち1区画に街角モデルを建てるとします。

その場合、工務店は多少経費がかかっても、収納に凝った建物を建てるべきです。

収納に凝っておけば、工務店は街角モデルでイベントを開くときに、新規のお客さんの目を引くキャッチコピーを打てます。

「収納に徹底的にこだわったモデルハウスをぜひご覧ください」

イベントの組み立て方は工務店の集客イベントの成功例と失敗例で解説しています。

工務店が何の工夫もない普通の家を街角モデルにするのは、一番いけないやり方です。外観がごく一般的なものでも、間取りにひと工夫あれば新規来場数は期待できますし、来場したお客さんの目を引くことも期待できます。

VRは住宅展示場の代わりになるか

住宅展示場がこの先どうなっていくかについては、意見がかなり分かれています。

住宅展示場はVRに置き換わるのではという意見もありますが、私はさすがにそれはないと考えています。

頭からかぶるVRは華々しく世の中にデビューし、住宅会社だけでなく建材会社やその他の企業も積極的に導入していますが、あくまでもサブの位置にとどまっているのが現状です。

家を求めるエンドユーザーにとって、実物の家を見学できることは大きなメリットですし、単純に見学して楽しいという面もあります。

まとめ

住宅展示場からの撤退は相次いでいて、住宅会社は展示場がなくても集客・接客・契約ができます。それでも住宅会社が展示場を持つのであれば、等身大の仕様でも集客はさほど落ちず、収納というテーマでお客さんの目を引けます。

住宅展示場を建てられない工務店は、分譲地の1区画や契約したお客さんの家を使った街角モデルで、収納に凝るという考え方を取り入れられます。ぜひ本記事のヒノキヤや積水ハウス、アイ工務店の事例を参考に、自社の展示場や街角モデルの仕様を見直してください。

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