モデルハウス接客は呼び込みから|展示場の女性3人に聞いた体験談

総合住宅展示場の通路を歩くお客さんは、数えるほどしかいません。各社のモデルハウスの前では、呼び込みの女性がそのお客さんに声をかけています。
1月初め、私は千葉県の総合住宅展示場で呼び込みの女性3人に話を聞きました。声をかけた数に応じてモデルハウスに入るお客さんは出てくるという答えで、冬場は「暖房を入れていないのになぜか暖かい」という体感のトークで打率を上げている女性もいました。
本記事では、3人の呼び込みの実例と私の現場見学会の体験談をもとに、モデルハウス接客の入口になる声かけを解説します。
住宅展示場のモデルハウス接客は呼び込みの声かけから始まる
私は千葉県内の総合住宅展示場に出向き、あるハウスメーカーの接客を半日ほど観察しました。
その日の様子は前回のコラムで書きましたが、今回私が着目したのは、他社のモデルハウスの前に立って呼び込みをする女性たちです。
以前のコラムで私は「展示場の前での呼び込みには集客効果がある」と書きましたが、今回は実際に呼び込みの女性から話を聞いてみました。
社名は伏せて、A工務店、Bホーム、Cホームと書きます。
その総合住宅展示場には30棟以上のモデルハウスが建っていて、この地域では集客力のある展示場です。
訪問日は1月初めの寒い日でしたが、ざっと見たところ30棟のうち半分程度のモデルハウスの前で、女性がお客さんを呼び込んでいました。
私は前々から不思議に思っているのですが、呼び込みに立つ男性はただの一度も見たことがありません。
住宅会社は、女性のほうが集客効果が高いと考えているのでしょうか。
会場を歩くお客さんはまばらでフリー来場は貴重
前回のコラムでも書きましたが、これだけ大きな総合住宅展示場でも、会場内を歩いているお客さんは信じられないほどまばらでした。
スーモなどの発達で予約来場が増えたのが現状ですが、フリーで来場するお客さんも相当いることはデータでも分かっています。
フリーのお客さんが見て回れるモデルハウスの数は限られているので、声かけでモデルハウスに入ってもらえれば、その住宅会社にとって大きなメリットがあります。
この展示場での予約来場とフリー来場の実態は、千葉の総合住宅展示場の集客の実態で解説しています。
3000万円の住宅1棟で呼び込みの年俸600万円が回収できる
住宅の利益率で考えると、声かけしたお客さんがたまたまモデルハウスに入り、運よく契約に至って3000万円の住宅を購入すれば、住宅会社には600万円程度の利益が出ると計算できます。
つまり、呼び込みの女性に600万円の年俸を払っても、チャラになるわけです。
あくまで計算上の話ですが、呼び込みは一見無駄な努力に見えて、住宅会社が理由を持ってやっていることだと私は考えています。
A工務店の呼び込み女性に聞いたモデルハウス接客の実態
私はコンサルタントとして、ある住宅会社の展示場に入っていました。
お客さんがいない時間は手持ち無沙汰なので、私は総合住宅展示場の会場内を散歩がてらぶらぶら歩いていました。
私はスマートフォンを片手に持ったスーツ姿で、一見するとお客さんには見えないはずです。
それでも呼び込みの女性の多くは、お構いなしに私に声をかけてきました。
呼び込みの女性たちは私を、仕事中にモデルハウスをちら見しに来た客だと踏んだのでしょう。
少なくとも、私が住宅営業ではないと見抜いていたようです。
40歳前後の明るい女性は10mついていった
最初に話したのは、A工務店の前に立っていた40歳前後の明るい女性です。
女性「こんにちは~ よかったら展示場をご見学されませんか?」
私「私は住宅営業のコンサルタントしておりまして、〇〇社さんの展示場に今日はいるんですよ」
女性「そうなんですね」
私「ところで前々から気になったんですが、こうやって声をかけるとお客さんはそれに応じて入ってくるものですかね」
女性「結構入ってくれますよ・・・あっ・・・」
このとき目の前を本当のお客さんのご夫婦が通りかかったので、A工務店の女性はすぐにそちらへ向かって声をかけました。
ご夫婦は結局入りませんでしたが、私が驚いたのはその食いつきぶりです。
ご夫婦が足を止めずに歩き続けても、A工務店の女性は後ろを10mぐらいついていきながら声をかけ続けていました。
私は正直なところ、ちょっとしつこいかな……と感じました。
私「失敗しましたね(笑)」
女性「う~ん、いけそうな感じだったんですけどもだめでしたね(笑)」
声をかけた数に応じてお客さんは入ってくる
その後はお客さんが通りかからなかったので、私はA工務店の女性と7~8分いろいろ話をしました。いくつかテクニックも聞きましたが、A工務店の女性の話の中心は、声をかければその数に応じてモデルハウスに入ってくれる人は必ず出てくるということでした。
呼び込みを始めた工務店の来場者数と契約数の変化は、住宅展示場の呼び込みの効果で解説しています。
私は集客数に応じた歩合給でも出るのではないかと探ってみましたが、A工務店の女性は「そういうのは一切ありません」ときっぱり答えました。
このあたりが日本人の真面目さなのでしょうね。
A工務店の女性は、仕事としてやるからにはその範囲で可能な限り頑張って集客しているということです。
体感で誘うBホームの声かけトーク
A工務店の女性と別れてしばらく歩いていると、今度は全国区の大手ハウスメーカーであるBホームの前を通りかかりました。
Bホームは鉄骨系のメーカーで、やはり私をお客さんと見て女性が声をかけてきたので、私は素性を話していろいろ話し込みました。
私がBホームの女性と話したのは、第一声がうまいというか面白く、工夫していることに感心したからです。
「暖房を入れていないのになぜか暖かい」という第一声
私が前を通りかかると、Bホームの女性は私に向かってこう声をかけてきました。
女性「暖房を入れていないのになぜか暖かい住宅展示場を見てみませんか?」
一般的な声かけは「弊社の展示場をご覧になりませんか?」といったものですが、Bホームの女性は一般的なトークを一切排除して、このフレーズを私にぶつけてきました。
訪問したのは1月初めなので、この言葉は耳を引きます。
しかも「暖かい展示場です」と単純にうたうのではなく、暖房を切っているのに暖かいと誘うわけですから、興味深い引き込みトークです。
私はBホームのモデルハウスには入りませんでしたが、トークの手応えをBホームの女性に聞いてみました。
私「今の声掛けトークはなかなか興味深いので結構お客さんも気にかかるんじゃないですか」
女性「冬場はこれが一番効くんですよ。他社さんがどの程度の打率で呼び込んでるか知らないから何とも言えませんが、このトークを使い始めてから私は打率が上がってますよ」
夫婦連れには奥さんに向かって話しかける
Bホームの女性は、こんな話もしていました。
「今は男性であるあなただけでしたから言わなかったのですが、ご夫婦で歩いてる場合には奥さんに向かって話しかけるんですよ」
私はなるほどと思いました。
寒さに敏感で弱いのは一般的に女性だと考えられるので、Bホームの女性は「奥さん、弊社の住宅は……」と奥さんに向けて話すそうです。
適当に声をかけているように見えて、考えている人は考えています。
どんな仕事でも、一工夫することで他社との差別化が生まれ、それが成果になって現れます。
小さなストーブ1台で新規来場が3倍になった現場見学会(積水ハウス時代)
話が少しずれますが、Bホームの女性の決め台詞を聞いて、私は積水ハウスで営業をしていた時代を思い出しました。ある現場見学会で、私が発案したキャッチコピーが強烈な集客結果を残したことがあります。
「当日は小さなストーブ1台だけを稼働しています」というチラシ
詳細は記憶にありませんが、私は「当日は小さなストーブ1台だけを稼働しています」というキャッチコピーを配布チラシに書いて、地域に配りました。
チラシには、当日実際に現場で使うストーブをリビングの端に置いた写真も載せました。
何組来場したかまでは覚えていませんが、一般的な現場見学会で来場する新規の3倍程度の数字を残したことは、今でも記憶しています。
暖かいと言うだけでは他社と差がつかない
当時の積水ハウスには今ほどの断熱能力はありませんでしたが、当時のレベルなりの断熱性能はありました。
しかし「積水ハウスの家は暖かい」と書くだけではインパクトがなく、どの住宅会社も同じことを言います。
そこに気づいた私は、お客さんの体感をキーポイントにしました。
広いリビングにぽつんと置かれた小さなストーブの写真は、「こんな小さなストーブでこの部屋が本当に暖かいのか」という疑問と興味をお客さんに抱かせたと私は考えています。
Bホームの女性のトークも、コンセプトは私のチラシとまったく同じです。どのモデルハウスを見ようかと考えながら歩いているお客さんに「うちの展示場は暖房も入れていないのに暖かいんです」と話しかければ、お客さんが興味を引かれるのは当然です。
展示場の前で来場を促す文言の考え方は、住宅展示場のブラックボードに書く文言で解説しています。
前のめりに食いつくCホームの呼び込み接客
最後に話を聞いたのも全国展開のハウスメーカーで、Cホームは木造系です。
私がこれまでと同じようにモデルハウスの前を通り過ぎようとすると、やはり女性が声をかけてきました。
声かけトークの内容はごく一般的でしたが、私はせっかくなので身分を明かして、7~8分ほど話し込みました。
会話の内容に特筆すべきものはありませんでしたが、Cホームの女性もA工務店の女性と同じように、私との会話の最中に通りがかったお客さんに食いつきました。
Cホームの女性はかなり前のめりで、私が客であれば「うざいな……」と思う雰囲気でした。
それでも私が感心したのは、その迫力というか熱意というか執着心です。
Cホームの女性は、何としてでもモデルハウスに来場させてやるという、恐ろしいほどのすっぽんぶりを見せました。
住宅営業の目で見るとクエスチョンマークがつく接客ですが、私がお伝えしたいのは、Cホームの女性の意欲と迫力です。他社の住宅展示場を客の立場で見て回る方法は、展示場巡りで行う住宅営業の競合調査で解説しています。
まとめ
千葉県の総合住宅展示場で話を聞いた呼び込みの女性のうち、A工務店の女性は声をかけた数に応じてお客さんが入ると話し、Bホームの女性は冬に暖房を入れていないのに暖かいという体感で誘い、夫婦連れには奥さんに話しかけていました。
Cホームの女性は、前のめりなほどの熱意でお客さんに食いついていました。
3000万円の住宅1棟の利益で呼び込みの年俸600万円が賄える計算なので、住宅会社がモデルハウス接客の入口に呼び込みの人を置く理由は十分にあります。
ぜひ本記事の3人の声かけと小さなストーブ1台のチラシの事例を参考に、自社のモデルハウスの前で使う第一声を見直してください。



