展示場接客の雑談力を上げる方法|虫・網戸・高層階の会話事例

住宅展示場のキッチン横で、奥さんが大きな掃き出し窓を見ながら「この大きな窓は魅力だけど虫がすごくない?」と話しかけます。
住宅営業は「う~ん……」と言葉に詰まり、最後は「かなり高いですね」と相づちを打っただけで、会話はそこで終わってしまいました。
展示場接客の雑談力は、お客さんとの共通点を探すことと、話題に出たことのちょっとした知識を持つことの2つで上がります。この営業マンが虫・網戸・高層階マンションについて少しでも知っていれば、同じ会話をもっと長く深く続けられました。
本記事では、私が展示場で見た会話事例をもとに、雑談力を上げる2つの要素と、雑談を意図的に仕掛ける方法、社内で想定問答集を作る方法を解説します。
展示場接客の雑談力を作る2つの要素
私は、展示場接客のすべての時間を家の話に費やすのはいかがなものかと思っています。
お客さんとの会話の中でちょっとした脱線があってもよく、もっと言えば、住宅営業は脱線の時間を意図的に設けるべきです。
ところが、これがなかなかうまくいかず、雑談を苦手にしている営業マンが多いと私は感じています。
雑談力は話術と言い換えてもかまいません。
生まれ持った才能がある人は別ですが、そうでないと自認する営業マンでも、2つの要素を身に付ければ雑談力を上げられます。
展示場での最初の会話の運び方は、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
お客さんとの共通点を探して盛り上がる
客「私は〇〇小学校卒業なんですよね」
あなた「えっ、私も〇〇小学校卒業なんですよ」
客「そうですか。〇〇先生って覚えていますか?」
あなた「いましたね! あの変わった先生(笑)」
このやり取りのように、営業マンがお客さんとの会話の中で何かしらの共通点を見つけ、そこで話し込むパターンが雑談力の1つです。
「小学校が同じ」は実によくあるケースで、とくに土地なし客との会話での出現率が高いと言えます。
土地なし客との商談の進め方は、住宅営業の土地提案の進め方で解説しています。
家の話とは関係なく、個人的な話に共通点があっただけのことですが、雑談力の1つは間違いなくこれです。
営業マンは展示場でお客さんと話すとき、「自分との接点や共通事項はないかな?」と考えながら話します。
趣味、出身地、出身校、親の実家、勤務先、学生時代のクラブ活動など、営業マンはとにかく重なる部分を探り、一致点があれば話を盛り上げればよいわけです。
共通点を探すだけでなく、お客さんの行動や職業に気づいて質問する練習の進め方は、住宅営業の雑談力を伸ばすロープレで解説しています。
会話に出た話題の知識を身に付けて活かす
「知識を身に付けるってなんだ?」と言われそうですが、お客さんが持ち出した話題について営業マンがちょっとした知識や雑学を持っていれば、会話を一歩先へ進められます。
つい最近、私が展示場で見たやり取りを次の節で再現します。
住宅展示場のキッチン横で雑談が続かなかった会話事例
住宅展示場のキッチン付近で、営業マンとお客さんの奥さんが話をしていました。
2人はキッチンの隣にある大きな掃き出し窓を見ながら、虫の話を始めました。
要約すると、会話は次のように進みました。
奥さん「この大きな窓は魅力だけど虫がすごくない?」
営業「たしかにそうですね。少し気になりますね」
奥さん「ところで網戸は標準でついているの?」
営業「はい、値段に入っています」
奥さん「網戸を付けても虫は入ってくるよね」
営業「う~ん……」
奥さん「うちは今高層階に住んでいるので網戸はないし、実際に虫もほとんど来ないからいいんだけどね」
営業「そうなんですか。高層階というのは何階ですか?」
奥さん「18階です」
営業「かなり高いですね」
私はこのやり取りを見ていて、「営業に知識があれば、もっと会話を円滑に運べて盛り上がるんだけどな」と思い、後で営業マンに話をしました。
会話は、虫→網戸→高層マンションの順に進んでいます。
奥さんが最初に虫の話を持ち出し、虫から網戸に移り、最後は高層階なら虫が来ないという流れでした。
営業マンはこの話を何気なく受け流し、相づちでつないだだけで終わっています。
相づちで終わらせず、お客さんの話に二往復・三往復目まで返せるように準備する方法は、住宅営業のトークスクリプトの作り方で解説しています。
虫・網戸・高層階の知識で雑談を深める
虫の話は建築予定地の環境につなげる
家の近くに川や山があれば、虫がたくさんいることが予想されます。この奥さんの場合は親の土地に家を建てる話だったので、営業マンは次のような雑談ができました。
「建築予定の場所は川とか山が近かったりするのですか?」
「〇〇は6月~9月にかけてやぶ蚊が結構出るところですよね」
虫の種類によって発生時期などが変わることまで営業マンが知っていれば、さらに細かい雑談ができます。
網戸の話は網目と閉め方の知識で深掘りする
網戸の網目より小さな虫は、網戸をしていても室内に侵入してきます。網戸には目の細かい製品もあるので、営業マンが網目の径の違いを知っていれば、話をさらに深掘りできます。
また、網戸を中途半端に閉めると、窓と網戸の間に虫が閉じ込められ、住む人が何とも嫌な思いをすることがあります。営業マンが網戸の補修や掃除の仕方まで知っていれば、雑談はもう一段深くなります。
高層階の話はメリットとデメリットを知っておく
営業マンは、高層階に住むことのメリットとデメリットも知っておくべきです。実際に住んでいるお客さんへの話なので悪口を言うわけにはいきませんが、営業マンが知識として持っておいてほしい点が2つあります。
高層階に住む子供は高い場所を怖がらなくなり、その恐怖心の低下が転落事故を招くと言われています。営業マンは、お客さんの様子を見ながらこの話に切り込んでもかまいません。
意外に知られていないのが気圧の差で、上層階に行くほど気圧は下がります。
結論が出た話ではありませんが、この気圧の差が健康に影響するのではないかという研究もあります。
住む人は気圧の高いところと低いところを行き来することになり、体が対応しきれないという理屈のようです。
雑談のための知識は、このくらいで十分です。事例の営業マンは話を軽く受け流して終わりましたが、虫、網戸、高層階マンションの欠点を知っていれば、会話はもっと長く深いものになったはずです。
窓辺で雑談を仕掛ける「虫→網戸→高層マンション」の定型
私はこの会話をたまたま耳にしただけですが、営業マンはこの流れを意図的に仕掛けることができます。勤務する住宅展示場のどこでも構わないので、営業マンは窓の近くに来たら、次のように切り出します。
営業「窓がたくさんあると明るく風通しも良いのですが、虫の問題があるのですよね。奥さんは虫……いかがですか?」
奥さん「いや~ 虫はダメ! あんなのが家に入ってきたら声出しちゃうわよ(笑)」
営業「でしたら土地を探すときは、山の近くとか川の傍は避けたほうが無難ですね。それとこの辺りは8月に入ると〇〇が大量発生して……」
(中略)
営業「ところで今は網戸をお使いですか?」
奥さん「はい」
営業「網戸と窓の間に虫が閉じ込められて困ったことありませんか?」
奥さん「あります!」
営業「あれはコツがちゃんとあるんですよ」
(中略)
営業「戸建てとマンションで悩まれているとのことですが、マンションの場合は高層階に住むかどうかの選択も重要です。はっきりした結論が出ているわけではないのですが、高層階に住むと気圧の関係で……」
事例の営業マンは、なんとなく話を合わせるだけで終わってしまいました。
営業マンがそれぞれの話題にちょっとした知識を持っていれば、会話の進み方はまったく違ってきます。
奥さんとの会話の運び方は、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
雑談の想定問答集を作る住宅会社の取り組み
ある住宅会社では、展示場での会話事例をひたすら集めている最中です。その住宅会社は、集めた事例から、今回の虫・網戸・高層階マンションのような想定問答集を作っています。
商談前にお客さんから出そうな質問や反論を予想し、回答を用意しておく準備は、想定問答集の作り方と練習方法で解説しています。
3段の話題が生まれる場所を洗い出す
その住宅会社は、話題が3段で連なる場所を展示場の中から洗い出しています。窓であれば虫・網戸・高層階マンション、リビングであればテレビ・テレビからの適距離・目に与える影響という具合です。
話題ごとのちょっとした知識をマニュアルにする
その住宅会社は、洗い出した場所ごとに、それぞれの話題についてちょっとした知識を教えるマニュアルにまとめています。社内で作成するのは相当大変だと思いますが、ぜひチャレンジしてみてください。
まとめ
展示場接客の雑談力は、お客さんとの共通点を探して盛り上がることと、会話に出た話題のちょっとした知識を活かすことの2つで上がります。私が見た事例では、営業マンが虫・網戸・高層階マンションの話を受け流したため、奥さんとの会話が相づちで終わってしまいました。
虫→網戸→高層マンションのような3段の流れは、窓辺で営業マンから意図的に仕掛けられます。ある住宅会社は、展示場の場所ごとに3段の話題を洗い出し、想定問答集にまとめています。
ぜひ本記事の虫・網戸・高層階の会話事例を参考に、自社の展示場で3段の話題が生まれる場所を洗い出してください。



