施主から紹介が集まる大工の秘密|取材で分かった3つの習慣

住宅業界では、施主の友人紹介の情報は担当営業に出るのがふつうです。
施主は担当営業との付き合いが長いですし、契約を決めたのも、最終的には営業を信頼したからです。
ところがある住宅会社では、紹介情報が担当営業ではなく、関東地方に住む大工のHさんに集中していました。
Hさんの20年来の友人である大工のGさんは、その理由を「Hさんは紹介をもらうことを意識してるからだよ」と言い切りました。Hさんは施主と雑談をしながら、頭の中では会話を友人紹介という結論に持っていく流れを考えていたのです。
本記事では、私が取材した大工のHさんとGさんの話をもとに、施主から紹介が集まる大工の習慣と、住宅営業が真似できる点を解説します。
施主の紹介が担当営業ではなく大工に集まる住宅会社
私は住宅会社の研修材料として、さまざまな取材動画を持っています。
優秀な住宅営業マンの取材もあれば、ごく平均的な営業マンの取材ビデオもあります。
ほかにも、契約をしてくれたお客さんのコメントを撮ったものや、数は少ないものの、失注した案件の理由をお客さんに聞いたビデオもあります。
取材した住宅営業のうち、紹介が集まる北陸の若手女性営業の話は、紹介が集まる住宅営業の違いで解説しています。
設計や現場監督の話もいろいろ聞いてきましたが、今回紹介したいのは、関東地方に住む大工のHさんの取材です。取材を申し込んだとき、Hさんは次のように答えてくれました。
「僕でいいんですか?特に話すことなど何もないんですけどもね。でもそう言ってくれるならば話してみようかな」
取材当日、私が取材場所の建築現場に足を運ぶと、大工のHさんは満面の笑みを浮かべて立っていました。
紹介が集まる大工Hさんが住宅の建築現場で守る3つの習慣
専門用語を平易な言葉に言い換える
どんな職種でも、一般のお客さんに対して専門用語を控えるのは常識です。
建築業界でも、大工・設計・営業のどの立場であれ、業界用語や社内用語をそのまま使うようでは話になりません。
それでも、現場職である大工のHさんが取材で最初に切り出したのは、まさにこの点でした。
「専門用語を何気に使う人が結構多いのですが、僕はその辺りを考えて全て平易な言葉に言い換えます」
私の同期だった設計のF君は、Hさんとは逆のケースでした。F君は、私と話すときはもちろん問題ありませんが、お客さんに対しても社内用語や設計独自の言葉を平然と使うのです。
F君「何か他にご質問はございますか?」
客「この部分に間仕切りというか目隠しのような壁を追加することはできるのですかね?」
F君「もちろん可能ですよ。この場所であればサブロクのパーティクルボードを噛ませば問題なくできるでしょうね。それとクロスも大体中間レベルの5~6番を使えば費用もそんなにかかりませんし・・・」
F君の会話は、いつもこの調子でした。
「クロスも大体中間レベルの5~6番」というくだりは完全な社内用語で、お客さんに言っても訳が分かりません。
ところがF君本人はまったく気付かず、横にいる私が首をかしげるほどの鈍感ぶりでした。
お客さんとの折衝が終わった後に私が指摘すると、F君は毎回キョトンとした顔で「あっ、そうだったっけ、ごめんごめん(笑)」と満面の笑みを浮かべていました。F君の話は極端だと思いますが、大工のHさんはこの点にとても気をつけて話しているそうです。
構造の説明には手作りの模型を使う
取材中、私がカメラを回していると、Hさんは少し席を外して構造の模型を持ってきました。Hさんはお客さんに構造を説明するときにその簡単な模型を使っており、驚いたことに、模型はHさんの手作りでした。
「構造の話を口だけでしたってわからないよね。だから私はお客さんのことを考えてこんな模型を自分で作ったんですよ」
おそらくですが、ここまでやっている大工さんは、日本広しといえどもほかにいないと私は思います。
お客さんに嫌な思いをさせない
Hさんが挙げたもう1つの習慣は、お客さんに嫌な思いをさせないことです。当たり前のようでいて、なかなか奥深い言葉です。
テレビにもよく出演する有名な女性のマナー講師が、炎上した問題がありました。マナー講師が制作側のスタッフを思いっきり怒鳴りつけ、その場で女性が泣いてしまったことに批判が集中しましたが、この件の受け止め方は個人の解釈ですので、私がとやかく言うことではありません。
ただ、マナーが論争になるとき、最も説得力があるのは「相手に不快な思いをさせないことが最大のマナー」という言葉だと私は思います。
箸の上げ下ろしにも細かいマナーはたくさんあるようですが、会食の席でこちらがマナーを徹底するあまり相手が緊張してしまっては、意味がないと私は考えています。
堅苦しいことが苦手な相手であれば、こちらもそれに合わせてラフな感じで対応すれば良いのではないでしょうか。
大工のHさんも、同じようなことを話していました。
「私が現場でお施主さんと接する時に気をつけていることは、とにかくお子さんが不快になるようなことを話さない、という一点に尽きるんですよね」
私は取材ビデオをお見せしたいくらいで、Hさんは話す速度や表情のどれを取っても、教育ビデオに使えるのではないかと思うほど感じのいい大工さんです。
大工が施工することの良さをお客さんにどう伝えるかは、自社大工のメリットと営業トークで解説しています。
大工Gさんが明かした、Hさんに紹介が集まる理由

私はとにかく取材魔で、話を聞きたいと思ったら、対面でもZoomでも取材を依頼します。
Hさんの取材から半年ほど過ぎたころ、私はまた大工さんに話を聞きたいと考え、仲介者に別の大工さんの取材を頼みました。
そこで会ったのがGさんで、取材の場でGさんがHさんの知り合いだと分かりました。
20年来の付き合いがあるGさんとの会話
私はGさんご本人の話を聞いた後、その流れでHさんのこともあれこれと聞き込みました。
私「ところでHさんのお話を伺ってよろしいでしょうか」
Gさん「はい、いいですよ、彼とはもう20年の付き合いですからね」
私「Hさんにはお施主さんからマイホームを建てたい方の情報が嘘のように集まってくるという話を聞いたのですが・・・」
Gさん「あぁ、その話ね(笑)この前も同じことを誰かに聞かれましたよ」
「Hさんは紹介をもらうことを意識してるからだよ」
Gさんは笑いながら答えた後、Hさんに紹介が集まる理由を「Hさんは紹介をもらうことを意識してるからだよ」と明快に言い切りました。
大工さんが建築現場で施主と話す機会は頻繁にあり、その会話は建物の話やとりとめのない雑談を組み合わせたものがふつうです。Gさんによると、Hさんはそうした会話をしながら、頭の中では「この流れでなんとかしてお友達を紹介してあげるという結論に持って行こう」と考えているそうです。
実は、私はHさんへの取材でも紹介が多い理由を聞いていましたが、Hさんは「難しいね自分ではわからないな」と答えていました。
本人には分からないというのも納得できたので、私はそれ以上突っ込みませんでした。
友人のGさんは、私の同じ質問に即座に答えてくれました。
紹介で受注を重ねていた大工の新築がゼロになった例は、紹介営業が止まった原因と見直す手順で解説しています。
住宅営業がHさんから学べる紹介をもらう会話の進め方
社内用語を言い換えた一覧を作っておく
F君は、自分が社内用語を使っていることに最後まで気付きませんでした。住宅営業も、見積書や打ち合わせで使う言葉のうち、クロスの番手のような社内だけで通じる言葉を書き出し、お客さん向けの言い方を横に並べておくと、商談の場で言い換えに迷いません。
施主との雑談の着地点を紹介に置く
Hさんが施主との雑談の行き先を紹介に置いていたように、住宅営業も打ち合わせや引き渡し後の訪問の前に、紹介につなげる話題を決めておけます。頼み方の具体例は紹介営業のコツで解説しています。
OB施主に紹介をお願いするときに渡すカードと手紙は、紹介カードテンプレートで解説しています。
大工や現場監督とも紹介の意識を共有する
Hさんの例のように、施主は担当営業だけでなく、建築現場で会う大工にも紹介情報を出します。
住宅会社は、大工や現場監督が施主から聞いた友人の家づくりの話を担当営業に伝える流れを社内で決めておくと、現場で出た情報を取りこぼしません。
紹介をもらった後のお礼の伝え方は住宅営業のお礼状の書き方で解説しています。
まとめ
施主の紹介が集まっていた関東地方の大工のHさんは、専門用語を平易な言葉に言い換え、構造を手作りの模型で説明し、お客さんに不快な思いをさせない接し方を続けていました。そのうえで、友人のGさんが言い切ったとおり、施主との雑談の行き先を紹介に置いていました。
言葉の言い換えと会話の着地点の2つは、住宅営業も次の打ち合わせから変えられます。
ぜひ本記事の大工Hさんの取材話を参考に、施主との会話を紹介につなげる流れを意識してみてください。



