住宅展示場戦略の転換点|総合展示場は縮小、工務店はどうする?

神奈川県川崎市の川崎住宅公園は、出展区画のあちこちが空き地になっています。「うちも住宅展示場があればな……」と考える住宅会社の経営者がいる一方で、総合住宅展示場に出展している住宅会社の中には、展示場の縮小を考える経営者が増えています。
総合住宅展示場は維持費が重いうえ、SUUMOやLIFULLからの紹介で予約来場するお客さんが増えたため、フラっと来るお客さんを待つための出展は意味が薄れました。ただし、紹介客が回ってきにくい小規模な住宅会社には、単独展示場が今も役に立ちます。
本記事では、住宅展示場戦略の転換点と、展示場を持てない工務店が取るべき集客の手を解説します。
川崎住宅公園の空き区画に見る住宅展示場の転換点
2枚の写真は、どちらも神奈川県川崎市にある川崎住宅公園のものです。
1枚目は、どの住宅会社の展示場が建っているかを示す看板です。
一目見ると分かるとおり、かなりの区画が空き地になっています。
2枚目は、空き区画に緑のシートがかぶせられた状態です。
衰退か新陳代謝か
この光景は2通りに受け取れます。
1つは、住宅展示場から住宅会社が次々に撤退して、展示場が衰退していくという見方です。
もう1つは、たまたまこの状態になっているだけで、出展会社の入れ替わりが進んでいるという見方です。
答えは前者です。
今から50年以上前に、モデルハウスを建ててお客さんを集めるという画期的な手法を先人が編み出しました。
この手法には資金力のある大手メーカーが力を入れて全国に展開し、大成功しました。
しかし時代は大きく変わりました。
毎月多額の出店料を払ってお客さんを待つスタイルの展示場ビジネスは、この先先細っていくと私は考えています。
展示場の縮小を決めた住宅会社の社長との会話
費用対効果が見合えば出展を続けても問題はありません。しかし、総合住宅展示場に出展している、ある住宅会社の社長は次のようにきっぱりと言い切りました。
社長「展示場はそろそろ頭打ちですよね。うちも徐々に縮小していこうかと考えています」
私「だから積極的に展示場の建て替えもしないし、現在の展示場にもあまり手を入れないのですね」
社長「お客さんの中にはデザインが古いとか建物が古いと感じられる方がいるのは事実ですが、転換期ですからここは我慢ですね」
このように考える住宅会社の経営者が増えているのは事実です。
総合住宅展示場への出展が見合わなくなった理由
住宅展示場があれば、住宅会社は新規のお客さんをある程度見込めますし、商談の場所としても使えます。
展示場は常にそこに建っているので、24時間宣伝をしているという広告効果もあります。
それでも出展をやめる住宅会社が出てきた理由は、次の3点にあります。
維持費が年間1,000万円を軽く超える
単独展示場でも維持費の負担は大きいのですが、総合住宅展示場に出店すると、維持費は年間1,000万円を軽く超えます。そのうえ建物を建てるコストもかかるため、住宅会社が簡単に踏み切れることではありません。
SUUMOやLIFULLの紹介による予約来場が増えた
いまの住宅会社の集客で大きな柱になっているのは、SUUMOやLIFULLといった会社からの紹介客です。
SUUMOの場合、お客さんはまずSUUMOカウンターに足を運び、担当者といろいろ話をします。
そのうえで3社程度の住宅会社を紹介してもらい、予約をしてから各社に足を運びます。
住宅展示場に行ってフラっとモデルハウスに入るお客さんを相手にするなら、出展には意味があります。
しかし予約来場のルートでは、お客さんは展示場を回る必要がありません。
この現実に気がつかない経営者はいないでしょう。
予約来場とフリー来場が実際の展示場でどう分かれているかは、住宅展示場の集客の実態で解説しています。
建て替えない展示場は7〜8年で見劣りする
住宅会社の経営者が展示場の出店戦略を転換すると決めれば、新規出店はしませんし、今ある展示場のリフォームなどにかける経費も極力抑えます。ところが、これが住宅営業の現場では問題になります。
住宅展示場は7年も8年も経つと、デザインなどの点でどうしても新築の展示場より見劣りします。
周りに新しい展示場ができれば、自社の展示場は明らかに古く見え、フリーのお客さんが入りづらくなります。
SUUMOなどから紹介を受けたお客さんが来ても「なんだか古めかしい感じがするね」と受け取られ、営業上のマイナスが生まれます。
経営者にとってはこの点が大きな悩みどころで、忍耐の日々が続きます。
展示場運営者のイベントもマンネリから抜け出せない
住宅展示場ビジネスの転換期を最も深刻に受け止めているのは、展示場の運営者です。
私もかつて運営者と接点があり、展示場でのイベントに何回か参加しました。
当時から集客は芳しくなく、企画自体もマンネリとしか言いようがありませんでした。
その後も別の企画会社から意見や案を求められ、私もそれなりに企画を提案しました。
しかし、残念ながらすべて却下されました(笑)。
従来のやり方から大きく枠を出るには勇気がいるのでしょう。
その気持ちはよく分かりますが、このままでは展示場の運営者がじり貧になるのは火を見るより明らかです。
展示場でイベントを開くときに住宅会社が気をつける点は、展示場の再来場を生むイベント企画で解説しています。
小規模工務店の単独展示場は持つ意味がある
ここまでの話は、いわゆる総合住宅展示場についてです。単独展示場になると、事情が変わってきます。
大きな住宅会社は、展示場がなくてもショールームを持っていますし、施工中の現場も多いので、お客さんに実物を見せられます。大規模な住まい館などの施設を持つ住宅会社なら、展示場の代わりにそちらを使えます。
一方、小規模な住宅会社は、SUUMOやLIFULLなどから紹介が来る可能性が大きな会社より低くなります。
そのため、小規模な住宅会社にとっての単独展示場は、フリーのお客さんを呼び込む場所にもなり、ショールームの役目も果たします。
こう考えると、小規模な住宅会社が単独展示場を持つことには引き続き意味があると私は考えます。
単独展示場を残すときに豪華さより等身大と収納で見せる考え方は、住宅展示場の撤退と街角モデル戦略で解説しています。
展示場をショールームとして使い、新築以外の受注につなげる方法は、住宅展示場のディスプレイ活用で解説しています。
展示場を持てない工務店はネットと現場見学会で補う
セキスイハイムのインターネット住宅販売(2000年頃)
ネットの黎明期といえる2000年頃、大手ハウスメーカーは次のようなことを考えました。
「インターネットだけで住宅を売ることはできないか」
「経費がかかる展示場をたたんでインターネットだけで勝負ができるはずではないか」
この考えのもとで、セキスイハイムはいち早くインターネットでの住宅販売に乗り出しました。
しかし世の中はまだ機が熟しておらず、この試みはうまくいきませんでした。
3,000万円も4,000万円もする住宅を、現物を見ずにインターネットで買う人はいなかったのでしょう。
それから20年以上が経ち、展示場に頼らずネットで売るという考え方が再び台頭しつつあります。
実物は新築現場見学会、それ以外はネットで見せる
いくらネットが発達しても、お客さんは住宅を買うときには実物を見たいものです。
展示場やショールームがあれば、お客さんは住まいのイメージをつかみやすく、現物を見ることで購買意欲も高まります。
住宅会社の側から見ても、展示場を持つ効果は期待できます。
それでも費用対効果を考えると、展示場が縮小の流れにあることは否めません。
そこで私がすすめるのは、現物とネットの折衷案です。
実物を見たいというお客さんの気持ちには新築現場見学会で応え、それ以外の部分はIT空間でバーチャルに見せます。
展示場もショールームも持てない小規模工務店は、一刻も早くウェブ対策に乗り出してください。
工務店がSNSで集客する方法は、ハウスメーカー・工務店のSNS集客で解説しています。
アイ工務店は空いた区画に出展する逆張りで伸びた
展示場が縮小に向かう市場の中でも、逆を行って成功している住宅会社があるのも事実です。その筆頭格が、10年連続伸長率ナンバーワンのアイ工務店です。
アイ工務店は、歯抜け状態になった総合住宅展示場の空き区画を狙って出展し続けました。
その戦略が功を奏して、業績は倍々ゲームで伸びています。
もちろん、この戦略がいつまでも続くとは限りませんが、私はアイ工務店の動向に大変注目しています。
大手ハウスメーカーの展示場削減と、撤退跡に出店したアイ工務店の戦略は、住宅展示場の閉鎖とアイ工務店の逆張りで解説しています。
まとめ
「うちも住宅展示場があればなあ……」という気持ちはよく分かりますし、費用を考えなければ展示場はあったほうがいいに決まっています。
しかし、維持費の重さと予約来場の増加によって、大掛かりな総合住宅展示場は縮小に向かっています。
その中でも、紹介客が回ってきにくい小規模工務店にとって、単独展示場やそれに準じるショールームはあるに越したことはありません。
展示場を持つのが無理であれば、実物は新築現場見学会に任せ、それ以外をネットで見せる形に早く切り替えることが、小規模工務店の取るべき手です。
ぜひ本記事の川崎住宅公園の事例とアイ工務店の動きを参考に、自社が展示場を持つべきか、ネットと現場見学会で勝負するべきかを見直してください。



